アルコール消費量傾向
概要
1. 概要
「お酒を飲む量が増えてきたなぁ。」と感じている方はいませんか。
ほどよい飲酒は、ストレス解消や血行促進などの効果があると言われていますが、飲みすぎには注意が必要です。過度な飲酒は、急性アルコール中毒やがんのリスクを上げ、肝臓へ悪影響を及ぼします。
では、なぜ飲みすぎてしまうのでしょうか。仕事のストレスや日々の疲れなどの一時的な精神状態も関係していますが、最近の研究から、遺伝子「ONECUT2」付近のある部位が、飲酒の量(アルコール摂取量)に影響しているということが明らかになりました。
お酒を飲む量が増えてしまうと、アルコール依存症や臓器障害を起こすリスクが高まります。特に、アルコール依存症になってしまうと、自分自身の力で治療することは難しく、周りの人に迷惑をかける事態になってしまいます。
どのような遺伝子を持ち、どのようなことに注意すればよいかを知ることは、自分自身だけでなく周りの人への配慮にも繋がります。
お酒の量で悩んでいる方は、一度遺伝検査で調べてみてはいかがでしょうか。
2. 理論的根拠
イギリスのバイオバンクで行われた研究により、遺伝子「ONECUT2」周辺において、飲酒量と関連のあるDNA領域「rs4092465」が発見された
。この遺伝子領域には、「AA型」、「AG型」、「GG型」の3つの遺伝子型が存在し、日本人の遺伝子タイプは、「AA型」53.3%最も多く、「AG型」39.4%やや多く、「GG型」7.3%最も少ない 。「AG型」と「GG型」は依存性のあるホルモンの受容体が少なく、飲酒量が減る傾向にあります。
一方、世界全体では、「AG型」が47.8%で最も多く、「AA型」が15.53%で最も少ないことが分かっています。そのため、世界全体で見ると、日本人はお酒に依存しやすい人種であると言えます。
3. 作用機序
遺伝子「ONECUT2」は、ヒトに共通する24の染色体のうち、18番目の染色体に位置し、肝細胞に豊富に存在しており、アルコールの摂取量や頻度に密接に関連しています。
この遺伝子は、RNA分子であるmicroRNA9(miR9)によって発現量が調節されますが、miR9の発現調節機能に異常があると、遺伝子「ONECUT2」の発現量が異常に増加します。
この影響は肝細胞だけでなく、脳の部位である”線条体”でも、「ONECUT2」の増加が見られます。”線条体”に異常が起きると、依存や快楽への抑制機能が低下し、薬物やアルコールなどへの依存状態に陥り、飲酒量が増加するリスクが高まると考えられます。
以上のことから、DNA領域「rs4092465」は飲酒量の増加に深く関係しており、現在も研究が進められているSNPです。
遺伝子領域rs4092465において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA59.91%
- AG34.98%
- GG5.11%
遺伝子領域rs4092465において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA15.53%
- AG47.76%
- GG36.71%
遺伝子領域rs732770において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- GG15.92%
- GA47.96%
- AA36.12%
遺伝子領域rs732770において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- GG42.35%
- GA45.46%
- AA12.20%
遺伝子領域rs1229984において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- TT53.40%
- TC39.35%
- CC7.25%
遺伝子領域rs1229984において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- TT0.24%
- TC9.29%
- CC90.47%
遺伝子領域rs713598において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC18.72%
- CG49.09%
- GG32.18%
遺伝子領域rs713598において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC33.39%
- CG48.79%
- GG17.82%
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:アルコール消費量傾向
体表的なDNA領域:アルコール消費量傾向
アルコール消費量傾向 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs4092465です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
-
AA
59.9% -
AG
35.0% -
GG
5.1%
他に、アルコール消費量傾向に関わる遺伝子領域はrs732770があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
GG
15.9% -
GA
48.0% -
AA
36.1%
他に、アルコール消費量傾向に関わる遺伝子領域はrs1229984があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
TT
53.4% -
TC
39.3% -
CC
7.2%
他に、アルコール消費量傾向に関わる遺伝子領域はrs713598があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
CC
18.7% -
CG
49.1% -
GG
32.2%
検査の根拠
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | ST8SIA3 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | AATF |
| 関連遺伝子 | ADH1B |
| 関連遺伝子 | MGAM |
参考文献
-
関連遺伝子 ST8SIA3
- 参考リンク : 2019 Feb、Mengzhen Liuと研究グループがNat Genet に発表したAssociation studies of up to 1.2 million individuals yield new insights into the genetic etiology of tobacco and alcohol useという研究によるとアルコール消費量傾向 に関連するrs4092465の関連性が認められました。
-
関連遺伝子 AATF
- 参考リンク : 2022 Dec、Gretchen R B Saundersと研究グループがNature に発表したGenetic diversity fuels gene discovery for tobacco and alcohol useという研究によるとアルコール消費量傾向 に関連するrs732770の関連性が認められました。
-
関連遺伝子 AATF
- 参考リンク : 2022 Dec、Gretchen R B Saundersと研究グループがNature に発表したGenetic diversity fuels gene discovery for tobacco and alcohol useという研究によるとアルコール消費量傾向 に関連するrs732770の関連性が認められました。
-
関連遺伝子 ADH1B
- 参考リンク : 2020 Mar、Nana Matobaと研究グループがNat Hum Behav に発表したGWAS of 165,084 Japanese individuals identified nine loci associated with dietary habitsという研究によるとアルコール消費量傾向 に関連するrs1229984の関連性が認められました。
-
関連遺伝子 MGAM
- 参考リンク : 2022 Dec、Gretchen R B Saundersと研究グループがNature に発表したGenetic diversity fuels gene discovery for tobacco and alcohol useという研究によるとアルコール消費量傾向 に関連するrs713598の関連性が認められました。
-
関連遺伝子 ADH1B
- 参考リンク : 2020 Jan、Andrew Thompsonと研究グループがSci Adv に発表したFunctional validity, role, and implications of heavy alcohol consumption genetic lociという研究によるとアルコール消費量傾向 に関連するrs1229984の関連性が認められました。
-
関連遺伝子 ADH1B
- 参考リンク : 2020 Jan、Andrew Thompsonと研究グループがSci Adv に発表したFunctional validity, role, and implications of heavy alcohol consumption genetic lociという研究によるとアルコール消費量傾向 に関連するrs1229984の関連性が認められました。