歩く速さ
- 歩く速さ(歩行バランス)はDNA領域rs80092143のC型と関係しており、C型を持つ人は歩く速さが遅い傾向があることがエラスムス医療センターの研究でわかりました。
- LINC01049遺伝子の近くのrs80092143では、GGタイプは片足で立っていられる時間が長く歩行バランスが安定し、CCタイプは不安定な傾向があります。
- 日本人のCC型保有率は79.9%で、世界平均の78.3%とほぼ同じくらいの分布です。
概要
【概要】 歩行バランスは、毎日の生活で大切な役割を持つ体の働きの一つです。 特にお年寄りでは、歩行バランスが落ちると、健康上の問題につながることがあります。
【特徴】 歩くときには、両足が地面についている時間(両足支持期)と、片足だけで体を支えている時間(単脚支持期)があります。片足で体を支え続ける力は、安全に暮らすために欠かせません。 歩行バランスには、遺伝子の影響のほか、年齢、性別、身長、体重、考える力(認知機能)、病気などがからみ合って関わっています。 最近の研究では、歩行バランスに関わる遺伝子がいくつか見つかっており、お年寄りが片足で立っていられる時間と関係する、LINC01049遺伝子の近くの場所が注目されています。 お年寄りが片足で立っていられる時間が長いことと、LINC01049遺伝子の近くの場所が関係していることがわかりました。
【メカニズム】 (参考リンク1) この遺伝子の働きはまだよくわかっていませんが、今後の研究で、歩行バランスを保つのに必要な遺伝子や、その働きがわかってくると期待されています。 その結果、お年寄りの健康を守るための新しい治療法や予防法が生まれることが期待されています。 研究の根拠 オランダのエラスムス大学医療センターでの共同研究により、お年寄りが片足で立っていられる時間に影響する、LINC01049遺伝子の近くにある特定のタイプがわかりました。 この場所は「rs80092143」と呼ばれ、3つの遺伝子型があります。 GGタイプの人は片足で立っていられる時間が長く(お年寄りになっても歩行バランスが安定)、CGタイプの人はやや短い(お年寄りになると歩行バランスがやや不安定)傾向があることがわかっています。
【科学的根拠】 (参考リンク2) ただし、日本人の遺伝子型は、CCタイプが最も多く76.4%、CGタイプが22.0%、GGタイプが最も少なく1.6%で、遺伝子タイプだけで歩行バランスが決まるわけではありません。 (参考リンク3) 歩行バランスは生活環境の影響を大きく受けるため、遺伝子タイプだけで決まるものではありません。 歩行バランスを保つには、筋力と関節のやわらかさが大切です。年齢に合ったトレーニングやストレッチ、栄養バランスのよい食事などが必要です。 遺伝子検査で自分の遺伝子タイプを知ることは、自分の力を伸ばしたり、早めに対策を始めたりするきっかけになるかもしれません。 働くしくみ LINC01049遺伝子は、人の24種類の染色体のうち、13番染色体にあります。 この遺伝子は、精巣や肺などの臓器で働いていることが知られていますが、足の筋肉(ふくらはぎの腓腹筋など)でも働いていることがわかっています。 (参考リンク4) しかし、LINC01049が体の中で何をしているのか、歩行バランスにどう関わるのかは、まだわかっていません。 ただ、LINC01049は細胞分裂など、体の中のさまざまな反応に関わっている可能性があります。そのため、LINC01049の近くにあるrs80092143の遺伝子タイプが、年をとることによる筋力の低下に影響し、歩行バランスと関係している可能性があると考えられています。 (参考リンク5、6) このように、「rs80092143」は、年をとってからの歩行バランスと関係するDNA領域の一つとして注目されています。
歩く速さ(歩行バランス)とは何か
歩く速さ(歩行バランス)とは、歩くときに体のバランスを保ちながら移動する力を表す、体の働きの目安です。歩行バランスは毎日の生活の安全と直接つながっており、特にお年寄りにとっては、転倒の危険や健康に過ごせる期間(健康寿命)に影響する大切な要素です。
歩行バランスが重要な理由
歩行バランスが落ちると、お年寄りの転倒・骨折・寝たきりの原因になります。歩くときに片足で体を支え続ける力は、安全な毎日の生活に欠かせません。
- 歩くときの足の動き:両足で支える時間と片足で支える時間からなり、片足で支える時間の長さが安定性の目安になります。
- 影響因子:遺伝子の影響・年齢・性別・身長・体重・考える力(認知機能)・病気などが一緒に関わります。
- 高齢者の転倒リスク:歩行バランスの低下は、毎年お年寄りの約30%が経験する転倒の主な原因です。
歩行バランスに影響する要因の比べ
| 影響要因 | 具体的な影響 | よくできるか |
|---|---|---|
| 遺伝子の影響 | LINC01049遺伝子の近くのrs80092143が歩行バランスに関わります。 | 遺伝子型は変わりませんが、早めの対策に役立ちます。 |
| 筋力 | 足の筋力が落ちると、歩く速さやバランスが直接落ちます。 | 筋力トレーニングでよくできます。 |
| 関節の柔軟性 | 足首・膝・股関節が動かしにくいと歩き方に影響します。 | ストレッチでよくできます。 |
| 栄養の状態 | たんぱく質・カルシウムが足りないと筋肉や骨が衰えやすくなります。 | 食事を見直して対応できます。 |
遺伝子と歩く速さの関連
DNA領域rs80092143と歩行バランスの関係
オランダのエラスムス大学医療センターでのAdamsらの共同研究(2015年)により、DNA領域rs80092143が、お年寄りの歩行バランス(片足で立っていられる時間)と関係していることがわかりました。
- rs80092143にはCC・CG・GGの3つの遺伝子型があります。
- GGタイプの人は片足で立っていられる時間が長く、歩行バランスが安定しています。
- CGタイプの人は片足で立っていられる時間がやや短く、歩行バランスがやや不安定です。
- C型を持つ人(CC型・CG型)は歩く速さが遅い傾向があります。
日本人と世界の遺伝子型の分布の比べ(rs80092143)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| CC型 | 79.9% | 78.3% |
| CG型 | 18.9% | 20.3% |
| GG型 | 1.1% | 1.3% |
日本人のCC型保有率は79.9%で、世界平均の78.3%とほぼ同じです。GG型(歩行バランスが安定する傾向)は日本人で1.1%、世界平均で1.3%と、どちらも少ない割合です。
LINC01049遺伝子が働くしくみ
LINC01049遺伝子は13番染色体にある、たんぱく質の設計図にはならないタイプの遺伝子です。精巣・肺などの臓器だけでなく、足の筋肉(ふくらはぎの腓腹筋など)でも働いています。
- 染色体位置:人の24種類の染色体のうち13番染色体
- 働いている場所:精巣・肺・腓腹筋(ふくらはぎの筋肉)などです。
- 考えられる働き:細胞分裂などの体の中の反応に関わり、年をとることによる筋力の低下に影響する可能性があります。
- 研究の状況:体の中での働きや、歩行バランスに関わるしくみはまだわかっていません。
LINC01049の近くにあるrs80092143の遺伝子タイプが、年をとることによる筋力の低下に影響し、年をとってからの歩行バランスと関係している可能性があると報告されています。
検査の根拠となる研究
代表的なDNA領域:歩く速さ
歩く速さに最も強く影響するDNA領域は、rs80092143です。 日本でのこの場所の遺伝子タイプの分布は下のとおりです。
- CC
79.9 % - CG
18.9 % - GG
1.1 %
検査の根拠
エラスムス医療センターのAdamsらの研究により、歩く速さが遺伝子と関係していることがわかりました。人の全遺伝情報(ゲノム)にはrs80092143という場所があり、そこにはCとGの2種類のタイプがあります。Cタイプを持つ人は、歩く速さが遅い傾向があることがわかりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図(イメージ図)
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | KRT18P27 |
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よくある質問
Q1. 歩く速さは遺伝子でどのように決まりますか?
歩く速さはDNA領域rs80092143と関係しています。エラスムス医療センターのAdamsらの研究(2015年)により、rs80092143にはCC・CG・GGの3つの遺伝子型があり、C型を持つ人は歩く速さが遅い傾向があることがわかりました。日本人でCC型を持つ人の割合は79.9%です。
Q2. 歩行バランスに影響する遺伝子は何ですか?
LINC01049遺伝子の近くのrs80092143という場所が歩行バランスに影響します。GGタイプの人は片足で立っていられる時間が長く、歩行バランスが安定しています。CGタイプの人はやや不安定な傾向があります。ただし、日本人でGGタイプの人は1.1%と少数です。
Q3. rs80092143の遺伝子型は、日本人ではどのように分布していますか?
日本人でのrs80092143の遺伝子型の分布はCC型79.9%、CG型18.9%、GG型1.1%です。世界全体ではCC型78.3%、CG型20.3%、GG型1.3%で、日本人と世界でほぼ同じくらいの分布です。
Q4. 歩行バランスをよくする方法はありますか?
歩行バランスをよくするには、次の方法が役立ちます。
- 筋力トレーニング:スクワット・片足立ち・かかと上げなどで足の筋力を強くします。
- ストレッチ:足首・膝・股関節をやわらかくし、動かせる範囲を保ちます。
- 栄養管理:たんぱく質・カルシウム・ビタミンDをとれる食事で、筋肉と骨を保ちます。
- 遺伝子検査:自分の遺伝子タイプを知り、早めに予防を始めます。
参考文献
- 参考リンク1 : 2016年, 千鳥司浩, 理学療法科学
- 参考リンク2 : 2015 Jul., Hieab H H Adams, J Gerontol A Biol Sci Med Sci
- 参考リンク3 : DNA領域「rs80092143」の情報 アメリカ国立衛生研究所
- 参考リンク4 : 遺伝子「LINC01049」の情報 Bgee
- 参考リンク5 : 2017年3月, Piero Carninci, ハリー・パーキンス医療研究所
- 参考リンク6 : 2017年5月, 向井陵一郎, 日本理学療法学術大会
- 参考リンク7 : 2016 Jun., Hieab H H Adams, J Gerontol A Biol Sci Med Sci