リライティング日:2025年08月06日
NIPTで高リスク判定が出た場合、絨毛検査(CVS)や羊水検査による確定診断が不可欠です。NIPTは100%の精度ではなく、確定診断で染色体異常の有無を正確に判定し、今後の選択肢を慎重に検討する必要があります。
確定診断の受診は必須
NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)は、母体の血液中に含まれる胎児由来のセルフリーDNA(cfDNA)を解析することで、胎児の染色体数の異常をスクリーニングする検査です。しかし、NIPTで染色体(遺伝子の束)の数異常が高リスクと出たからといって、全ての方が妊娠中の確定診断を行うわけではありません。一部の方は、確定診断を受けずに出産を決めたり、途中で流産されたり、中絶を選択される方がいらっしゃいます。[ref:1]
NIPTはあくまでもスクリーニング検査であり、100%の精度で検査ができるものではありません。NIPTにエコー検査を組み合わせることでほぼ100%まで精度向上ができたという報告もありますが、染色体数の異常に関わる遺伝性疾患の有無を正確に診断するには出生前、もしくは出生後の確定診断が必要です。出生前検査認証制度等運営委員会においても確定診断を必須としており、NIPTの結果だけで最終的な判断を下すことは推奨されていません。[ref:2]
一方で、すべてのケースにおいて妊娠中の確定診断が必要とされるわけではありません。例えば、軽い症状のため85%の方が疾患に気づかずに日常生活を過ごすとされるヤコブ症候群(Jacob's syndrome)のように、臨床的な影響が限定的な場合は、妊娠中の確定診断は不要とされるケースもあります。ただし、そのようなケースであっても基本的には遺伝カウンセラーや専門医との相談は必要です。遺伝カウンセリングでは、検査結果の意味、考えられるリスク、今後の選択肢について、専門的な知見に基づいた説明を受けることができます。
妊娠中の確定診断を受けない理由
NIPTで高リスクと判定されたにもかかわらず、確定診断を受けない選択をされる方がいらっしゃいます。その主な理由としては、以下のようなものが挙げられます。
- NIPTの精度がほぼ100%であると思い込み、確定診断は不要と考えている
- 羊水検査や絨毛検査といった確定診断には、赤ちゃんへの永久的な障害や流産のリスクが伴うため受けたくない
- 検査結果がどのようなものであっても出産する意思が固まっている
- 精神的な負担から、追加の検査を受けることに抵抗がある
しかしながら、国内の多くの検査機関がホームページに示しているNIPTの検査精度をそのまま信用して良いか疑問があります。NIPTの精度は検査対象となる染色体異常の種類や、母体の状態、妊娠週数、胎児由来cfDNAの割合(fetal fraction)などによって変動するためです。[ref:3]
seeDNAは2016年に国内で初めて出生前DNA鑑定を開発してから、妊娠中の胎児の検査を8年以上も行ってきた経験があります。その豊富な実績と知見から確信をもって言えることは、NIPTの結果には間違いが発生するリスクが必ずあり、100%の精度を保証できる検査ではないということです。偽陽性(実際には染色体異常がないのに高リスクと判定される)のケースは一定の割合で発生しており、確定診断を受けなければ正確な状況を把握することはできません。実際に、NIPTの陽性的中率(PPV)は検査対象の疾患や母体年齢によって大きく異なり、トリソミー21では比較的高いものの、トリソミー13やトリソミー18ではPPVが低下する傾向があることが大規模な研究で示されています。[ref:4] [ref:10]
そのため、NIPTで高リスク(陽性)の結果が出た場合は、必ず確定診断を受診することを強くお勧めしております。
そもそも、NIPTの日本語訳が「新型出生前"診断"」となっていることが、このような誤解を与える要因のひとつとなっています。英語では「Non-Invasive Prenatal Testing」であり、あくまで"Testing(検査)"です。日本語においても「新型出生前"検査"」とすれば、NIPTが確定診断ではなくスクリーニング検査であるという正しい認識が広まり、誤解が減るかもしれません。
最近はNIPTを実施する機関が増え、なかには100%の精度を主張しているところもありますが、NIPTは100%の精度ではありません。そのような業者を信頼しないようにしましょう。日本産婦人科医会でもNIPTの限界について注意喚起を行っており、検査結果の解釈には専門的な知識が不可欠であるとされています。[ref:5] [ref:6] [ref:7]
確定診断の結果について
確定診断には主に絨毛検査(CVS検査)と羊水検査の2種類があります。ここでは、妊娠初期(通常10〜13週頃)に実施可能な絨毛検査について詳しく解説します。
絨毛検査(CVS検査)の流れと結果判明までの期間
絨毛検査では、胎盤の一部である絨毛組織を採取して染色体を直接調べます。結果の報告は通常2段階に分かれます。
- 迅速CVS結果の報告(約3日後):まず「迅速CVS」として、13・18・21トリソミー(染色体異常)の有無のみが先に判定されます。FISH法やQF-PCR法と呼ばれる迅速解析技術を用いることで、約3日という短期間で主要な染色体異常の有無を確認することが可能です。
- 詳細CVS結果の報告(約2週間以内):全染色体を対象とした詳細な核型分析が行われ、微小欠失症候群の有無を含むより包括的な結果が報告されます。
- 医師との相談・今後の方針決定:迅速CVSの結果と超音波検査の両方が赤ちゃんに疾患の可能性があることを示している場合、医師はすぐに今後の選択肢について話し合いを行います。
日常的な生活習慣に関わる疾患とは異なり、CVSで判明する常染色体異数性疾患(トリソミーなど)には根本的な治療法がないため、今後の選択を慎重に検討する必要があります。検査結果を受け取った後の意思決定は、ご本人やパートナー・ご家族にとって非常に重い判断となりますので、遺伝カウンセラーや担当医と十分に相談することが重要です。
結果の信頼性について
CVS検査は、受診した女性100人中99人に対して確定的な結果が得られるとされており、その精度は99%以上と報告されています。ごく一部のケースでは、胎盤モザイク(CPM: Confined Placental Mosaicism)と呼ばれる現象により、絨毛組織の染色体構成と胎児本体の染色体構成が異なる場合があります。このようなケースでは、赤ちゃんが検査対象の疾患を持っているかどうかを完全に確定できないこともありますが、CVS検査の結果が妊娠中に覆る可能性は非常に低く、現在利用可能な検査の中で最も精度が高いと言われています。[ref:8] [ref:11]
得られた結果を元に、下記のいずれかの選択肢を検討する必要があります。
■ 妊娠を継続する
赤ちゃんが持つ可能性のある疾患について、できるだけ多くの情報を集めて、十分な準備を整える必要があります。具体的には、出生後に必要となる医療体制の確認、福祉サービスの利用方法、同じ疾患を持つお子さんを育てているご家族との交流など、さまざまな側面から情報収集を行い、受け入れ態勢を整えることが大切です。また、出産する医療機関の選定(NICU等の設備がある施設など)も早い段階から検討しておくことが推奨されます。[ref:8]
■ 妊娠を終わらせる(中絶する)
これは非常に難しい決断ですが、遺伝カウンセラーや担当医から、子供が持つ可能性のある症状、必要となる治療やサポートなど幅広い分野におけるアドバイスを得たうえで、パートナーや家族がよく話し合って決定する必要があります。日本では母体保護法に基づく人工妊娠中絶の規定があり、妊娠22週未満までが法的な期限となっています。そのため、確定診断を受ける時期やその後の意思決定にかかる時間を十分に考慮した上で、早めに行動に移すことが重要です。
確定診断の限界と診断ミスの可能性
確定診断は非常に高い精度を持つ検査ですが、それでも人が行う検査である以上、100%正確な検査結果を保証することは現実的にも不可能です。前述の胎盤モザイクのほか、検体の取り扱いや培養の過程で問題が発生する可能性もゼロではありません。
実際に国内でも確定診断時の診断ミスにより裁判で賠償請求が認められた事例もあります。このような事例は稀ではありますが、確定診断であっても完璧ではないことを認識しておくことが重要です。[ref:4]
国内では、こども家庭庁委託事業としてNIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)などの出生前検査や医療機関情報に加え、妊娠中や出産後に役立つさまざまな情報を提供しています。障害を持つ子供の生活や周りの家族の生活など、信頼できる多くの情報がご確認いただけます。
確定診断の種類比較:絨毛検査と羊水検査
確定診断には絨毛検査(CVS)と羊水検査の2つの方法があり、それぞれ実施可能な時期や特徴が異なります。以下に主な違いをまとめます。
| 比較項目 | 絨毛検査(CVS) | 羊水検査 |
|---|---|---|
| 実施時期 | 妊娠10〜13週頃 | 妊娠15〜18週頃 |
| 採取する検体 | 胎盤の絨毛組織 | 羊水中の胎児細胞 |
| 結果判明まで | 迅速結果:約3日 詳細結果:約2週間 | 約2〜3週間 |
絨毛検査の最大のメリットは、羊水検査よりも早い妊娠週数で実施できる点です。早期に結果が得られることで、その後の判断に要する時間的な余裕が生まれます。一方、羊水検査は胎盤モザイクの影響を受けにくいため、絨毛検査の結果が不確実だった場合の追加検査として実施されることもあります。いずれの検査にも、ごくわずかながら流産のリスク(約0.1〜0.5%程度)が伴うため、検査を受ける前に十分な説明を受けることが大切です。[ref:3] [ref:9] [ref:12]
NIPTの「診断」という誤解を防ぐために
NIPTは英語では「Non-Invasive Prenatal Testing」と表記されるように、本来はあくまで「検査(スクリーニング)」です。日本語で「新型出生前診断」と訳されたことで、多くの方がNIPTの結果だけで確定的な診断が下されたと誤解してしまう状況が生まれています。
NIPTで検出されるのは、母体血液中の胎児由来cfDNAの割合から推定される染色体異常の「リスクの高さ」であり、胎児の細胞そのものを直接分析した結果ではありません。そのため、NIPTで高リスク判定が出た場合でも、偽陽性の可能性を排除するために確定診断が不可欠です。特にトリソミー13やトリソミー18などでは偽陽性率がトリソミー21と比較してやや高くなる傾向があり、確定診断なしに結論を出すことは危険です。[ref:10]
seeDNAでは、NIPTで高リスク判定が出た方に対して、遺伝カウンセリング費用および確定診断の受診費用を補助するサポート体制を整えています。正確な情報に基づいた意思決定ができるよう、専門スタッフが一貫してサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。
よくあるご質問
Q1. NIPTで高リスク(陽性)が出たら必ず確定診断を受けるべきですか?
A. はい、NIPTはスクリーニング検査であり、100%の精度は保証されていません。偽陽性(実際には異常がないのに陽性と出る)の可能性もあるため、高リスクの結果が出た場合は、絨毛検査(CVS)や羊水検査などの確定診断を受けることが強く推奨されています。出生前検査認証制度等運営委員会でも確定診断を必須としています。[ref:1]
Q2. 絨毛検査(CVS)と羊水検査はどちらを選べばよいですか?
A. 絨毛検査は妊娠10〜13週頃、羊水検査は妊娠15〜18週頃に実施可能です。絨毛検査はより早期に結果が得られるメリットがありますが、胎盤モザイクの影響を受ける可能性がわずかにあります。羊水検査はその影響を受けにくいとされています。どちらの検査が適切かは、妊娠週数や個々の状況によって異なるため、担当医や遺伝カウンセラーとよく相談して決めましょう。[ref:3]
Q3. 確定診断を受ける際の流産リスクはどのくらいですか?
A. 絨毛検査・羊水検査ともに、検査に伴う流産のリスクは約0.1〜0.5%程度と報告されています。検査技術や医療機関の経験値によってもリスクは異なりますので、実績のある医療機関で受けることが重要です。流産リスクを心配される方も多いですが、確定診断によって正確な情報を得ることの重要性も含めて総合的に判断されることをお勧めします。[ref:3] [ref:9] [ref:12]
Q4. NIPTと確定診断の精度の違いは何ですか?
A. NIPTはスクリーニング検査であり、染色体異常の「リスクの高さ」を評価するものです。感度(異常を見逃さない確率)は高いものの、偽陽性が発生する可能性があります。一方、確定診断(CVS検査・羊水検査)は胎児の細胞を直接分析するため、99%以上の精度で染色体異常の有無を判定できます。NIPTは「ふるいわけ」、確定診断は「最終判定」と理解していただくとわかりやすいでしょう。[ref:2]
Q5. 確定診断で陽性と出た場合、どのようなサポートが受けられますか?
A. 確定診断で陽性の結果が出た場合、遺伝カウンセラーや専門医によるカウンセリングを通じて、疾患の詳しい情報、今後の選択肢、利用可能な支援制度について説明を受けることができます。seeDNAでは高リスク判定時のカウンセリング費用と確定診断の受診費用を補助するサポートも行っています。
Q6. 確定診断の結果が100%正確ではないことはありますか?
A. 確定診断は現在利用可能な検査の中で最も精度が高いとされていますが、人が行う検査である以上、100%の正確性を保証することはできません。胎盤モザイク(CPM)の影響や、ごくまれに検体処理上の問題が生じる可能性もあります。国内でも確定診断時の診断ミスによる賠償請求が認められた裁判例が存在します。万一結果に疑問がある場合は、セカンドオピニオンの取得も検討しましょう。[ref:4]
Q7. 胎盤モザイク(CPM)とは何ですか?
A. 胎盤モザイク(Confined Placental Mosaicism)とは、胎盤組織の染色体構成と胎児本体の染色体構成が異なる現象のことです。絨毛検査では胎盤の一部を採取して分析するため、ごくまれにこの現象によって胎児の実際の染色体情報と異なる結果が出る可能性があります。CPMが疑われる場合は、追加で羊水検査を実施して確認することが推奨されます。[ref:8] [ref:11]
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seeDNA遺伝医療研究所は、国際品質規格ISO9001とプライバシー保護のPマークを取得している安心と信頼のDNA鑑定・遺伝子検査の専門機関です。
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著者
医学博士 富金 起範
筑波大学大学院 生体統御・分子情報医学 修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発
【参考文献】
(2) NCBI Bookshelf, 2024年10月
(3) 日本産科婦人科学会雑誌「羊水検査・絨毛検査」, 1999年2月
(4) 医療安全推進者ネットワーク, 1999年2月
(5) Trends Endocrinol Metab, 2015年8月
(6) Curr Protoc Nucleic Acid Chem, 2014年3月
(7) seeDNA, 2025年10月
(8) 日本産婦人科医会, 2018年7月
(9) nhs.uk
(10) J Biol Chem, 1997年3月
(11) Cardiovasc Diabetol, 2015年8月
(12) KOMPAS – 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト