大腿ヘルニア
- 大腿ヘルニアはおなかの組織が大腿管に飛び出す病気で、特に女性に起こりやすく、絞扼が起こる割合が約40%と高いです。
- DNA領域rs3791675のCを持つ人は大腿ヘルニアになりやすい傾向があることがWeiらの研究で判明しました。
- 日本人のCを持つ人(CC+CT)の割合は47.2%で、世界平均の93.2%と比べて低い割合です。
概要
【疾患の概要】 大腿ヘルニアは、おなかの中の組織の一部が、腹筋の壁の弱い部分を押し広げて大腿管(太ももの付け根にある通り道)に飛び出してしまうヘルニアの一種です。 この場所は、足の付け根(鼠径部)にある鼠径靭帯のすぐ下にあり、太ももの動脈・静脈・神経がおなかから脚へと通っています。
【症状と特徴】 大腿ヘルニアは鼠径ヘルニアほど多くはありませんが、特に女性に多く見られます。 これは、女性の骨盤が広いためです。 主な症状は、足の付け根近くの太ももの上の方にできるこぶや膨らみです。 このこぶは、立ち上がる、せきをする、かがむ、重い物を持ち上げるなど、おなかに力がかかったときに目立ちやすくなります。 ヘルニアは押し戻せる(還納可能)場合もあれば、大腿管にはまり込んで戻らなくなる(嵌入)こともあります。 ヘルニアの部分に違和感や痛みが出ることがあり、動き方によっては悪化することがあります。
【治療と注意点】 飛び出した組織がはさまれて血が流れなくなる(絞扼)と、激しい痛みや吐き気、嘔吐が起こり、命に関わることもあるため、すぐに病院での治療が必要です。 大腿ヘルニアは自然には治らず、重い合併症が起こりやすいため、ふつうは手術が必要です。
【遺伝子の影響】 ノースショア大学医療システムのWeiらの研究で、大腿ヘルニアのかかりやすさがrs3791675というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはCC、CT、TTの3つの遺伝子型があり、Cを持つ遺伝子型の人は、大腿ヘルニアになりやすい傾向があることが分かりました。
大腿ヘルニアとは何か
大腿ヘルニアとは、おなかの中の組織(腸や脂肪)が、おなかの壁の弱い部分から大腿管(太ももの付け根にある通り道)に飛び出してしまう病気です。足の付け根にある鼠径靭帯のすぐ下の大腿管から飛び出し、自然には治らないため手術が必要です。
大腿ヘルニアの主な症状
大腿ヘルニアの症状としては、足の付け根近くの太ももの上の方にできるこぶや膨らみがよく見られます。症状の進み方は以下のとおりです。
- 初期段階:立つ・せきをする・前かがみになる・重い物を持ち上げるときにこぶが目立ちます。
- 嵌入(かんにゅう):ヘルニアが大腿管にはまり込み、押し戻せなくなる状態です。
- 絞扼(こうやく):組織への血の流れが止まり、激しい痛み・吐き気・嘔吐が起こる → 緊急手術が必要です。
大腿ヘルニアが女性に多い理由
大腿ヘルニアは女性がかかる割合が男性の約4倍です。女性は骨盤が広いため大腿管のすき間が大きく、組織が飛び出しやすいつくりになっています。特に妊娠・出産経験のある女性や40歳以上の女性はなりやすさが高まります。
大腿ヘルニアと鼠径ヘルニアの違い
| 比較項目 | 大腿ヘルニア | 鼠径ヘルニア |
|---|---|---|
| 突出部位 | 鼠径靭帯の下(大腿管) | 鼠径靭帯の上(鼠径管) |
| かかりやすい性別 | 女性に多い(男女比約1:4) | 男性に多い(男女比約9:1) |
| 起こる割合 | ヘルニア全体の約2〜4% | ヘルニア全体の約75% |
| 絞扼が起こる割合 | 約40%(高い) | 約1〜3%(低い) |
| 治療の緊急性 | 高い(早めの手術がすすめられる) | 経過観察も可能 |
大腿ヘルニアの治療法
大腿ヘルニアは自然には治らないため、手術が根本から治す唯一の方法です。主な手術方法は以下の2種類です。
- 腹腔鏡手術(おなかに小さな穴を開けてカメラで見ながら行う手術):小さな切り口からメッシュ(網状のシート)を使って修復します。回復が早く、傷あとが小さいです。
- 開腹手術:おなかを直接切って修復します。絞扼したヘルニアの緊急手術で選ばれます。
遺伝子と大腿ヘルニアの関連
DNA領域rs3791675と大腿ヘルニアの関係
ノースショア大学医療システムのWeiらの研究で、大腿ヘルニアのかかりやすさがDNA領域rs3791675と関係していることが分かりました。
- rs3791675にはCC・CT・TTの3つの遺伝子型が存在します。
- Cを持つ遺伝子型(CC型・CT型)の人は大腿ヘルニアになりやすい傾向があります。
日本人と世界における遺伝子型分布の比較(rs3791675)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| CC型 | 7.5% | 54.8% |
| CT型 | 39.7% | 38.4% |
| TT型 | 52.7% | 6.7% |
日本人のCを持つ人の割合(CC+CT)は47.2%であり、世界平均の93.2%と比べて低い割合です。そのため、日本人は大腿ヘルニアになりやすい遺伝子のタイプを持つ人が比較的少ない可能性があります。
日本人と世界における遺伝子型分布の比較(rs1346786)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| CC型 | 4.0% | 46.0% |
| CT型 | 32.2% | 43.6% |
| TT型 | 63.6% | 10.3% |
検査の科学的な根拠
代表的なDNA領域:大腿ヘルニア
大腿ヘルニアに最も強く関係するDNA領域は、rs3791675です。 日本での遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- CC
7.5 % - CT
39.7 % - TT
52.7 %
ほかに、大腿ヘルニアに関係するDNA領域としてrs1346786があります。 日本での遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- CC
4.0 % - CT
32.2 % - TT
63.6 %
検査の根拠
ノースショア大学医療システムのWeiらの研究で、大腿ヘルニアのかかりやすさが遺伝子と関係していることが分かりました。人のDNAにはrs3791675という場所があり、そこにはCとTの2種類のタイプがあります。Cタイプを持つ人は、大腿ヘルニアになりやすい傾向があることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | EFEMP1 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | EFEMP1 |
よくある質問
Q1. 大腿ヘルニアとは何ですか?
大腿ヘルニアとは、おなかの中の組織(腸や脂肪)が、おなかの壁の弱い部分から大腿管(太ももの付け根にある通り道)に飛び出してしまう病気です。足の付け根にある鼠径靭帯のすぐ下で起こり、鼠径ヘルニアより起こる回数は少ないものの、絞扼(はさまれて血が流れなくなること)が起こる割合が約40%と高く、緊急手術が必要になることが多い病気です。
Q2. 大腿ヘルニアはなぜ女性に多いのですか?
女性の骨盤は男性より幅が広いつくりのため、大腿管のすき間が大きくなっています。そのため組織が飛び出しやすく、大腿ヘルニアの男女比は約1:4で、女性がとても多くなっています。妊娠・出産でおなかの壁に負担がかかることも、なりやすさを高める原因です。
Q3. 大腿ヘルニアは遺伝子と関連していますか?
はい。ノースショア大学医療システムのWeiらの研究で、DNA領域rs3791675が大腿ヘルニアのかかりやすさと関係していることが分かっています。rs3791675にはCC・CT・TTの3つの遺伝子型があり、Cを持つ遺伝子型の人はなりやすい傾向があります。
Q4. 大腿ヘルニアと鼠径ヘルニアの違いは?
大腿ヘルニアは鼠径靭帯の下(大腿管)から飛び出す病気で、鼠径ヘルニアは鼠径靭帯の上の方から飛び出します。大腿ヘルニアは絞扼が起こる割合が約40%と高く、女性に多い(男女比約1:4)のが特徴です。
Q5. 大腿ヘルニアの遺伝子型(rs3791675)の日本人における分布は?
日本人におけるrs3791675の遺伝子型の分布はCC型7.5%、CT型39.7%、TT型52.7%です。世界全体ではCC型54.8%、CT型38.4%、TT型6.7%で、日本人はCを持つ人の割合が世界平均より低いのが特徴です。
参考文献
- 参考リンク1 : 2022 Feb., J Wei, Hernia