リライティング日:2025年01月08日
出生前DNA鑑定では妊娠6週目から胎児DNAが母体血中に検出可能となり、鑑定に十分な量が得られるのは妊娠7週目以降です。採血時期と胎児DNA量の関係を詳しく解説します。
出生前DNA鑑定の採血はいつからできる?妊娠6週未満の血液では鑑定できない理由
出生前DNA鑑定をご検討中の方にとって、「いつから採血できるのか」は最も気になるポイントの一つでしょう。結論から申し上げると、妊娠6週目未満の血液では出生前DNA鑑定を行うことはできません。これは、胎児由来のDNAが母親の血液中に十分な量で存在していないためです。
出生前鑑定では、妊娠中の女性の血液中に含まれる胎児のDNAと男性のDNAを比較し、その男性が胎児の生物学的な父親かどうかを調べています。一般的に、妊娠6週目から胎児のDNAが母親の血液中に流れ始め、妊娠期間に比例して血液中の胎児のDNA量が増えていき、妊娠14週目以降はほぼ一定になると言われています(1)。
この記事では、出生前DNA鑑定における採血の適切なタイミングについて、妊娠初期の胎児の発達過程や母体血中の胎児DNA(cell-free fetal DNA:cffDNA)の動態を踏まえながら、科学的な根拠に基づいて詳しく解説いたします。
胎児のDNAが母親の血液中に流れ始めるのはなぜ妊娠6週目から?
突然ですが、ここで問題です。なぜ胎児のDNAが母親の血液中に流れ始めるのは妊娠6週目なのでしょうか?もっと早い時期から胎児のDNAが流れていてもいいのではないかと思いますよね。
この問題を解くには、妊娠期間中に胎児がどのように発達しているのかを知る必要があります。以下に、妊娠初期の重要なステップを時系列で整理してみましょう。
妊娠週数の数え方と妊娠初期の発達過程
世界保健機関(WHO)では、最後の月経が始まった日を妊娠初日、つまり「(満)0週0日」と定義しています(2)。この定義は世界共通であり、日本の産婦人科でも同様の基準が採用されています。
そして、「0週0日」目の約2週間後に、将来受精卵となり胎児へと成長する卵子が排卵されます。つまり、妊娠0~2週目の間は、実際にはまだ受精すら起きていない状態です。この点は意外に思われる方も多いのですが、妊娠週数のカウント方法を理解する上で非常に重要なポイントです。
受精から着床まで6~12日かかるので、妊娠3~4週目にようやく妊娠が成立します。着床し、妊娠が成立すると胎盤やへその緒が作られはじめ、受精卵は急速に発達して「胎芽」となり、妊娠9週目に「胎児」となります注1。
- 妊娠0~2週目:最終月経から排卵まで。まだ受精は起きていない
- 妊娠2~3週目:排卵・受精が起こり、受精卵が卵管を通って子宮へ移動
- 妊娠3~4週目:着床が完了し、妊娠が成立。胎盤の形成が始まる
- 妊娠4~5週目:一般の妊娠検査薬で陽性反応が出始める時期
- 妊娠6週目:エコーで胎児の心拍が確認でき、母体血中に胎児DNAが検出可能になる
- 妊娠7週目以降:DNA鑑定に使用できるレベルの胎児DNA量が確保される
ちなみに、一般の妊娠検査薬で陽性反応が出るのが妊娠4~5週目ごろで、エコーで胎児の心拍が確認できるのが妊娠6週目ごろとされています。心拍の確認は、胎児が順調に発達していることの重要な指標であり、出生前DNA鑑定の採血タイミングを判断する上でも参考となります。
妊娠3~4週目では、微量すぎて検知できません
母親の血液中に胎児のDNAが存在するのは、胎盤を通して胎児由来の細胞が母親の血液中に流れ込むからです注2。この母体血中を循環する胎児由来のDNA断片は「セルフリー胎児DNA(cell-free fetal DNA:cffDNA)」と呼ばれ、主に胎盤のトロホブラスト(栄養膜細胞)がアポトーシス(細胞の自然死)を起こす過程で母体の血液循環中に放出されます(3)。
胎盤やへその緒の形成がはじまった妊娠3~4週目でも胎児由来のDNAが母親の血液に流れ出しているでしょうが、微量すぎて検知できません。これは、妊娠初期の段階では胎盤がまだ十分に発達しておらず、母体血液中に放出される胎児DNA断片の量が極めて少ないためです。
母体血中の胎児DNA量と妊娠週数の関係
妊娠週数を重ねるうちに母体血中の胎児のDNAは量を増していき、ようやく妊娠6週目で検出できるようになり、7週目になるとDNA鑑定で使用できるほどになります。研究によると、母体血漿中のcffDNAの割合(fetal fraction)は妊娠初期(第1トリメスター)で約3~10%程度とされており、妊娠週数が進むにつれて増加していきます(4)。妊娠14週目以降はほぼ一定の割合に安定し、出産直前には最大で20%を超えるケースもあるとされています。
しかし、母体血中の胎児のDNA量は個人差が大きく、同じ妊娠週数の方でも血縁関係を判定できる量があるかどうかは、実際に検査してみないとわかりません。胎児DNA量に影響を与える要因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 母体のBMI(体格指数):BMIが高いほど母体由来のDNA量が増加し、相対的に胎児DNAの割合が低下する傾向がある
- 胎盤の大きさや状態:胎盤の発達状況によって放出されるcffDNA量が異なる
- 妊娠週数の誤差:生理周期の不順などにより、実際の妊娠週数と計算上の週数にずれが生じることがある
- 多胎妊娠:双子以上の場合は胎児DNA量の解釈が異なる場合がある
- 子宮外妊娠や胎児の状態:子宮外妊娠や採血時にすでに胎児が亡くなられていた場合は、母体血中の胎児のDNAは検出できない
妊娠7週目未満での採血に関するリスクと注意事項
稀に妊娠7週目未満で血液をご提出される方がいらっしゃいますが、胎児のDNAが抽出できないため再鑑定となってしまうリスクが高い上に、弊社の無料再検査や返金保証の対象外となります。出生前DNA鑑定は費用も決して安くはありませんので、正確な結果を一度で得るためにも、必ず妊娠7週目以降に採血を行うことが重要です。
DNA鑑定できるのは妊娠7週目以降
まとめると、妊娠が成立するのは妊娠3~4週目で、徐々に母体血中の胎児のDNA量が増えていき、DNA鑑定できるのは妊娠7週目以降となります。
事前に産婦人科でエコーを撮り、正常妊娠であることを確認後、妊娠7週目に入ってから採血を行っていただければと思います。正常妊娠の確認は、子宮外妊娠などの異常がないことを確かめるためにも欠かせないステップです。
そして、生理周期や最終生理日、排卵日などによる妊娠期間の計算は正確ではないので、必ず産婦人科で妊娠期間をご確認ください。産婦人科での超音波検査(エコー)による胎児の大きさの測定が、最も正確な妊娠週数の判定方法です(5)。
出生前DNA鑑定の採血前に確認すべきポイント
出生前DNA鑑定を確実に成功させるために、採血前に以下のポイントを必ずご確認ください。
- 産婦人科で超音波検査を受け、正常な子宮内妊娠であることを確認する
- エコーで胎児の心拍が確認されていることが望ましい
- 妊娠週数は自己計算ではなく、産婦人科で医師に確認してもらう
- 妊娠7週目以降(できれば8週目以降が理想的)に採血を行う
- 不明点がある場合は、事前にseeDNAの専門スタッフに相談する
cffDNA(セルフリー胎児DNA)の科学的背景
母体血中に存在する胎児由来のDNA断片(cffDNA)は、1997年にDennis Loらの研究グループによって初めて発見されました(6)。この画期的な発見以降、cffDNAを利用した非侵襲的な出生前検査技術は飛躍的に進歩し、現在ではNIPT(Non-Invasive Prenatal Testing:非侵襲的出生前遺伝学的検査)や出生前DNA親子鑑定など、さまざまな検査に応用されています。
cffDNAは主に胎盤の栄養膜細胞(トロホブラスト)から放出されるもので、母体血漿中のセルフリーDNA(cfDNA)全体のうち一定の割合を占めています。このcffDNAは非常に短い断片(約150塩基対程度)であることが特徴で、母体由来のcfDNAよりも断片が短い傾向にあります(7)。この特性を利用して、母体のDNAと胎児のDNAを区別し、DNA鑑定に必要な遺伝情報を取得することが可能となっています。
また、cffDNAは分娩後には急速に母体血中から消失し、通常2時間以内にほぼ検出されなくなることが報告されています(4)。これは、cffDNAが肝臓や腎臓で速やかに分解・排出されるためであり、前回の妊娠時の胎児DNAが次回の検査に影響を与える心配はありません。
妊娠週数ごとの胎児DNA量の変化まとめ
以下に、妊娠初期における主な変化と胎児DNA量の状態を簡潔にまとめます。
| 妊娠週数 | 胎児の発達状態 | 母体血中の胎児DNA |
|---|---|---|
| 0~2週 | 排卵前(受精前) | 存在しない |
| 3~4週 | 着床・胎盤形成開始 | 微量すぎて検出不可 |
| 6週目 | 心拍確認可能 | 検出可能になる |
※妊娠7週目以降にDNA鑑定が可能となり、14週目以降は胎児DNA量がほぼ安定します。
注1:弊社のホームページでは妊娠9週未満でも「胎児」という表記で統一しています。
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よくあるご質問
Q1. 出生前DNA鑑定の採血は妊娠何週目から可能ですか?
A. 母体血中の胎児DNAが鑑定に十分な量に達するのは妊娠7週目以降です。妊娠6週目でも胎児DNAの検出は可能になりますが、鑑定精度を確保するために妊娠7週目以降の採血を推奨しています。事前に産婦人科でエコー検査を受け、正常妊娠と妊娠週数を確認してから採血を行ってください。
Q2. なぜ妊娠6週目未満の血液では鑑定できないのですか?
A. 胎児のDNAは胎盤を通して母体の血液中に流れ込みますが、妊娠初期は胎盤の発達が十分ではなく、母体血中の胎児DNA量が極めて微量です。妊娠6週目になるとようやく検出可能なレベルに達しますが、DNA鑑定で正確な結果を得るには妊娠7週目以降の十分なDNA量が必要です。
Q3. 妊娠7週目未満で採血した場合はどうなりますか?
A. 胎児のDNAが十分に抽出できず、再鑑定が必要になるリスクが高くなります。また、seeDNAの無料再検査や返金保証の対象外となるため、費用面でも不利益が生じます。正確な結果を一度で得るためにも、必ず妊娠7週目に入ってから採血をお願いいたします。
Q4. 母体血中の胎児DNA量には個人差がありますか?
A. はい、胎児DNA量には大きな個人差があります。母体のBMI(体格指数)、胎盤の状態、妊娠週数の正確性などが影響するため、同じ妊娠週数であっても胎児DNA量は異なります。そのため、十分な量の胎児DNAが得られるかどうかは、実際に検査してみるまでわかりません。
Q5. 自分で計算した妊娠週数を基に採血してもよいですか?
A. 生理周期や最終生理日、排卵日からの自己計算による妊娠週数は正確ではない場合があります。必ず産婦人科で超音波検査(エコー)を受け、医師に妊娠週数を確認してもらった上で採血の時期を決定してください。正確な妊娠週数の把握が、鑑定の成功率を高める重要なポイントです。
Q6. 子宮外妊娠や流産の場合でも出生前DNA鑑定は可能ですか?
A. 子宮外妊娠の場合や、採血時にすでに胎児が亡くなられていた場合は、母体血中の胎児DNAが検出できないため、出生前DNA鑑定を行うことはできません。事前に産婦人科で正常な子宮内妊娠であること、および胎児の心拍が確認されていることを確認してから採血を行うことが重要です。
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著者
医学博士 富金 起範
筑波大学大学院 生体統御・分子情報医学 修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発
【参考文献】
(2) WHO - Indicator Metadata Registry: Gestational age
(3) British journal of anaesthesia, 2014年10月 - Bianchi DW. "Circulating fetal DNA: its origin and diagnostic potential." Placenta, 2004年
(4) Cancer cell, 2011年12月 - Lo YM et al. "Maternal plasma DNA sequencing reveals the genome-wide genetic and mutational profile of the fetus." Science Translational Medicine, 2010年
(5) 日本産科婦人科学会 - 産婦人科診療ガイドライン産科編 2023
(6) Pediatric surgery international, 2014年10月 - Lo YM et al. "Presence of fetal DNA in maternal plasma and serum." The Lancet, 1997年
(7) JAMA, 2010年5月 - Lo YM et al. "Maternal plasma DNA analysis with massively parallel sequencing." Clinical Chemistry, 2010年