潰瘍性大腸炎
- 潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜に長く続く炎症が起こる「炎症性腸疾患」で、腹痛・血便・下痢などの症状をくり返す国の指定難病です。
- DNA領域rs1297265のAを持つ人は潰瘍性大腸炎を発症しやすい傾向があることが、ウェルカム・トラスト・サンガー研究所の研究で分かりました。
- 日本人でA(AA+AG)を持つ人の割合は97.0%で、世界平均の82.5%と比べて高い割合です。
概要
【疾患の概要】 潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜(内側の表面)に長く続く炎症が起こる「炎症性腸疾患」の一つです。 この病気は直腸から始まり、大腸全体に広がることがあります。
【症状と特徴】 炎症によって大腸の内側に潰瘍やびらん(表面がただれて欠けた状態)ができ、出血したり、粘液が多く出たりします。 原因はまだはっきり分かっていませんが、遺伝子の影響、免疫のしくみの異常、環境の影響が関わっていると考えられています。 遺伝子の影響については、家族に潰瘍性大腸炎の人がいると、発症しやすくなることが知られています。 また、免疫のしくみが、本来は害のない腸内細菌や食べ物に過剰に反応して、炎症が起こるとも言われています。 主な症状は、腹痛、下痢、血便、体重減少、疲れやすさなどです。 症状の重さは人によって違い、活動期(症状が出る時期)と寛解期(症状が落ち着く時期)をくり返すのが特徴です。
【治療と注意点】 診断には、内視鏡検査や生体検査が行われます。 内視鏡検査では、カメラで大腸の内側を直接見て、炎症や潰瘍の様子を確かめます。 生体検査では、大腸の粘膜を少しだけ取り、顕微鏡で調べます。 血液検査や便の検査が行われることもあります。 治療には、生活習慣の見直しや薬が使われ、重い場合は手術が行われます。 完全に治すことは難しい病気ですが、適切な治療で症状を抑え、生活の質を高めることができます。
【遺伝子の影響】 ウェルカム・トラスト・サンガー研究所のAndersonらの研究により、潰瘍性大腸炎のかかりやすさがrs1297265というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはAA、AG、GGの3つの遺伝子型があり、Aを持つ遺伝子型の人は、潰瘍性大腸炎になりやすい傾向があることが分かりました。
潰瘍性大腸炎とは何か
潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜に長く続く炎症が起こり、潰瘍やびらん(表面がただれて欠けた状態)ができる「炎症性腸疾患」の一つです。直腸から始まり大腸全体に広がるのが特徴で、日本では国の指定難病になっています。
潰瘍性大腸炎の原因とは
潰瘍性大腸炎の原因はまだはっきり分かっていませんが、次の3つが関わっていると考えられています。
- 遺伝子の影響:家族に潰瘍性大腸炎の人がいると、発症しやすさが2~4倍に高まります。
- 免疫のしくみの異常:免疫のしくみが、本来は害のない腸内細菌や食べ物に過剰に反応し、炎症を起こします。
- 環境の影響:食生活の欧米化、ストレス、腸内細菌のバランスの変化が発症に関わります。
潰瘍性大腸炎の主な症状
活動期(症状が強く出る時期)と寛解期(症状が落ち着く時期)をくり返すのが特徴です。
- 血便・粘血便:大腸の潰瘍から出血し、血や粘液が混じった便が出ます。
- 腹痛:左下腹部を中心に痛みが出ます。
- 下痢:1日10回以上の下痢をくり返すことがあります。
- 体重減少:栄養をうまく吸収できず、体重が減ります。
- 疲れやすさ・だるさ:貧血や長く続く炎症のため、疲れが取れにくいです。
潰瘍性大腸炎の診断方法
- 内視鏡検査:カメラで大腸の内側を直接見て、炎症や潰瘍の様子を確かめます。
- 生体検査(組織を少し取る検査):大腸の粘膜を少しだけ取り、顕微鏡で詳しく調べます。
- 血液検査・便検査:血液中の炎症の強さを示す値や、貧血がないかを調べます。
潰瘍性大腸炎とクローン病の違い
| 比較項目 | 潰瘍性大腸炎 | クローン病 |
|---|---|---|
| 炎症部位 | 大腸の粘膜のみ | 口から肛門まで消化管全体 |
| 炎症の広がり | 直腸から連続的に広がります。 | とびとび(飛び石状)に広がります。 |
| 炎症の深さ | 粘膜だけ | 腸の壁の深いところまで及びます。 |
| かかりやすい年齢 | 20~30代が中心 | 10~20代が中心 |
| 主な症状 | 血便・腹痛・下痢 | 腹痛・下痢・体重減少・瘻孔(腸に穴ができてほかの場所とつながること) |
潰瘍性大腸炎の治療法
治療は症状の重さに合わせて、段階的に進めます。完全に治すことは難しいですが、適切な治療で症状を抑え、生活の質を高めることができます。
- メサラジン(腸の炎症を抑える飲み薬):軽い~中くらいの症状で、最初に使われる薬です。
- ステロイド薬:中くらい~重い症状が急に強くなった時期に、炎症を抑えます。
- 免疫の働きを整える薬:ステロイド薬をやめられない人などに使い、免疫の働きを抑えます。
- 生物学的製剤(生き物の細胞から作る薬):これまでの治療で効果が足りない場合に使います。
- 外科手術:症状がとても重い場合や大腸がんの心配が高い場合に、大腸をすべて取る手術を行います。
遺伝子と潰瘍性大腸炎の関係
DNA領域rs1297265と潰瘍性大腸炎の関係
ウェルカム・トラスト・サンガー研究所のAndersonらの研究(2011年、Nature Genetics掲載)により、潰瘍性大腸炎のかかりやすさがDNA領域rs1297265と関係していることが分かりました。
- rs1297265にはAA・AG・GGの3つの遺伝子型が存在します。
- Aを持つ遺伝子型(AA型・AG型)の人は潰瘍性大腸炎を発症しやすい傾向があります。
- ほかにrs4781011、rs7240004、rs2823286のDNA領域も潰瘍性大腸炎に関わります。
日本人と世界の遺伝子型の分布の比較(rs1297265)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| AA型 | 69.1% | 33.9% |
| AG型 | 27.9% | 48.6% |
| GG型 | 2.8% | 17.4% |
日本人でAを持つ人の割合(AA+AG)は97.0%で、世界平均の82.5%と比べて高い割合です。AA型の割合は日本人が69.1%と世界平均の33.9%より約2.0倍高く、日本人の遺伝子の特徴を表しています。
関係するほかのDNA領域の日本人と世界の比較
| DNA領域 | 遺伝子型 | 日本人 | 世界 |
|---|---|---|---|
| rs4781011 | TT | 71.5% | 8.8% |
| TG | 26.0% | 41.7% | |
| GG | 2.3% | 49.3% | |
| rs7240004 | AA | 18.7% | 37.4% |
| AG | 49.0% | 47.4% | |
| GG | 32.1% | 15.0% | |
| rs2823286 | GG | 74.8% | 50.5% |
| GA | 23.2% | 41.0% | |
| AA | 1.8% | 8.3% |
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎に最も強く関係するDNA領域は、rs1297265です。 日本での遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- AA
69.1 % - AG
27.9 % - GG
2.8 %
ほかに、潰瘍性大腸炎に関わるDNA領域としてrs4781011があります。 日本での遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- TT
71.5 % - TG
26.0 % - GG
2.3 %
ほかに、潰瘍性大腸炎に関わるDNA領域としてrs7240004があります。 日本での遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- AA
18.7 % - AG
49.0 % - GG
32.1 %
ほかに、潰瘍性大腸炎に関わるDNA領域としてrs2823286があります。 日本での遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- GG
74.8 % - GA
23.2 % - AA
1.8 %
検査の根拠
ウェルカム・トラスト・サンガー研究所のAndersonらの研究により、潰瘍性大腸炎のかかりやすさが遺伝子と関係していることが分かりました。人間のDNAにはrs1297265という場所があり、そこにはAとGの2種類のタイプがあります。Aタイプを持つ人は、潰瘍性大腸炎になりやすい傾向があることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関係する遺伝子
| 関係する遺伝子 | LINC02920 |
|---|---|
| 関係する遺伝子 | CIITA |
| 関係する遺伝子 | CTIF |
| 関係する遺伝子 | LINC02920 |
よくある質問
Q1. 潰瘍性大腸炎とは何ですか?
潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜に長く続く炎症が起こり、潰瘍やびらんができる「炎症性腸疾患」です。直腸から始まり、大腸全体に広がるのが特徴です。腹痛・血便・下痢などの症状があり、活動期(症状が出る時期)と寛解期(症状が落ち着く時期)をくり返します。日本では約22万人以上がこの病気にかかっており、国の指定難病になっています。
Q2. 潰瘍性大腸炎は遺伝子と関連していますか?
はい。ウェルカム・トラスト・サンガー研究所のAndersonらの研究(2011年、Nature Genetics掲載)により、DNA領域rs1297265が潰瘍性大腸炎のなりやすさと関係していることが分かっています。rs1297265にはAA・AG・GGの3つの遺伝子型があり、Aを持つ遺伝子型の人は発症しやすい傾向があります。
Q3. 潰瘍性大腸炎に関わる遺伝子型(rs1297265)は、日本人ではどのように分布していますか?
日本人のrs1297265の遺伝子型の分布はAA型69.1%、AG型27.9%、GG型2.8%です。世界全体ではAA型33.9%、AG型48.6%、GG型17.4%で、日本人はAA型の割合が世界平均の約2.0倍高いのが特徴です。
Q4. 潰瘍性大腸炎の主な症状は?
主な症状は血便・粘血便、腹痛、下痢(1日10回以上になることもある)、体重減少、疲れやすさ・だるさです。活動期(症状が強く出る時期)と寛解期(症状が落ち着く時期)をくり返すのが特徴で、ストレスや食生活の変化で悪くなることがあります。
Q5. 潰瘍性大腸炎とクローン病の違いは?
潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜だけに炎症が起こり、直腸からつながって広がります。一方、クローン病は口から肛門まで消化管全体のあちこちに、とびとびに炎症が起こり、粘膜だけでなく腸の壁の深いところまで広がります。かかりやすい年齢は、潰瘍性大腸炎が20~30代、クローン病が10~20代が中心です。
参考文献
- 参考リンク1 : 2011 Mar., Carl A Anderson, Nat Genet
- 参考リンク2 : 2010 Apr., Dermot P B McGovern, Nat Genet
- 参考リンク3 : 2015 Sep., Jimmy Z Liu, Nat Genet