心筋梗塞
- 心筋梗塞は冠動脈がつまって心臓の筋肉が死んでしまう命にかかわる心臓の病気で、動脈硬化とプラークがたまることが主な原因です。
- DNA領域rs10455872のG型を持つ人は発症リスクが高い傾向にあることが研究で分かっています。
- 高血圧・高コレステロール・喫煙・肥満・糖尿病が主な発症要因で、生活習慣を良くすることで予防できます。
概要
【疾患の概要】 心筋梗塞は、一般に「心臓発作」と呼ばれる病気です。心臓に血液を送る血管がつまって血の流れが止まり、心臓の筋肉(心筋)が傷ついてしまう、命にかかわる状態です。
【主な特徴と影響】 原因:心筋梗塞は、ふつう心臓に血液を送る冠動脈(心臓のまわりの血管)がつまることで起こります。 このつまりは、血管の内側にプラーク(コレステロールなどのかたまり)がたまって血管が硬くなり(動脈硬化)、そこに血のかたまり(血栓)ができることで起こります。
【治療と注意点】 発症しやすくなる要因:高血圧、高コレステロール、喫煙、肥満、糖尿病、運動不足、年齢、心臓病の家族歴などが心筋梗塞のリスクを高めます。 症状:胸の痛みや不快感(締め付けられるような感覚)、息切れ、汗、吐き気、めまい、あご・首・背中・腕の痛み。 診断:症状の確認や、心電図(心臓の電気の動きを記録する検査)の変化を調べます。また、心筋が傷ついたときに増える物質(トロポニンなど)を血液検査で調べます。 治療:心筋のダメージをできるだけ小さくするため、すぐに治療することがとても大切です。 薬による治療(アスピリン、ニトログリセリン、血栓を溶かす薬など)、血の流れを元に戻す処置(細い管で血管を広げる治療、ステントという網状の筒を入れる治療など)、手術(冠動脈バイパス手術など)があります。 合併症:心不全、不整脈、心臓の弁の問題、心臓の壁が破れることなど。 予防:健康的な食事、定期的な運動、禁煙などの生活習慣の改善が大切です。必要に応じて、血圧、コレステロール、糖尿病を薬でコントロールします。 心筋梗塞の原因や症状、治療方法を知っておくことは、早く気づいて早く治療することにつながります。その結果、合併症のリスクを減らし、その後の経過を大きく良くすることができます。
【遺伝的リスク】 オタワ大学のNikpayらの研究により、心筋梗塞にかかるリスクがrs10455872というDNA領域と関係していることが分かりました。 この領域にはAA、AG、GGの3つの遺伝子型があり、Gを持つ遺伝子型の人は、心筋梗塞のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
心筋梗塞とは何か
心筋梗塞は、心臓のまわりの血管(冠動脈)がつまって心臓の筋肉に血液が届かなくなり、筋肉の細胞が死んでしまう命にかかわる心臓の病気です。一般に「心臓発作」と呼ばれ、すぐに治療できるかどうかが命を大きく左右します(1)。
心筋梗塞の原因としくみ
心筋梗塞は冠動脈(心臓のまわりの血管)がつまることで起こります。主なしくみは以下のとおりです。
- 動脈硬化:冠動脈の壁にコレステロールなどのかたまり(プラーク)がたまり、血管が細くなります。
- 血栓(血のかたまり):プラークが破れて血のかたまり(血栓)ができ、冠動脈が完全にふさがります。
- 心筋壊死(心臓の筋肉が死ぬこと):血の流れが止まって酸素が届かなくなり、心臓の筋肉の細胞が死んでしまい元に戻りません。
心筋梗塞の主な発症要因
以下の要因が心筋梗塞のリスクを高めます。
- 高血圧:血管の壁にずっと強い圧力がかかり、動脈硬化が進みます。
- 高コレステロール:悪玉コレステロールがたまり、プラークができるのを早めます。
- 喫煙:血管の内側を傷つけ、血のかたまり(血栓)ができやすくなります。
- 肥満・糖尿病:インスリン(血糖を下げるホルモン)が効きにくくなるなど体の代謝が乱れ、血管が傷つきます。
- 運動不足・加齢:血管のはたらきが落ち、動脈硬化が進みます。
- 家族歴:心臓病の家族歴がある場合、遺伝子の影響によるリスクが高いです。
心筋梗塞の主な症状
心筋梗塞の症状は突然あらわれ、すぐに医療機関での対応が必要です。
- 胸の激しい痛み・圧迫感(締め付けられるような感覚)
- 息切れ・冷や汗・吐き気・めまい
- あご・首・背中・左腕に広がる痛み
心筋梗塞の診断方法
以下の検査で診断します。
- 心電図(心臓の電気の動きを記録する検査):心電図の波形の一部が持ち上がるなど、特徴的な変化を調べます。
- 血液検査:心臓の筋肉が傷つくと増える物質(トロポニン)の値を調べます。
- 冠動脈造影(血管を映す検査):つまっている場所を調べます。
心筋梗塞の治療法と予防法の違い
| 比較項目 | 発症直後の治療 | 予防・再発の防止 |
|---|---|---|
| 目的 | つまった血管を再び通し、心臓の筋肉のダメージを最小限にします。 | 動脈硬化の進行をおさえる・発症要因の管理 |
| 薬物療法 | アスピリン・血栓を溶かす薬・ニトログリセリン | 血圧を下げる薬・コレステロールを下げる薬・血をかたまりにくくする薬 |
| 処置 | 細い管で血管を広げる治療・ステント(網状の筒)を入れる治療 | 定期的な健康診断・生活習慣の改善 |
| 手術 | 冠動脈バイパス手術(別の血管で迂回路をつくる手術) | 必要に応じた予防のための手術 |
心筋梗塞の合併症
きちんと治療しないと、次のような合併症が起こる可能性があります。
- 心不全:心臓の筋肉が死ぬことで、心臓のポンプのはたらきが弱くなります。
- 不整脈:心臓の電気の流れが乱れることによる、不規則な脈です。
- 心室中隔穿孔(心臓の部屋を分ける壁に穴があくこと):死んでしまった心臓の筋肉の壁に穴があく、重い合併症です。
- 僧帽弁閉鎖不全症(弁がしっかり閉じなくなる病気):心臓の弁を支える筋肉がうまく働かなくなることによる弁の病気です。
遺伝子と心筋梗塞の関係
DNA領域rs10455872と発症リスクの関係
オタワ大学のNikpayらの研究(1)により、DNA領域rs10455872が心筋梗塞にかかるリスクと関係していることが分かりました。
- rs10455872にはAA・AG・GGの3つの遺伝子型があります。
- G型を持つ遺伝子型の人は、心筋梗塞のリスクが高い傾向にあります。
- 関係する遺伝子はLPA(リポプロテイン(a))です。
日本人における遺伝子型の割合(rs10455872)
日本人と世界とでは、遺伝子型の割合に大きな違いがあります。
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 | 差 |
|---|---|---|---|
| AA型 | 99.9% | 88.0% | +11.9ポイント |
| AG型 | 0.1%以下 | 11.5% | −11.5ポイント |
| GG型 | 0.1%以下 | 0.3% | −0.3ポイント |
日本人はAA型が99.9%ととても高く、G型を持つ人の割合は世界平均と比べてとても低いのが特徴です。
検査の科学的な根拠
代表的なDNA領域:心筋梗塞
心筋梗塞に最も強く影響するDNA領域は、rs10455872です。 日本でのそれぞれの遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- AA
99.9 % - AG
0.1%以下 - GG
0.1%以下
ほかに、心筋梗塞に関わるDNA領域としてrs73354869があります。 日本でのそれぞれの遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- AA
64.4 % - AC
31.6 % - CC
3.8 %
検査の根拠
オタワ大学のNikpayらの研究(1)により、心筋梗塞にかかるリスクが遺伝子と関係していることが分かりました。人間のDNAには、rs10455872という領域があり、この領域にはAとGの2種類のタイプがあります。G型を持つ人は、心筋梗塞のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図のイメージ図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | LPA |
|---|---|
| 関連遺伝子 | LINC00189 |
よくある質問
Q1. 心筋梗塞とは何ですか?
心筋梗塞は、心臓のまわりの血管(冠動脈)がつまって心臓の筋肉に血液が届かなくなり、筋肉の細胞が死んでしまう命にかかわる心臓の病気です。動脈硬化でたまったプラーク(コレステロールなどのかたまり)と血のかたまり(血栓)が主な原因で、すぐに治療できるかどうかが命を左右します(1)。
Q2. 心筋梗塞の主な発症要因は何ですか?
心筋梗塞の主な発症要因は、高血圧・高コレステロール・喫煙・肥満・糖尿病・運動不足・加齢・心臓病の家族歴です。DNA領域rs10455872でG型を持つ人は、遺伝子の影響でリスクが高い傾向にあります(1)。
Q3. 心筋梗塞に関連する遺伝子は何ですか?
オタワ大学のNikpayらの研究により、DNA領域rs10455872が心筋梗塞にかかるリスクと関係していることが分かりました。G型を持つ人はリスクが高い傾向にあり、関係する遺伝子はLPAです(1)。
Q4. 遺伝子検査で心筋梗塞のリスクは分かりますか?
DNA領域rs10455872の遺伝子型を調べることで、心筋梗塞の発症リスクの傾向を知ることができます。日本人ではAA型が99.9%を占め、G型を持つ人の割合が世界平均と比べてとても低いのが特徴です(1)。
Q5. 心筋梗塞の予防法は?
心筋梗塞の予防には、健康的な食事・定期的な運動・禁煙・血圧管理・コレステロール管理が大切です。遺伝子の影響でリスクが高い場合は、より早い時期から対策を始めることがすすめられます(1)(2)。
参考文献
- 参考リンク1 : 2015 Oct., Majid Nikpay, Nat Genet
- 参考リンク2 : 2021 Mar., Jaana A Hartiala, Eur Heart J