全身性エリテマトーデス
- 全身性エリテマトーデスは、免疫のしくみが自分の組織を攻撃する長く続く自己免疫疾患で、20〜40代女性に多く、男女の比率は約1:9です。
- DNA領域rs76596471のCタイプを持つ人はかかるリスクが高い傾向にあることが研究でわかっています。
- 早期診断とヒドロキシクロロキン・免疫の働きを抑える薬などによる正しい治療で、症状を抑え、臓器が傷つくのを防ぐことができます。
概要
【疾患の概要】 全身性エリテマトーデスは、体を守る免疫のしくみが誤って自分の組織や臓器を攻撃してしまう、長く続く自己免疫疾患です。 その結果、全身に炎症や傷みが起こります。
【症状と特徴】 この病気は、皮膚、関節、腎臓、血液、脳など、体のさまざまな部分に影響を与えることがあります。 原因はまだ完全にはわかっていませんが、遺伝子の影響、環境、ホルモンなどが関わっていると考えられています。 女性に多い病気ですが、男性や子どもがかかることもあります。
【治療と注意点】 主な症状には、次のようなものがあります: 1. 皮膚の発疹(特に頬に出る「蝶形紅斑」) 2. 日光に当たると皮膚が赤くなりやすい(光過敏症) 3. 関節の痛みと腫れ 4. 発熱 5. 疲れやすさ 6. 脱毛 7. 口内炎 8. 肺や心臓を包む膜の炎症(胸膜炎・心膜炎) 9. けいれんや心の不調などの神経の症状 10. 腎炎や腎不全などの腎臓の障害 診断は、症状や診察の結果、抗核抗体(自分の細胞の核を攻撃する抗体)の検査などをもとに行われます。 治療では、炎症を抑える痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)やヒドロキシクロロキンなどを使い、炎症を抑え、臓器が傷つくのを防ぎ、症状を軽くすることを目指します。 複雑な自己免疫疾患なので、正しい診断と治療が必要です。 日光に当たるのを避け、健康的な生活を続け、定期的に検査を受けることで、治療の効果やその後の経過がよくなることが期待できます。
【遺伝的リスク】 香港大学のWangらの研究で、全身性エリテマトーデスにかかるリスクが、rs76596471というDNA領域と関係していることがわかりました。 このDNA領域にはTT、TC、CCの3つの遺伝子型があり、Cを持つ遺伝子型の人は、全身性エリテマトーデスのリスクが高い傾向にあることがわかりました。
全身性エリテマトーデスとは何か
全身性エリテマトーデスは、体を守る免疫のしくみが誤って自分の組織や臓器を攻撃してしまう、長く続く全身の自己免疫疾患です。皮膚・関節・腎臓・血液・脳など、全身に炎症と傷みを起こします。
全身性エリテマトーデスの原因とメカニズム
全身性エリテマトーデスの原因はまだ完全にはわかっていませんが、次の3つが重なり合って関わっています。
- 遺伝子の影響:HLA遺伝子やDNA領域rs76596471などの遺伝子の違いがかかりやすさに関係しています。
- 環境:紫外線を浴びること、ウイルス感染(エプスタイン・バールウイルスなど)、一部の薬が発症のきっかけになります。
- ホルモン:女性ホルモン(エストロゲン)が免疫の働きを強め、20〜40代女性に多い理由の一つです。
全身性エリテマトーデスでは抗核抗体や抗二本鎖DNA抗体が自分の細胞の核を攻撃し、抗体と攻撃相手がくっついたかたまり(免疫複合体)が組織にたまって炎症を起こします。
全身性エリテマトーデスの主な症状
全身性エリテマトーデスの症状はさまざまで、変わりやすく、症状が出る臓器によって異なります。
- 皮膚症状:蝶形紅斑(頬から鼻にかけて蝶の形に広がる発疹)、日光で皮膚が赤くなりやすい光過敏症、円板状紅斑(丸く盛り上がった発疹)です。
- 関節症状:いくつもの関節の痛みと腫れ(関節は壊れにくい)です。
- 全身症状:発熱、続く疲れやすさ、脱毛です。
- 腎臓症状:ループス腎炎(患者さんの約50%に起こる腎臓の炎症)
- 血液異常:貧血、白血球が減る、血小板が減るといった異常が起こります。
- 神経症状:けいれん、物事を考えたり覚えたりする力の低下、心の不調です。
- 口腔症状:口内炎(痛みを伴わないことが特徴)です。
- 膜の炎症:肺を包む膜の炎症(胸膜炎)、心臓を包む膜の炎症(心膜炎)です。
全身性エリテマトーデスと関節リウマチの違い
| 比較項目 | 全身性エリテマトーデス | 関節リウマチ |
|---|---|---|
| 標的 | 全身の臓器(皮膚・腎臓・脳など) | 主に関節を包む膜(滑膜) |
| 好発年齢 | 20〜40代女性 | 40〜60代女性 |
| 男女比 | 約1:9(女性に多い) | 約1:3(女性に多い) |
| 特徴的な皮膚の症状 | 蝶形紅斑 | リウマトイド結節 |
| 関節破壊 | ふつうは壊れにくいです。 | 関節がだんだん壊れていきます。 |
| 診断の目安 | 抗核抗体が陽性 | リウマトイド因子が陽性 |
全身性エリテマトーデスの合併症のリスク
きちんと治療しないと、次のような重い合併症が起こることがあります。
- ループス腎炎:患者さんの約50%に起こり、腎臓がほとんど働かなくなる末期腎不全になることもあります。
- 心臓や血管の病気:動脈硬化が早く進む、心膜炎、心筋炎です。
- 脳や神経のループス:けいれん、脳血管障害、認知機能低下です。
- 抗リン脂質抗体症候群:血の塊(血栓)ができやすくなり、流産をくり返すリスクが上がります。
診断方法
全身性エリテマトーデスの診断は、米国リウマチ学会とヨーロッパリウマチ学会連合が2019年に作った分類基準に基づいて行われます。
- 抗核抗体を調べる最初の検査
- 抗二本鎖DNA抗体・抗Sm抗体(この病気に特徴的な抗体)の確認
- 補体(免疫に関わるたんぱく質、C3・C4)の値の測定
- 尿検査(尿にたんぱくや血がまじっていないかの確認)
- 血液検査(血液の細胞が減っていないかの確認)
全身性エリテマトーデスの治療法と予防
治療は、病気の勢いや、どの臓器に症状が出ているかに合わせて、次の方法を組み合わせます。
- ヒドロキシクロロキン:基本となる治療薬で、すべての患者さんにすすめられています。
- 非ステロイド性抗炎症薬(痛み止め):関節や筋肉の痛みをやわらげます。
- ステロイド(プレドニゾロンなど):症状が急に強いときの炎症を抑えます。
- 免疫の働きを抑える薬:アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミドです。
- 生物学的製剤:ベリムマブ(免疫細胞を活発にするたんぱく質の働きを抑える薬)
ふだんの生活では紫外線を防ぐこと(日焼け止めを使う・強い日差しを避ける)、適度な運動、定期的な通院と検査が重要です。
遺伝子と全身性エリテマトーデスの関連
DNA領域rs76596471とかかりやすさの関係
香港大学のWangらの研究(1)で、DNA領域rs76596471が全身性エリテマトーデスにかかるリスクと関係していることがわかりました。
- rs76596471にはTT・TC・CCの3つの遺伝子型があります。
- Cを持つ遺伝子型の人は、全身性エリテマトーデスのリスクが高い傾向があります。
日本人における遺伝子型分布(rs76596471)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| TT型 | 99.0% | 99.8% |
| TC型 | 0.9% | 0.1% |
| CC型 | 0.1%以下 | 0.1%以下 |
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:全身性エリテマトーデス
全身性エリテマトーデスに最も強く影響するDNA領域は、rs76596471です。 日本でのそれぞれの遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- TT
99.0 % - TC
0.9 % - CC
0.1%以下
検査の根拠
香港大学のWangらの研究で、全身性エリテマトーデスにかかるリスクが遺伝子と関係していることがわかりました。人の遺伝情報(ゲノム)にはrs76596471というDNA領域があり、ここにはTとCの2種類のタイプがあります。Cタイプを持つ人は、全身性エリテマトーデスのリスクが高い傾向にあることがわかりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図の模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | TMEM116 |
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よくある質問
Q1. 全身性エリテマトーデスとは何ですか?
全身性エリテマトーデスは、免疫のしくみが誤って自分の組織や臓器を攻撃してしまう、長く続く自己免疫疾患です。皮膚・関節・腎臓・血液・脳など全身に影響を与え、20〜40代の女性に多く見られます。男女の比率は約1:9です(1)。
Q2. 全身性エリテマトーデスの主な原因は何ですか?
全身性エリテマトーデスの原因は遺伝子の影響・環境(紫外線・感染症)・ホルモンが重なり合って関わっています。DNA領域rs76596471でCを持つ人はリスクが高い傾向にあります(1)。
Q3. 全身性エリテマトーデスと関節リウマチの違いは?
全身性エリテマトーデスは全身の臓器に影響する自己免疫疾患で、蝶形紅斑や腎臓の障害が特徴です。関節リウマチは主に関節を包む膜(滑膜)を標的とし、左右同じ関節が壊れていく病気です。
Q4. 遺伝子検査で全身性エリテマトーデスのリスクは分かりますか?
DNA領域rs76596471の遺伝子型を調べることで、全身性エリテマトーデスのかかりやすさの傾向を知ることができます。Cを持つ遺伝子型の人はリスクが高い傾向にあることが、香港大学のWangらの研究でわかっています(1)。
Q5. 全身性エリテマトーデスの治療法にはどのようなものがありますか?
ヒドロキシクロロキンが、基本の治療薬としてすべての患者さんにすすめられています。症状が急に強くなったときはステロイド、重い場合は免疫の働きを抑える薬や、ベリムマブなどの生物学的製剤(生き物の細胞から作られる薬)が使われます。紫外線を防ぐことや定期的な検査も大切です。