腹部肥満になりやすさ
- 腹部肥満とは、ウエスト周囲径やウエストヒップ比で判断される、おなかに脂肪がたまった状態で、2型糖尿病・心臓病・代謝症候群のリスクに直接つながります。
- DNA領域rs3989103のGタイプを持つ人は腹部肥満のリスクが高い傾向にあることが、ロンドン大学インペリアル・カレッジの研究でわかりました。
- 日本人でGタイプ(GG+GA)を持つ人の割合は54.6%で、世界平均の88.4%と比べて低い割合です。
概要
【疾患の概要】 腹部肥満は、ウエスト周囲径(おなか周りの長さ)やウエストヒップ比(おなか周りとお尻周りの比率)が大きくなることが特徴です。 これは、体格指数(体重と身長から計算する肥満の目安)だけで見る全身の脂肪とは違い、おなか周りに脂肪がたまりすぎている状態を表しています。
【症状と特徴】 このような脂肪のつき方は、代謝(体がエネルギーを作ったり使ったりするはたらき)の健康と深く関係しており、2型糖尿病や心臓病などのリスクにつながります。 ウエスト周囲径やウエストヒップ比は、体格指数とは違い、脂肪のつき方や一人ひとりの違いを反映します。 腹部肥満の人は、特におなかに脂肪がたまりやすい傾向があります。 おなかの中心にある脂肪は体の中で活発にはたらくため、健康に悪い影響を与える可能性があります。 例えば、炎症を起こしやすくしたり、インスリン抵抗性(血糖を下げるホルモンであるインスリンが効きにくくなること)を強めたりして、内臓のはたらきに影響することがあります。 一般的に、腹部肥満は、息を吐いた後に肋骨と腰の間の一番細い部分でウエスト周囲径を測るか、ウエスト周囲径をお尻周りの長さで割ったウエストヒップ比で判断します。 数値が高いほど、おなかに脂肪が多いことを表し、代謝症候群(メタボリックシンドローム)のリスクを高める可能性があります。
【治療と注意点】 おなかの脂肪を減らし、体全体の健康をよくするためには、生活習慣を見直し、食事の改善や運動などを続けることが大切です。
【遺伝的リスク】 ロンドン大学インペリアル・カレッジのChristakoudiらの研究で、腹部肥満になるリスクがrs3989103というDNA領域と関係していることがわかりました。 このDNA領域にはGG、GA、AAの3つの遺伝子型があり、Gを持つ遺伝子型の人は、腹部肥満のリスクが高い傾向にあることがわかりました。
腹部肥満とは何か
腹部肥満とは、ウエスト周囲径(おなか周りの長さ)やウエストヒップ比(おなか周りとお尻周りの比率)が大きくなり、おなかに脂肪がたまりすぎた状態です。体格指数ではわからない脂肪のつき方を反映し、代謝(体がエネルギーを作ったり使ったりするはたらき)の健康と深く関係しています。
腹部肥満と体格指数の違いとは
腹部肥満は、全身の脂肪の量ではなく、おなかへの脂肪のつき方を見る目安です。体格指数が正常な値でも、腹部肥満のリスクはあります。
| 比較項目 | 体格指数 | 腹部肥満の目安 |
|---|---|---|
| 測定方法 | 体重÷身長²で計算 | ウエスト周囲径・ウエストヒップ比で測ります。 |
| 評価するもの | 全身の脂肪の量 | おなかの脂肪のつき方 |
| 個人差の反映 | 筋肉の量や骨格の違いを考えません。 | 脂肪のつき方の個人差を反映 |
| 代謝の病気のリスク予測 | 限られる | 内臓脂肪と直接関係し、より正確です。 |
腹部肥満が健康に与える影響とは
おなかにたまる内臓脂肪は体の中で活発にはたらき、全身の健康に影響します。具体的なリスクを以下にまとめます。
代謝への影響
- インスリン抵抗性:内臓脂肪がインスリン(血糖を下げるホルモン)を効きにくくし、2型糖尿病のリスクを高めます。
- 脂質異常:中性脂肪を増やし、善玉コレステロールを減らします。
- 代謝症候群:高血圧・高血糖・脂質異常(血液中の脂肪のバランスの乱れ)が重なるリスクを高めます。
臓器への影響
- 心臓:心臓の血管の病気(冠動脈疾患)や心不全のリスクが高まります。
- 肝臓:お酒が原因ではない脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患)の原因になります。
- 炎症:長く続く炎症を起こしやすくし、全身の臓器のはたらきに影響します。
腹部肥満の測定方法
- ウエスト周囲径:息を吐いた後に、肋骨と腰の間の一番細い部分を測ります。
- ウエストヒップ比:ウエスト周囲径÷ヒップ周囲径(お尻周りの長さ)で計算します。男性0.90以上・女性0.85以上で腹部肥満と判断されます。
腹部肥満を予防・改善する方法
- 有酸素運動:週150分以上のウォーキングやジョギングで内臓脂肪が減ります。
- 食事管理:食物繊維が多い野菜や全粒穀物(玄米など)を中心にしたバランスのよい食事です。
- 睡眠:7〜8時間の十分な睡眠で脂肪がたまりにくくなります。
- ストレス管理:コルチゾール(ストレスホルモン)が出すぎるのを防ぎます。
遺伝子と腹部肥満になりやすさの関係
DNA領域rs3989103と腹部肥満の関係
ロンドン大学インペリアル・カレッジのChristakoudiらの研究(2021年、Scientific Reports掲載)で、腹部肥満になるリスクがDNA領域rs3989103と関係していることがわかりました。
- rs3989103にはGG・GA・AAの3つの遺伝子型が存在します。
- Gを持つ遺伝子型(GG型・GA型)の人は腹部肥満のリスクが高い傾向があります。
- このDNA領域はFAM167A遺伝子に関係します。
日本人と世界における遺伝子型分布の比較(rs3989103)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| GG型 | 10.6% | 43.5% |
| GA型 | 44.0% | 44.9% |
| AA型 | 45.3% | 11.5% |
日本人でGタイプ(GG+GA)を持つ人の割合は54.6%で、世界平均の88.4%と比べて低い割合です。一方、AA型の割合は日本人が45.3%と世界平均の11.5%より約3.9倍高く、日本人の遺伝子の特徴を表しています。
そのほかの関係するDNA領域
腹部肥満には複数のDNA領域が関わっています。主な関係するDNA領域は以下のとおりです。
| DNA領域 | 関連遺伝子 | 日本人の割合(リスクが高いタイプを持つ人) |
|---|---|---|
| rs3989103 | FAM167A | GG+GA: 54.6% |
| rs2021885 | LAMB1 | TT+TC: 90.1% |
| rs11144688 | PCSK5 | GG+GA: 99.5% |
| rs1346786 | EFEMP1 | CC+CT: 36.2% |
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:腹部肥満になりやすさ
腹部肥満になりやすさに最も強く影響するDNA領域は、rs3989103です。 日本でのこの領域の遺伝子型の割合は下のとおりです。
- GG
10.6 % - GA
44.0 % - AA
45.3 %
ほかに、腹部肥満になりやすさに関わるDNA領域としてrs2021885があります。 日本でのこの領域の遺伝子型の割合は下のとおりです。
- TT
47.2 % - TC
42.9 % - CC
9.7 %
ほかに、腹部肥満になりやすさに関わるDNA領域としてrs11144688があります。 日本でのこの領域の遺伝子型の割合は下のとおりです。
- GG
87.8 % - GA
11.7 % - AA
0.3 %
ほかに、腹部肥満になりやすさに関わるDNA領域としてrs1346786があります。 日本でのこの領域の遺伝子型の割合は下のとおりです。
- CC
4.0 % - CT
32.2 % - TT
63.6 %
検査の根拠
ロンドン大学インペリアル・カレッジのChristakoudiらの研究で、腹部肥満になるリスクが遺伝子と関係していることがわかりました。人間のDNAには、rs3989103という場所があり、そこにはGとAの2種類のタイプがあります。Gタイプを持つ人は、腹部肥満のリスクが高い傾向にあることがわかりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図の模式図
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
関連遺伝子
| 関連遺伝子 | FAM167A |
|---|---|
| 関連遺伝子 | LAMB1 |
| 関連遺伝子 | PCSK5 |
| 関連遺伝子 | EFEMP1 |
よくある質問
Q1. 腹部肥満とは何ですか?
腹部肥満とは、ウエスト周囲径やウエストヒップ比が大きくなることで判断される、おなかに脂肪がたまりすぎた状態です。体格指数(体重と身長から計算する肥満の目安)とは違い、脂肪のつき方を反映します。おなかにたまる内臓脂肪は体の中で活発にはたらき、インスリン(血糖を下げるホルモン)を効きにくくしたり、長く続く炎症を起こしやすくしたりすることで、2型糖尿病・心臓病・代謝症候群のリスクを高めます。
Q2. 腹部肥満になりやすさは遺伝子と関係していますか?
はい。ロンドン大学インペリアル・カレッジのChristakoudiらの研究(2021年、Scientific Reports)により、DNA領域rs3989103が腹部肥満のリスクと関係していることがわかっています。rs3989103にはGG・GA・AAの3つの遺伝子型があり、Gを持つ遺伝子型の人は腹部肥満のリスクが高い傾向にあります。ほかにもrs2021885、rs11144688、rs1346786が関係するDNA領域として見つかっています。
Q3. 腹部肥満に関係する遺伝子型(rs3989103)は、日本人ではどのくらいの割合ですか?
日本人でのrs3989103の遺伝子型の割合はGG型10.6%、GA型44.0%、AA型45.3%です。世界全体ではGG型43.5%、GA型44.9%、AA型11.5%で、日本人はAA型の割合が世界平均より約3.9倍高いという特徴があります。
Q4. 腹部肥満と体格指数の違いは何ですか?
体格指数は体重と身長から計算する、全身の脂肪の量の目安で、脂肪のつき方は考えません。一方、腹部肥満はウエスト周囲径やウエストヒップ比で判断し、おなかへの脂肪のつき方を反映します。おなかの内臓脂肪は体の中で活発にはたらくため、体格指数が正常でも腹部肥満のリスクはあります。
Q5. 腹部肥満を予防・改善する方法は?
腹部肥満の予防・改善には有酸素運動(週150分以上のウォーキングやジョギング)、食物繊維が多いバランスのよい食事、十分な睡眠(7〜8時間)、ストレスをためない工夫が効果的です。遺伝子の影響でなりやすい場合でも、生活習慣を見直すことでおなかの脂肪を減らすことができます。
参考文献
- 参考リンク1 : 2021 May., Sofia Christakoudi, Sci Rep
- 参考リンク2 : 2015 Feb., Dmitry Shungin, Nature