発達性読み書き障害
- 発達性読み書き障害(ディスレクシア)は、知的能力に問題がないにもかかわらず文字の読み書きに困難を示す学習障害であり、遺伝的要因と環境的要因がそれぞれ約50%関与する
- BTG3-AS1遺伝子付近のDNA領域rs2101523が読字力と関連しており、TT型は読字が苦手な傾向がある
- 日本人の91.5%がCC型を保有し、世界平均の48.2%と比較して読字力に影響しにくい遺伝子型の割合が高い
概要 言語能力は、相手が話す内容を理解したり、文章を読み取とったり、コミュニケーションをとる上で大切な力です。 言語能力は、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4つに分けられます。 その中でも「読む」能力、すなわち読字力は、教科学習の成績に特に影響することが指摘されており、文系科目だけでなく、その他の教科を学習する上でも重要なスキルです。 また、将来的に発表会や会議などの場面で内容をスラスラと音読できたり、資格の勉強をしたりする際に役立ちます。 言語能力は遺伝と環境によって決まると考えられており、大阪大学大学院医学系研究科附属ツインリサーチセンターの調べによると遺伝的要因が約50%、環境的要因が約50%関与しているとされています。(参考リンク1) 近年では、言語能力に関わる遺伝子が複数発見されています。 今回はその中でも、読字力と関連していたBTG3AS1という遺伝子付近のある部位に関して説明します。 理論的根拠 BTG3AS1遺伝子に関するドイツのマックス・プランク精神医学研究所の共同研究により、特定のDNA領域が単語の読字が苦手な人が多い傾向にあることが明らかになりました。(参考リンク2) このDNA領域は「rs2101523」と呼ばれ、3つの遺伝子型があります。TTタイプの遺伝子型を持つ人は、読字が苦手な傾向があり、CTタイプの人はやや苦手な傾向があることがわかっています。 しかし、日本人の遺伝子型の95.8%はCCタイプであり、読字力に影響しにくいとされる遺伝子を持っています。(参考リンク3) ただし、遺伝子タイプに限らず、読字力は教育や環境によっても大きく影響を受けることがわかっています。読字力を伸ばすためには、自分で工夫することが必要です。 例えば、文の区切りに印をつけて視覚的に見やすくすることや、声に出して読むことが挙げられます。また、電子教科書を使い、音読の練習をすることも有効です。 遺伝子タイプに関わらず、工夫や努力によって読字力を伸ばすことができます。遺伝子検査で遺伝子タイプを調べることは、才能の開花や早期対策に役立つかもしれません。 作用機序 BTG3AS1遺伝子は、人間の24番染色体の中で21番染色体に位置しています。BTG3AS1は、精巣や大腸などのあらゆる臓器に発現しており、特に出生前の脳に多く発現することが知られています。(参考リンク4) BTG3AS1の機能や読み方のメカニズムはまだ解明されていませんが、BTG3AS1が細胞周期を妨げる抗増殖遺伝子であることが分かっています。 また、出生前の脳に多く発現していることから、BTG3AS1付近に存在するrs2101523の遺伝子タイプによって、脳の発達(特に言語中枢の存在する前頭葉や側頭葉)の程度に影響している可能性があります。 このことから、「rs2101523」は読字力と深く関係するDNA領域の一つとして注目を集めています。
発達性読み書き障害(ディスレクシア)とは何か
発達性読み書き障害(ディスレクシア)とは、知的能力や視覚・聴覚に問題がないにもかかわらず、文字の読み書きに困難を示す学習障害の一種です。言語能力は「聞く」「話す」「読む」「書く」の4つに分けられ、その中でも「読む」能力(読字力)は教科学習の成績に直接影響します。
言語能力と読字力の重要性
読字力は文系科目だけでなく、すべての教科の学習において不可欠なスキルです。将来的にも発表会や会議での音読、資格試験の学習などで欠かせない能力です。
- 教科学習:読字力は全教科の成績に影響する基礎スキル
- 社会生活:発表・会議・資格試験など幅広い場面で必要
- コミュニケーション:相手の話の理解や文章読解に直結する
遺伝と環境の影響割合
大阪大学大学院医学系研究科附属ツインリサーチセンターの研究によると、言語能力の決定要因は以下のとおりです。
| 要因 | 影響割合 | 具体例 |
|---|---|---|
| 遺伝的要因 | 約50% | BTG3-AS1遺伝子などの遺伝子変異 |
| 環境的要因 | 約50% | 教育環境・読書習慣・トレーニング |
遺伝子と発達性読み書き障害の関連
DNA領域rs2101523と読字力の関係
ドイツのマックス・プランク精神医学研究所の共同研究(Gialluisi, Alessandro, 2019年、Translational Psychiatry掲載)により、BTG3-AS1遺伝子付近のDNA領域rs2101523が読字力と関連していることが明らかになりました。
- rs2101523にはCC・CT・TTの3つの遺伝子型が存在
- TT型の人は読字が苦手な傾向がある
- CT型の人はやや読字が苦手な傾向がある
- CC型の人は読字力に影響しにくい
日本人と世界における遺伝子型分布の比較(rs2101523)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| CC型 | 91.5% | 48.2% |
| CT型 | 8.2% | 42.4% |
| TT型 | 0.1% | 9.3% |
日本人のCC型保有率は91.5%であり、世界平均の48.2%と比較して約1.9倍高い割合です。一方、読字が苦手な傾向のあるTT型の割合は日本人が0.1%と世界平均の9.3%より大幅に低く、日本人集団の遺伝的特徴を反映しています。
読字力を改善する方法とは
遺伝子タイプに関わらず、読字力は教育や環境によって改善できます。以下の具体的な方法が有効です。
- 視覚的工夫:文の区切りに印をつけて見やすくする
- 音読練習:声に出して読むことで読字力を強化する
- 電子教科書の活用:音読機能を使った反復トレーニング
遺伝子検査で自身の遺伝子タイプを把握することで、才能の早期発見や適切な対策に活用できます。
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:発達性読み書き障害
発達性読み書き障害 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs2101523です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- CC
91.5 % - CT
8.2 % - TT
0.1 %
検査の根拠
ドイツのマックス・プランク精神医学研究所の共同研究により、BTG3-AS1遺伝子付近のDNA領域rs2101523が読字力と関連していることが明らかになりました。rs2101523にはCC・CT・TTの3つの遺伝子型が存在し、TT型は読字が苦手な傾向があり、CT型はやや苦手な傾向があります。日本人の91.5%はCC型であり、読字力に影響しにくい遺伝子を持っています。
BTG3-AS1遺伝子の作用機序
BTG3-AS1遺伝子は21番染色体に位置し、精巣や大腸などのあらゆる臓器に発現しています。特に出生前の脳に高発現することが知られており、細胞周期を妨げる抗増殖遺伝子としての機能を持ちます。rs2101523の遺伝子タイプにより、脳の発達(特に言語中枢が存在する前頭葉や側頭葉)の程度に影響している可能性があります。
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | BTG3-AS1 |
|---|
よくある質問(FAQ)
Q1. 発達性読み書き障害(ディスレクシア)とは何ですか?
発達性読み書き障害(ディスレクシア)とは、知的能力に問題がないにもかかわらず、文字の読み書きに困難を示す学習障害の一種です。言語能力は遺伝的要因が約50%、環境的要因が約50%関与しており、「読む」能力(読字力)は全教科の学習に影響する重要なスキルです。
Q2. 発達性読み書き障害に関連する遺伝子は何ですか?
ドイツのマックス・プランク精神医学研究所の共同研究(Gialluisi, Alessandro, 2019年、Translational Psychiatry)により、BTG3-AS1遺伝子付近のDNA領域rs2101523が読字力と関連していることが判明しています。TT型の人は読字が苦手な傾向があり、CT型の人はやや苦手な傾向があります。CC型は読字力に影響しにくいとされています。
Q3. 日本人における発達性読み書き障害関連の遺伝子型分布は?
日本人におけるrs2101523の遺伝子型分布はCC型91.5%、CT型8.2%、TT型0.1%です。世界全体ではCC型48.2%、CT型42.4%、TT型9.3%であり、日本人はCC型の割合が世界平均より約1.9倍高い特徴があります。
Q4. 読字力を改善する方法はありますか?
遺伝子タイプに関わらず、読字力は教育や環境によって改善できます。具体的には、文の区切りに印をつける視覚的工夫、声に出して読む音読練習、電子教科書を活用した音読トレーニングが有効です。遺伝子検査で遺伝子タイプを把握することで、才能の早期発見や適切な対策に活用できます。
参考文献
- 参考リンク1 : 「言語脳活動の遺伝と環境の影響度」の情報 Research at Osaka
- 参考リンク2 : 2019 Feb., Gialluisi, Alessandro, Translational psychiatry.
- 参考リンク3 : DNA 領域「rs2101523」の情報 NIH
- 参考リンク4 : 遺伝子「BTG3-AS1」の情報 Ensembl
- 参考リンク5 : 2019 Feb., Alessandro Gialluisi, Transl Psychiatry