seeDNAロゴアイコン 強直性脊椎炎

概要

1. 概要

強直性脊椎炎は、日本で約4,500人の患者がいると推定される比較的稀な病気です。この病気の主な原因は、脊椎や骨盤、大きな関節に起こる慢性進行性の炎症です。
若年者が多く発症し、国の難病に指定されています。(参考リンク1)
炎症は広範囲に広がり、関節の運動制限や障害が引き起こされます。首や脊椎、また関節が動かなくなることから、日常生活に大きな支障が生じます。
原因は不明ですが、遺伝子「HLAB27」との強い関連が指摘されており、その他の遺伝子異常との関連も報告されています。
アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダの合同研究チームによる患者の網羅的な遺伝子検査によって、21番染色体に複数の遺伝子異常が報告されています。よってご自身の遺伝子検査を行うことで、強直性脊椎炎のリスクについて確認することができます。

2. 理論的根拠

アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダの合同研究チームが、強直性脊椎炎の患者2,053人と、人種的に遺伝子のルーツの近い健常人5,140人を対象に、遺伝子の網羅的な比較・解析を行いました。
その結果、以前から知られていた「強直性脊椎炎」の関連遺伝子である「ERAP1」と「IL23R」以外に、新たに2番と21番染色体に複数の遺伝子異常があることが確認されました。
特に、21番染色体の複数の遺伝子異常の領域のひとつに「rs378108」がありました。(参考リンク2)
このDNA領域「rs378108」は、イギリス人とオーストラリア人の強直性脊椎炎の患者1,787人と健常人4,800人の比較でもリスク因子として検出されました。(参考リンク3)
DNA領域「rs378108」には、「AA型」「AG型」「GG型」と3つの遺伝子型があり、日本人の遺伝子タイプは、AG型が54.9%で最も多く、AA型が31.9%、GG型が13.3%で最も少ないことが分かりました。(参考リンク4)
遺伝子解析では、DNA領域「rs378108」がRisk AlleleであるGを持つ場合、強直性脊椎炎のリスクが少し高くなる可能性が指摘されました。(参考リンク3)

強直性脊椎炎は、原因も完全には解明されておらず、症状がゆっくりと現れるため、正確な診断が遅れることもあります。
治療は、対症療法が基本であり、生物学的製剤など新しいタイプの炎症を抑える薬剤も試されています。
このような難病に対しても、遺伝子検査でリスクを予め知っておくことで早期発見につながる可能性があり、また早期から炎症を抑えることで病気の進行を遅らせることができるかもしれません。

3. 作用機序

「rs378108」というDNA領域と「強直性脊椎炎」の遺伝的な関係については、詳細なメカニズムはまだ解明されていません。
しかしながら、「炎症性腸疾患」との関係が疑われており、21番染色体に存在する「PSMG1」という遺伝子が、「炎症性腸疾患」とともに「強直性脊椎炎」と関連があることが報告されています。

また、強直性脊椎炎の患者の70%近くが発症する「回腸炎」と「クローン病の回腸炎」は酷似しており、また、クローン病の患者の10%近くが強直性脊椎炎を合併することがあることから、強直性脊椎炎と炎症性腸疾患の関連性が指摘されています。
しかしながら、「PSMG1」遺伝子と「強直性脊椎炎」の遺伝子レベルにおける正確なメカニズムはまだ解明されていません。
また、DNA領域「rs378108」がタンパク質の生成に関わっている可能性もあるとされています。
以上のことから、DNA領域「rs378108」は強直性脊椎炎のリスクに関係する一塩基多型のひとつとして注目されています。

遺伝子領域rs378108において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

35.54% 48.15% 16.31%
  • AA35.54%
  • AG48.15%
  • GG16.31%

遺伝子領域rs378108において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

27.96% 49.83% 22.20%
  • AA27.96%
  • AG49.83%
  • GG22.20%

遺伝子領域rs2836883において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

69.98% 27.35% 2.67%
  • GG69.98%
  • GA27.35%
  • AA2.67%

遺伝子領域rs2836883において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

55.62% 37.92% 6.46%
  • GG55.62%
  • GA37.92%
  • AA6.46%

seeDNAロゴアイコン検査の理論的根拠

体表的なDNA領域:強直性脊椎炎

体表的なDNA領域:強直性脊椎炎

強直性脊椎炎 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs378108です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。

  • AA

    35.5
    %
  • AG

    48.2
    %
  • GG

    16.3
    %

他に、強直性脊椎炎に関わる遺伝子領域はrs2836883があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです

  • GG

    70.0
    %
  • GA

    27.3
    %
  • AA

    2.7
    %

検査の根拠

seeDNAロゴアイコン今回調査したDNA領域

細胞中に存在するDNAマップの模式図

seeDNAロゴアイコン関連遺伝子

関連遺伝子 LINC02940
関連遺伝子 LINC02940

seeDNAロゴアイコン参考文献

  • 関連遺伝子 LINC02940
  • 参考リンク : 2011 Jul、David M Evansと研究グループがNat Genet に発表したInteraction between ERAP1 and HLA-B27 in ankylosing spondylitis implicates peptide handling in the mechanism for HLA-B27 in disease susceptibilityという研究によると強直性脊椎炎 に関連するrs378108の関連性が認められました。
  • 関連遺伝子 LINC02940
  • 参考リンク : 2013 Jul、International Genetics of Ankylosing Spondylitis Consortium (IGAS)と研究グループがNat Genet に発表したIdentification of multiple risk variants for ankylosing spondylitis through high-density genotyping of immune-related lociという研究によると強直性脊椎炎 に関連するrs2836883の関連性が認められました。