抗酸化能力
概要
抗酸化作用とは、抗酸化物質が酸化ストレスに対抗し、フリーラジカル(体内で有害な作用を持つ原子)を中和し、細胞を酸化ダメージから守る能力を指します。酸化ストレスは、活性酸素種(ROS)や他のフリーラジカルが過剰に発生することで起こり、タンパク質、脂質、DNAなどにダメージを与えます。
これが炎症、老化、様々な慢性疾患の原因となります。抗酸化物質は、フリーラジカルの除去、抗酸化酵素の活性化、遷移金属イオンのキレート化、フリーラジカル連鎖反応の阻止などの方法で働きます。
血漿ベタインとグルタチオンSトランスフェラーゼMu 1(GSTM1)は、どちらも体の抗酸化能力に関係しています。
ベタインはグルタチオン(GSH)の合成を助けます。GSHは体内の主要な抗酸化物質で、ROSを直接消去し、抗酸化酵素の補因子としても機能します。血漿ベタインの濃度は、体内のGSH合成に影響し、抗酸化能力を左右します。
GSTM1は重要な解毒酵素で、求電子性基質とGSHの抱合を触媒し、それらの排泄を促進して細胞を酸化ダメージから守ります。
GSTM1遺伝子には多型性があり、特定の遺伝子を持つ人は酵素活性を完全に失い、抗酸化能力が低下することがあります。
以上から、血漿ベタインとGSTM1は異なるメカニズムを通じて相互に関連し、体の抗酸化防御を構成しています。血漿ベタインはGSH合成を支援し、抗酸化酵素の活性を高め、GSTM1は酸化産物の解毒に関与します。
ウェルカム・トラスト・サンガー研究所のShinらの研究により、抗酸化能力がrs2851391というDNA領域と関連していることが明らかになりました。
このDNA領域にはTT,TC,CCの3つの遺伝子型があり、Cを持つ遺伝子型の人は、抗酸化能力が高い傾向にあることが分かりました。
遺伝子領域rs2851391において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- TT15.54%
- TC47.76%
- CC36.70%
遺伝子領域rs2851391において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- TT19.13%
- TC49.22%
- CC31.65%
遺伝子領域rs2073333において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC46.61%
- CT43.32%
- TT10.07%
遺伝子領域rs2073333において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC61.67%
- CT33.72%
- TT4.61%
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:抗酸化能力
体表的なDNA領域:抗酸化能力
抗酸化能力 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs2851391です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
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TT
15.5% -
TC
47.8% -
CC
36.7%
他に、抗酸化能力に関わる遺伝子領域はrs2073333があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
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CC
46.6% -
CT
43.3% -
TT
10.1%
検査の根拠
ウェルカム・トラスト・サンガー研究所のShinらの研究により、抗酸化能力が遺伝子と関連していることが明らかになりました。人間のゲノムには、rs2851391という領域が存在し、その領域の遺伝子にはTとCの2種類の変異があります。Tタイプの変異を持つ人は、抗酸化能力が高い傾向にあることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | CBS |
|---|---|
| 関連遺伝子 | SERPINA1 |
参考文献
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関連遺伝子 CBS
- 参考リンク : 2014 Jun、So-Youn Shinと研究グループがNat Genet に発表したAn atlas of genetic influences on human blood metabolitesという研究によると抗酸化能力 に関連するrs2851391の関連性が認められました。
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関連遺伝子 SERPINA1
- 参考リンク : 2021 Nov、Maik Pietznerと研究グループがScience に発表したMapping the proteo-genomic convergence of human diseasesという研究によると抗酸化能力 に関連するrs2073333の関連性が認められました。