気分の落ち込みやすさ
- 気分の落ち込みやすさとは、喜びや自尊心を失いやすい傾向で、日本では一生のうちにうつ病になる人が100人に6人(厚生労働省、2021年)と報告されています。
- DNA領域rs7242036のCタイプを持つ人はうつ病になりやすい傾向があることが、アムステルダム自由大学の研究でわかりました。
- 日本人のCC型保有率は6.0%で、世界平均の14.2%と比べて低い割合です。
概要
【概要】 気分が落ち込みやすい人は、喜びや自分を大切に思う気持ち(自尊心)、人の気持ちに寄りそう力(共感)、人生への関心などを失いやすい傾向があります。その結果、ストレスがたまりやすく、うつ病になりやすい傾向があります。 日本ではうつ病になる人がとても多く、100人に6人が一生のうちに経験するという調査結果があります(厚生労働省「過労死等防止対策白書」、2021年)。 うつ病の原因は複雑で、遺伝子の影響と、生まれた後に身につく「ストレスへの弱さ」の両方が関係していると考えられています。生まれた後の弱さは、人間関係や心のストレスなど、まわりの環境によって生じる可能性があります。 また、うつ病は同じ家族の中でよく見られ、家族にうつ病の人がいる場合はなりやすいことがわかっています。 うつ病になる可能性を下げる方法としては、ストレスとうまく付き合う方法を考えること、家族や友人に助けを求めること、早めに治療を受けることが挙げられます。 また、自分の遺伝子のタイプでうつ病になりやすいかどうかの傾向を、遺伝子検査で調べることも役に立ちます。
【特徴】 2019年に、オランダ・アムステルダムの大学とPublic Health Research Instituteによる共同研究が行われました。この研究では、8万人分の遺伝子の個人差(一塩基多型)が調べられました。一塩基多型とは、DNAの文字が1か所だけ人によって違っている部分のことです。 この結果から、生活への満足度、神経質さ(不安や心配を感じやすい性格)、気分の落ち込みに関係する、複数のDNA領域が見つかりました。 さらに、脳の組織や細胞で遺伝子がどのように働いているかを調べたところ、海馬体(記憶や感情に関わる脳の部分)と、脳の働きをしずめる神経細胞の一種で、働き方が違う遺伝子が、幸福感の感じ方に影響していることがわかりました(参考リンク1)。 この研究で見つかった遺伝子の個人差のひとつが「rs7242036」です。この「rs7242036」は18番目の染色体にあります。DNAの材料であるアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4つの塩基のうち、シトシン(C)がグアニン(G)に置き換わっています。また遺伝子型は、「CC型」「CG型」「GG型」の3つに分けられます。 東アジア系の人では「CC型」、「CG型」、「GG型」がそれぞれ6.76%, 38.48%, 60.84%となっており、中でも「GG型」の人がとても多くいます(参考リンク2)。
【科学的根拠】 DNA領域「rs7242036」は、遺伝子「CELF4」のすぐ近くにあります。CELF4は、神経細胞の中で遺伝子の情報を運ぶ物質にくっつくタンパク質の設計図となる遺伝子です。この遺伝子は、神経の病気やうつ病に関係する大切な遺伝子のひとつです。 2022年に中国で行われた研究では、うつ病に似た状態にしたマウスで、前頭前野(おでこの裏側にある、考えや感情をコントロールする脳の部分)のCELF4タンパク質と、その設計図を写し取った物質の量が減っていたことが報告されました。さらに、前頭前野で「CELF4」が働かないようにすると、マウスがうつ病のような行動を見せました。 このことから、遺伝子「CELF4」がマウスの“うつ病のような行動”に影響している可能性があります(参考リンク3)。
気分の落ち込みやすさとは何か
気分の落ち込みやすさとは、喜びや自尊心(自分を大切に思う気持ち)、共感、人生への関心などを失いやすい傾向のことです。この傾向が強い人はストレスがたまりやすく、うつ病になりやすい傾向があります。
うつ病になる人の割合と遺伝子の影響
日本では100人に6人が一生のうちにうつ病を経験するという調査結果があります(厚生労働省「過労死等防止対策白書」、2021年)。うつ病の原因には、次の2つが関係しています。
- 遺伝子の影響:うつ病は同じ家族の中でよく見られ、家族にうつ病の人がいるとなりやすいです。
- 環境の影響:人間関係や心のストレスなど、生まれた後の環境による影響です。
うつ病になる可能性を下げる方法
うつ病になる可能性を下げるには、次の3つの方法が役立ちます。
- ストレスとの付き合い方:ストレスとうまく付き合う方法を身につけます。
- 周りの支え:家族や友人に助けを求める
- 早めの治療:症状が出たら早めに治療を受けます。
また、遺伝子検査で自分の遺伝子のタイプによるうつ病へのなりやすさの傾向を調べることも、予防に役立ちます。
遺伝子の影響と環境の影響の比較
| 比べる項目 | 遺伝子の影響 | 環境の影響 |
|---|---|---|
| 原因 | DNA領域のちがい(rs7242036など) | 人間関係や心のストレス |
| 影響する範囲 | 家族の中で似た傾向が見られます。 | 一人ひとりの環境によって変わります。 |
| 対策 | 遺伝子検査で傾向を知ります。 | ストレスとの付き合い方・周りの支え |
| 自分で変えられるか | 変えられませんが、知ることはできます。 | 対処法を身につけることで軽くできます。 |
遺伝子と気分の落ち込みやすさの関係
DNA領域rs7242036と気分の落ち込みやすさの関係
2019年にアムステルダム自由大学のBaselmansらとPublic Health Research Instituteの共同研究により、気分の落ち込みやすさがDNA領域rs7242036と関係していることがわかりました。
- この研究では8万人分の遺伝子の個人差(一塩基多型)が調べられました。
- 生活への満足度、神経質さ(不安を感じやすい性格)、気分の落ち込みに関係する複数のDNA領域が見つかりました。
- 海馬体(記憶や感情に関わる脳の部分)と、脳の働きをしずめる神経細胞の一種で働く遺伝子が、幸福感の感じ方に影響していることがわかりました(参考リンク1)。
DNA領域rs7242036の特徴
- 染色体18番目にあります。
- DNAの材料であるシトシン(C)がグアニン(G)に置き換わっています。
- 遺伝子型は「CC型」「CG型」「GG型」の3つに分けられます。
- Cタイプを持つ遺伝子型(CC型・CG型)の人はうつ病になりやすい傾向があります。
日本人と世界の遺伝子型の割合の比較(rs7242036)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| CC型 | 6.0% | 14.2% |
| CG型 | 37.0% | 46.9% |
| GG型 | 56.9% | 38.7% |
日本人でCタイプを持つ人(CC型+CG型)の割合は43.0%で、世界平均の61.1%と比べて低い割合です。一方、GG型の割合は日本人が56.9%で、世界平均の38.7%の約1.5倍高く、日本人の遺伝子の特徴を表しています。
DNA領域rs2279681と気分の落ち込みやすさの関係
rs7242036に加え、rs2279681も、気分の落ち込みやすさに関わるDNA領域として見つかっています。
日本人と世界の遺伝子型の割合の比較(rs2279681)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| CC型 | 35.7% | 44.2% |
| CG型 | 48.0% | 44.5% |
| GG型 | 16.1% | 11.1% |
CELF4遺伝子のはたらき
CELF4遺伝子がうつ病に与える影響
DNA領域「rs7242036」は、神経細胞の中で遺伝子の情報を運ぶ物質にくっつくタンパク質の設計図となる遺伝子「CELF4」のすぐ近くにあります。この遺伝子は、神経の病気やうつ病に関係する大切な遺伝子のひとつです。
- 2022年に中国で行われた研究で、うつ病に似た状態にしたマウスの前頭前野(考えや感情をコントロールする脳の部分)でCELF4タンパク質と、その設計図を写し取った物質の量が減っていたことが報告されました。
- 前頭前野で「CELF4」が働かないようにすると、マウスがうつ病のような行動を見せました。
- このことから、遺伝子「CELF4」がうつ病のような行動に影響している可能性があります(参考リンク3)。
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:気分の落ち込みやすさ
気分の落ち込みやすさに最も強く影響するDNA領域は、rs7242036です。 日本での遺伝子型の割合は下のとおりです。
- CC
6.0 % - CG
37.0 % - GG
56.9 %
ほかに、気分の落ち込みやすさに関わるDNA領域としてrs2279681があります。 日本での遺伝子型の割合は下のとおりです。
- CC
35.7 % - CG
48.0 % - GG
16.1 %
検査の根拠
アムステルダム自由大学のBaselmansらの研究により、うつ病へのなりやすさが遺伝子と関係していることがわかりました。人のDNAには「rs7242036」という場所があり、そこにはCとGの2種類のタイプがあります。Cタイプを持つ人は、うつ病になりやすい傾向があることがわかりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図(模式図)
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関連する遺伝子
| 関連する遺伝子 | MIR4318 |
|---|---|
| 関連する遺伝子 | SHISA4 |
よくある質問
Q1. 気分の落ち込みやすさとは何ですか?
気分の落ち込みやすさとは、喜びや自尊心(自分を大切に思う気持ち)、共感、人生への関心などを失いやすい傾向のことです。この傾向が強い人はストレスがたまりやすく、うつ病になりやすい傾向があります。日本では100人に6人が一生のうちにうつ病を経験するという調査結果があります(厚生労働省「過労死等防止対策白書」、2021年)。
Q2. 気分の落ち込みやすさは遺伝子と関係していますか?
はい。2019年のアムステルダム自由大学のBaselmansらとPublic Health Research Instituteの共同研究により、DNA領域rs7242036が気分の落ち込みやすさと関係していることがわかっています。8万人分の遺伝子の個人差(一塩基多型)を調べた結果、Cタイプを持つ遺伝子型の人はうつ病になりやすい傾向があることがわかりました。
Q3. 気分の落ち込みやすさに関わる遺伝子型(rs7242036)は、日本人ではどのような割合ですか?
日本人のrs7242036の遺伝子型の割合はCC型6.0%、CG型37.0%、GG型56.9%です。世界全体ではCC型14.2%、CG型46.9%、GG型38.7%で、日本人はGG型の割合が世界平均の約1.5倍高いという特徴があります。
Q4. CELF4遺伝子はうつ病とどのように関係していますか?
CELF4は、神経細胞の中で遺伝子の情報を運ぶ物質にくっつくタンパク質の設計図となる遺伝子で、DNA領域rs7242036のすぐ近くにあります。2022年の中国の研究で、うつ病に似た状態にしたマウスの前頭前野(考えや感情をコントロールする脳の部分)でCELF4の働きが弱まっていたこと、そしてCELF4が働かないようにするとうつ病のような行動を見せることが報告されました。
Q5. 気分の落ち込みやすさを防ぐ方法は?
次の3つの方法が役立ちます。①ストレスとうまく付き合う方法を身につけること、②家族や友人に助けを求めること、③早めに治療を受けること。また、遺伝子検査で自分の遺伝子のタイプによるうつ病へのなりやすさの傾向を調べることも、予防に役立ちます。