大動脈弁狭窄症
- 大動脈弁狭窄症は、心臓の大動脈弁が狭くなり血液の流れが悪くなる病気で、65歳以上の約2〜4%に起こります。
- DNA領域rs10455872のGタイプを持つ人は大動脈弁狭窄症のリスクが高い傾向があることがデコード・ジェネティクスの研究で分かりました。
- 日本人でGタイプを持つ人(AG+GG)の割合は0.1%未満で、世界平均の11.8%と比べて低い割合です。
概要
【疾患の概要】 大動脈弁狭窄症は、心臓から全身に血液を送り出す出口にある「大動脈弁」が狭くなる病気です。 弁がうまく開いたり閉じたりしないため、心臓に負担がかかります。その結果、左心室(全身に血液を送る心臓の部屋)の壁が厚くなり、心不全(心臓の働きが弱る状態)になるリスクが高まります。
【治療と注意点】 この病気では、運動したときの息切れ、胸の痛み、めまい、失神、動悸、疲れやすさなどの症状が出ます。 重くなると心不全が進み、息切れや夜の息苦しさ、足のむくみなどが悪化します。 診断には、心臓超音波検査(エコー検査)、心電図、胸部レントゲン検査、コンピューター断層撮影(体の断面を撮る検査)、磁気共鳴画像検査(磁気で体の中を撮る検査)、カテーテル検査などを使います。 エコー検査では、大動脈弁の形や働き、狭くなっている程度、左心室の状態をくわしく確認します。 治療では、血圧を下げる薬や尿を出して体の水分を減らす薬(利尿剤)を使います。重い場合は、必要に応じて大動脈弁を取り替える手術を行います。 大動脈弁狭窄症は、早く見つけて早く治療することで、生活の質を高め、その後の経過を良くすることができます。
【遺伝的リスク】 デコード・ジェネティクスのHelgadottirらの研究で、大動脈弁狭窄症へのかかりやすさが、rs10455872というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはAA、AG、GGの3つの遺伝子型があり、Gを持つ遺伝子型の人は、大動脈弁狭窄症のリスクが高い傾向があることが分かりました。
大動脈弁狭窄症とは何か
大動脈弁狭窄症とは、心臓から全身に血液を送り出す出口にある大動脈弁が狭くなり、うまく開いたり閉じたりしなくなる病気です。左心室に大きな負担がかかることで心臓の筋肉が厚くなり、心不全(心臓の働きが弱る状態)のリスクが高まります。
大動脈弁狭窄症の主な原因
大動脈弁狭窄症が起こる原因には、主に次の3つがあります。
- 年齢による石灰化:65歳以上で弁に石灰(カルシウム)がたまり硬くなります。最も多い原因です。
- 生まれつきの二尖弁:ふつう3枚ある弁が生まれつき2枚しかなく、40〜50代で症状が出ます。人口の約1〜2%に見られます。
- リウマチ熱によるもの:リウマチ熱(細菌の感染後に起こる病気)の後遺症として、弁が変形したりくっついたりします。先進国では減っています。
大動脈弁狭窄症の症状と重症度
大動脈弁狭窄症の症状は、重さに応じて段階的に進みます。
| 重症度 | 主な症状 | 残りの寿命(治療しない場合) |
|---|---|---|
| 軽度 | 症状なし(健康診断で心臓の雑音を指摘される) | 通常の生活が可能 |
| 中等度 | 運動したときの息切れ・疲れやすさ・めまい | 定期的な検査が必要 |
| 重度 | 胸の痛み・失神・心不全の症状(安静時の息切れ・足のむくみ) | 約2〜5年 |
大動脈弁狭窄症の診断方法
大動脈弁狭窄症の診断には、次のような検査を使います。
- 心臓超音波検査(エコー検査):弁の形・働き・狭くなっている程度・左心室の状態をくわしく確認する、最も重要な検査です。
- 心電図:左心室が厚くなっていないか、脈の乱れがないかを確認します。
- 胸部レントゲン検査:心臓が大きくなっていないかや、弁の石灰化を調べます。
- コンピューター断層撮影・磁気共鳴画像検査:弁の石灰化の程度や大動脈の形をくわしく調べます。
- 心臓カテーテル検査(細い管を血管から心臓まで入れる検査):弁の開く広さと、弁の前後の圧力の差を正確に測ります。
大動脈弁狭窄症の治療法の比較
| 治療法 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| 薬による治療 | 軽度〜中等度、または手術が難しい場合 | 血圧を下げる薬・利尿剤で症状を抑えます。病気そのものを治す治療ではありません。 |
| 胸を開いて弁を取り替える手術 | 重度で、75歳以下の手術の危険が低い患者さん | 胸を開く手術で弁を人工の弁に取り替えます。5年後に生存している人の割合は約85%です。 |
| カテーテルを使った弁の取り替え | 重度で、高齢または手術の危険が高い患者さん | 細い管(カテーテル)を使って新しい弁を入れます。体への負担が小さく回復が早いです。 |
大動脈弁狭窄症は早く見つけて適切な治療をすることで、生活の質を高め、その後の経過を良くすることができます。
遺伝子と大動脈弁狭窄症の関係
DNA領域rs10455872と大動脈弁狭窄症の関係
デコード・ジェネティクスのHelgadottirらの2018年の研究で、大動脈弁狭窄症へのかかりやすさがDNA領域rs10455872と関係していることが分かりました。
- rs10455872にはAA・AG・GGの3つの遺伝子型が存在します。
- Gタイプを持つ遺伝子型(AG型・GG型)の人は大動脈弁狭窄症のリスクが高い傾向があります。
- このDNA領域はリポタンパク質(a)(血液中の脂質を運ぶ粒の一種、LPA遺伝子)に関係し、弁の石灰化を進める可能性があります。
日本人と世界における遺伝子型分布の比較(rs10455872)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| AA型 | 99.9% | 88.0% |
| AG型 | 0.1%以下 | 11.5% |
| GG型 | 0.1%以下 | 0.3% |
日本人でGタイプを持つ人(AG+GG)の割合は0.1%未満で、世界平均の11.8%と比べて低い割合です。つまり、大動脈弁狭窄症に関係するrs10455872のリスクを高めるタイプを持つ日本人は、とても少ないということです。
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:大動脈弁狭窄症
大動脈弁狭窄症 に最も強く影響するDNA領域は、rs10455872です。 日本における各遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- AA
99.9 % - AG
0.1%以下 - GG
0.1%以下
検査の根拠
デコード・ジェネティクスのHelgadottirらの研究で、大動脈弁狭窄症へのかかりやすさが遺伝子と関係していることが分かりました。人間のDNAには、rs10455872という場所があり、ここにはAとGの2種類のタイプがあります。Gタイプを持つ人は、大動脈弁狭窄症のリスクが高い傾向があることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | LPA |
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よくある質問
Q1. 大動脈弁狭窄症とは何ですか?
大動脈弁狭窄症とは、心臓から全身に血液を送り出す出口にある大動脈弁が狭くなり、うまく開いたり閉じたりしなくなる病気です。65歳以上の約2〜4%に起こり、年を取ることで弁が石灰化する(カルシウムがたまって硬くなる)のが最も多い原因です。左心室に大きな負担がかかり、心臓の筋肉が厚くなって心不全になるリスクがあります。
Q2. 大動脈弁狭窄症の主な症状は何ですか?
主な症状は運動したときの息切れ・胸の痛み・めまい・失神・動悸・疲れやすさです。重くなると心不全(心臓の働きが弱る状態)が進み、安静にしていても息切れがしたり、夜に息苦しくなったり、足がむくんだりします。症状が出てから治療をしない場合、残りの寿命は平均で約2〜5年とされています。
Q3. 大動脈弁狭窄症は遺伝子と関連していますか?
はい。デコード・ジェネティクスのHelgadottirらの2018年の研究で、DNA領域rs10455872が大動脈弁狭窄症へのかかりやすさと関係していることが分かっています。rs10455872にはAA・AG・GGの3つの遺伝子型があり、Gタイプを持つ遺伝子型の人はリスクが高い傾向があります。
Q4. 大動脈弁狭窄症の遺伝子型(rs10455872)は、日本人ではどのように分布していますか?
日本人におけるrs10455872の遺伝子型分布はAA型99.9%、AG型0.1%以下、GG型0.1%以下です。世界全体ではAA型88.0%、AG型11.5%、GG型0.3%で、日本人はGタイプを持つ人の割合が世界平均より低いという特徴があります。
Q5. 大動脈弁狭窄症の治療法にはどのようなものがありますか?
治療法は、薬による治療・胸を開いて弁を取り替える手術・カテーテルを使って弁を取り替える治療の3つに大きく分けられます。軽度〜中等度では血圧を下げる薬や利尿剤(尿を出して体の水分を減らす薬)で症状を抑え、重度では弁を取り替える手術を考えます。カテーテルを使った弁の取り替えは、体への負担が小さいため、高齢の方や手術の危険が高い患者さんの選択肢として広まっています。