白斑
- 白斑(尋常性白斑)とは、メラノサイト(色素細胞)の働きの異常によって皮膚が白くなる、自己免疫性(免疫が自分の体を攻撃する)の皮膚の病気であり、全人口の0.5%〜1%が発症します。
- 遺伝子FOXP3の近くにあるDNA領域rs5952553の「T」を持つ人は白斑の発症リスクが高く、日本人の約64%が発症しやすいタイプ(TT型+CT型)を持っています。
- 家族内で発症する割合は20〜30%と高く、紫外線・ケガ・ストレスなどの環境の影響と遺伝子の影響が重なることで、発症リスクが上がります。
概要
【概要・特徴】 「尋常性白斑」とは、皮膚の一部が白くなる病気です。肌の色のもと(色素)を作る細胞がうまく働かなくなることで起こります。 この病気は「白なまず」とも呼ばれています。マイケル・ジャクソンもこの病気にかかり、肌の色をファンデーションでそろえるのに苦労したといわれています。また、マイケル・ジャクソンの父や姉も「尋常性白斑」の患者だったことから、家族の中で発症する割合は20〜30%と考えられています。 「尋常性白斑」は、日焼けやケガ、やけどなどの皮膚への刺激やストレスといった環境の影響と、遺伝子の影響が重なることで起こりやすくなります。 厚生労働省によると、全人口の0.5%〜1%の人が発症していると考えられ、患者数は15万3千人と推定されています。(参考リンク 1) 「尋常性白斑」は人にうつる病気ではなく、命に直接関わる病気でもありません。ただし、体のどこにでも出る可能性があり、そのままにしておくと白い部分が次々とできて広がることがあります。 特に顔など人から見える部分に出ると、心のつらさにつながり、日常生活に影響することもあります。 「尋常性白斑」は、治療を早く始めるほど、また発症した年齢が若いほど、治療の効果が期待できます。 そのため、遺伝子検査で自分の遺伝子タイプを調べて「尋常性白斑」の発症リスクを知ることは、予防や早めの対策に役立つ可能性があります。
【2. 理論的根拠】 アメリカのコロラド大学医学部で行われた遺伝学の研究で、遺伝子「FOXP3」の近くにあるDNA領域「rs5952553」という部位が見つかりました。この部位のタイプによって、「尋常性白斑」を発症しやすい人がいることが分かりました。(参考リンク 2) DNA領域「rs5952553」には、「TT型」、「CT型」、「CC型」という3つの遺伝子型があります。 発症しやすさに関わる「T」を持つ「TT型」の人は尋常性白斑を発症しやすい傾向にあり、「CT型」の人はやや発症しやすい傾向があります。日本人の遺伝子タイプは、「CT型」が48.2%で最も多く、「CC型」が35.3%、「TT型」が16.5%で最も少ないことが分かっています。(参考リンク 3) 日本人の6割以上の人が「TT型」か「CT型」を持っているため、「尋常性白斑」を発症する可能性がありますが、必ず発症するわけではありません。環境の影響が重なることでリスクが高まるため、「CC型」の人も含めて、環境の影響に気をつける必要があります。 環境の影響には、皮膚への刺激やストレスなどが関係していると考えられています。そのため、日焼け止めを塗るなどの紫外線対策、皮膚を作るのに必要な栄養をとること、ストレスをためないことなど、自分で気をつけることが大切です。 遺伝子検査で自分の「尋常性白斑」の発症リスクを知ることで、生活や環境の面でリスクに備えることができます。
【3. メカニズム】 「尋常性白斑」の発症に関わる遺伝子「FOXP3」は、ヒトに共通する24の染色体のうち、X染色体の上にあります。 この遺伝子は、免疫細胞の一種である「T細胞」で働き、リンパ節やひ臓、虫垂など、体を守るしくみ(免疫)を担う組織に多く存在しています。(参考リンク 4) また、「FOXP3」は、「制御性T細胞」という細胞が育つために重要な役割を持っています。制御性T細胞は、免疫が働きすぎるのを抑えて、免疫が自分の体を攻撃してしまう病気(自己免疫疾患)を防ぐ細胞です。(参考リンク 5) 遺伝子「FOXP3」が「尋常性白斑」にどのように関わるのか、直接のしくみはまだ分かっていません。しかし、「TT型」「CT型」の遺伝子型を持つ場合、免疫細胞にブレーキがかからずに働き続け、色素を作る細胞まで攻撃してしまうため、メラニン色素(肌の色のもと)が作られにくくなると考えられています。 その結果、肌の色が白く抜けて白斑ができると考えられます。 以上のことから、DNA領域「rs5952553」は「尋常性白斑」の発症に関係する、注目の遺伝子の個人差(一塩基多型)のひとつとされています。
白斑(尋常性白斑)とは何か
白斑(尋常性白斑)とは、皮膚の色のもとを作るメラノサイト(色素細胞)の働きが弱まったりなくなったりして、皮膚の一部が白くなる自己免疫性の皮膚の病気です(自己免疫とは、免疫が自分の体を攻撃してしまうことです)。「白なまず」とも呼ばれ、命に直接関わる病気ではありませんが、体のどこにでも出る可能性があり、そのままにしておくと白い部分が広がることがあります。
白斑になる人の割合と患者数
厚生労働省の報告によると、白斑になる人の割合と患者数は次のとおりです。
- 発症する割合:全人口の0.5%〜1%
- 推定患者数:約15万3千人(日本国内)
- 家族内で発症する割合:20〜30%(マイケル・ジャクソンの父・姉も発症)です。
- 感染性:なし(人から人へうつらない)
白斑が生活に与える影響
白斑は命に直接関わる病気ではありませんが、次のような影響があります。
- 外見上の変化:顔や手など人から見える部分に白斑が出ると、心のストレスになります。
- 広がりやすさ:そのままにすると白斑が次々と出て、広がることがあります。
- 早めの治療の大切さ:治療を早く始めるほど、発症した年齢が若いほど治療の効果が高いです。
白斑の原因の比較
| 要因分類 | 具体的な要因 | 影響度 |
|---|---|---|
| 遺伝子の影響 | FOXP3遺伝子(rs5952553)のタイプの違い | 家族内で発症する割合20〜30% |
| 環境の影響(物理的な刺激) | 日焼け・ケガ・やけどなどの皮膚への刺激 | 発症のきっかけになります。 |
| 環境の影響(心理的) | 心のストレス | 免疫の異常を引き起こす |
| 自己免疫(免疫が自分を攻撃) | 制御性T細胞がうまく働きません。 | メラノサイト(色素細胞)がこわされます。 |
遺伝子と白斑の発症リスクの関係
DNA領域rs5952553と白斑の関係
アメリカ・コロラド大学医学部のYing Jinらの研究(2016年、Nature Genetics掲載)により、遺伝子FOXP3の近くにあるDNA領域rs5952553が、白斑の発症リスクと関係していることが分かりました。
- rs5952553にはTT・CT・CCの3つの遺伝子型があります。
- 発症しやすさに関わる「T」を持つTT型の人は白斑の発症リスクが高いです。
- CT型の人はやや発症リスクが高い傾向があります。
- CC型の人はリスクが比較的低いです。
日本人と世界の遺伝子型の割合の比較(rs5952553)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| CC型(低リスク) | 35.8% | 24.8% |
| CT型(やや高リスク) | 48.0% | 49.9% |
| TT型(高リスク) | 16.1% | 25.1% |
日本人で「T」を持つ人(TT+CT)の割合は64.1%であり、世界平均の75.0%と比べるとやや低い割合です。一方、CC型(低リスク)の割合は日本人が35.8%と世界平均の24.8%より約1.4倍高く、日本人の遺伝子の特徴を表しています。
白斑に関わるその他のDNA領域
白斑の発症には、rs5952553のほかにも次のDNA領域が関わっています。
| DNA領域 | 関連遺伝子 | 日本人に多い遺伝子型 |
|---|---|---|
| rs2476601 | PTPN22 | GG型 99.9% |
| rs73456411 | IL1RAPL1 | GG型 99.9% |
日本人では、rs2476601とrs73456411で発症しやすさに関わるタイプを持つ人はとても少ないため、これらの領域が日本人の白斑の発症リスクに与える影響は小さいと考えられます。
白斑が起こるしくみ(メカニズム)
遺伝子FOXP3はなぜ白斑に関係するのか
遺伝子FOXP3は、ヒトの24の染色体のうちX染色体の上にあり、免疫の働きすぎを抑える「制御性T細胞」が育つために重要な役割を持っています。
- FOXP3の働き:免疫細胞の一種「T細胞」で働き、リンパ節・ひ臓・虫垂などの免疫に関わる組織にあります。
- 制御性T細胞の役割:免疫の働きすぎを抑え、自己免疫疾患(免疫が自分の体を攻撃する病気)を防ぎます。
- 白斑との関連:TT型・CT型の遺伝子型では、制御性T細胞の働きが弱まります。
白斑が起こるしくみ(段階別)
- 遺伝子の影響:rs5952553の「T」によって、FOXP3遺伝子の働き方が変わります。
- 免疫の異常:制御性T細胞がうまく働かず、免疫細胞にブレーキがかからなくなります。
- メラノサイトへの攻撃:免疫細胞がメラノサイト(色素を作る細胞)を異物とまちがえて攻撃します。
- 色が抜ける:メラニン色素(肌の色のもと)が作られにくくなり、皮膚に白斑が出ます。
以上のことから、DNA領域rs5952553は、白斑の発症に深く関わる遺伝子の個人差(一塩基多型)のひとつとして注目されています。
白斑の予防法と対策
白斑のリスクを減らすための生活習慣
遺伝子検査で自分のリスクを知ったうえで、次のような環境の影響に気をつけることが大切です。
- 紫外線対策:日焼け止め(紫外線を防ぐ強さを示す「SPF」が30以上のもの)を毎日塗ります。
- 皮膚への刺激を避ける:ケガ・やけど・こすれなど、皮膚への強い刺激を避けます。
- 栄養管理:ビタミンD・ビタミンB12・葉酸など、皮膚の色素づくりに関わる栄養をとります。
- ストレス管理:適度な運動・十分な睡眠・リラックスで心のストレスを減らします。
- 早期受診:皮膚に白い斑点が出たら、早めに皮膚科を受診します。
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:白斑
白斑に最も強く影響するDNA領域は、rs5952553です。 日本における各遺伝子タイプの割合は下のとおりです。
- CC
35.8 % - CT
48.0 % - TT
16.1 %
ほかに、白斑に関わるDNA領域としてrs2476601があります。 日本における各遺伝子タイプの割合は下のとおりです。
- AA
0.1%以下 - AG
0.1%以下 - GG
99.9 %
ほかに、白斑に関わるDNA領域としてrs73456411があります。 日本における各遺伝子タイプの割合は下のとおりです。
- GG
99.9 % - GT
0.1%以下 - TT
0.1%以下
検査の根拠
コロラド大学医学部のYing Jinらの研究により、白斑の発症に遺伝子が関わっていることが分かりました。遺伝子FOXP3の近くにあるDNA領域rs5952553には、TT・CT・CCの3つの遺伝子型があります。「T」を持つ遺伝子型(TT型・CT型)の人は、免疫の働きすぎを抑える「制御性T細胞」の働きが弱まり、メラノサイト(色素を作る細胞)が免疫に攻撃されやすくなるため、白斑の発症リスクが高い傾向にあります。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | GAGE1 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | PTPN22 |
| 関連遺伝子 | IL1RAPL1 |
よくある質問
Q1. 白斑(尋常性白斑)とは何ですか?
白斑(尋常性白斑)とは、皮膚の色のもとを作るメラノサイト(色素細胞)の働きが弱まったりなくなったりして、皮膚の一部が白くなる自己免疫性の皮膚の病気です(自己免疫とは、免疫が自分の体を攻撃してしまうことです)。「白なまず」とも呼ばれ、全人口の0.5%〜1%が発症し、日本国内の患者数は約15万3千人と推定されています。命に直接関わる病気ではありませんが、そのままにしておくと白い部分が広がることがあります。
Q2. 白斑の発症に遺伝子は関係していますか?
はい。コロラド大学医学部のYing Jinらの研究(2016年、Nature Genetics)により、遺伝子FOXP3の近くにあるDNA領域rs5952553が、白斑の発症リスクと関係していることが分かっています。rs5952553にはTT・CT・CCの3つの遺伝子型があり、「T」を持つ遺伝子型(TT型・CT型)の人は白斑の発症リスクが高い傾向にあります。
Q3. 白斑に関わる遺伝子型(rs5952553)は、日本人ではどのような割合ですか?
日本人におけるrs5952553の遺伝子型の割合はCC型35.8%、CT型48.0%、TT型16.1%です。日本人の約64%が、発症しやすさに関わる「T」を持っています。世界全体ではCC型24.8%、CT型49.9%、TT型25.1%で、日本人はTT型の割合が世界の平均より低いのが特徴です。
Q4. 白斑は予防できますか?
白斑を完全に予防するのは難しいですが、環境の影響に気をつけることで発症リスクを下げることができます。具体的には、日焼け止めで紫外線を防ぐこと、皮膚に強い刺激を与えないこと、適度な運動やリラックスでストレスをためないこと、ビタミンD・ビタミンB12・葉酸などの栄養をとることが役立ちます。
Q5. 白斑の治療法にはどのようなものがありますか?
白斑の主な治療法には、紫外線療法(効果の高い波長の紫外線だけを当てるナローバンド療法)、ステロイドの塗り薬、タクロリムスの塗り薬、エキシマレーザー療法、皮膚移植術などがあります。治療を早く始めるほど、また発症した年齢が若いほど、治療の効果が高いとされています。
参考文献
- 参考リンク1 : 「先天性及び後天性の難治性白斑・白皮症(平成23年度) 」の情報 難病情報センター
- 参考リンク2 : 2016 Oct., Ying Jin, Nature Genetics.
- 参考リンク3 : DNA 領域「rs5952553」の情報 アメリカ国立衛生研究所
- 参考リンク4 : 遺伝子「FOXP3」の情報 アメリカ国立衛生研究所
- 参考リンク5 : 2020., 中島啓, 日本アレルギー学会.
- 参考リンク6 : 2016 Nov., Ying Jin, Nat Genet
- 参考リンク7 : 2010 May., Ying Jin, N Engl J Med