クローン病の予後の良さ
- クローン病の予後は炎症の範囲・重さ・合併症の有無によって大きく変わり、早めの治療が改善のカギとなります。
- DNA領域rs5929166のGタイプを持つ人は予後が悪い傾向にあることがケンブリッジ大学の研究で分かりました。
- 炎症をおさえる薬・免疫の働きをおさえる薬・栄養管理・心のケアを組み合わせることで、長い目で見た予後の改善が可能です。
概要
【疾患の概要】 クローン病は、口から肛門までの消化管に長く炎症が続く病気で、「炎症性腸疾患」(腸に炎症が続く病気のグループ)の一つです。
【症状と特徴】 この病気の予後(病気や治療の見通し)は、炎症が起きている場所、重さ、合併症があるかどうかによって変わるため、前もって予測するのは難しいです。 症状が比較的軽く、炎症が一部分だけで軽い場合は、予後は良好です。
【治療と注意点】 一方で、炎症が広い範囲に広がり、潰瘍(粘膜の深い傷)がひどくなり、狭窄(腸が狭くなること)や穿孔(腸に穴があくこと)などの合併症が進むと、治療が難しくなり、予後が悪くなる傾向があります。 早めに適切な治療を始め、炎症をおさえる薬や免疫の働きをおさえる薬などで病状を安定させ、症状を良くすることが、長い目で見た予後の改善につながります。 クローン病は長い期間、症状とつき合いながら治療を続ける必要がある病気で、そのストレスや生活の質の低下が予後に悪い影響を与えます。 早めの適切な治療と心のケアが、予後を良くするために大切です。
【遺伝子の影響】 ケンブリッジ大学のLeeらの研究により、クローン病の予後がrs5929166というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはGG、GA、AAの3つの遺伝子型があり、Gを持つ遺伝子型の人は、クローン病の予後が悪い傾向にあることが分かりました。
クローン病の予後とは何か
クローン病の予後とは、クローン病と診断された後の病気の経過や治療の見通しのことです。クローン病は消化管に長く炎症が続く「炎症性腸疾患」(腸に炎症が続く病気のグループ)の一つです。
クローン病の予後を左右するものとは?
予後は次のようなことによって変わります。
- 炎症の範囲と重さ:一部分だけの軽い炎症であれば予後は良好です。
- 合併症の有無:狭窄(腸が狭くなる)・穿孔(腸に穴があく)・瘻孔(腸と他の場所がつながる)が進むと予後が悪くなります。
- 治療開始時期:早めに適切な治療を始めた場合、長い目で見た予後が良くなります。
- 遺伝子の影響:DNA領域rs5929166の遺伝子型が予後に関係しています。
- 心の状態:長く続く病気によるストレスや生活の質の低下が予後に悪い影響を与えます。
クローン病の予後が良いケースと悪いケースの違い
| 比較項目 | 予後が良い | 予後が悪い |
|---|---|---|
| 炎症範囲 | 一部分だけ・限られた範囲 | 広い範囲・消化管全体 |
| 潰瘍の深さ | 浅い・軽い | 深い・重い |
| 合併症 | なし・軽い | 狭窄・穿孔・瘻孔 |
| 治療開始 | 早い(発症から6か月以内) | 遅い(合併症が出てから) |
| 遺伝子型(rs5929166) | AA型(予後が良い傾向) | GG型・GA型(予後が悪い傾向) |
クローン病の予後を良くする治療法
次のような治療が、長い目で見た予後の改善に役立ちます。
- 炎症をおさえる薬(5-アミノサリチル酸製剤):軽い〜中くらいの炎症をおさえます。
- 免疫の働きをおさえる薬(アザチオプリンなど):免疫の働きを整え、再び悪くなるのを防ぎます。
- 生物学的製剤(炎症を起こす物質の働きをおさえる抗体の薬など):中くらい〜重い症状の人によく効きます。
- 栄養療法:栄養剤を飲んだりチューブで入れたりして、腸を休ませながら栄養をとります。
- 外科的治療(手術):狭窄・瘻孔などの合併症に対する手術
クローン病と潰瘍性大腸炎の予後の違い
| 比較項目 | クローン病 | 潰瘍性大腸炎 |
|---|---|---|
| 炎症部位 | 消化管全体(口から肛門まで) | 大腸だけ |
| 炎症パターン | とびとび(飛び石状) | 連続的(直腸から口の方向へ続けて広がる) |
| 手術率 | 約70〜80%(発症20年以内) | 約25〜30% |
| 手術後の再発 | 高い(5年以内に約50%) | 大腸をすべて取る手術で治すことができます。 |
遺伝子とクローン病の予後の関連
DNA領域rs5929166と予後の関係
ケンブリッジ大学のLeeらの研究(1)により、DNA領域rs5929166がクローン病の予後と関係していることが分かりました。
- rs5929166にはGG・GA・AAの3つの遺伝子型が存在します。
- Gを持つ遺伝子型の人は、クローン病の予後が悪い傾向があります。
日本人における遺伝子型分布(rs5929166)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| GG型 | 99.9% | 96.2% |
| GA型 | 0.1%以下 | 3.7% |
| AA型 | 0.1%以下 | 0.1%以下 |
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:クローン病の予後の良さ
クローン病の予後の良さに最も強く影響するDNA領域は、rs5929166です。 日本における各遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- GG
99.9 % - GA
0.1%以下 - AA
0.1%以下
検査の根拠
ケンブリッジ大学のLeeらの研究により、クローン病の予後が遺伝子と関係していることが分かりました。人間のDNAには、rs5929166という場所があり、そこにはGとAの2種類のタイプがあります。Gタイプを持つ人は、クローン病の予後が悪い傾向にあることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | XACT |
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よくある質問
Q1. クローン病の予後とは何ですか?
クローン病の予後とは、クローン病と診断された後の病気の経過や治療の見通しのことです。炎症の範囲、重さ、合併症(狭窄:腸が狭くなる、穿孔:腸に穴があく、瘻孔:腸と他の場所がトンネルのようにつながる)があるかどうかで大きく変わります。軽い炎症が一部分だけであれば予後は良好ですが、広い範囲の炎症や深い潰瘍が進むと予後が悪くなります(1)。
Q2. クローン病の予後に遺伝子は影響しますか?
ケンブリッジ大学のLeeらの研究により、DNA領域rs5929166の遺伝子型がクローン病の予後に関係していることが分かりました。Gを持つ遺伝子型の人は予後が悪い傾向にあります(1)。
Q3. クローン病の予後を良くする方法はありますか?
早めの診断と適切な治療が予後を良くするカギです。炎症をおさえる薬、免疫の働きをおさえる薬、生物学的製剤(体の中の特定の物質をねらって働く新しいタイプの薬)で病状を安定させることに加え、栄養の管理、禁煙、ストレスの管理、定期的な内視鏡検査(カメラで腸の中を見る検査)で合併症を早く見つけることが大切です。
Q4. クローン病と潰瘍性大腸炎の予後の違いは?
クローン病は消化管全体に、とびとびに炎症が起こり、手術率が発症20年以内に約70〜80%と高くなります。潰瘍性大腸炎は炎症が大腸だけに起こり、手術率は約25〜30%です。クローン病は手術後に再発する割合も高い傾向にあります。
参考文献
- 参考リンク1 : 2017 Feb., James C Lee, Nat Genet