神経管閉鎖障害
- 神経管閉鎖障害は、おなかの赤ちゃんが育つごく初期に神経管が閉じず、脳・脊髄に異常が起こる生まれつきの病気で、発生する割合は生まれてくる赤ちゃん1万人あたり約5〜10人です。
- DNA領域rs1805087のGタイプを持つ人は発症リスクが高い傾向にあることが研究で分かっています。
- 妊娠前からの葉酸摂取(1日400μg以上)で発症リスクを約70%下げられます。
概要
【疾患の概要】 神経管閉鎖障害(神経管欠損症とも呼ばれます)は、おなかの赤ちゃんが育つごく初期に、神経管(のちに脳や脊髄になる部分)が完全に閉じないことで起こる、生まれつきの病気の一種です。 ふつうは受精後28日までに神経管が閉じますが、これがうまくいかないと、脳、背骨、脊髄にさまざまな異常が起こります。
【症状と特徴】 神経管閉鎖障害の重さや特徴は、神経管が閉じなかった場所と範囲によって変わります。 最もよく見られるものの一つが脊柱裂です。 これは背骨と脊髄を包む膜がきちんと閉じていない状態で、まひ、排せつの困難、水頭症(脳の中に液体がたまる状態)などの重い障害を起こします。 また無脳症も重いタイプで、脳と頭の骨の大部分が育たないため、死産になったり、生まれてすぐに亡くなったりします。 比較的軽いタイプには、脳の組織が頭の骨のすき間から外に出てしまう脳膨出症や、背骨や頭の骨の欠けを伴い、首が後ろへ強く曲がるのが特徴の後頭脳症があります。 原因はまだ完全には分かっていませんが、遺伝子、環境、栄養の影響が関わっていると考えられています。 その中でも特に、妊娠する前と妊娠初期の葉酸不足が大きな原因と考えられています。
【治療と注意点】 神経管閉鎖障害は、妊娠中の超音波検査や母親の血液検査で見つけることができるので、早く診断して治療することが大切です。
【遺伝子の影響】 天津医科大学のLirong Caoらの研究により、神経管閉鎖障害のリスクがrs1805087というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはAA、AG、GGの3つの遺伝子型があり、Gを持つ遺伝子型の人は、神経管閉鎖障害のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
神経管閉鎖障害とは
神経管閉鎖障害は、おなかの赤ちゃんが育つごく初期に、神経管(のちに脳や脊髄になる部分)が完全に閉じないことで起こる、生まれつきの病気の一種です。受精後28日までに神経管は閉じるはずですが、これがうまく進まないと、脳・背骨・脊髄に異常が起こります。
発生する割合は、生まれてくる赤ちゃん1万人あたり約5〜10人とされ、病気の重さや特徴は、神経管が閉じなかった場所と範囲によって変わります。妊娠中の超音波検査や母親の血液検査で早く見つけることができます。
神経管閉鎖障害の主な種類と特徴
神経管閉鎖障害は、神経管が閉じなかった場所によって次の4種類に分けられます。
| 種類 | 部位 | 症状・特徴 | 重症度 |
|---|---|---|---|
| 脊柱裂 | 背骨・脊髄 | まひ、排せつの障害、水頭症 | 中〜重度 |
| 無脳症 | 脳・頭の骨 | 脳と頭の骨の大部分が育たず、死産または生まれてすぐに亡くなります。 | 最重度 |
| 脳膨出症 | 頭の骨 | 脳の組織が頭の骨のすき間から外に出ます。 | 軽〜中度 |
| 後頭脳症 | 背骨・頭の骨 | 骨の欠けを伴い、首が後ろへ強く曲がります。 | 軽〜中度 |
神経管閉鎖障害の原因とリスク要因
神経管閉鎖障害の発症には遺伝子・環境・栄養の影響の3つが組み合わさって関わっています。
- 栄養の影響:妊娠する前と妊娠初期の葉酸(ビタミンB9)不足が最も大きなリスクです。
- 遺伝子の影響:DNA領域rs1805087(MTR遺伝子の近く)のGタイプがリスクに関わります。
- 環境の影響:てんかんの薬の服用、糖尿病、肥満、高い体温がリスクを高めます。
天津医科大学のLirong Caoらの研究(2018年)では、MTR遺伝子が関わる葉酸の使われ方(葉酸代謝)の異常が、この病気が起こるしくみに深く関わっていることが示されています。
葉酸による予防効果
葉酸を1日400μg以上とることで、神経管閉鎖障害の発症リスクを約70%下げられます。
- 厚生労働省は妊娠を計画している女性に妊娠の1か月前〜妊娠3か月までの葉酸摂取をすすめています。
- 葉酸はDNAを作ったり、遺伝子の働きを調節したりするのに欠かせないビタミンで、神経管がきちんと閉じるのを助けます。
- ほうれん草・ブロッコリー・レバーなどの食品やサプリメントからとれます。
診断方法
神経管閉鎖障害は、次の方法で妊娠中に診断できます。
- 超音波検査(エコー):妊娠18〜20週に、背骨や脳の形の異常を見つけます。
- 母親の血液検査:母親の血液中のアルファフェトプロテイン(赤ちゃんが作るたんぱく質)の値が高いと、この病気の可能性を考えます。
- 羊水検査:診断を確かめるため、羊水(赤ちゃんを包む液体)の中のアルファフェトプロテインの量を測ります。
遺伝子と神経管閉鎖障害の関連
DNA領域rs1805087と発症リスクの関係
天津医科大学のLirong Caoらの研究により、MTR遺伝子の近くにあるDNA領域rs1805087が、神経管閉鎖障害の起こりやすさと関係していることが分かりました。
- rs1805087にはAA・AG・GGの3つの遺伝子型が存在します。
- Gタイプを持つGG型・AG型は神経管閉鎖障害のリスクが高い傾向があります。
- AA型は比べるとリスクが低め
MTR遺伝子は、メチオニン合成酵素という酵素の設計図です。この酵素は、葉酸を使う流れの中で、ホモシステインという物質をメチオニンという物質に変える働きをしています。rs1805087のGタイプによってこの酵素の働きが変わり、葉酸の使われ方の異常が、神経管が閉じるのに必要な遺伝子の働きの調節(DNAメチル化)をじゃますると考えられています。
日本人における遺伝子型分布(rs1805087)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| AA型 | 66.7% | 65.3% |
| AG型 | 29.8% | 31.0% |
| GG型 | 3.3% | 3.6% |
日本人でGタイプを持つ人(AG型+GG型)の割合は33.1%で、世界平均の34.6%と比べて少しだけ低い傾向があります。
検査の理論的な根拠
代表的なDNA領域:神経管閉鎖障害
神経管閉鎖障害 に最も強く影響するDNA領域は、rs1805087です。 日本におけるこのDNA領域の遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- AA
66.7 % - AG
29.8 % - GG
3.3 %
検査の根拠
天津医科大学のLirong Caoらの研究により、神経管閉鎖障害のリスクが遺伝子と関係していることが分かりました。人間のDNAには、rs1805087という場所があり、そこにはAとGの2つのタイプがあります。Gタイプを持つ人は、神経管閉鎖障害のリスクが高い傾向にあることが分かりました。日本人ではAA型が66.7%、AG型が29.8%、GG型が3.3%で、世界平均と比べてGタイプを持つ人の割合が少しだけ低いのが特徴です。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | MTR |
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よくある質問
Q1. 神経管閉鎖障害とは何ですか?
神経管閉鎖障害は、おなかの赤ちゃんが育つごく初期に、神経管(のちに脳や脊髄になる部分)が完全に閉じないことで起こる、生まれつきの病気です。受精後28日までに閉じるはずの神経管が閉じないことで、脊柱裂・無脳症・脳膨出症などが起こります。発生する割合は、生まれてくる赤ちゃん1万人あたり約5〜10人です。
Q2. 神経管閉鎖障害の原因は何ですか?
原因は遺伝子・環境・栄養の影響が組み合わさって関わっています。妊娠する前と妊娠初期の葉酸不足が最も大きなリスクとされ、DNA領域rs1805087のGタイプも発症に関わっています。
Q3. 神経管閉鎖障害は予防できますか?
葉酸を1日400μg以上摂取することで、発症リスクを約70%下げられます。厚生労働省は、妊娠を計画している女性に、妊娠の1か月前〜妊娠3か月までの葉酸摂取をすすめています。
Q4. 遺伝子検査で神経管閉鎖障害のリスクは分かりますか?
DNA領域rs1805087の遺伝子型を調べることで、神経管閉鎖障害のなりやすさの傾向を知ることができます。Gタイプ(GG型・AG型)を持つ人はリスクが高い傾向にあることが、天津医科大学の研究で分かっています。
Q5. 神経管閉鎖障害の種類にはどのようなものがありますか?
主な種類は脊柱裂(背骨と脊髄を包む膜が閉じていない)、無脳症(脳と頭の骨の大部分が育たない、最も重いタイプ)、脳膨出症(脳の組織が頭の骨のすき間から外に出る)、後頭脳症(骨の欠けを伴い、首が後ろへ強く曲がる)の4つです。