溶血性貧血
- 溶血性貧血は赤血球がふつうより早く壊される血液の病気で、レチクロサイトの数が急に増えることが診断の目安となります。
- DNA領域rs118035855のAのタイプを持つ人は発症リスクが高い傾向にあることがケンブリッジ大学の研究で判明しました。
- 健康な大人のレチクロサイトの割合は0.5%〜2.5%ですが、溶血性貧血では急に増えます。
概要
【疾患の概要】 レチクロサイト数の測定は、血液の中にある「できたばかりの若い赤血球」の数を調べる検査です。
【症状と特徴】 この検査は、主に溶血性貧血などの血液の病気を見つけるために大切です。 健康な大人では、ふつう赤血球全体の0.5%から2.5%がレチクロサイトです。 ところが、溶血性貧血ではこの割合が急に増えることがあります。 溶血性貧血は、赤血球が早いペースで壊されてしまう病気です。 このとき体は新しい赤血球をどんどん作ろうとするため、レチクロサイトの数が増えます。 そのため、レチクロサイトの数が多いことは、溶血性貧血の可能性を知る手がかりになります。 貧血の症状がある人でレチクロサイトの数が多い場合は、赤血球が壊され続けている(溶血が進んでいる)可能性があります。
【治療と注意点】 ただし、なぜ赤血球が壊されているのかという本当の原因を知るには、ほかの検査も必要になることがあります。 レチクロサイトの数は、貧血に対して体がどう反応しているかを知る大切な情報ですが、診断をはっきりさせるにはほかの検査も必要です。
【遺伝子の影響】 ケンブリッジ大学のVuckovicらの研究により、溶血性貧血のかかりやすさがrs118035855というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはGG,GA,AAの3つの遺伝子型があり、Aを持つ遺伝子型の人は、溶血性貧血のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
溶血性貧血とは何か
溶血性貧血は、赤血球がふつうの寿命(約120日)より早く壊される(溶血する)ことで起こる貧血です。赤血球が壊される速さが、骨髄で新しく作られる速さを上回ると、血液中の赤血球が減り、体に酸素を運ぶ力が弱くなります。
溶血性貧血の原因とメカニズム
溶血性貧血の原因は、遺伝性(体の内側の原因)と後天性(体の外側の原因)の2つに大きく分けられます。
- 遺伝性溶血性貧血:赤血球の膜の異常(球状赤血球症)、ヘモグロビン(酸素を運ぶたんぱく質)の異常(鎌状赤血球症・サラセミア)、酵素の異常(G6PD欠損症)があります。
- 後天性溶血性貧血:自己免疫性溶血性貧血(自分の免疫が赤血球を攻撃するもの)、薬が原因のもの、機械的な溶血(人工弁などによるもの)、感染症によるものがあります。
レチクロサイト検査とは何か
レチクロサイト(網赤血球)は、骨髄から血液中に出てきたばかりの若い赤血球です。レチクロサイトの数を測る検査は、溶血性貧血の診断に欠かせない検査です。
- 健康な大人:赤血球全体の0.5%〜2.5%がレチクロサイトです。
- 溶血性貧血:赤血球が早いペースで壊されるのを補うため、骨髄がたくさん赤血球を作り、レチクロサイトの数が大きく増加
溶血性貧血の主な症状
症状は、溶血の程度や速さによって変わります。
- 続く疲れやすさ・だるさ
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
- 脾腫(脾臓が大きくなる)
- 黒っぽい色の尿(ヘモグロビン尿)
- 動悸・息切れ
遺伝性と後天性の違い
| 比較項目 | 遺伝性溶血性貧血 | 後天性溶血性貧血 |
|---|---|---|
| 原因 | 赤血球そのものの遺伝子の異常 | 体の外からの原因による赤血球の破壊 |
| 発症時期 | 子どものころ〜若いころ | 全年齢 |
| 代表疾患 | 球状赤血球症・鎌状赤血球症 | 自己免疫性溶血性貧血 |
| 家族歴 | あり | ふつうはなし |
| 治療 | 脾臓の摘出・輸血 | 免疫の働きを抑える治療・原因を取り除きます。 |
診断方法
以下の血液検査で診断されます。
- レチクロサイトの数の測定
- 間接ビリルビン値・乳酸脱水素酵素(細胞が壊れると増える酵素)の値の上昇を確認します。
- ハプトグロビン(壊れた赤血球の成分と結びつくたんぱく質)の値の低下を確認
- 直接クームス試験(自己免疫性かどうかを見分ける検査)
- 血液を薄く広げて顕微鏡で見る検査(末梢血塗抹標本検査)
遺伝子と溶血性貧血の関連
DNA領域rs118035855と発症リスクの関係
ケンブリッジ大学のVuckovicらの研究(2020年)により、DNA領域rs118035855が溶血性貧血のかかりやすさと関係していることが分かりました。
- rs118035855にはGG・GA・AAの3つの遺伝子型が存在します。
- Aのタイプを持つ遺伝子型の人は、溶血性貧血のリスクが高い傾向があります。
日本人における遺伝子型分布(rs118035855)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| GG型 | 99.9% | 98.0% |
| GA型 | 0.1%以下 | 1.9% |
| AA型 | 0.1%以下 | 0.1%以下 |
検査の考え方
代表的なDNA領域:溶血性貧血
溶血性貧血に最も強く影響するDNA領域は、rs118035855です。 日本における各遺伝子型の人の割合は下記のとおりです。
- GG
99.9 % - GA
0.1%以下 - AA
0.1%以下
ほかに、溶血性貧血に関わるDNA領域としてrs73225807があります。 日本における各遺伝子型の人の割合は下記のとおりです。
- TT
99.9 % - TA
0.1%以下 - AA
0.1%以下
ほかに、溶血性貧血に関わるDNA領域としてrs9533095があります。 日本における各遺伝子型の人の割合は下記のとおりです。
- GG
86.0 % - GT
13.3 % - TT
0.5 %
検査の根拠
ケンブリッジ大学のVuckovicらの研究により、溶血性貧血のかかりやすさが遺伝子と関係していることが分かりました。人のDNAには、rs118035855という領域があり、その領域にはGとAの2種類のタイプがあります。Aのタイプを持つ人は、溶血性貧血のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | GREB1L |
|---|---|
| 関連遺伝子 | RNU6-394P |
| 関連遺伝子 | LINC02341 |
よくある質問
Q1. 溶血性貧血とは何ですか?
溶血性貧血は、赤血球がふつうの寿命(約120日)より早く壊される(溶血する)ことで起こる貧血です。赤血球が壊される速さが、骨髄で作られる速さを上回ると、体に酸素を運ぶ力が弱くなり、疲れやすさ・黄疸・脾腫などの症状が出ます。
Q2. レチクロサイト数と溶血性貧血の関係は?
レチクロサイト(網赤血球)は若い赤血球で、健康な大人では赤血球全体の0.5%〜2.5%を占めます。溶血性貧血では、壊された分を補おうとして骨髄(赤血球を作る場所)がたくさん赤血球を作るため、レチクロサイトの数が大きく増加します。レチクロサイトの数が多いことは、赤血球が壊され続けていることを知る目安です。
Q3. 溶血性貧血の原因は何ですか?
原因は遺伝性(赤血球膜異常・ヘモグロビン異常・酵素異常)と後天性(自己免疫性・薬が原因・機械的な溶血)に分かれます。DNA領域rs118035855にAのタイプを持つ人はリスクが高い傾向にあります。
Q4. 遺伝子検査で溶血性貧血のリスクは分かりますか?
DNA領域rs118035855の遺伝子型を調べることで、溶血性貧血の発症リスクの傾向を知ることができます。Aのタイプを持つ遺伝子型の人はリスクが高い傾向にあることが、ケンブリッジ大学のVuckovicらの研究で分かっています。
参考文献
- 参考リンク1 : 2020 Sep., Dragana Vuckovic, Cell