急性骨髄性白血病
- 急性骨髄性白血病は骨髄芽球が異常に増える血液のがんで、日本では年間約4,000人が診断されます。
- DNA領域rs3213409のT型変異(V722I)が、JAK3遺伝子を異常に活発にし、発症リスクに関わります。
- 進行が速いため早く診断し、すぐに治療を始めることが、回復の見通しをよくするカギとなります。
概要
【概要・特徴】 急性骨髄性白血病は、骨髄芽球(血液のもとになる若い細胞)に異常が起こり、白血病細胞が異常に増える病気です。日本全国で年間約4,000人が診断されています。この病気になると赤血球、血小板、白血球が減るため、貧血や、鼻血などの出血、発熱などの症状が出ます。 急性骨髄性白血病は進行が速いため、早く診断して、すぐに治療を始めることが大切です。19番染色体にある「JAK3」遺伝子の劣性遺伝子によって起こる常染色体劣性(両親から受け継いだ遺伝子が両方とも変異しているときに起こるタイプ)の病気であり、虫垂やリンパ節が影響を受けます。 自分の遺伝子タイプを知っておくと、初期症状が出たときに、すぐに病院を受診しようと考えるきっかけになります。
【2. 理論的根拠】 チロシンキナーゼ(細胞に「増えなさい」という合図を伝える酵素)は、血液の細胞が増えたり、それぞれの役割を持つ細胞に育ったり(分化)するときに大切な働きをしています。急性骨髄性白血病を含む多くのがんでは、この酵素が異常に働きすぎています。 「JAK3」は、チロシンキナーゼの中の「ヤヌスキナーゼ」というグループの一員で、サイトカイン(細胞どうしの連絡に使われる物質)や成長因子が受容体(受け取り口)にくっついたときの合図を、細胞の中に伝えます。(参考リンク1) 「JAK3」遺伝子の特定の場所は「rs3213409」と呼ばれ、「CC型」、「CT型」、「TT型」の3つの遺伝子型があります。世界の人口では、「CC型」が97.64%、「CT型」が2.27%、「TT型」が0.01%の割合でみられ(参考リンク2)、病気のリスクを高めるタイプであるTを多く持つほど、発症リスクが高いことが分かっています。 遺伝子の変異は、遺伝子の情報をもとに作られるタンパク質のアミノ酸の並びを変え、そのタンパク質の働きを変えることがあります。 急性骨髄性白血病の一種である急性巨核芽球性白血病の患者を調べた研究では、DNA領域「rs3213409」の「TT型」で、V722Iと呼ばれるアミノ酸の変異が見つかっています。 これは、「JAK3」のタンパク質の722番目のアミノ酸が、バリンからイソロイシンに置き換わる変異です。この変異によってタンパク質の形が変わって働きも変わり、「JAK3」が異常に活発になります。 その結果、がんのモデル細胞では細胞が止まらずに増え続ける様子が見られ、マウスを使った実験では巨核芽球性白血病が起こることが確認されています。これらの発見から、白血病が起こるうえで「JAK3」の変異が重要であることが分かります。 「JAK3」の変異は常染色体劣性遺伝で受け継がれます。遺伝子検査でこの変異を調べることで、急性骨髄性白血病の発症リスクを予測できる可能性があります。
【3. しくみ(作用機序)】 DNA領域「rs3213409」の「TT型」は病気の原因となる変異で、リンパ芽球性白血病や急性巨核芽球性白血病の原因になる可能性があると考えられています。(参考リンク3) 「JAK3」は、血液を作るはたらき(造血)で大切な役割を持ち、サイトカインの受容体からの合図を細胞の中へ伝える仲立ちをしています。サイトカインが受容体にくっつくと「JAK3」のスイッチが入り(活性化)、サイトカインの受容体にリン酸という目印が付けられます(リン酸化)。 その後、転写活性化因子(STAT)と呼ばれるタンパク質にもリン酸の目印が付きます。STATは細胞の核へ移動し、リンパ系の細胞が生き残り、増え、育つために必要な遺伝子のスイッチを入れる役目をします。(参考リンク4) 最近の研究では、変異によって「JAK3」が異常に活発になることが、急性巨核芽球性白血病や皮膚T細胞リンパ腫などの、人の血液のがんでも見られることが分かっています。
急性骨髄性白血病とは何か
急性骨髄性白血病は、骨髄芽球(血液のもとになる若い細胞)に異常が起こり、白血病細胞が異常に増える血液のがんです。日本では年間約4,000人が診断されています。19番染色体にある「JAK3」遺伝子の変異が発症のしくみに関わっており、赤血球・血小板・白血球が減ることで、貧血・出血・発熱などの症状が出ます。
急性骨髄性白血病の原因と発症のしくみ
急性骨髄性白血病の発症には、JAK3遺伝子の変異が重要な役割を果たします。JAK3はチロシンキナーゼの一種「ヤヌスキナーゼ」のグループに属し、次のようなしくみで白血病を起こします。
- JAK3の異常な活性化:DNA領域rs3213409のTT型が、V722Iというアミノ酸の変異を起こします。
- 合図の伝わり方の異常:サイトカインの受容体にリン酸の目印が付く → STATが活性化する → がん細胞が止まらずに増え続けます。
- 常染色体劣性遺伝:劣性遺伝子によって受け継がれます。
急性骨髄性白血病の主な症状
急性骨髄性白血病は進行が速いため、次のような症状が急に現れます。
- 貧血の症状(だるさ・息切れ・めまい)
- 出血傾向(鼻血・歯肉出血・皮下出血)
- 感染症への抵抗力の低下(発熱・感染症をくり返す)
- リンパ節の腫れ
- 骨や関節の痛み
急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病の違い
| 比較項目 | 急性骨髄性白血病 | 急性リンパ性白血病 |
|---|---|---|
| 異常細胞 | 骨髄系細胞(骨髄芽球) | リンパ系細胞 |
| 好発年齢 | 大人(65歳以上に多い) | 子ども(2〜5歳に多い) |
| 関連遺伝子 | JAK3(rs3213409) | 複数の遺伝子の異常 |
| 治療法 | 化学療法(抗がん剤)+造血幹細胞移植 | 化学療法+分子標的薬 |
| 5年生存率 | 約25〜30%(大人) | 約85〜90%(子ども) |
JAK3遺伝子の変異によって発症するしくみ
JAK3遺伝子は血液を作るはたらき(造血)で重要な役割を持ち、サイトカインの受容体からの合図を細胞の中に伝えています。発症のしくみは次の3段階で進みます。
- 第1段階:サイトカインが受容体にくっつき、JAK3のスイッチが入ります。
- 第2段階:サイトカインの受容体にリン酸の目印が付き(リン酸化)、続いて転写活性化因子(STAT)にもリン酸の目印が付きます。
- 第3段階:STATが核に移動し、リンパ系細胞の生存・増殖・成長に関わる遺伝子のスイッチを異常に入れ続けます。
rs3213409のTT型では、V722Iという変異によってJAK3のスイッチが入りっぱなしになり、がんのモデル細胞で細胞が止まらずに増え続けることが確認されています(1, 3)。
遺伝子と急性骨髄性白血病の関連
DNA領域rs3213409と発症リスクの関係とは
DNA領域rs3213409が、急性骨髄性白血病にかかるリスクと関係していることが研究で分かりました。
- rs3213409にはCC・CT・TTの3つの遺伝子型が存在します。
- T型の変異(リスクを高めるタイプ)を持つ人は、急性骨髄性白血病のリスクが高い傾向にあります。
- 日本人の99.9%がCC型(低リスク)で、T型の変異を持つ人はとても少ないです。
日本人における遺伝子型分布(rs3213409)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 | リスク傾向 |
|---|---|---|---|
| CC型 | 99.9% | 97.6% | 低リスク |
| CT型 | 0.1%以下 | 2.2% | 中リスク |
| TT型 | 0.1%以下 | 0.1%以下 | 高リスク |
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:急性骨髄性白血病
急性骨髄性白血病に最も強く影響するDNA領域は、rs3213409です。 日本におけるこの領域の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- CC
99.9 % - CT
0.1%以下 - TT
0.1%以下
検査の根拠
チロシンキナーゼの一種「ヤヌスキナーゼ」のグループに属する「JAK3」遺伝子は、血液の細胞が増えたり育ったりするときに大切な役割を果たします。DNA領域rs3213409にはCとTの2種類の型があり、T型の変異(V722I)を持つ人は、JAK3が異常に活発になるため、急性骨髄性白血病のリスクが高い傾向にあることが確認されています(1, 3)。がんのモデル細胞では細胞が止まらずに増え続ける様子が見られ、マウスを使った実験では巨核芽球性白血病が起こることが確認されています。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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よくある質問
Q1. 急性骨髄性白血病とは何ですか?
急性骨髄性白血病は、骨髄芽球に異常が起こり、白血病細胞が異常に増える血液のがんです。日本では年間約4,000人が診断されています。赤血球・血小板・白血球が減ることで、貧血・出血・発熱などの症状が急に現れます(1)。
Q2. 急性骨髄性白血病の原因は何ですか?
主な原因はJAK3遺伝子(19番染色体)の変異です。DNA領域rs3213409のTT型はV722Iというアミノ酸の変異を起こし、JAK3が異常に活発になることで、がん細胞が止まらずに増え続けます。常染色体劣性遺伝で受け継がれます(1, 3)。
Q3. 遺伝子検査で急性骨髄性白血病のリスクは分かりますか?
DNA領域rs3213409の遺伝子型を調べることで、急性骨髄性白血病の発症リスクの傾向を知ることができます。T型の変異を持つ人はリスクが高い傾向にあります。日本人の99.9%はCC型(低リスク)で、T型の変異を持つ人はとても少ないことが確認されています(2)。
Q4. 急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病の違いは?
急性骨髄性白血病は骨髄系細胞(骨髄芽球)が異常に増え、主に大人に多く見られます。急性リンパ性白血病はリンパ系細胞が異常に増え、主に子どもに多く見られます。治療は、急性骨髄性白血病では抗がん剤による治療(化学療法)と造血幹細胞移植、急性リンパ性白血病では化学療法と分子標的薬(がん細胞の特定の分子をねらう薬)が中心です。
参考文献
- 参考リンク1 : 遺伝子「JAK3」の情報(アメリカ国立衛生研究所)
- 参考リンク2 : DNA領域「rs3213409」の情報(アメリカ国立衛生研究所)
- 参考リンク3 : 2006 Jul., Denise K Walters, Cancer Cell.
- 参考リンク4 : 2009 Dec., Melanie G Cornejo, Int J Biochem Cell Biol.