筋肉量
- 筋肉量(除脂肪体重)とは、体重から体脂肪量を引いた筋肉・骨・内臓の重さで、健康管理・ダイエットの効果・骨密度の予想に直接つながる大切な目安です。
- 遺伝子LRP5のDNA領域rs3736228が除脂肪体重と関係し、TT型・CT型はCC型と比べて除脂肪体重が少ない傾向があります。
- 日本人のTT型・CT型合計保有率は45.1%で、世界平均の25.9%と比較して約1.7倍高いです。
概要
【概要】 体重は、脂肪以外の重さである「除脂肪体重」と、脂肪の重さである「体脂肪量」からできています。 除脂肪体重には、筋肉、骨、内臓などの重さが含まれます。
【特徴】 体重の変化だけでなく、体脂肪量と除脂肪体重のバランスや変化を見ることで、体の変化を知ることができます。 例えば、ダイエット中に体重が変わらなくても、体脂肪量が減って筋肉量が増えていれば、効果が出ていると考えられます。 除脂肪体重は、骨密度(骨の丈夫さ)を予想するのにも役立ちます。 (参考リンク1) 健康管理には、体脂肪量と除脂肪体重を知っておくことが役に立ちます。 除脂肪体重に関係する遺伝子はいくつか報告されており、その一つが遺伝子「LRP5」です。 遺伝子のDNA領域「rs3736228」が、除脂肪体重と関係している可能性が示されています。
【メカニズム】 遺伝子検査で自分の遺伝子タイプを調べることは、早めの対策に役立つ可能性があります。 理論的根拠 これまでの研究によると、DNA領域「rs3736228」は、タンパク質「LRP5」を作る遺伝子の中にあり、「CC型」、「CT型」、「TT型」の3つの遺伝子タイプがあります。 日本人の遺伝子タイプの割合は、「CC型」が約51.7%、「CT型」が約40.4%、「TT型」が約7.9%です。 (参考リンク2) 世界全体では、「CC型」が約81.18%、「CT型」が約17.84%、「TT型」が約0.98%です。 また、「TT型」や「CT型」は「除脂肪体重」を減らす方向に働くと考えられており、これらのタイプは「CC型」よりも「除脂肪体重」が少ない可能性が示されています。 しくみ DNAは、4種類の塩基(A:アデニン、T:チミン、C:シトシン、G:グアニン)を持ち、その並び方(塩基配列)によって、さまざまな遺伝子の情報が作られます。 タンパク質は、たくさんのアミノ酸がつながったものであり、塩基配列は、このアミノ酸の並び方(アミノ酸配列)を決めています。 遺伝子「LRP5」から作られるタンパク質は、細胞の膜を貫いて存在しています。 細胞の外からWntタンパク質が「LRP5」にくっつくと、その合図を細胞の中に伝え、糖や脂質、骨の代謝(体の中で栄養を使ったり作り替えたりするはたらき)を調節します。 (参考リンク3) また、Wntタンパク質は筋肉を大きくしたり、傷んだ筋肉を治したりすることにも関わっています。 (参考リンク4) 「LRP5」の中にある部位「rs3736228」の塩基が「C」から「T」に変わると、「LRP5」の中のアミノ酸のひとつが“アラニン”から“バリン”に変わります(Ala1330Val)。 このたった1か所のアミノ酸の違いがタンパク質全体の形やはたらきを変え、アミノ酸“バリン”を持つ「LRP5(rs3736228T型)」は、はたらきが弱くなることが分かっています。 さらに、DNA領域「rs3736228」の「CT型」と「TT型」は、「CC型」より骨密度が低い傾向があるという報告があります。 そのため、「LRP5」のはたらきが弱くなることで骨の代謝に影響が出て、骨密度の低下や骨粗鬆症(骨がもろくなる病気)の原因の一つになっている可能性があります。 (参考リンク5,6) 筋肉と骨はお互いに影響し合うことが知られており、「四肢除脂肪体重(腕と脚の除脂肪体重)」と骨密度の関係が示されています。 また、骨密度が下がるとサルコペニア(年齢とともに筋肉量が減る状態)のリスクが高まることや、「四肢除脂肪体重」が骨密度に比例して増えることが分かっています。
【科学的根拠】 (参考リンク7) 「rs3736228」と「四肢除脂肪体重」が関係するしくみを理解するには、まだ追加の研究が必要です。 しかし、「LRP5」による骨密度の低下にともなって「四肢除脂肪体重」が減ること、または「LRP5」のはたらきが弱くなってWntタンパク質の合図が弱まり、筋肉が増えにくくなることが、原因になっているかもしれません。
筋肉量(除脂肪体重)とは何か
筋肉量(除脂肪体重)とは、体重から体脂肪量を引いた重さで、筋肉・骨・内臓などの重さを含む健康の目安です。体重の変化だけでは体の本当の状態を正しく知ることはできないため、体脂肪量と除脂肪体重のバランスを確認することが健康管理にはとても大切です。
除脂肪体重を把握する理由とは
除脂肪体重を測って確認する理由は、体の中身(体組成)の変化を正しく知ることができるからです。具体的なメリットは次のとおりです。
- ダイエット効果の評価:体重が変わらなくても、体脂肪量が減って筋肉量が増えていれば、ダイエットがうまく進んでいると判断できます。
- 骨密度の予想:除脂肪体重は骨密度を予想する手がかりになります(参考リンク1)。
- サルコペニアの早期発見:四肢除脂肪体重(腕と脚の除脂肪体重)が減ることは、年齢とともに筋肉量が減るサルコペニアのリスクを知る目安になります。
- 総合的な健康管理:体脂肪量と除脂肪体重の両方を把握することで、より精密な体調管理が実現します。
体重の構成要素の比較
| 構成要素 | 含まれるもの | 健康管理における意義 |
|---|---|---|
| 除脂肪体重 | 筋肉・骨・内臓・水分 | 基礎代謝(何もしなくても使われるエネルギー)の維持、骨密度の予想、サルコペニアのチェック |
| 体脂肪量 | 皮下脂肪・内臓脂肪 | 肥満リスクの判定、生活習慣病の予防 |
遺伝子と筋肉量の関連
DNA領域rs3736228と筋肉量の関係
DNA領域rs3736228は、遺伝子LRP5の中にあり、除脂肪体重(筋肉量)と関係しています。rs3736228にはCC型・CT型・TT型の3つの遺伝子型があり、TT型・CT型はCC型と比べて除脂肪体重が少ない傾向が示されています。
日本人と世界における遺伝子型分布の比較(rs3736228)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| CC型 | 54.8% | 74.0% |
| CT型 | 38.4% | 24.0% |
| TT型 | 6.7% | 1.9% |
日本人のT型を持つ人の割合(CT型+TT型)は45.1%であり、世界平均の25.9%と比べて約1.7倍高い値です。つまり、日本人では除脂肪体重に関わる遺伝子の傾向が世界平均と違っていることを表しています。(参考リンク2)
LRP5遺伝子のしくみとは
LRP5は細胞の膜を貫いて存在し、外からの合図を受け取る「受け手」のタンパク質で、Wntタンパク質からの合図を伝えるしくみを通して糖・脂質・骨の代謝を調節します。(参考リンク3)
- ふだんのはたらき:Wntタンパク質がLRP5にくっつきます → 細胞の中に合図が伝わります → 骨が作られるのを助け、筋肉を大きくしたり治したりするのを助けます(参考リンク4)。
- T型の影響:rs3736228の塩基がCからTに変わります → LRP5の中のアミノ酸がアラニンからバリンに変わります(Ala1330Val) → LRP5のはたらきが弱くなります。
- 骨密度への影響:CT型・TT型はCC型より骨密度が低い傾向があります(参考リンク5,6)。
- 筋肉量への影響:骨密度が下がるとサルコペニアのリスクが高まり、四肢除脂肪体重(腕と脚の除脂肪体重)が減ります(参考リンク7)。
筋肉量に関わるその他のDNA領域
| DNA領域 | 日本人の主要型 | 世界の主要型 |
|---|---|---|
| rs16942341 | CC型 99.9% | CC型 93.1% |
| rs1171614 | CC型 99.9% | CC型 60.8% |
| rs6449353 | TT型 87.8% | TT型 68.0% |
| rs10784502 | TT型 76.5% | CT型 49.7% |
| rs2871865 | CC型 85.2% | CC型 71.5% |
検査の理論的な根拠
代表的なDNA領域:筋肉量
筋肉量 に最も強く影響するDNA領域は、rs3736228です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- CC
54.8 % - CT
38.4 % - TT
6.7 %
他に、筋肉量に関わるDNA領域にはrs16942341があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- CC
99.9 % - CT
0.1%以下 - TT
0.1%以下
他に、筋肉量に関わるDNA領域にはrs1171614があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- TT
0.1%以下 - TC
0.1%以下 - CC
99.9 %
他に、筋肉量に関わるDNA領域にはrs6449353があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- TT
87.8 % - TC
11.7 % - CC
0.3 %
他に、筋肉量に関わるDNA領域にはrs10784502があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- CC
1.5 % - CT
21.8 % - TT
76.5 %
他に、筋肉量に関わるDNA領域にはrs2871865があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- CC
85.2 % - CG
14.2 % - GG
0.5 %
検査の根拠
蘇州大学のPeiらの研究により、筋肉量の増減が遺伝子と関係していることが分かりました。人間のDNAには、rs1171614という場所があり、そこにはTとCの2種類の違いがあります。Tタイプを持つ人は、筋肉量が増えやすい傾向にあることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | LRP5 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | ACAN |
| 関連遺伝子 | SLC16A9 |
| 関連遺伝子 | LCORL |
| 関連遺伝子 | HMGA2 |
| 関連遺伝子 | IGF1R |
よくある質問
Q1. 筋肉量(除脂肪体重)とは何ですか?
筋肉量(除脂肪体重)とは、体重から体脂肪量を引いた重さで、筋肉・骨・内臓などの重さを含みます。除脂肪体重と体脂肪量のバランスを知ることで、ダイエットの効果を確かめたり骨密度を予想したりと、より的確な健康管理ができます。
Q2. 筋肉量は遺伝子と関連していますか?
はい。蘇州大学のPeiらの研究(2020年、Communications Biology掲載)により、DNA領域rs3736228を含む複数のDNA領域が筋肉量(四肢除脂肪体重)と関係していることが分かっています。遺伝子LRP5のrs3736228では、TT型やCT型はCC型より除脂肪体重が少ない傾向が示されています。
Q3. 遺伝子型rs3736228の日本人における分布はどうなっていますか?
日本人におけるrs3736228の遺伝子型分布はCC型54.8%、CT型38.4%、TT型6.7%です。世界全体ではCC型74.0%、CT型24.0%、TT型1.9%であり、日本人はTT型・CT型の合計が45.1%と、世界平均25.9%の約1.7倍高いという特徴があります。
Q4. 遺伝子LRP5はどのような働きをしますか?
LRP5は細胞の膜を貫いて存在し、外からの合図を受け取る「受け手」のタンパク質で、Wntタンパク質からの合図を伝えるしくみを通して糖・脂質・骨の代謝を調節します。rs3736228のT型ではアミノ酸がアラニンからバリンに変わり(Ala1330Val)、LRP5のはたらきが弱くなります。その結果、骨密度の低下や筋肉量の減少につながる可能性があります。
Q5. 筋肉量を維持・増加させるにはどうすればよいですか?
筋肉量の維持・増加には、筋力トレーニング(筋肉に負荷をかける運動)を行うこと、タンパク質を十分にとること(体重1kgあたり1日1.2〜2.0g)、ビタミンDを適度にとること、骨密度検査を定期的に受けることが効果的です。遺伝子検査で自分の遺伝子型を知り、早めに対策を始めることがすすめられます。
参考文献
- 参考リンク1 : 2018 Oct., Ilesanmi-Oyele, BioResearch open access.
- 参考リンク2 : DNA 領域「rs3736228」の情報 TogoVar
- 参考リンク3 : 2014年, Shu Takeda, 日本腎臓学会誌
- 参考リンク4 : 2008 Sep., Anthony Ott, Journal of cell science.
- 参考リンク5 : 2009 Jun., Tomohiko URANO, Endocrine journal.
- 参考リンク6 : 2013 Dec., Jiayong Yi, Plos one
- 参考リンク7 : 2013 Jul., Seon Won Go, Korean Journal of Family Medicine
- 参考リンク8 : 2019 Dec., Ana I Hernandez Cordero, Am J Hum Genet
- 参考リンク9 : 2019 Sep., Christopher Hübel, Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet
- 参考リンク10 : 2020 Oct., Yu-Fang Pei, Commun Biol