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アルツハイマー症候群

アルツハイマー病のイメージ画像
  • アルツハイマー病は、脳の神経細胞が傷つき、記憶力や考える力がだんだん低下していく病気で、認知症全体の60〜80%を占めます。
  • DNA領域rs11083411のG型を持つ人は発症リスクが高い傾向にあることが、シンガポール国立大学の研究で分かりました。
  • 適切な生活習慣の改善・脳のトレーニング・早期発見によって、発症リスクを下げ、進行を遅らせることが期待できます。

概要

【疾患の概要】 アルツハイマー病は、脳の神経細胞が傷つくことで、記憶力や考える力、行動や感覚などのはたらきが少しずつ低下していく病気です。最も多いタイプの認知症の一つです。 この病気には、セラミド(脂質の一種)、海馬(記憶をつかさどる脳の部分)が小さくなること、アミロイドプラーク(脳にたまる異常なかたまり)が深く関係していると考えられています。

【症状と特徴】 セラミドは、細胞が自ら死ぬしくみ(アポトーシス)や炎症に関わる脂質です。 研究によると、アルツハイマー病の人の脳ではセラミドが増えています。これが神経細胞の死や炎症を悪化させ、病気の発症や進行を早める可能性があります。

【治療と注意点】 海馬は学習と記憶にとって大切な脳の部分です。 アルツハイマー病の人では、早い段階から海馬が小さくなり(萎縮)、記憶や学習する力が低下します。 病気が進むと、海馬はさらに小さくなります。 この萎縮の程度は、病気の重さを知るための大切な目安です。 アミロイドプラークは、アルツハイマー病に特徴的な変化の一つです。 アルツハイマー病の人の脳では、βアミロイドという物質がたまってプラーク(異常なかたまり)を作ります。 これが炎症を起こして神経細胞を傷つけ、シナプス(神経細胞どうしのつなぎ目)のはたらきを悪くし、認知機能(記憶や判断などの力)を低下させます。 アミロイドプラークが多くたまるほど、病気が重くなることが分かっています。

【遺伝的リスク】 シンガポール国立大学のChaiらの研究で、アルツハイマー病のかかりやすさがrs11083411というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはTT、TG、GGの3つの遺伝子型があり、Gを持つ遺伝子型の人は、アルツハイマー症候群のリスクが高い傾向にあることが分かりました。

アルツハイマー病とは何か

アルツハイマー病は、脳の神経細胞が少しずつ傷ついて失われ、記憶力・考える力・判断する力がだんだん低下していく病気です。認知症全体の60〜80%を占め、65歳以上の高齢者に多く見られます(1)。

アルツハイマー病の原因とメカニズム

アルツハイマー病の発症には、主に次の3つのしくみが深く関わっています。

  • βアミロイドプラークがたまる:βアミロイドというタンパク質が脳にたまってプラーク(老人斑)を作り、神経細胞を傷つけます。
  • タウタンパク質の糸くず状の変化:タウタンパク質に異常な変化(リン酸化)が起こり、神経細胞の中にたまって細胞を死なせます。
  • セラミドが増える:アルツハイマー病の人の脳ではセラミド(脂質の一種)が増え、神経細胞が死ぬしくみ(アポトーシス)や炎症を悪化させます。

主なリスク要因は次のとおりです。

  • 年齢(65歳以上で発症する人が急に増える)
  • 家族歴・遺伝子の影響(APOE ε4という遺伝子のタイプなど)
  • 高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病
  • 頭部外傷の既往
  • 社会的な孤立・教育を受けた期間が短い

アルツハイマー病の主な症状

症状はゆっくり進行し、次のような段階をたどります。

  • 初期:最近のことを覚えられない(最近の出来事を忘れる)、日時が分からなくなります。
  • 中期:言葉の障害、判断する力の低下、日時や場所が分からなくなる、性格の変化があります。
  • 後期:日常生活のすべてに手助けが必要になる、飲み込みにくくなる、歩きにくくなります。

アルツハイマー病と他の認知症の違い

比較項目 アルツハイマー病 血管性認知症 レビー小体型認知症
原因 βアミロイドがたまる・タウの異常 脳血管障害(脳梗塞・脳出血) レビー小体(異常なタンパク質のかたまり)がたまります。
患者割合 認知症の60〜80% 認知症の約20% 認知症の約10〜15%
初発症状 記憶障害 物事を計画して進める力の低下 実際にないものが見える(幻視)・手足のふるえなどのパーキンソン症状
進行速度 ゆっくり・進行性 段階的(階段状) 日によって変わります。
海馬の萎縮(小さくなること) 目立つ 軽度 軽度〜中等度

アルツハイマー病の合併症リスク

きちんと管理しない場合、次のような合併症が起こることがあります。

  • 飲み込みの障害による誤嚥性肺炎(食べ物などが気管に入って起こる肺炎)
  • 行動・心理症状(徘徊(あてもなく歩き回る)、攻撃的になる、不安、うつ)
  • 転倒・骨折(空間を把握する力の低下)
  • 栄養失調・脱水(自分で食事をとる力が失われる)

診断方法

次のような検査を組み合わせて診断します。

  • 記憶や判断の力を調べるテスト(ミニメンタルステート検査、長谷川式簡易知能評価スケール)
  • 脳の画像検査(磁気共鳴画像検査・コンピューター断層撮影):海馬の萎縮(小さくなること)の程度を調べます。
  • 陽電子放射断層撮影(アミロイドやタウのたまり具合を画像で調べる検査)
  • 脳脊髄液(脳と脊髄のまわりの液体)の検査(βアミロイド42、リン酸化タウの量を調べる)

予防と対策

次のような生活習慣が、アルツハイマー病になるリスクを下げるのに役立つと報告されています。

  • 有酸素運動:週150分以上のほどよい運動が、脳の血のめぐりをよくします。
  • 地中海式の食事:魚・野菜・オリーブオイル中心の食事で、脳へのダメージ(酸化ストレス)を減らします。
  • 脳のトレーニング:読書・パズル・人との交流が、脳の予備の力(認知予備能)を高めます。
  • よい睡眠をとる:7〜8時間のよい睡眠が、脳からβアミロイドを取り除くのを助けます。
  • 高血圧・糖尿病の管理:血管の病気につながる要因を管理することが、認知症の予防に役立ちます。

遺伝子とアルツハイマー病の関連

DNA領域rs11083411と発症リスクの関係

シンガポール国立大学のChaiらの研究(1)で、DNA領域rs11083411がアルツハイマー病のかかりやすさと関係していることが分かりました。

  • rs11083411にはTT・TG・GGの3つの遺伝子型があります。
  • G型変異を持つ遺伝子型の人は、アルツハイマー病のリスクが高い傾向があります。

日本人における遺伝子型分布(rs11083411)

遺伝子型 日本人の割合 世界の割合
TT型 34.9% 39.8%
TG型 48.3% 46.5%
GG型 16.6% 13.5%

DNA領域rs11083411における日本での各遺伝子型の割合

  • TT
    34.9%
  • TG
    48.3%
  • GG
    16.6%

DNA領域rs11083411における世界での各遺伝子型の割合

  • TT
    39.8%
  • TG
    46.5%
  • GG
    13.5%

DNA領域rs112724034における日本での各遺伝子型の割合

  • CC
    99.9%
  • CT
    0.1%以下
  • TT
    0.1%以下

DNA領域rs112724034における世界での各遺伝子型の割合

  • CC
    89.8%
  • CT
    9.8%
  • TT
    0.2%

DNA領域rs2838923における日本での各遺伝子型の割合

  • AA
    18.3%
  • AG
    48.9%
  • GG
    32.7%

DNA領域rs2838923における世界での各遺伝子型の割合

  • AA
    48.6%
  • AG
    42.1%
  • GG
    9.1%

DNA領域rs79110742における日本での各遺伝子型の割合

  • TT
    98.0%
  • TA
    1.9%
  • AA
    0.1%以下

DNA領域rs79110742における世界での各遺伝子型の割合

  • TT
    98.0%
  • TA
    1.9%
  • AA
    0.1%以下

DNA領域rs912322における日本での各遺伝子型の割合

  • AA
    33.8%
  • AG
    48.6%
  • GG
    17.4%

DNA領域rs912322における世界での各遺伝子型の割合

  • AA
    53.8%
  • AG
    39.0%
  • GG
    7.0%

検査の理論的根拠

代表的なDNA領域:アルツハイマー症候群

アルツハイマー症候群に最も強く影響するDNA領域は、rs11083411です。 日本でのそれぞれの遺伝子型の割合は下記のとおりです。

  • TT
    34.9 %
  • TG
    48.3 %
  • GG
    16.6 %

ほかに、アルツハイマー症候群に関わるDNA領域としてrs112724034があります。 日本でのそれぞれの遺伝子型の割合は下記のとおりです。

  • CC
    99.9 %
  • CT
    0.1%以下
  • TT
    0.1%以下

ほかに、アルツハイマー症候群に関わるDNA領域としてrs2838923があります。 日本でのそれぞれの遺伝子型の割合は下記のとおりです。

  • AA
    18.3 %
  • AG
    48.9 %
  • GG
    32.7 %

ほかに、アルツハイマー症候群に関わるDNA領域としてrs79110742があります。 日本でのそれぞれの遺伝子型の割合は下記のとおりです。

  • TT
    98.0 %
  • TA
    1.9 %
  • AA
    0.1%以下

ほかに、アルツハイマー症候群に関わるDNA領域としてrs912322があります。 日本でのそれぞれの遺伝子型の割合は下記のとおりです。

  • AA
    33.8 %
  • AG
    48.6 %
  • GG
    17.4 %

検査の根拠

シンガポール国立大学のChaiらの研究で、アルツハイマー症候群のかかりやすさが遺伝子と関係していることが分かりました。人間のDNAにはrs11083411という領域があり、そこにはTとGの2種類の違いがあります。G型を持つ人は、アルツハイマー症候群のリスクが高い傾向にあることが分かりました(1)。

今回調査したDNA領域

細胞の中にあるDNAマップの模式図

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関連遺伝子

関連遺伝子 MIR302F
関連遺伝子 PGAM5P1
関連遺伝子 COL18A1
関連遺伝子 LINC02301
関連遺伝子 MYO16

よくある質問

Q1. アルツハイマー病とは何ですか?

アルツハイマー病は、脳の神経細胞が少しずつ傷ついて失われ、記憶力・考える力・判断する力がだんだん低下していく病気です。認知症全体の60〜80%を占めます。βアミロイドがたまることと、タウタンパク質の異常が、脳に見られる主な変化です(1)。

Q2. アルツハイマー病の原因は何ですか?

主な原因はβアミロイドプラークがたまることと、タウタンパク質の糸くず状の変化(神経原線維変化)です。セラミド(脂質の一種)の増加も関係しています。年齢、遺伝子の影響、生活習慣病がリスクを高める要因です。DNA領域rs11083411でG型を持つ人はリスクが高い傾向にあります(1)。

Q3. アルツハイマー病の初期症状は?

最も目立つ初期症状は最近のことを覚えられない記憶障害です。最近の出来事を忘れる、同じ質問を繰り返す、日時や場所が分からなくなるなどの症状が出ます。進行すると、判断する力の低下、言葉の障害、性格の変化が起こります。

Q4. 遺伝子検査でアルツハイマー病のリスクは分かりますか?

DNA領域rs11083411の遺伝子型を調べることで、アルツハイマー病の発症リスクの傾向を知ることができます。G型を持つ遺伝子型の人はリスクが高い傾向にあることが、シンガポール国立大学の研究で分かっています(1)。

参考文献