貧血
- 貧血は赤血球の数またはヘモグロビンの濃さが下がり、組織に酸素が十分に届かなくなる病気で、世界の人口の約24.8%(約16億人)がかかっています。
- DNA領域rs147570790のGの型を持つ人は貧血になるリスクが高い傾向にあることが、ケンブリッジ大学の研究で分かりました。
- 適切な食事の工夫(鉄分・ビタミンB12・葉酸をとる)と早めの診断によって予防・改善が期待できます。
概要
【疾患の概要】 貧血は、赤血球に関係するいくつかの大切な検査値によって判断されます。
【症状と特徴】 これらの値は、血液検査で直接測ったり、計算で求めたりできます。 まず、赤血球数は体の中にある赤血球の総数を表し、数値が低いと酸素を運ぶ赤血球が足りない可能性があります。 次に、平均赤血球容積は赤血球1個の平均の大きさを表し、貧血のタイプを見分けるのに役立ちます。 赤血球が大きくなる大球性貧血はビタミンB12や葉酸の不足、赤血球が小さくなる小球性貧血は鉄の不足が原因である可能性があります。 また、ヘマトクリットは血液の中で赤血球が占める割合を表し、この値が下がると貧血の可能性があります。 最後に、平均網状赤血球容積(できたばかりの若い赤血球の平均の大きさ)は、赤血球を作る働きに問題があるかどうかの手がかりになります。 これらの値から、貧血では体の組織に届く酸素が足りなくなっていることが分かり、だるさや肌の青白さなどの症状につながっていきます。
【遺伝的リスク】 ケンブリッジ大学のVuckovicらの研究により、貧血のなりやすさがrs147570790というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはGG、GT、TTの3つの遺伝子型があり、Gを持つ遺伝子型の人は、貧血のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
貧血とは何か
貧血とは、血液中の赤血球の数またはヘモグロビンの濃さが基準値より低くなり、全身の組織に酸素が十分に届かなくなる状態です。世界保健機関の基準では、大人の男性はヘモグロビン(赤血球の中で酸素を運ぶたんぱく質)の値が13g/dL未満、大人の女性は12g/dL未満で貧血と診断されます。世界保健機関の報告によると、世界の人口の約24.8%が貧血にかかっており、特に女性と子どもに多い病気です。
貧血の原因とメカニズム
貧血は、血液検査で測る次の4つの主な値で判断されます。
- 赤血球数:体の中にある赤血球の総数を表し、数値が低いと酸素を運ぶ赤血球が足りないことを意味します。
- 平均赤血球容積(赤血球1個の平均の大きさ):赤血球1個の平均の大きさを測り、貧血のタイプ分けに使います。100fLより大きい大球性貧血はビタミンB12・葉酸の不足、80fLより小さい小球性貧血は鉄の不足が原因である可能性があります。
- ヘマトクリット(血液中の赤血球の割合):血液の中で赤血球が占める割合を表し、減ると貧血の可能性があります。
- 平均網状赤血球容積(できたばかりの若い赤血球の平均の大きさ):骨髄(骨の中で血液を作る場所)が赤血球を作る力を表す値で、異常があると血液を作る働きに問題がある可能性があります。
貧血の分類と原因の違い
| 分類 | 赤血球の平均の大きさ | 主な原因 | 患者の割合 |
|---|---|---|---|
| 小球性貧血 | 80fL未満 | 鉄の不足・サラセミア(生まれつきヘモグロビンがうまく作れない病気) | 貧血全体の約50% |
| 正球性貧血 | 80〜100fL | 長く続く病気・腎臓の病気による貧血・赤血球が壊れて起こる貧血 | 貧血全体の約30% |
| 大球性貧血 | 100fLより大きい | ビタミンB12の不足・葉酸の不足・骨髄異形成(骨髄でうまく血液が作れない病気) | 貧血全体の約20% |
貧血の主な症状
貧血の症状は組織に届く酸素の不足が原因で起こり、次のように段階的に進みます。
- 軽度(ヘモグロビン 10〜12g/dL):軽いだるさ、運動したときの息切れがあります。
- 中等度(ヘモグロビン 7〜10g/dL):続くだるさ、動悸(胸のどきどき)、めまい、肌の青白さ、頭痛があります。
- 重度(ヘモグロビン 7g/dL未満):じっとしていても起こる息切れ、胸の痛み、手足の冷え、失神、日常の動作が難しくなります。
貧血になりやすくなる要因
次のようなことが、貧血になるリスクを高めます。
- 月経の量が多い・妊娠(体が必要とする鉄が増える)
- かたよった食事・菜食主義(鉄分・ビタミンB12が不足しやすい)
- 長く続く病気(慢性腎臓病・炎症性腸疾患・がん)
- 遺伝子の影響(DNA領域rs147570790のGの型など)
- 胃や腸からの出血(胃潰瘍・大腸ポリープ)
予防と対策
次のような生活習慣が、貧血の予防・改善に役立ちます。
- 鉄分を積極的にとる:赤身肉、レバー、ほうれん草、小松菜などで、1日10.5mg(月経のある女性)の鉄分をとります。
- ビタミンCを一緒にとる:鉄の吸収率が最大6倍に上がるため、かんきつ類やブロッコリーと一緒に食べます。
- ビタミンB12・葉酸をとる:魚介類・卵・緑黄色野菜を毎日の食事に取り入れます。
- 定期的な血液検査:年1回以上ヘモグロビンの値を調べて、早めに見つけます。
- タンニン・カフェイン(お茶やコーヒーの成分)に注意:食事中のお茶・コーヒーは鉄の吸収をさまたげるため、食後30分以上たってから飲みます。
遺伝子と貧血の関連
DNA領域rs147570790と貧血のなりやすさの関係
ケンブリッジ大学のVuckovicらの研究(1)により、DNA領域rs147570790が貧血のなりやすさと関係していることが分かりました。
- rs147570790にはGG・GT・TTの3つの遺伝子型があります。
- Gの型を持つ遺伝子型の人は、貧血のリスクが高い傾向があります。
日本人の遺伝子型の分布(rs147570790)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| GG型 | 99.9% | 87.1% |
| GT型 | 0.1%以下 | 12.3% |
| TT型 | 0.1%以下 | 0.4% |
検査の科学的な根拠
代表的なDNA領域:貧血
貧血に最も強く影響するDNA領域は、rs147570790です。 日本における各遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- GG
99.9 % - GT
0.1%以下 - TT
0.1%以下
ほかに、貧血に関わるDNA領域としてrs4825885があります。 日本における各遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- AA
1.9 % - AG
23.8 % - GG
74.2 %
ほかに、貧血に関わるDNA領域としてrs1482853があります。 日本における各遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- CC
28.9 % - CA
49.7 % - AA
21.3 %
検査の根拠
ケンブリッジ大学のVuckovicらの研究により、貧血のなりやすさが遺伝子と関係していることが分かりました。人間のDNAには、rs147570790という場所があり、そこにはGとTの2種類の型があります。Gの型を持つ人は、貧血のリスクが高い傾向にあることが分かりました(1)。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | CLCN5 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | STAG2 |
| 関連遺伝子 | LEKR1 |
よくある質問
Q1. 貧血とは何ですか?
貧血とは、血液中の赤血球の数またはヘモグロビンの濃さが基準値より低くなり、組織に酸素が十分に届かなくなる状態です。世界保健機関の基準では、大人の男性はヘモグロビンの値が13g/dL未満、大人の女性は12g/dL未満で貧血と診断されます。世界の人口の約24.8%がかかっています。
Q2. 貧血の原因は何ですか?
貧血の原因は主に鉄の不足(貧血全体の約50%)、ビタミンB12・葉酸の不足、長く続く病気による血液を作る働きの低下の3つに分けられます。遺伝子の影響としては、DNA領域rs147570790にGの型を持つ人はリスクが高い傾向にあります(1)。
Q3. 貧血の主な症状は?
主な症状はだるさ、息切れ、動悸、めまい、肌の青白さです。ヘモグロビンの値が7g/dL未満の重い貧血では、じっとしていても息切れ・胸の痛み・失神(気を失うこと)が起こり、日常生活に支障が出ます。
Q4. 遺伝子検査で貧血のリスクは分かりますか?
DNA領域rs147570790の遺伝子型を調べることで、貧血になりやすい傾向を知ることができます。Gの型を持つ遺伝子型の人はリスクが高い傾向にあることが、ケンブリッジ大学のVuckovicらの研究で分かっています(1)。
Q5. 貧血の予防法は?
鉄分を含む食品(赤身肉・レバー・ほうれん草)を積極的にとることが基本です。ビタミンCと一緒にとると、鉄の吸収率が最大6倍に上がります。月経のある女性は、1日10.5mgの鉄分をとることがすすめられています。
参考文献
- 参考リンク1 : 2020 Sep., Dragana Vuckovic, Cell
- 参考リンク2 : 2021 Oct., Saori Sakaue, Nat Genet