男性型脱毛症
- 男性型脱毛症は日本人男性の約30%(推定約1,260万人)が発症する、大人の男性に最も多く見られる脱毛症です。
- DNA領域rs10502861のC型を持つ人は発症しやすく、日本人の約97%がCC型またはCT型を持っています。
- 遺伝子の影響に加え、栄養不足・ストレス・睡眠不足などの生活環境が発症に関わります。
概要
【概要】 男性型脱毛症は、大人の男性に最も多く見られる脱毛症です。頭のてっぺんや生え際の髪が、少しずつ薄くなるのが特徴です。 日本人男性の約30%がこの脱毛症になると考えられ、約1,260万人が当てはまると推定されています。髪が薄くなると、清潔感がないように見えたり、老けて見えたりして、自信をなくすこともあります。 また、周りの人に悪い印象をもたれやすく、将来自分も薄毛になるのではと心配する人も多いでしょう。男性型脱毛症は遺伝しやすいと言われていますが、遺伝だけが原因ではありません。 最近の研究から、遺伝子「SETBP1」のある場所が、男性型脱毛症のなりやすさに影響している可能性が高いことがわかりました。若い人でも10代から始まることがあり、最初のサインに気づかずに放っておくと、髪がわずかに残る程度まで進むことがあります。 遺伝子検査で自分の遺伝子タイプを調べ、発症のリスクを知っておくことは、予防や早めの対策に役立つかもしれません。
【特徴】 カナダのジューイッシュ総合病院で行われた遺伝子の研究により、遺伝子「SETBP1」の近くにある特定のタイプによって、男性型脱毛症になりやすい人がいることがわかりました。 この場所は「rs10502861」と呼ばれ、DNA領域には「CC型」「CT型」「TT型」の3つの遺伝子型があります。日本人では「CC型」が69.9%で最も多く、「CT型」が27.4%、「TT型」が2.7%で最も少なくなっています。 驚くことに、日本人の約9割以上が、男性型脱毛症になりやすい「CC型」か「CT型」を持っています。ただし、必ずしも発症するわけではなく、なりにくいTT型の人も含めて、生活環境にも気をつける必要があります。 たとえば、髪の材料になる栄養が足りないことや、ストレスや睡眠不足でホルモンのバランスが乱れることが関わります。髪は、タンパク質やミネラル、ビタミンなどでできていて、特にミネラルの一種である亜鉛は、体の中で不足しやすい栄養です。 亜鉛は、髪の主成分であるケラチンというタンパク質をつくるために必要です。牡蠣やレバーなどの食品を積極的にとったり、サプリメントで補ったりするとよいでしょう。 ストレスでストレスホルモンが増えると、皮脂が出すぎて頭皮の状態が悪くなります。睡眠不足で成長ホルモンの出る量が減ると、髪の成長にも影響します。そのため、薄毛の対策として、食事、睡眠時間、ストレスなどの自己管理が大切です。 早い時期に遺伝子検査で自分の発症のリスクを知っておけば、なるべく発症させないように、生活や環境面で気をつけることができます。
【科学的根拠】 男性型脱毛症が起こるしくみは、次のように考えられています。男性ホルモンと5αリダクターゼという酵素が結びついた物質が、毛根にある細胞に取り込まれます。すると、TGFβという脱毛因子(髪を抜けやすくする物質)がつくられます。 この脱毛因子が髪の生え変わりのサイクルを乱し、髪の量が減ることがわかっています。ストレスや栄養不足などの生活環境と、遺伝子の影響の両方が関わっていて、遺伝子「SETBP1」は関連する遺伝子のひとつです。 遺伝子「SETBP1」は、人に共通する24種類の染色体のうち、18番染色体にあります。前立腺や腎臓だけでなく、髪や頭皮でもはたらいています。 遺伝子「SETBP1」が男性型脱毛症に直接どう関わるのかは、まだわかっていません。ただ、「rs10502861」という遺伝子型によって、髪や頭皮の細胞が自分と同じ細胞をつくり直す力の調節が変わり、髪が正常に再生できなくなって、脱毛症になりやすくなると考えられています。 したがって、「rs10502861」は男性型脱毛症の発症に深く関係し、注目が集まっているDNA領域のひとつです。
男性型脱毛症(AGA)とは何か
男性型脱毛症は、大人の男性に最も多く見られる脱毛症で、頭のてっぺんや生え際の髪が少しずつ薄くなることが特徴です。日本人男性の約30%が男性型脱毛症になると推計され、患者数は約1,260万人に上ります。
10代から始まる場合もあり、最初のサインに気づかず放っておくと、髪がわずかに残る程度まで進む可能性があります。早めに遺伝子検査で自分のリスクを知り、予防や対策に取り組むことが大切です。
男性型脱毛症の原因としくみ
男性型脱毛症は、男性ホルモンと5αリダクターゼという酵素が結びつくことから始まります。しくみは次のとおりです。
- 男性ホルモンと5αリダクターゼの結びつき:結びついた物質が、毛根の細胞に取り込まれます。
- 脱毛因子TGFβがつくられる:取り込まれた物質が、TGFβ(脱毛因子)をつくります。
- 髪のサイクルの乱れ:TGFβが髪の生え変わりのサイクルを乱し、髪の量が減ります。
- 遺伝子の影響:遺伝子SETBP1(18番染色体)が、髪や頭皮の細胞のつくり直しに関わります。
男性型脱毛症のリスク要因
遺伝子の影響だけでなく、次のような生活環境も重なって関わります。
| 要因カテゴリ | 具体的リスク | 影響 |
|---|---|---|
| 遺伝 | rs10502861のC型変異 | 髪や頭皮の細胞をつくり直す力の低下 |
| 栄養不足 | 亜鉛・タンパク質・ビタミンの不足 | 髪の主成分ケラチンをつくりにくくなります。 |
| ストレス | ストレスホルモンの増加 | 皮脂が出すぎて、頭皮の状態が悪くなります。 |
| 睡眠不足 | 成長ホルモンの出る量の減少 | 髪の成長や修復がじゃまされます。 |
男性型脱毛症の予防・対策方法
リスクを減らすためには、次の生活習慣の見直しが役立ちます。
- 亜鉛の摂取:毛髪の主成分ケラチンの生成に必須です。牡蠣・レバーなどの食品やサプリメントで補給します。
- 十分な睡眠:成長ホルモンの出方を助け、髪の成長をサポートします。
- ストレス管理:ストレスホルモンが増えるのを抑え、頭皮の状態を保ちます。
- 遺伝子検査:早めにリスクを知り、予防のための生活改善に取り組みます。
遺伝子と男性型脱毛症の関係
DNA領域rs10502861と発症リスクの関係
カナダのジューイッシュ総合病院(マギル大学)のLi氏らの研究により、遺伝子SETBP1の近くのDNA領域rs10502861が、男性型脱毛症のなりやすさと関係していることがわかりました。
- rs10502861にはCC・CT・TTの3つの遺伝子型があります。
- C型を持つCC型・CT型は、男性型脱毛症になりやすい傾向があります。
- TT型は比べると低リスク
- 日本人の約97%がCC型(69.9%)またはCT型(27.4%)を持っています。
ただし、CC型やCT型の人が必ず男性型脱毛症になるわけではなく、生活環境の悪い条件(栄養不足・ストレス・睡眠不足)が重なると、発症するリスクが上がります。
日本人における遺伝子型分布(rs10502861)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 | リスク傾向 |
|---|---|---|---|
| CC型 | 69.9% | 51.5% | 高リスク |
| CT型 | 27.4% | 40.5% | やや高リスク |
| TT型 | 2.7% | 7.9% | 低リスク |
しくみ:遺伝子SETBP1と男性型脱毛症の関係
遺伝子SETBP1は、人の24種類の染色体のうち18番染色体にあり、前立腺や腎臓だけでなく、髪や頭皮でもはたらいています。
DNA領域rs10502861の遺伝子型によって男性型脱毛症が起こるしくみは、次のように考えられています。
- rs10502861のC型の違いが、SETBP1のはたらき方に影響します。
- 髪や頭皮で、細胞をつくり直す力の調節がうまくいかなくなります。
- 髪が正常に再生できなくなり、脱毛が進みます。
このしくみから、rs10502861は男性型脱毛症の発症に深く関係する、注目のDNA領域のひとつです。
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:男性型脱毛症
男性型脱毛症に最も強く影響するDNA領域は、rs10502861です。 日本人でのこの領域の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- CC
68.3 % - CT
28.6 % - TT
2.9 %
他に、男性型脱毛症に関わるDNA領域はrs12509636があります。 日本人でのこの領域の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- CC
0.7 % - CT
15.8 % - TT
83.4 %
他に、男性型脱毛症に関わるDNA領域はrs185597083があります。 日本人でのこの領域の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- CC
99.9 % - CA
0.1%以下 - AA
0.1%以下
他に、男性型脱毛症に関わるDNA領域はrs2965030があります。 日本人でのこの領域の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- AA
0.1%以下 - AG
0.1%以下 - GG
99.9 %
他に、男性型脱毛症に関わるDNA領域はrs35068491があります。 日本人でのこの領域の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- TT
99.9 % - TC
0.1%以下 - CC
0.1%以下
他に、男性型脱毛症に関わるDNA領域はrs9287638があります。 日本人でのこの領域の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- CC
33.2 % - CA
48.8 % - AA
17.8 %
検査の根拠
マギル大学のLi氏らの研究により、男性型脱毛症になりやすさが遺伝子と関係していることがわかりました。rs10502861領域にはCとTの2種類の違いがあり、C型を持つ人は男性型脱毛症になりやすい傾向があります。日本人ではCC型が68.3%、CT型が28.6%、TT型が2.9%で、世界の平均と比べてC型を持つ人が多いことが特徴です。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図の模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | SLC14A2 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | RNU6-351P |
| 関連遺伝子 | PAGE2 |
| 関連遺伝子 | TWIST1 |
| 関連遺伝子 | RUNX1 |
| 関連遺伝子 | LINC01937 |
よくある質問
Q1. 男性型脱毛症とは何ですか?
男性型脱毛症は、大人の男性に最も多く見られる脱毛症です。頭のてっぺんや生え際の髪が少しずつ薄くなるのが特徴で、日本人男性の約30%(推定約1,260万人)が発症します。男性ホルモンと5αリダクターゼが結びついてTGFβという脱毛因子ができることが、直接の原因です。
Q2. 男性型脱毛症の原因となる遺伝子は何ですか?
男性型脱毛症に関わる主なDNA領域はrs10502861(遺伝子SETBP1付近・18番染色体)です。CC型・CT型・TT型の3種類の遺伝子型があり、C型を持つ人は発症しやすい傾向があります。日本人の約97%がCC型かCT型を持っています。
Q3. AGAは遺伝しますか?
男性型脱毛症は遺伝子の影響が大きく関与しますが、遺伝だけが原因ではありません。栄養不足(特に亜鉛不足)・ストレス・睡眠不足などの生活環境も、発症に大きく関わります。TT型のなりにくいタイプの人も、生活環境には注意が必要です。
Q4. 男性型脱毛症の予防・対策方法は?
男性型脱毛症の予防には亜鉛を含む食品(牡蠣・レバー)をとること、十分な睡眠時間をとること、ストレスをためないことがよいでしょう。早めに遺伝子検査で自分のリスクを知り、生活習慣を見直すことで、発症を遅らせられる可能性があります。
Q5. 男性型脱毛症はどのようなしくみで起こりますか?
男性型脱毛症は男性ホルモンと5αリダクターゼが結びついた物質が毛根の細胞に取り込まれ、脱毛因子TGFβ(髪を抜けやすくする物質)がつくられることで起こります。TGFβが髪の生え変わりのサイクルを乱し、髪の量が減ります。遺伝子SETBP1のrs10502861領域が、髪や頭皮の細胞が自分と同じ細胞をつくり直す力に関わると考えられています。
参考文献
- 参考リンク1 : 1979 Mar., I. Takashima, Hair Research.
- 参考リンク2 : 2012 May., Rui Li, PLoS Genet.
- 参考リンク3 : DNA領域「rs10502861」の情報(米国国立衛生研究所)
- 参考リンク4 : 遺伝子「SETBP1」の情報(米国国立衛生研究所)
- 参考リンク5 : 2012 May., Rui Li, PLoS Genet
- 参考リンク6 : 2017 Feb., Saskia P Hagenaars, PLoS Genet
- 参考リンク7 : 2016 Jul., Joseph K Pickrell, Nat Genet
- 参考リンク8 : 2018 Dec., Chloe X Yap, Nat Commun