メラノーマ(悪性黒色腫)
- メラノーマは皮膚がん全体の約4%ですが、皮膚がんで亡くなる人の約80%をしめるたちの悪い皮膚がんです。
- 遺伝子MX2のDNA領域rs45430のTの型を持つ人はリスクが高く、日本人の約97.6%がTT型またはCT型を持っています。
- 「ほくろ」と似ているため見過ごされやすく、遺伝子検査による早期発見が重要です。
概要
【概要・特徴】 メラノーマは皮膚がんの一種で、黒色腫とも呼ばれます。 見た目は「ほくろ」にとてもよく似ています。皮膚の色のもとであるメラニンを作る細胞が、がんになることで起こります。 メラノーマは皮膚がん全体のわずか4%ですが、皮膚がんで亡くなる人の80%はメラノーマが原因だと言われています。 メラノーマは主に「悪性黒子型」「表在拡大型」「肢端黒子型」「結節型」の4つに分けられます。どの型が多いか、体のどこにできやすいかは、人種によって違います。 白人に多い「表在拡大型」は、顔や胴体など日光が当たる場所にできやすく、日光の紫外線や遺伝子の変化が深く関係していると考えられています。 日本人に多い「肢端黒子型」は、足の裏など紫外線が当たらない場所にできやすく、けがや皮膚がこすれることが原因の一つと考えられています。(参考リンク1) まだ分かっていないことも多く、メラノーマができるしくみについては今も研究が続いています。 ただし最近の研究で、「MX2」という遺伝子がメラノーマのなりやすさにある程度関係していることが分かりました。(参考リンク2)
【2. 理論的根拠】 アメリカのスタンフォード大学などの研究で、「MX2」という遺伝子の型によって、メラノーマのリスクが高くなることが分かりました。 「MX2」のDNA領域には「rs45430」という場所があり、「TT型」「CT型」「CC型」という3つの遺伝子型があります。 Tはリスクを高める型なので、Tを多く持つほどメラノーマになるリスクが高くなります。そのため「TT型」はリスクが高く、「CT型」はやや高い傾向があります。 日本人の遺伝子型は、「TT型」が71.6%で最も多く、次が「CT型」の26.0%、「CC型」は2.4%で最も少なく、「TT・CT型」が約97.6%をしめます。 世界全体では、「TT型」が24.6%、「CT型」が50.0%(最も多い)、「CC型」が25.4%(最も少ない)で、「TT・CT型」は約75.4%です。(参考リンク3) つまり日本人は、メラノーマのリスクが高い遺伝子の型を持つ人が多いと言えます。 メラノーマは進行がとても速く、日本では患者の約4分の1で、がんがリンパ節に広がっている(リンパ節転移)ことが知られています。(参考リンク4) また、前に書いたようにメラノーマは「ほくろ」に似ていて見過ごされやすいため、早く見つけることがとても大切です。 遺伝子検査でメラノーマへの遺伝子の影響を前もって知っておくと、早く見つけて治療することに役立つと期待されています。
【3. 作用機序】 「MX2」は、21番染色体(ヒトの染色体は全部で24種類あります)にある遺伝子で、メラノーマのできやすさに関係している可能性があります。 この遺伝子には、がん細胞が増えるのをおさえ、メラノーマの進行を遅らせる働きがあることが分かっています。 また、細胞が分裂するときの流れのうち、分裂の準備をする「G1期」と、DNAをコピーする「S期」という時間を長くすることで、細胞の分裂を遅くするとも報告されています。(参考リンク5) DNA領域「rs45430」の型のちがいによって「MX2」タンパク質の働き方に差が出て、それがメラノーマのできやすさに関係している可能性があります。 このように、「MX2」遺伝子のDNA領域「rs45430」は、メラノーマのリスクに関係する注目の遺伝子の個人差(一塩基多型)の1つです。
メラノーマ(悪性黒色腫)とは何か
メラノーマ(悪性黒色腫)は、皮膚の色のもとであるメラニンを作る細胞(メラノサイト)が、がんになる皮膚がんです。皮膚がん全体の約4%にすぎませんが、皮膚がんで亡くなる人の約80%はメラノーマが原因です。
メラノーマの4つの型と特徴
メラノーマは次の4つの型に分けられ、人種によってなりやすさや、できやすい場所が違います。
| 分類 | できやすい場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| 悪性黒子型 | 顔(高齢者の日光が当たる場所) | ゆっくり進行し、高齢者に多いです。 |
| 表在拡大型 | 顔・胴体の日光が当たる場所 | 白人に多い、紫外線・遺伝子の変化が関係しています。 |
| 肢端黒子型 | 足の裏・手のひら | 日本人に多い、けが・こすれが原因の一つです。 |
| 結節型 | 全身のいろいろな場所 | 皮膚の深い方へ速く広がり、治りにくいです。 |
なぜメラノーマは危険なのか
メラノーマが危険な理由は進行の速さと、転移しやすさにあります。
- 皮膚がん全体のわずか約4%ですが、皮膚がんで亡くなる人の約80%をしめます。
- 日本では患者の約4分の1(約25%)でリンパ節に転移が見られます(参考リンク4)。
- 「ほくろ」と見た目がよく似ていて、見過ごされやすいです。
日本人と白人のメラノーマの違い
| 比較項目 | 日本人 | 白人 |
|---|---|---|
| 多い型 | 肢端黒子型 | 表在拡大型 |
| できやすい場所 | 足の裏・手のひら(日光が当たらない場所) | 顔・胴体(日光が当たる場所) |
| 主な原因 | けが・こすれ | 紫外線・遺伝子の変化 |
遺伝子とメラノーマの関係
DNA領域rs45430となりやすさの関係
スタンフォード大学などの研究チームにより、遺伝子MX2のDNA領域rs45430がメラノーマのなりやすさに関係していることが分かりました(参考リンク2)。
- rs45430にはTT型・CT型・CC型の3つの遺伝子型があります。
- リスクを高めるTの型を多く持つほどリスクが上がります。
- TT型:リスクが高いです。
- CT型:リスクがやや高い傾向があります。
日本人における遺伝子型分布(rs45430)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| TT型(リスク高め) | 71.6% | 24.6% |
| CT型(リスクやや高め) | 26.0% | 50.0% |
| CC型(リスク低め) | 2.4% | 25.4% |
日本人の約97.6%がTT型またはCT型を持っており、世界平均(約75.4%)とくらべて高い割合です。つまり日本人は、メラノーマのリスクが高い遺伝子の型を持つ人が多い傾向にあります(参考リンク3)。
MX2遺伝子の作用機序
MX2遺伝子は21番染色体にあり、メラノーマのできやすさに関係する遺伝子です。
- がん細胞が増えるのをおさえるし、メラノーマの進行を遅らせる働きを持ちます。
- 細胞分裂の流れのG1期とS期を長くするし、細胞の分裂をゆっくりにします(参考リンク5)。
- DNA領域rs45430の型のちがいでMX2タンパク質の働きに差が出て、なりやすさに影響します。
遺伝子検査の意味
メラノーマは「ほくろ」と見た目がとてもよく似ており、見過ごされるおそれがあります。遺伝子検査でrs45430の遺伝子型を前もって知ることで、リスクが高い人を見つけ、早期発見・治療に役立ちます。
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:メラノーマ(悪性黒色腫)
メラノーマ(悪性黒色腫) に最も強く関係するDNA領域は、rs45430です。 日本でのこの場所の遺伝子型の分布は下のとおりです。
- CC
4.4 % - CT
33.3 % - TT
62.1 %
他に、メラノーマ(悪性黒色腫)に関わるDNA領域としてrs2853667があります。 日本でのこの場所の遺伝子型の分布は下のとおりです。
- AA
77.4 % - AG
21.1 % - GG
1.4 %
検査の根拠
スタンフォード大学などの研究チーム(Ransohoffら)の研究で、メラノーマにかかるリスクが遺伝子MX2と関係していることが分かりました。rs45430という場所にはTとCの2種類の型があり、Tの型を持つ人はメラノーマのリスクが高い傾向があります(参考リンク2)。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図のイメージ図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | MX2 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | TERT |
よくある質問
Q1. メラノーマ(悪性黒色腫)とは何ですか?
メラノーマは、皮膚の色のもとであるメラニンを作る細胞(メラノサイト)が、がんになる皮膚がんです。皮膚がん全体の約4%ですが、皮膚がんで亡くなる人の約80%をしめます。悪性黒子型・表在拡大型・肢端黒子型・結節型の4つの型に分けられます(参考リンク1)。
Q2. メラノーマのなりやすさに関わる遺伝子は?
遺伝子MX2のDNA領域rs45430がメラノーマのなりやすさに関係しています。リスクを高めるTの型を持つほどリスクが高くなり、日本人の約97.6%がTT型またはCT型を持っています(参考リンク2、3)。
Q3. 日本人と白人では、メラノーマができやすい場所が違うのですか?
白人に多い表在拡大型は顔や胴体など日光が当たる場所にできます。日本人に多い肢端黒子型は足の裏など紫外線が当たらない場所にでき、けがや皮膚がこすれることが原因の一つと考えられています(参考リンク1)。
Q4. 遺伝子検査でメラノーマのリスクは分かりますか?
DNA領域rs45430とrs2853667の遺伝子型を調べることで、メラノーマへのなりやすさの傾向を知ることができます。遺伝子検査で前もってリスクを知ることで、早く見つけて治療することに役立ちます(参考リンク2)。
参考文献
- 参考リンク1 : 2007年, Minoru Takata, 信州医学雑誌
- 参考リンク2 : 2017 Feb., Katherine J Ransohoff, Oncotarget
- 参考リンク3 : DNA領域「rs45430」の情報 TogoVar
- 参考リンク4 : 2019 Apr., Yasuhiro Fujisawa, Cancer medicine
- 参考リンク5 : 2019 Oct., Marina Juraleviciute, Pigment cell & melanoma research
- 参考リンク6 : 2017 Mar., Katherine J Ransohoff, Oncotarget
- 参考リンク7 : 2020 May., Maria Teresa Landi, Nat Genet
- 参考リンク8 : 2011年10月, Jennifer H Barrett, Nature Genetics