アルツハイマー症候群
概要
アルツハイマー病(AD)は脳の神経細胞の損傷により記憶力、思考能力、行動や感覚などの機能が徐々に低下する疾患で、最も一般的な認知症の一つです。
この疾患の発症にはセラミド、海馬体萎縮、アミロイドプラークの沈着が深く関係していると考えられています。
セラミドはアポトーシス(プログラムされた細胞の自殺)や炎症に関わる脂質です。
研究によると、AD患者の脳内ではセラミドのレベルが上昇しており、これがニューロン(神経細胞)のアポトーシスや炎症を悪化させ、ADの発症と進行を促進する可能性があります。
海馬体は学習と記憶に重要な脳の部分です。AD患者では、早期から海馬体の萎縮が見られ、これが認知機能障害(記憶や学習能力の低下)につながります。
病気が進行するにつれて、海馬体はさらに萎縮します。この萎縮の程度はADの重症度を示す重要な指標です。
アミロイドプラークは、ADの特徴的な病変の一つです。AD患者の脳内では、βアミロイドという物質が蓄積してプラーク(異常な塊)を形成します。
これが炎症を引き起こし、ニューロンを傷つけ、シナプス(神経細胞間の接続部)の機能を障害し、認知機能の低下をもたらします。アミロイドプラークの蓄積が多いほど、ADが重症化することが判明しています。
シンガポール国立大学のChaiらの研究により、アルツハイマー病の罹患リスクがrs11083411というDNA領域と関連していることが明らかになりました。
このDNA領域にはTT、TG、GGの3つの遺伝子型があり、Gを持つ遺伝子型の人は、アルツハイマー症候群のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
遺伝子領域rs11083411において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- TT34.97%
- TG48.33%
- GG16.70%
遺伝子領域rs11083411において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- TT39.90%
- TG46.53%
- GG13.57%
遺伝子領域rs112724034において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC100.00%
- CT0.00%
- TT0.00%
遺伝子領域rs112724034において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC89.86%
- CT9.86%
- TT0.27%
遺伝子領域rs2838923において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA18.31%
- AG48.96%
- GG32.73%
遺伝子領域rs2838923において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA48.68%
- AG42.18%
- GG9.14%
遺伝子領域rs79110742において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- TT98.09%
- TA1.90%
- AA0.01%
遺伝子領域rs79110742において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- TT98.09%
- TA1.90%
- AA0.01%
遺伝子領域rs912322において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA33.84%
- AG48.66%
- GG17.49%
遺伝子領域rs912322において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA53.82%
- AG39.08%
- GG7.10%
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:アルツハイマー症候群
体表的なDNA領域:アルツハイマー症候群
アルツハイマー症候群 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs11083411です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
-
TT
35.0% -
TG
48.3% -
GG
16.7%
他に、アルツハイマー症候群に関わる遺伝子領域はrs112724034があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
CC
100.0% -
CT
0.0% -
TT
0.0%
他に、アルツハイマー症候群に関わる遺伝子領域はrs2838923があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
AA
18.3% -
AG
49.0% -
GG
32.7%
他に、アルツハイマー症候群に関わる遺伝子領域はrs79110742があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
TT
98.1% -
TA
1.9% -
AA
0.0%
他に、アルツハイマー症候群に関わる遺伝子領域はrs912322があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
AA
33.8% -
AG
48.7% -
GG
17.5%
検査の根拠
シンガポール国立大学のChaiらの研究により、アルツハイマー症候群の罹患リスクが遺伝子と関連していることが明らかになりました。人間のゲノムには、rs11083411という領域が存在し、その領域の遺伝子にはTとGの2種類の変異があります。Tタイプの変異を持つ人は、アルツハイマー症候群のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | MIR302F |
|---|---|
| 関連遺伝子 | PGAM5P1 |
| 関連遺伝子 | COL18A1 |
| 関連遺伝子 | LINC02301 |
| 関連遺伝子 | MYO16 |
参考文献
-
関連遺伝子 MIR302F
- 参考リンク : 2020 Jan、Jin-Fang Chaiと研究グループがHum Mol Genet に発表したAssociations with metabolites in Chinese suggest new metabolic roles in Alzheimer’s and Parkinson’s diseasesという研究によるとアルツハイマー症候群 に関連するrs11083411の関連性が認められました。
-
関連遺伝子 PGAM5P1
- 参考リンク : 2014 Jan、Richard Shervaと研究グループがAlzheimers Dement に発表したGenome-wide association study of the rate of cognitive decline in Alzheimer’s diseaseという研究によるとアルツハイマー症候群 に関連するrs112724034の関連性が認められました。
-
関連遺伝子 COL18A1
- 参考リンク : 2012 Jul、Scott A Melvilleと研究グループがAnn Neurol に発表したMultiple loci influencing hippocampal degeneration identified by genome scanという研究によるとアルツハイマー症候群 に関連するrs2838923の関連性が認められました。
-
関連遺伝子 LINC02301
- 参考リンク : 2015 Oct、Vijay K Ramananと研究グループがBrain に発表したGWAS of longitudinal amyloid accumulation on 18F-florbetapir PET in Alzheimer’s disease implicates microglial activation gene IL1RAPという研究によるとアルツハイマー症候群 に関連するrs79110742の関連性が認められました。
-
関連遺伝子 MYO16
- 参考リンク : 2019 Jan、Alireza Nazarianと研究グループがAlzheimers Res Ther に発表したGenome-wide analysis of genetic predisposition to Alzheimer’s disease and related sex disparitiesという研究によるとアルツハイマー症候群 に関連するrs912322の関連性が認められました。