【医師が解説】NIPT(新型出生前検査)はいつから受けられる?妊娠10週以降が推奨される医学的根拠
- NIPT(新型出生前検査)は妊娠10週以降から受けることができます。
- 正確な解析には、母体血液中の胎児DNA割合(胎児分画)が4%以上必要です。
- 万が一の高リスク判定に備え、妊娠10〜13週頃の早期受検が推奨されます。
- 確率を出すスクリーニング検査であるため、遺伝カウンセリングの活用が重要です。
1.検査はいつから受けられますか?

妊娠が判明し、出生前検査を検討し始めたとき、多くの方が最初に抱く疑問の一つが「NIPTはいつから受けられるのか」というものではないでしょうか。
NIPT(新型出生前検査)は、母体の血液を採取するだけで胎児の染色体異常のリスクを調べられる検査です。流産リスクのある羊水検査や絨毛検査とは異なり、母体への負担が少なく、流産リスクを伴わない検査として、近年注目を集めています。
この検査を受けるタイミングは、単なる「都合の良い日程」の問題ではありません。検査を受ける時期によって、検査結果の精度が左右されるほか、その後の選択肢の幅も変わってきます。本記事では、NIPTをいつから受けることができるのか、またその医学的根拠について、わかりやすく解説します。
2.NIPTは妊娠何週から受けられる?推奨される検査時期

NIPTは、妊娠10週以降から受けることができます。これは日本国内の認定施設・非認定施設を問わず、国際的に広く採用されている基準です。 推奨される検査の時期は、妊娠10〜13週ごろとされることが多く、この時期に受けることには以下のような臨床的メリットがあります。 まず、超音波検査による胎児後頸部浮腫(NT:Nuchal Translucency)の計測と組み合わせた総合的なリスク評価が行いやすいという点が挙げられます。NT計測は妊娠11〜13週に行われることが多く、NIPTとほぼ同時期に受けることで、より多角的な情報を得ることができます。 次に、結果を受け取った後の意思決定に十分な時間を確保できるという点が挙げられます。万が一、高リスクの結果が出た場合でも、羊水検査・絨毛検査などの確定的検査を経て、次のステップについてゆっくり考える時間的余裕が生まれます。 なお、多くの施設では妊娠後期まで検査を受けることはできますが、上記の理由から、できる限り妊娠初期のうちに受けることが推奨されます。
3.なぜ妊娠10週以降なのか?学術論文から見る医学的根拠
NIPTが妊娠10週以降でなければ実施できない理由は、検査精度を左右する「胎児分画(FF:Fetal Fraction)」の濃度にあります。 FFとは、母体血液中に含まれる全DNAのうち、胎盤由来の胎児DNAが占める割合のことです。NIPTでは、このFFが一定水準(一般的に4%以上)に達していなければ、正確な解析を行うことができません。一般に妊娠10週頃になると、この基準を満たす妊婦が大多数を占めるようになります(1)。 FFは妊娠週数が進むにつれて上昇します。22,384例の妊婦を対象とした研究において、妊娠10週0日〜10週6日の時点におけるFFの中央値は10.2%であり、妊娠10〜21週では週あたり約0.1%ずつ増加することが報告されています(2)。 なお、母体のBMIが高い場合にはFFが相対的に低下しやすいことも報告されており(3)、体格によっては10週ちょうどでは胎児分画が不十分となる場合もあります。担当医と相談のうえ、適切な時期に検査を受けることが重要です。
4.NIPTを受ける前に知っておきたい3つのポイント

NIPTを受ける時期について理解したうえで、検査前に押さえておきたい重要なポイントを3つご紹介します。
① NIPTは「診断」ではなく「スクリーニング」である
NIPTの結果は、あくまでも確率的なリスク評価です。結果が高リスクであっても、それはその染色体異常の可能性が高いことを示すものであり、確定診断ではありません。高リスクの結果が出た場合は、羊水検査や絨毛検査などの確定的検査によって診断を確認する必要があります。また、低リスクであっても、すべての染色体異常や先天性疾患を否定できるわけではない点も理解しておくことが大切です。
② 検査前後の遺伝カウンセリングを活用する
NIPTを受ける際には、検査前に検査の目的・意義・限界について十分な説明を受けることが推奨されています。また、高リスクの結果が出た場合には、その後の意思決定を適切にサポートしてもらうために、遺伝カウンセラーや専門医との面談を受けることが重要です。検査を受ける施設が、遺伝カウンセリング体制を整えているかを事前に確認しておきましょう。
③ 双胎妊娠など一部の妊娠では解釈が複雑になることがある
双胎妊娠(双子)の場合は、単胎妊娠と比較してNIPTの解釈が難しくなることがあります(4)。双子の場合は、事前に担当医に相談したうえで、検査を受けるかどうかを判断することが大切です。
5.適切な時期にNIPTを受けるために

NIPTは、妊娠10週以降から受けることができます。これは、胎児由来のDNAが母体血液中で検査に必要な濃度に達するのが妊娠10週ごろであるという、複数の大規模研究に基づく医学的根拠によるものです。 検査を受けるタイミングは、早すぎると十分な検査精度が得られない可能性があり、遅すぎると結果を踏まえた意思決定の時間が限られてしまいます。妊娠10〜13週ごろを目安に、まずは医療機関への相談を検討されることをお勧めします。 NIPTはあくまでもスクリーニング検査であることを念頭に置きつつ、検査前のカウンセリングを十分に受け、ご自身とご家族にとって納得のいく形で出生前検査に臨んでいただければと思います。
6.参考文献
[1] Ultrasound Obstet Gynecol. 2013 Feb. https://doi.org/10.1002/uog.12331
[2] Prenatal Diagnosis. 2013 Jul. https://doi.org/10.1002/pd.4119
[3] Human Genomics. 2019 Dec. https://doi.org/10.1186/s40246-019-0244-0
[4] Prenatal Diagnosis. 2020 Nov. https://doi.org/10.1002/pd.5609
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著者
医学博士・医師 広重 佑(ひろしげ たすく)
医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本抗菌化学療法学会認定医、性感染症学会認定医、Certificate of da Vinci system Training As a Console Surgeonほか
2010年に鹿児島大学医学部を卒業後、泌尿器科医として豊富な臨床経験を持つ。また、臨床業務以外にも学会発表や論文作成、研究費取得など学術活動にも精力的に取り組んでいる。泌尿器科専門医・指導医をはじめ、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得。これまで培った豊富な医学知識と技術を活かして、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供している。