急性心停止
- 急性心停止は心臓の電気信号の異常により拍動が突然止まる緊急の病気で、手当てをしないと数分以内に死亡に至ります。
- DNA領域rs12429889のCを持つ人は急性心停止のリスクが高い傾向にあることがカリフォルニア大学の研究でわかりました。
- 発症時にはすぐに行う心肺蘇生と除細動(自動体外式除細動器の使用)で生存率が大きく上がります。
概要
【疾患の概要】 急性心停止は、心臓の働きが突然止まり、呼吸も意識もなくなる深刻な状態です。 前ぶれや症状がないまま起こり、心臓の電気信号が乱れることで、脳や肺などの臓器へ血液が届かなくなります。
【治療と注意点】 急性心停止では心臓がきちんと動かなくなるため、数分以内に手当てをしないと命にかかわります。 よく見られるのは、めまいや胸の痛みなどの前ぶれがないまま、突然意識を失って倒れることです。 脈が感じられない、呼びかけや刺激に反応しない、ふつうの呼吸が止まる、といった特徴があります。 皮膚が青白く見えるのは、酸素が足りず血液の流れに影響が出るためです。 急性心停止は心臓発作とは区別する必要があります。 心臓発作は心臓への血の流れがふさがる状態ですが、急性心停止は心臓の鼓動そのものがなくなる状態です。 すぐに医療の手当てをすることが欠かせず、電気ショックで心臓のリズムを戻す「除細動」などをすばやく行うことが生死を分けます。
【遺伝的リスク】 カリフォルニア大学サンフランシスコ校のAouizeratらの研究で、急性心停止の起こりやすさがrs12429889というDNA領域と関係していることがわかりました。 このDNA領域にはTT,TC,CCの3つの遺伝子型があり、Cを持つ遺伝子型の人は、急性心停止のリスクが高い傾向にあることがわかりました。
急性心停止とは何か
急性心停止とは、心臓の電気信号の異常によって、血液を送り出す心臓のポンプの働きが突然止まり、呼吸も意識もなくなる緊急の病気です。急性心停止は前ぶれなく起こり、心臓の電気信号の乱れによって、脳や肺などの大切な臓器へ血液が届かなくなります。手当てをしないと、4〜6分以内に脳に元に戻らない損傷が始まり、10分以内に死亡に至ります。
急性心停止の主な症状
急性心停止は突然起こり、以下のような症状が特徴です。
- 突然意識を失う:前ぶれなく突然倒れ、呼びかけや刺激に反応しません。
- 脈がなくなる:脈が感じられなくなります。
- ふつうの呼吸が止まる:呼吸が止まる、またはしゃくりあげるような呼吸(死戦期呼吸)だけになります。
- 皮膚の変色:酸素が足りず皮膚が青白くなります(チアノーゼ)。
発症する前に、めまい・胸の痛み・息切れ・動悸(ドキドキする感じ)などの前ぶれが出る人もいますが、多くの場合は前ぶれがありません。
急性心停止と心臓発作の違い
急性心停止と心臓発作(心筋梗塞)は混同されやすいですが、違う病気です。
| 比較項目 | 急性心停止 | 心臓発作(心筋梗塞) |
|---|---|---|
| 原因 | 心臓の電気信号の異常 | 冠動脈(心臓の血管)がつまり血液が流れなくなります。 |
| 心臓の拍動 | 拍動が止まります。 | ふつうは動き続けます。 |
| 意識 | すぐに意識を失う | 意識はあることが多いです。 |
| 緊急度 | 数分以内に命にかかわります。 | 数時間の余裕がある場合もあります。 |
| 救命処置 | 心肺蘇生+自動体外式除細動器 | カテーテルで心臓の血管を広げる治療 |
急性心停止の原因とリスク要因
急性心停止の最も多い原因は心室細動(心室が細かくバラバラにふるえ、血液を送り出せなくなる不整脈)です。リスク要因は以下のとおりです。
| カテゴリ | リスク要因 | 詳細 |
|---|---|---|
| 心臓病にかかったことがある | 冠動脈疾患・心筋症 | 急性心停止の患者の約75%が冠動脈疾患にかかったことがあります。 |
| 遺伝子の影響 | 家族歴・遺伝子の違い | 親・きょうだい・子どもに急性心停止になった人がいるとリスクが上がります。 |
| 生活習慣 | 喫煙・肥満・運動不足 | たばこを吸う人の急性心停止のリスクは、吸わない人の約2〜3倍です。 |
| 持病 | 高血圧・糖尿病・高コレステロール | 心臓や血管への負担が急性心停止のリスクを高めます。 |
急性心停止の救命処置と生存率を上げる方法
急性心停止が起きたら、すぐに心肺蘇生と自動体外式除細動器(電気ショックで心臓のリズムを戻す機械)による除細動を行うことで、生存率が大きく上がります。
- 心肺蘇生:胸骨圧迫(胸を強く押す)と人工呼吸で、脳や臓器に最低限の血液を送り続けます。
- 自動体外式除細動器(除細動):発症から3〜5分以内に除細動を行うと、生存率は50〜70%に上がります。
- 救急医療:病院での高度な心臓の治療(体温を下げる治療・カテーテルで心臓の血管を広げる治療など)です。
心肺蘇生が行われない場合、1分ごとに生存率は7〜10%下がります。10分以上たつと生存率は5%未満になります。
急性心停止の予防法
急性心停止のリスクを下げるには、以下のような対策が役立ちます。
- 定期的な心臓検診:心電図検査・心臓の超音波検査(心エコー)で早めに見つけます。
- 生活習慣の改善:禁煙・適正体重を保つ・定期的な運動(週150分以上の中くらいの強さの運動)
- 持病の管理:高血圧・糖尿病・高コレステロール血症をきちんと治療します。
- 心肺蘇生・自動体外式除細動器の普及:一般の人が心肺蘇生や自動体外式除細動器を使えるようになると、社会全体の生存率が上がります。
遺伝子と急性心停止の関係
DNA領域rs12429889と急性心停止の関係
カリフォルニア大学サンフランシスコ校のAouizeratらの研究で、急性心停止の起こりやすさがDNA領域rs12429889と関係していることがわかりました。
- rs12429889にはTT・TC・CCの3つの遺伝子型があります。
- Cを持つ遺伝子型(TC型・CC型)の人は急性心停止のリスクが高い傾向があります。
DNA領域rs16866933と急性心停止の関係
rs12429889のほかに、DNA領域rs16866933も急性心停止との関係が報告されています。rs16866933にはGG・GA・AAの3つの遺伝子型があり、関連遺伝子ZNF385Bの位置にあります。
日本人と世界における遺伝子型分布の比較(rs12429889)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| TT型 | 74.0% | 69.9% |
| TC型 | 23.9% | 27.4% |
| CC型 | 1.9% | 2.6% |
日本人と世界における遺伝子型分布の比較(rs16866933)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| GG型 | 39.6% | 82.1% |
| GA型 | 46.6% | 16.9% |
| AA型 | 13.7% | 0.8% |
日本人でCを持つ人の割合(TC+CC)はrs12429889で25.8%で、世界平均の30.0%と比べて低い割合です。一方、rs16866933ではAを持つ人の割合(GA+AA)が日本人60.3%に対し世界17.7%と、日本人はAを持つ人の割合が約3.4倍高いという特徴があります。
検査の理論的な根拠
代表的なDNA領域:急性心停止
急性心停止 に最も強く影響するDNA領域は、rs12429889です。 日本における各遺伝子型の人の割合は下記のとおりです。
- TT
74.0 % - TC
23.9 % - CC
1.9 %
ほかに、急性心停止に関わるDNA領域としてrs16866933があります。 日本における各遺伝子型の人の割合は下記のとおりです。
- GG
39.6 % - GA
46.6 % - AA
13.7 %
検査の根拠
カリフォルニア大学サンフランシスコ校のAouizeratらの研究で、急性心停止の起こりやすさが遺伝子と関係していることがわかりました。人のDNAにはrs12429889という領域があり、この領域にはTとCの2種類の違いがあります。Cタイプを持つ人は、急性心停止のリスクが高い傾向にあることがわかりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | KLF12 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | ZNF385B |
よくある質問
Q1. 急性心停止とは何ですか?
急性心停止とは、心臓の電気信号の異常によって、心臓のポンプの働きが突然止まる緊急の病気です。心臓発作(心筋梗塞)とは違い、急性心停止では心臓の鼓動そのものがなくなります。前ぶれなく突然意識を失い、脈がなくなります。手当てをしないと数分以内に死亡するため、すぐに心肺蘇生(胸骨圧迫など)と除細動(電気ショック)を行うことが欠かせません。
Q2. 急性心停止と遺伝子は関連していますか?
はい。カリフォルニア大学サンフランシスコ校のAouizeratらの研究で、DNA領域rs12429889が急性心停止の起こりやすさと関係していることがわかっています。rs12429889にはTT・TC・CCの3つの遺伝子型があり、Cを持つ遺伝子型の人はリスクが高い傾向にあります。さらにrs16866933(ZNF385B遺伝子のDNA領域)も急性心停止との関係が報告されています。
Q3. 急性心停止の原因とリスク要因は何ですか?
急性心停止の最も多い原因は心室細動(心室の電気信号がバラバラになる状態)です。リスク要因には、冠動脈疾患(心臓に血液を送る血管の病気。急性心停止の患者の約75%がかかったことがあります)、心筋症、生まれつきの心臓病、心臓発作になったことがある、家族歴、高血圧、糖尿病、肥満、喫煙(リスク約2〜3倍)、高コレステロール血症、運動不足があります。
Q4. 急性心停止と心臓発作の違いは何ですか?
心臓発作は、心臓に血液を送る血管(冠動脈)がつまって心臓の筋肉に血液が届かなくなる状態で、心臓はふつう動き続けます。一方、急性心停止は心臓の電気信号の異常によって、心臓の拍動そのものが止まる状態です。心臓発作がきっかけで急性心停止が起こることはありますが、両者は原因・症状・緊急度が違う別の病気です。
Q5. 急性心停止が起きた場合、どうすれば生存率が上がりますか?
発症後3〜5分以内に心肺蘇生と自動体外式除細動器(電気ショックで心臓のリズムを戻す機械)による除細動を行うと、生存率は50〜70%に上がります。心肺蘇生が行われない場合、1分ごとに生存率は7〜10%下がります。10分以上たつと生存率は5%未満になるため、その場に居合わせた人がすぐに救命処置をすることが最も大切です。