アルコール依存症
- アルコール依存症は、お酒の量をコントロールできなくなる心の病気で、世界保健機関の報告では世界で約2億8,300万人がかかっています。
- DNA領域rs60610174のAタイプを持つ人は、なりやすい傾向があることがペンシルバニア大学の研究で分かりました。
- きちんとした心と行動への治療・薬による治療・生活環境の見直しで回復することができます。
概要
【疾患の概要】 アルコール依存症は、お酒を飲みすぎたり、長い間飲み続けたりすることで、健康や生活に大きな悪影響が出る状態です。 この状態になると、お酒をやめたくてもやめられず、飲む量や回数を自分でコントロールできなくなります。
【主な特徴と影響】 具体的には、お酒を飲むことが生活の中心になり、仕事や趣味、家族、人間関係が後回しになってしまいます。
【治療と注意点】 また、お酒をやめようとしても失敗することが多くなります。体がアルコールに慣れてしまうため、酔った感じを得るにはもっと多くのお酒が必要になります。 お酒を減らしたりやめたりすると、手の震えや汗、吐き気、イライラなどの禁断症状(お酒が切れたときに出る体や心の不調)が出ることもあります。 この病気は、遺伝子の影響、心の問題(うつ病や不安障害)、周りの環境(家族や社会からの圧力)、暮らしの状況(ストレスや孤立)などが重なって起こります。 診断は医師や専門家が行い、飲酒の習慣や体の状態、心の状態をくわしく調べます。 治療方法はいろいろあり、カウンセリングや認知行動療法(考え方や行動のくせを見直す治療)、同じ悩みを持つ人どうしの支援グループなどがあります。 また、薬による治療も効果があり、お酒の量を減らすための薬が出されることがあります。
【遺伝子の影響】 ペンシルバニア大学のKranzlerらの研究で、アルコール依存症へのかかりやすさが、rs60610174というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはGG、GA、AAの3つの遺伝子型があり、Aを持つ遺伝子型の人は、アルコール依存症になりやすい傾向があることが分かりました。
アルコール依存症とは何か
アルコール依存症は、お酒を飲む量や回数をコントロールできなくなり、体や心、そして社会生活に深刻な問題を起こす心の病気です。世界保健機関の2018年の報告によると、世界で約2億8,300万人(大人の5.1%)がこの病気にかかっていて、すべての死亡原因の約5.3%に関わっています(1)。
アルコール依存症の原因としくみ
アルコール依存症は1つの原因だけで起こるのではなく、次の4つの要因が重なって起こります。
- 遺伝子の影響:なりやすさの約50%は遺伝子の影響によるものです(家族にこの病気の人がいると、なりやすさは3〜4倍に上がります)。
- 心の問題:うつ病・不安障害・心的外傷後ストレス障害(つらい体験の後に続く心の不調)などの心の病気を一緒に持つ人が多いです。
- 周りの環境:家族や社会のお酒の習慣・友人の影響・お酒が手に入りやすい環境です。
- 脳のしくみの変化:快感を感じる脳の働き(ドーパミンという物質が関わるしくみ)が変わり、お酒による気持ちよさをくり返し求めるようになります。
アルコール依存症の主な症状
症状は少しずつ進行し、始めのうちは自分では気づきにくいという特徴があります。
- お酒を飲む量や回数をコントロールできません。
- お酒が生活の中心になり、仕事・趣味・人間関係が後回しになります。
- お酒に強くなります(同じように酔うために飲む量が増えます)。
- 禁断症状(手の震え・汗・吐き気・イライラ・眠れない)が出ます。
- お酒をやめようとしても何度も失敗します。
アルコール依存症の重さの分け方
| 重さ | 当てはまる診断基準の数 | 特徴 |
|---|---|---|
| 軽度 | 2〜3項目 | 飲む量が増え、コントロールしにくくなります。 |
| 中等度 | 4〜5項目 | 社会生活がうまくいかなくなり、禁断症状が出ます。 |
| 重度 | 6項目以上 | 体や心に大きな障害が出ます。 |
アルコール依存症で起こりやすい病気
きちんと治療しないと、次のような健康への害が出ます。
- 肝臓の病気(脂肪肝→アルコール性肝炎→肝硬変)
- 心臓・血管の病気(心臓の筋肉の病気・不整脈・高血圧)
- 神経の障害(手足のしびれなど神経の障害・ウェルニッケ脳症〔ビタミン不足で起こる脳の病気〕)
- 心の病気(うつ病・不安障害が悪くなる)
- 消化器のがん(食道がん・肝臓がんになりやすくなる)
治療法のくらべ
| 治療の種類 | 具体的な方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| 心と行動への治療 | 認知行動療法・やる気を引き出す面接・同じ悩みを持つ人どうしの支援グループ | お酒の飲み方のくせを変えます。 |
| 薬による治療 | ナルトレキソン・アカンプロサート・ジスルフィラム | お酒を飲みたい気持ちをおさえ、禁断症状をやわらげます。 |
| 入院治療 | 体からアルコールを抜く治療・リハビリテーション | 禁断症状が重い場合に行います。 |
遺伝子とアルコール依存症の関係
DNA領域rs60610174となりやすさの関係
ペンシルバニア大学のKranzlerらの研究(1)で、DNA領域rs60610174がアルコール依存症へのかかりやすさと関係していることが分かりました。
- rs60610174にはGG・GA・AAの3つの遺伝子型があります。
- Aタイプを持つ遺伝子型の人は、アルコール依存症になりやすい傾向があります。
日本人の遺伝子型の割合(rs60610174)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| GG型 | 90.6% | 83.6% |
| GA型 | 9.1% | 15.6% |
| AA型 | 0.2% | 0.7% |
検査の根拠となる研究
代表的なDNA領域:アルコール依存症
アルコール依存症に最も強く影響するDNA領域は、rs60610174です。 日本人での遺伝子型の割合は下のとおりです。
- GG
90.6 % - GA
9.1 % - AA
0.2 %
検査の根拠
ペンシルバニア大学のKranzlerらの研究で、アルコール依存症へのかかりやすさが遺伝子と関係していることが分かりました。人のDNAには、rs60610174という場所があり、そこにはGとAの2種類のタイプがあります。Aタイプを持つ人は、アルコール依存症になりやすい傾向があることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの図
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
関係する遺伝子
| 関係する遺伝子 | ZMYM5 |
|---|
よくある質問
Q1. アルコール依存症とは何ですか?
アルコール依存症は、お酒を飲む量や回数をコントロールできなくなり、体や心、そして社会生活に深刻な問題を起こす心の病気です。世界保健機関の報告では、世界で約2億8,300万人(大人の5.1%)がかかっています(1)。
Q2. アルコール依存症の原因は何ですか?
主な原因は、遺伝子の影響(約50%)、心の問題(うつ病・不安障害)、周りの環境(家族・社会からの圧力)、脳のしくみの変化(快感を感じる脳の働きの変化)の4つが重なって関わります。DNA領域rs60610174にAタイプを持つ人は、なりやすい傾向があります(1)。
Q3. 遺伝子検査でアルコール依存症へのなりやすさは分かりますか?
DNA領域rs60610174の遺伝子型を調べることで、アルコール依存症へのなりやすさの傾向が分かりますできます。Aタイプを持つ遺伝子型(GA型・AA型)の人は、なりやすい傾向があることがペンシルバニア大学の研究で分かっています(1)。
Q4. アルコール依存症の治療法にはどのようなものがありますか?
治療法は大きく3つに分けられます。(1)心と行動への治療(認知行動療法・やる気を引き出す面接・支援グループ)、(2)薬による治療(ナルトレキソン・アカンプロサート・ジスルフィラム)、(3)入院治療(禁断症状が重い場合に、体からアルコールを抜く治療)です。