多発性慢性疼痛
- 多発性慢性疼痛とは、身体の複数部位に3ヶ月以上痛みが続く状態で、睡眠障害・食欲減退・抑うつなどの二次症状を引き起こす
- 13番染色体上のDNA領域rs1443914のT型変異を持つ人は、神経伝達物質の異常によりリスクが高い傾向にあることが38万人規模の研究で判明
- 日本人のT型変異(TT+TC)保有率は71.0%で、セロトニン・ノルアドレナリンの抑制による痛みの過敏化が発症メカニズム
概要 肩や腰、関節などの痛みに悩んでいませんか?それが「慢性疼痛」と呼ばれる症状であります。そして、腕・脚・背中・腰・首など、身体の広い範囲に慢性疼痛が存在する状態は多発性慢性疼痛と呼ばれています。単一のケガや炎症が原因で生じる痛みとは異なり、明確な原因が特定できない場合も多いことが特徴です。場合によって、痛みが3ヶ月以上続く状態となります(参考リンク1)。 この症状は、睡眠障害や食欲減退、抑うつなどの原因にもなりえます。慢性疼痛の原因は、骨折や手術、関節炎、ストレスなど様々です。 また、不安感が続くことで脳が過敏になり、けがが治っていても痛みが取れない可能性があります。驚くべきことに、慢性疼痛の起こりやすさに遺伝的要因が関与していると言われています(参考リンク2)。 もし慢性的な体の痛みにお悩みであれば、一度遺伝子検査で体質を調べてみませんか? 2. 理論的根拠 神経伝達に起因する慢性疼痛の原因遺伝子の一つとして見つかったのが13番染色体に存在する「AL450423.1」という遺伝子で、この遺伝子に属する様々な遺伝子タイプの一つが「rs1443914」と呼ばれるDNA領域です(参考リンク2)。 この領域は38万人のイギリス人を対象に遺伝的変異を調べた解析で、慢性疼痛に関連して変異があるDNA領域として発見されました(参考リンク2)。 「AL450423.1」は自身がタンパク質になる機能を持たない遺伝子ですが、神経伝達に関連した遺伝子の発現を調節する機能を持ちます。 この遺伝子の「rs1443914」の領域に変異があると、神経伝達に関わる遺伝子の発現が障害され慢性疼痛になりやすいことがわかりました。 「rs1443914」には「TT型」, 「TC型」,「CC型」の3つの遺伝子型があります。日本人のタイプ別割合は 23.1%、49.9%、27.0%になっています(参考リンク3)。 Tを含む変異型では神経伝達に関わる遺伝子が抑制され慢性疼痛を起こしやすく、特に「TT型」はリスクがほかの型よりも高くなる可能性があります。 また「TT型」を持つ人は、うつ病、PTSDなどの神経疾患や、免疫系の疾患、ガンにもなりやすいとの報告があります(参考リンク4)。 3. 作用機序 慢性疼痛は、感覚神経において、遺伝子の発現が障害され、正常な神経伝達が行えなくなっている状態です。特に、痛みを和らげる役割の神経伝達物質が減少することやうまく働かなくなることで痛みを過剰に感じやすくなります。 DNA領域「rs1443914」に変異があると、遺伝子「AL450423.1」が神経伝達に関係した遺伝子の発現を抑制し、セロトニンやノルアドレナリンの作用を抑え、痛みが感じやすくなるとされます。 また、「慢性疼痛」が進行すると、うつ病などの神経疾患になりやすいと考えられます。 これは、セロトニンが不安を和らげ、ノルアドレナリンが意欲を高める機能を持つため、これらが作用しなくなることで不安や無気力になるためです(参考リンク5)。 慢性疼痛の原因の多くが心理的要因であることから、医療機関で適切な治療を受けることは有効な手段であるといえます。 また、この遺伝子に変異がある方は、他の精神疾患のリスクも高くなるため、不安なことは溜め込まず、相談して解決することが重要になってきます。
多発性慢性疼痛とは何か
多発性慢性疼痛とは、腕・脚・背中・腰・首など身体の広い範囲に3ヶ月以上にわたって慢性的な痛みが持続する状態です。単一のケガや炎症が原因で生じる痛みとは異なり、明確な原因が特定できないケースが多い点が特徴です。
慢性疼痛と急性疼痛の違い
痛みには「急性疼痛」と「慢性疼痛」の2種類があり、それぞれ特徴が異なります。
| 比較項目 | 急性疼痛 | 慢性疼痛 |
|---|---|---|
| 持続期間 | 数日〜数週間 | 3ヶ月以上 |
| 原因 | 外傷・手術・炎症など明確 | 原因不明のケースが多い |
| 痛みの範囲 | 損傷部位に限定 | 複数部位に広がることがある |
| 治療反応 | 原因除去で改善 | 治療が長期化する傾向 |
多発性慢性疼痛がもたらす影響
多発性慢性疼痛は身体的な痛みだけでなく、生活全般に影響を及ぼします。
- 睡眠障害:痛みにより入眠困難・中途覚醒が発生し、睡眠の質が低下する
- 食欲減退:持続的な痛みによるストレスで食欲が低下する
- 抑うつ症状:長期間の痛みが精神的な負担となり、うつ病のリスクが上昇する
- 日常生活の制限:動作や活動が制限され、QOL(生活の質)が著しく低下する
多発性慢性疼痛の主な原因
慢性疼痛の原因は多岐にわたり、以下の要素が複合的に関与します。
- 身体的要因:骨折・手術後の後遺症・関節炎・椎間板ヘルニアなど
- 心理的要因:不安やストレスの蓄積により脳が過敏化し、ケガが治癒しても痛みが持続する
- 遺伝的要因:DNA領域rs1443914の変異が慢性疼痛の発症リスクに関与する
遺伝子と多発性慢性疼痛の関連
DNA領域rs1443914と慢性疼痛の関係
38万人のイギリス人を対象とした大規模ゲノム解析により、13番染色体上の遺伝子「AL450423.1」に属するDNA領域rs1443914が多発性慢性疼痛のリスクと強く関連することが明らかになりました(参考リンク2)。
- rs1443914にはTT型・TC型・CC型の3つの遺伝子型が存在
- T型変異を持つ遺伝子型(TT型・TC型)の人は慢性疼痛のリスクが高い傾向
- 特にTT型は他の型と比較してリスクが最も高い
日本人と世界における遺伝子型分布の比較(rs1443914)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| TT型(高リスク) | 21.3% | 21.4% |
| TC型(中リスク) | 49.7% | 49.7% |
| CC型(低リスク) | 28.9% | 28.8% |
日本人のT型変異保有率(TT+TC)は71.0%であり、世界平均の71.1%とほぼ同等の分布です。約7割の日本人が慢性疼痛の遺伝的リスク因子を保有していることになります。
なぜ遺伝子変異が慢性疼痛を引き起こすのか
遺伝子「AL450423.1」は自身がタンパク質になる機能を持たないノンコーディングRNAですが、神経伝達に関連した遺伝子の発現を調節する重要な機能を持っています。
DNA領域rs1443914に変異があると、以下のメカニズムで慢性疼痛が発生します。
- ステップ1:rs1443914の変異が遺伝子「AL450423.1」の機能に影響を与える
- ステップ2:神経伝達関連遺伝子の発現が抑制される
- ステップ3:セロトニン(痛みを和らげる神経伝達物質)の分泌が減少する
- ステップ4:ノルアドレナリン(意欲を高める神経伝達物質)の作用が低下する
- ステップ5:痛みの抑制機能が低下し、痛みを過剰に感じやすくなる
TT型が持つ追加リスク
TT型を持つ人は、慢性疼痛に加えて以下の疾患リスクも高まるとの研究報告があります(参考リンク4)。
- 神経疾患:うつ病、PTSD(心的外傷後ストレス障害)
- 免疫系疾患:自己免疫疾患のリスク上昇
- がん:一部のがん発症リスクの上昇
多発性慢性疼痛の予防と対策
遺伝的リスクがある場合の推奨対策
慢性疼痛の原因の多くに心理的要因が関与しているため、以下の対策が有効です。
- 早期受診:3ヶ月以上痛みが続く場合は、速やかに医療機関を受診する
- ストレス管理:不安感を溜め込まず、周囲に相談して解決する習慣を作る
- 適度な運動:ウォーキングやストレッチで血流を促進し、痛みの軽減を図る
- 睡眠の質向上:規則正しい睡眠リズムを維持し、痛みの悪循環を断つ
- 遺伝子検査:体質を把握し、リスクに応じた予防策を講じる
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:多発性慢性疼痛
多発性慢性疼痛 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs1443914です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- TT
21.3 % - TC
49.7 % - CC
28.9 %
検査の根拠
神経伝達に起因する慢性疼痛の原因遺伝子の一つとして見つかったのが13番染色体に存在する「AL450423.1」という遺伝子で、この遺伝子に属するDNA領域「rs1443914」が慢性疼痛と関連することが38万人規模のゲノム解析で判明しています。T型変異を持つ遺伝子型の人は、神経伝達に関わる遺伝子の発現が抑制され、慢性疼痛のリスクが高くなります。
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | RN7SL618P |
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よくある質問(FAQ)
Q1. 多発性慢性疼痛とは何ですか?
多発性慢性疼痛とは、腕・脚・背中・腰・首など身体の広い範囲に3ヶ月以上にわたって慢性的な痛みが持続する状態です。単一のケガや炎症とは異なり、明確な原因が特定できないケースが多く、睡眠障害・食欲減退・抑うつなどの二次症状を伴うことがあります。慢性疼痛の原因は骨折・手術・関節炎・ストレスなど多岐にわたります。
Q2. 多発性慢性疼痛は遺伝子と関連していますか?
はい。38万人のイギリス人を対象とした大規模ゲノム解析により、13番染色体上のDNA領域rs1443914が多発性慢性疼痛のリスクと関連していることが判明しています。遺伝子「AL450423.1」のrs1443914領域にT型変異があると、神経伝達に関わる遺伝子の発現が抑制され、慢性疼痛のリスクが高まります。
Q3. 多発性慢性疼痛の発症メカニズムは?
rs1443914の変異により、痛みを和らげるセロトニンや意欲を高めるノルアドレナリンの作用が抑制されます。これにより痛みの抑制機能が低下し、痛みを過剰に感じやすくなります。進行するとうつ病などの神経疾患リスクも上昇します。
Q4. 多発性慢性疼痛の遺伝子型(rs1443914)の日本人における分布は?
日本人におけるrs1443914の遺伝子型分布はTT型21.3%、TC型49.7%、CC型28.9%です。世界全体ではTT型21.4%、TC型49.7%、CC型28.8%であり、日本人と世界平均はほぼ同等の分布を示しています。日本人の約71%がT型変異を保有しています。
参考文献
- 参考リンク1 : 慢性疼痛診療ガイドライン 公益財団法人 日本医療機能評価機構(Mindsガイドラインライブラリ)
- 参考リンク2 : 2019 Jun., Keira J A Johnston, PLoS genetics.
- 参考リンク3 : DNA 領域「rs1443914」の情報 NIH
- 参考リンク4 : 2022 Feb., Fuquan Zhang, The Journal of clinical investigation.
- 参考リンク5 : 2022 Jan., Zhang, Fuquan, Bone & joint research.
- 参考リンク6 : 2019 Jun., Keira J A Johnston, PLoS Genet