リライティング日:2026年03月07日
DNA鑑定の検体別成功率を累計5万件超の実績データに基づき解説。髪の毛・歯ブラシ・吸い殻など特殊検体の成功率ランキングと、鑑定を失敗させないための正しい保存方法を専門機関が公開します。
犯罪捜査や個人の血縁関係確認(親子鑑定など)において、DNA鑑定は決定的な証拠となります。
しかし、「どの検体(サンプル)を使うか」によって、検査の成功率は0.1%〜99.9%まで劇的に変化することをご存知でしょうか?
本記事では、累計5万件以上の鑑定実績を持つ解析データに基づき、身近な日用品(髪の毛、吸い殻、歯ブラシなど)を用いたDNA鑑定の成功率と、失敗しないための重要なポイントを公開します。DNA鑑定を検討されている方が「どの検体を準備すべきか」「どう保存すれば失敗を防げるか」を正確に判断できるよう、科学的根拠と実績データの両面から徹底的に解説していきます。 [ref:1]
DNA鑑定の技術は1985年にイギリスの遺伝学者アレック・ジェフリーズ卿が「DNAフィンガープリンティング」を発表して以来、飛躍的に進化してきました [ref:7]。現在主流となっているSTR(Short Tandem Repeat)解析法は、ヒトゲノム上に散在する短い繰り返し配列の反復回数を複数座位で同時に分析し、個人を極めて高い精度で識別する手法です。国際的にはCODIS(Combined DNA Index System)と呼ばれるデータベースが運用されており、FBIをはじめとする世界各国の法執行機関で標準的に採用されています [ref:8]。こうした技術的背景を理解することで、なぜ検体の質と量がDNA鑑定の成否を左右するのかが明確になります。
DNA鑑定における「成功率」と「精度」の真実
DNA鑑定において最も推奨される検体は、口腔上皮(こうくうじょうひ)です。専用の綿棒で頬の内側を擦り取る方法は、痛みもなく安定して細胞を採取できるため、解析成功率はほぼ100%となります。口腔上皮は日々活発にターンオーバー(新陳代謝)を繰り返しているため、綿棒で軽く擦るだけでも数千〜数万個の有核細胞が採取でき、これはDNA解析に十分すぎる量です。
一方で、相手に知られずに鑑定したい場合などに用いられる「特殊検体(綿棒以外のサンプル)」は、保存状態や付着細胞量により成功率が大きく変動します。特殊検体はその名の通り「標準的でない検体」であるため、DNA量の不足、DNAの劣化、第三者のDNA混入(コンタミネーション)といったリスクが常に伴います。こうした事情から、特殊検体を用いる際には検体の選び方と保存方法が鑑定の成否を決定づける最大の要因となるのです。 [ref:2]
法科学の分野では、微量のDNAから個人を特定する「タッチDNA(Touch DNA)」解析が近年急速に発展しています。タッチDNAとは、物体の表面に触れた際に残される極微量の皮膚細胞や汗腺分泌物からDNAプロファイルを取得する技術です [ref:9]。この技術の進歩により、以前は解析不可能とされていた検体からも成果が得られるケースが増えていますが、それでもなお検体の状態と保存方法が結果を大きく左右するという基本原則に変わりはありません。
「成功率」と「精度」は別の概念
DNA鑑定を検討される方がよく混同されるのが「成功率」と「精度(正確さ)」です。成功率とは「提出された検体からDNAプロファイルを取得できる確率」を指し、精度とは「取得されたDNAプロファイルに基づく判定結果がどれほど正確であるか」を意味します。現代のSTR(Short Tandem Repeat)解析法では、DNAプロファイルが正常に取得できさえすれば、親子関係の判定精度は99.99%以上に達します。つまり、鑑定の信頼性を左右する最大の変数は「検体からDNAを抽出できるかどうか=成功率」であり、これが検体の種類と保存状態に直結しているのです。 [ref:3]
具体的に言えば、現在の標準的な親子鑑定では15〜24座位のSTRマーカーを同時解析するマルチプレックスPCR法が採用されています。すべての座位で明瞭なピークが検出されれば、親子関係の肯定確率(CPI:Combined Paternity Index)は通常100万対1以上、すなわち99.9999%を超える精度で結論が導かれます。しかし、検体中のDNA量が不足していたり、劣化によって一部の座位でしかプロファイルが得られない場合は、統計的な信頼性が低下し、最終的に「判定不能」となってしまうのです。このように、精度の問題はDNAプロファイルが取得できた後の計算上の話であり、そもそもプロファイルが取得できなければ精度を論じること自体ができません。だからこそ「成功率」を高めることが鑑定依頼者にとっての最優先課題となります。
【検体別】DNA解析成功率・難易度一覧
専門ラボのデータに基づく、主な検体の成功率目安は以下の通りです。 [ref:1]
■ 成功率:非常に高い
口腔上皮(綿棒)/精液付きティッシュ/生理用品
専用キットは最も確実です。精液や経血は細胞数が多く、比較的新しければ非常に高い確率で検出可能です。精液中の精子細胞は1mLあたり数千万〜数億個の有核細胞を含んでおり、DNA量としては非常に豊富です。
■ 成功率:高い
歯ブラシ/毛髪(毛根付き)/電気シェーバー/へその緒
日常的に粘膜や皮膚が強く擦り付けられるため、細胞量が多い傾向にあります。※毛髪は自然に抜けたものではなく、毛根が付いている必要があります。歯ブラシは特に、毎日の歯磨きによって歯茎や口腔粘膜から剥離した細胞がブラシの毛先に蓄積されるため、使用期間が長いほど成功率が安定します。
■ 成功率:中〜高
タバコの吸い殻/紙コップ
唇の粘膜が付着しますが、吸い方や乾燥状態によって成功率が左右されます。特にタバコの吸い殻はフィルター部分に唇からの粘膜細胞が移行しますが、雨や高温にさらされると急速にDNAが劣化します。
■ 成功率:中
爪(つめ)/耳垢(耳かき)
DNA自体は採取可能ですが、絶対量が少ない場合や、他人のDNAが混入しているリスクがあります。爪は角質化した死細胞が主体であるため、爪本体よりも爪の裏側に残存する皮膚組織がDNAの主要な供給源となります。
■ 成功率:低
ガラスコップ/割りばし
接触が一瞬であるため細胞移行量が少なく、成功率にバラつきがあります。ガラスコップは表面が滑らかなため皮膚細胞が付着しにくく、また洗浄されたものでは細胞がほぼ残留していません。
■ 成功率:困難
火葬した遺骨
高熱によりDNA構造が破壊されているため、通常の核DNA検査は極めて困難です。ミトコンドリアDNA解析でも成功率は非常に低くなります。日本の火葬炉は800〜1200℃に達するため、有機分子であるDNAはほぼ完全に熱分解されてしまいます。
なぜ検体によって成功率が違うのか?―DNA劣化のメカニズム
DNA鑑定の成功率が検体の種類によって大きく異なる理由を理解するには、DNAが劣化するメカニズムを知ることが重要です。DNAは二重らせん構造を持つ高分子ですが、以下の要因によって断片化(フラグメンテーション)が進行します。 [ref:4]
- 加水分解:水分の存在下でDNAの糖-リン酸骨格や塩基が化学的に切断されます。湿った状態で長時間放置された検体は、この加水分解によってDNAが断片化し、解析に必要な長さのDNA配列が維持できなくなります。特に脱プリン反応(プリン塩基であるアデニンやグアニンが糖鎖から脱離する反応)は生理的条件下でも自発的に進行するため、水分が存在するだけでDNAは徐々に損傷を受けます。
- 酸化:紫外線や活性酸素によってDNA塩基が酸化的損傷を受けます。直射日光に長時間さらされた検体はこのダメージが顕著です。8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)の生成はDNA酸化損傷の代表的な指標であり、これが蓄積するとPCR増幅が阻害されます [ref:7]。
- 微生物による分解:バクテリアやカビがDNAをエネルギー源として分解します。湿気の多い環境で密閉保管すると微生物が急速に繁殖し、DNA分解が加速します。特にグラム陰性細菌が産生するヌクレアーゼ(DNA分解酵素)は非常に強力で、短時間のうちにDNAを小断片に分解してしまいます。
- 熱変性:高温環境ではDNAの二重らせんが解離し、さらに化学的な分解反応が促進されます。火葬された遺骨からのDNA抽出が極めて困難なのはこのためです。アレニウスの法則に基づけば、温度が10℃上昇するごとに化学反応速度は約2〜3倍に加速するため、夏場の高温環境下では検体の劣化速度が冬場の数倍に達することもあります。
口腔上皮綿棒が最も高い成功率を示すのは、採取時に大量の有核細胞が安定して回収でき、採取後すぐに乾燥保存されるため上記の劣化要因が最小限に抑えられるからです。一方、ガラスコップや割りばしのように皮膚との接触が一瞬で細胞移行量が極めて少ない検体では、元々のDNA量が限界に近く、わずかな劣化でも解析不能になるリスクが高まります。
さらに注目すべきは「PCR阻害物質」の存在です。検体の種類によっては、ヘモグロビン(血液由来)、メラニン(毛髪由来)、コラーゲン(骨や歯由来)、ニコチンやタール(タバコ由来)などの物質がDNA抽出液に混入し、PCR増幅反応を阻害することがあります。これらの阻害物質は、たとえ十分なDNA量が存在していたとしても解析の成功を妨げる可能性があるため、専門ラボでは精製カラムやビーズベースの精製法を用いてこれらの物質を除去する工程を設けています。検体の種類に応じた最適な抽出・精製プロトコルの選択もまた、鑑定成功率に大きく影響する要素なのです。
依頼が多い「身近な特殊検体」ランキング

標準的な綿棒以外で、実際に鑑定依頼が多い検体トップ4です。意外なものが上位に来ています。 [ref:1]
- 歯ブラシ(使用済み・乾燥状態)
- 毛髪(毛根付き)
- タバコの吸い殻
- 精液付きティッシュ
特に「歯ブラシ」は、毎日の使用で口内粘膜がブラシの隙間に蓄積されるため、特殊検体の中ではトップクラスの信頼性を誇ります。歯ブラシの毛先には唾液だけでなく、歯茎から剥離した上皮細胞が大量に付着しており、使用頻度が高いほどDNA採取の成功率が上がる傾向があります。
逆に、「ハサミで切った髪の毛」や「液体の唾液そのもの」はDNAを含む細胞がほとんど含まれていないため、鑑定には不向きです。唾液は一見すると大量の遺伝情報を含んでいそうですが、実際には唾液中の細胞は大部分が破壊された残骸であり、そのまま液体状態で送付すると微生物繁殖によってさらにDNAが分解されてしまいます。
なお、依頼が多い検体の傾向は時代とともに変化しています。近年では電子タバコ(加熱式タバコ)の普及に伴い、従来の紙巻きタバコの吸い殻に代わって加熱式タバコのスティックが持ち込まれるケースも増えています。加熱式タバコのスティックは従来の吸い殻と同様に唇の粘膜細胞が付着しますが、加熱温度が低い(約300〜350℃)ためDNAへの熱ダメージは比較的少ないと考えられています。ただし、フィルター構造が紙巻きタバコと異なるため、細胞の付着量にはばらつきがあります。
各検体の詳細解説と採取時の注意点
歯ブラシ
歯ブラシは特殊検体の中で最も依頼が多く、成功率も高い検体です。2週間以上使用されたものが理想的で、ブラシの毛先の根元に口腔粘膜細胞が蓄積されています。採取後は水分を飛ばすために自然乾燥させてから紙封筒に入れてください。他の家族の歯ブラシと混同しないよう、対象者専用のものを確保することが極めて重要です。
歯ブラシが高い成功率を示す科学的理由として、ブラッシング時の物理的な摩擦力が挙げられます。歯茎と歯ブラシの毛先の間で生じる摩擦により、歯肉上皮から多数の有核細胞が剥離し、毛先の隙間やナイロン繊維の表面に絡まるように付着します。さらに、唾液中の粘液成分(ムチン)がバインダーとして機能し、細胞を歯ブラシに固定する役割を果たしています。乾燥後も細胞内のDNAは比較的安定して保存されるため、使用済みの歯ブラシは「天然のDNA保存装置」とも言える検体なのです。
毛髪(毛根付き)
毛髪からDNA鑑定を行うには、毛根(毛球部)が付いていることが絶対条件です。毛幹部(髪の毛のシャフト部分)はケラチンタンパク質で構成されており、核DNAはほとんど含まれていません。自然に抜け落ちた毛髪は毛根が退縮期〜休止期に入っているため細胞核が乏しく、理想的には「軽く引っ張って抜いた毛髪」で白い毛根鞘が付着しているものを5〜10本以上確保してください。 [ref:3]
毛髪のライフサイクルは「成長期(アナゲン期)→退縮期(カタゲン期)→休止期(テロゲン期)」の3段階に分けられます。成長期の毛根には活発に分裂する毛母細胞が密集しており、核DNAが豊富に含まれています。この段階の毛髪は毛根部分が膨らんでおり、引き抜くと半透明〜白色の毛根鞘組織が付着しているのが特徴です。一方、休止期に入った毛髪は自然に脱落する準備段階にあるため、毛根が萎縮して細胞核がほぼ消失しています。枕やブラシに付着した抜け毛の多くはこの休止期毛髪であるため、DNA解析の成功率は大幅に下がります。
なお、毛幹部からのミトコンドリアDNA(mtDNA)解析という選択肢も存在しますが、mtDNAは母系遺伝のみを反映するため親子鑑定(父子鑑定)には使用できず、個人識別の精度も核DNAに比べて大きく劣ります。したがって、親子鑑定目的の場合は毛根付きの毛髪を確保することが不可欠です。
タバコの吸い殻
タバコの吸い殻のフィルター部分には唇の粘膜細胞が付着しますが、吸い方の癖や口紅・リップクリームの有無、屋外で雨に濡れたかどうかによって成功率が大きく変動します。できるだけ吸い終わった直後のものを確保し、素手で触れず(自身のDNAが混入するため)ピンセットや割りばしで紙封筒に移してください。1本だけでは不十分な場合があるため、可能であれば2〜3本確保するのが望ましいです。
吸い殻からのDNA抽出においては、フィルターの素材も成功率に影響します。セルロースアセテート製のフィルター(一般的な紙巻きタバコに使用)は繊維構造が細かく、唇から移行した粘膜細胞がフィルター内部に捕捉されやすい特性があります。一方、活性炭入りフィルターではDNA抽出時にPCR阻害物質が溶出する可能性があるため、専門ラボでは追加の精製ステップが必要になることがあります。いずれにしても、採取後速やかに乾燥させ、直射日光を避けて保管することが最も重要なポイントです。
爪(つめ)
爪切りで切った爪からもDNA解析は可能ですが、爪自体はケラチン化した死細胞であるため、含まれるDNA量は非常に少ないです。成功率を高めるポイントは、爪の裏側に付着している皮膚組織や汚れにDNAが含まれていることを理解し、爪を洗わずにそのまま提出することです。5〜10個以上の爪片を確保するのが推奨されます。
爪からのDNA抽出には特殊な前処理が必要です。爪のケラチン層は非常に硬く、通常のプロテアーゼ消化だけでは十分にDNAを遊離させることができません。専門ラボでは、爪を細かく切断した後に高濃度のプロテイナーゼK溶液中で長時間(12〜24時間)インキュベートし、ケラチンを完全に消化してからDNA抽出を行います。また、足の爪は手の爪に比べて厚く成長が遅いため、より長期間のケラチン蓄積によりDNA量が多いとされる一方で、靴下や靴との摩擦で外部のDNAが付着するリスクも高くなります。
その他の検体(耳垢・へその緒・電気シェーバーなど)
耳垢は耳かきや綿棒に付着したものを提出しますが、DNA量に個人差があります。耳垢には「湿型」と「乾型」の2タイプが存在し、湿型耳垢の方が水分と脂質を多く含むため、より多くの有核細胞が含まれている傾向があります。日本人は乾型耳垢が多い(約80〜90%)ため、DNA量がやや少なくなりがちですが、定期的に使用している耳かきや綿棒には十分な細胞が蓄積されています。
へその緒は出産時に保管されたものであれば乾燥状態が良好で比較的高い成功率を示します。へその緒は胎児由来の組織であるため、臍帯血管内に残存する胎児の血液細胞や、ワルトンゼリー(臍帯の結合組織)中の細胞からDNAを抽出することが可能です。適切に乾燥保存されたへその緒であれば、数十年が経過していてもDNA解析に成功するケースがあります。
電気シェーバーの刃の裏側には皮膚細胞や毛根が付着しているため、長期間使用されたものほどDNA量が豊富です。いずれの検体も、対象者本人だけが使用しているものであることを確認してから提出してください。シェーバーを共有している場合は、複数人のDNAが混在するミクスチャー(混合プロファイル)となり、解釈が困難になる可能性があります。
鑑定を成功させるための最重要ポイント:保存方法
特殊検体を用いた鑑定で失敗する最大の原因は、「湿気」と「紫外線」です。
水分を含んだまま密閉すると、バクテリアが繁殖しDNAを分解してしまいます。前述の加水分解と微生物分解が同時に進行するため、わずか数日で解析不能なレベルまでDNAが劣化してしまうケースも珍しくありません。
NG例: 濡れたままビニール袋に入れて密封する
ビニール袋は通気性がないため、内部の湿度が100%に近い状態で維持され、カビやバクテリアの温床となります。
推奨: 紙封筒に入れ、通気性を良くして冷暗所で保管する
紙封筒は適度に水分を吸収・放出するため、検体を自然乾燥状態で維持できます。直射日光の当たらない涼しい場所(冷蔵庫の野菜室など)で保管すれば、2〜3週間程度はDNAの品質を維持できます。 [ref:4]
DNA劣化と検体保存に関する科学的エビデンス
DNA劣化のメカニズムとその対策については、法科学分野で長年にわたる研究が蓄積されています。Lindhらの研究(1993年)は、環境DNA(屋外に放置された検体から回収されるDNA)の劣化パターンを体系的に分析し、温度・湿度・紫外線照射量の3因子が相互に作用してDNA断片化を加速させることを示しました [ref:7]。また、SWGDAMのガイドラインでは法科学的証拠としてのDNA試料の取り扱いについて、「生物学的証拠は常に乾燥状態で保管し、密閉されたプラスチック容器は避けるべきである」と明確に推奨しています [ref:8]。
これらの知見は日常のDNA鑑定においても直接的に当てはまります。特殊検体を取り扱う際、ほんの少しの工夫—紙封筒に入れる、直射日光を避ける、冷暗所で保管する—だけで、DNA品質の維持に大きな効果を発揮します。科学的に裏付けられたこれらのシンプルな対策は、DNA鑑定依頼者全員が実践すべき基本中の基本と言えるでしょう。
検体を送付する際の実践チェックリスト
検体の採取から送付までの間に以下のポイントを確認することで、DNA鑑定の成功率を最大限に高めることができます。
- 検体に素手で直接触れていないか確認する(自身のDNA混入防止のため、ピンセットやビニール手袋を使用)
- 検体が十分に乾燥しているか確認する(濡れている場合は自然乾燥させてから封入)
- 保管容器は紙封筒を使用し、ビニール袋やジップロックは避ける
- 封筒には対象者名・採取日・検体の種類を明記する(複数検体を混同しないため)
- 送付時は冷暗所に保管した状態からできるだけ早く発送する(採取後1週間以内が理想)
- 直射日光や高温を避けるため、夏場はクール便の利用も検討する
- 複数の検体を送付する場合は、検体ごとに別々の紙封筒に分けて封入し、相互のコンタミネーションを防止する
- 検体が微量と思われる場合は、同種の検体を2〜3個予備として確保し、同封する
これらの基本事項を守るだけで、特殊検体の解析成功率は飛躍的に向上します。逆に、いくら良質な検体を確保しても保存・送付方法を誤れば結果が出ないこともあるため、「採取=ゴール」ではなく「ラボに届くまでが勝負」という意識を持つことが大切です。
DNA鑑定の信頼性を支える国際的品質基準
DNA鑑定の結果に信頼性を持たせるためには、鑑定機関自体が国際的な品質基準を満たしていることが不可欠です。ISO 17025(試験所・校正機関の能力に関する一般要求事項)やISO 9001(品質マネジメントシステム)の認証を取得している鑑定機関は、検体の受け入れからDNA抽出、PCR増幅、データ解析、結果報告に至るまでの全工程において標準化された手順書(SOP: Standard Operating Procedure)に基づいて作業を行っています。
seeDNA遺伝医療研究所では、国際品質規格ISO 9001の認証に加え、個人情報保護の国際的な信頼性を示すプライバシーマーク(Pマーク)も取得しています。これにより、鑑定結果の科学的正確性だけでなく、依頼者の個人情報が厳格に管理されていることが第三者機関によって保証されています。DNA鑑定は極めてセンシティブな個人情報を扱うため、技術力だけでなく情報管理体制にも十分な注意を払う必要があるのです。
また、DNA鑑定に用いるSTR解析キットは、世界的にバリデーション(有効性の検証)が行われた市販キットを使用することが推奨されています。現在主流のキットとしてはGlobalFiler(Thermo Fisher Scientific社)やPowerPlex Fusion(Promega社)などがあり、これらはいずれもFBIのCODIS互換の20座位以上のSTRマーカーを同時解析できる高性能なシステムです [ref:8]。こうした信頼性の高いキットを使用することで、微量検体からでも可能な限り多くの遺伝情報を取得し、鑑定の成功率と精度を最大化しています。
よくあるご質問
Q1. 髪の毛からDNA鑑定をする場合、切った髪でも検査できますか?
A. いいえ、切った髪の毛では原則としてDNA鑑定はできません。
DNA鑑定に必要な細胞核のDNAは「毛根(毛球部)」に含まれています。ハサミで切った髪や、自然に抜け落ちて毛根が退化した髪からは十分なDNAが得られないため、「毛根が付着した、痛みを伴って抜いた髪の毛」が必要です。毛根部分に白い半透明の組織(毛根鞘)が付着しているものが理想的で、5〜10本以上を確保することが推奨されます。
Q2. 相手に内緒でDNA鑑定を行うことは法律的に問題ありますか?
A. 個人的な確認目的であれば、現行法上で直ちに違法となる規定はありません。
ただし、採取した試料の所有権侵害やプライバシー侵害に問われるリスクはゼロではありません。また、相手の同意を得ていない鑑定結果(私的鑑定)は、裁判所での証拠として採用されない場合がほとんどです。法的な争い(認知請求など)に使う場合は、必ず当事者の同意を得て行う「法的鑑定」が必要です。 [ref:5] [ref:6]
Q3. 歯ブラシや吸い殻からでも100%の結果が出ますか?
A. いいえ、100%ではありません。
口腔用綿棒(成功率ほぼ100%)と比較すると、歯ブラシや吸い殻などの特殊検体は、保存状態や付着している細胞の量によって解析できないリスクがあります。専門機関のデータでは、歯ブラシは比較的高確率ですが、吸い殻は乾燥状態により成功率が変動します。成功率を高めるためには、正しい保存方法(紙封筒で乾燥保管)を守ることが極めて重要です。
Q4. 妊娠中に胎児のDNA鑑定は可能ですか?
A. はい、「出生前DNA鑑定」として可能です。
現在では、妊婦の腕から採血するだけで、母親の血液中に流れている胎児のDNAを抽出し、鑑定を行う手法(NIPT技術の応用)が一般的です。妊娠7週目頃から検査可能で、羊水検査のような流産リスクがない方法として普及しています。seeDNA遺伝医療研究所でも特許取得済みの微量DNA解析技術を用いた出生前DNA鑑定を提供しています。
Q5. DNA鑑定にかかる期間と費用はどのくらいですか?
A. 私的鑑定で数万円〜、期間は1週間程度が目安です。
個人的な確認(私的鑑定)の場合、費用は2万円〜5万円程度、結果判明まで5〜10営業日が一般的です。一方、裁判所や入国管理局に提出するための「法的鑑定」は、専門家による立会い採取や厳格な本人確認が必要なため、費用は10万円〜、期間も2週間以上かかるケースが多くなります。特殊検体を使用する場合は、追加の解析料金が発生することもありますので、事前にご相談ください。
Q6. 火葬された遺骨からDNA鑑定はできますか?
A. 通常の核DNA検査は極めて困難です。
日本の火葬温度は800〜1200℃に達するため、DNA分子はほぼ完全に熱変性・断片化してしまいます。ミトコンドリアDNA(mtDNA)解析を試みるケースもありますが、mtDNAは母系遺伝のみをたどるため親子鑑定には使用できず、成功率も非常に低いのが現状です。ご遺骨での鑑定をご希望の場合は、まず専門機関に事前相談されることを強くお勧めします。
Q7. DNA鑑定で使用する検体は1つだけでも大丈夫ですか?
A. 1つでも鑑定は可能ですが、複数用意することを推奨します。
特殊検体の場合、1つ目の検体からDNAが十分に抽出できないリスクがあります。予備として同種の検体を2〜3個、あるいは異なる種類の検体を併せて提出していただくことで、解析成功率を大幅に高めることができます。追加検体の提出は多くの鑑定機関で無料または低コストで対応していますので、可能な限り複数確保してください。
seeDNA遺伝医療研究所の安心サポート
seeDNA遺伝医療研究所は、国際品質規格ISO9001とプライバシー保護のPマークを取得している安心と信頼のDNA鑑定・遺伝子検査の専門機関です。
家族や親子の血縁関係、パートナーの浮気などにお悩みでしたら、DNA鑑定の専門家が、しっかりとご安心いただけるようサポートいたしますのでお気軽にお問合せください。
【専門スタッフによる無料相談】

著者
医学博士 富金 起範
筑波大学、生体統御・分子情報医学修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発