不整脈
- 不整脈は心臓の電気の動きの異常で心拍のリズムが乱れる病気で、T波後半の時間が長いことが、なりやすさの大切な目安となります。
- DNA領域rs6882776のAタイプを持つ人は不整脈が起こりやすい傾向があることが研究で判明しました。
- 早めの心電図検査と遺伝子によるリスクの確認により、病気を防ぐための治療が可能です。
概要
【疾患の概要】 「T波後半の時間」は、心電図(心臓の電気の動きを記録したグラフ)で測る値の一つです。 心電図のT波は、心室(心臓の下側の部屋)が電気的に元の状態に戻る動き(再分極)を表します。 T波後半の時間とは、このT波の頂点から終わりまでの時間のことで、専門的には「Tピーク-Tエンド間隔」と呼ばれます。
【治療と注意点】 T波後半の時間は、心拍のリズムが乱れる不整脈を予測するうえで、大切な手がかりになると考えられています。 この時間が長くなっているときは、心室が元の状態に戻るタイミングにばらつきがあることを示し、心室性不整脈(心室から起こる不整脈)が起こりやすくなる傾向があります。 このばらつきは、心室の場所によって、次の拍動の準備が整うまでの時間が違うことを意味します。 その結果、電気の信号が同じ場所をぐるぐる回り続ける「リエントリー回路」ができやすい状態になります。 この回路は、心臓の筋肉がふだん決まった順番で縮む動きを乱し、トルサード・ド・ポワントやその他の心室性頻拍(脈がとても速くなる不整脈)などを起こすことがあります。 医療の現場では、T波後半の時間をくわしく調べることで、その人が不整脈を起こしやすいかどうかについて大切な情報が得られます。 この時間が長い人を見つけることで、医師は薬の調整や、リスクの高い人への除細動器(電気ショックで心臓を正しいリズムに戻す機器)の使用などの予防策をとることができます。 このように、T波後半の時間は、さまざまな患者さんの不整脈のリスクを知り、ケアするための大切な検査の手がかりになっています。
【遺伝的リスク】 ロンドン大学クイーン・メアリーのRamírezらの研究により、不整脈のなりやすさがrs6882776というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはGG、GA、AAの3つの遺伝子型があり、Aを持つ遺伝子型の人は、不整脈のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
不整脈とは何か
不整脈とは、心臓の電気の動きの異常によって、心拍のリズムが乱れる病気をまとめた呼び方です。日本では年間約80万人が不整脈と診断され、年齢が上がるほどかかる人が増えます。
不整脈の原因とメカニズム
不整脈は、心臓の中で電気の信号を伝える仕組み(刺激伝導系)の異常で起こります。主な原因は以下のとおりです。
- 心臓の器質的疾患:心筋梗塞・心筋症・心臓弁膜症などで心臓の筋肉の形が変わることです。
- 電解質(体内のミネラル)の異常:血液中のカリウム・マグネシウム・カルシウムの量の変化
- 自律神経の異常:交感神経・副交感神経(体の働きを自動で調整する神経)のバランスの乱れです。
- 遺伝子の影響:DNA領域rs6882776などの遺伝子の違い
- 外的要因:カフェイン過剰摂取・飲酒・ストレス・睡眠不足
T波後半の時間とは?不整脈のリスクとの関係
T波後半の時間とは、心電図のT波の頂点から終わりまでの時間のことで、診断の目安になる値です。
- T波後半の時間は、心室が元の状態に戻るタイミングのばらつきを表します。
- T波後半の時間が長いことは、心室の場所によって次の拍動の準備が整うまでの時間が違うことを示します。
- このばらつきがリエントリー回路(電気の信号が同じ場所をぐるぐる回り続ける道筋)ができやすい状態をつくります。
- リエントリー回路はトルサード・ド・ポワントや心室性頻拍などの不整脈を引き起こします。
医療の現場では、T波後半の時間が長くなっている患者さんを見つけることで、薬の調整や除細動器の使用などの予防策をとることができます。
不整脈の主な症状
症状は不整脈の種類と重症度によって異なります。
- 動悸(心臓がドキドキする感覚)
- めまい・ふらつき
- 息切れ・呼吸困難
- 失神・意識消失
- 胸部の不快感・圧迫感
- だるさ・疲れやすさ
不整脈の種類と特徴
| 種類 | 心拍数 | 特徴 | 代表的疾患 |
|---|---|---|---|
| 頻脈性不整脈 | 100拍/分以上 | 心拍が異常に速くなります。 | 心房細動・心室頻拍 |
| 徐脈性不整脈 | 60拍/分未満 | 心拍が異常に遅くなります。 | 洞不全症候群・房室ブロック |
| 期外収縮 | 不規則 | 予定外のタイミングで拍動します。 | 心房性期外収縮・心室性期外収縮 |
不整脈の合併症リスク
適切な治療をしないと、以下の合併症(病気に伴って起こる別の病気)を起こすおそれがあります。
- 脳卒中:心房細動(心房が細かく震える不整脈)で血のかたまり(血栓)ができることが原因です(リスクは約5倍に上昇します)。
- 心不全:長く続く不整脈による、心臓のポンプの働きの低下です。
- 突然死:心室細動や心室頻拍による心停止
- 心筋症:速い脈が続くことによる心臓の筋肉の変化です。
診断方法
以下の検査により診断されます。
- 標準12誘導心電図(安静にした状態でとる心電図)
- ホルター心電図(24時間連続記録)
- 心臓超音波検査(心エコー)
- 電気生理学的検査(心臓の電気の流れをくわしく調べる検査)
不整脈の予防と対策
以下の生活習慣の改善が不整脈の予防に有効です。
- 適度な有酸素運動:週150分以上のウォーキングや軽いジョギング
- カフェイン・アルコールの制限:とりすぎが不整脈のきっかけになります。
- ストレス管理:自律神経のバランスを保つことが大切です。
- 十分な睡眠:1日7~8時間の質の良い睡眠
- 定期的な健康診断:心電図検査による早期発見
遺伝子と不整脈の関連
DNA領域rs6882776と発症リスクの関係
ロンドン大学クイーン・メアリーのRamírezらの研究(1)により、DNA領域rs6882776が不整脈のなりやすさと関係していることが分かりました。
- rs6882776にはGG・GA・AAの3つの遺伝子型が存在します。
- Aタイプを持つ遺伝子型の人は、不整脈のリスクが高い傾向があります。
日本人における遺伝子型分布(rs6882776)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| GG型 | 10.6% | 48.7% |
| GA型 | 44.0% | 42.1% |
| AA型 | 45.3% | 9.1% |
日本人ではAA型が45.3%と最も多く、世界平均(9.1%)と比べて約5倍高いことが特徴です。この遺伝子の特徴は、日本人の不整脈のリスクを考えるうえで大切な意味を持ちます。
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:不整脈
不整脈に最も強く影響するDNA領域は、rs6882776です。 日本での遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- GG
10.6 % - GA
44.0 % - AA
45.3 %
検査の根拠
ロンドン大学クイーン・メアリーのRamírezらの研究により、不整脈のなりやすさが遺伝子と関係していることが分かりました。人間のDNAには、rs6882776という場所があり、ここにはGとAの2種類のタイプがあります。Aタイプを持つ人は、不整脈のリスクが高い傾向にあることが分かりました(1)。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図の模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | NKX2-5 |
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よくある質問
Q1. 不整脈とは何ですか?
不整脈とは、心臓の電気の動きの異常によって、心拍のリズムが乱れる病気をまとめた呼び方です。脈が速くなるタイプ(頻脈性不整脈)・遅くなるタイプ(徐脈性不整脈)・予定外のタイミングで拍動するタイプ(期外収縮)の3種類に大きく分けられ、T波後半の時間が長いことが、なりやすさを予測する大切な目安になります(1)。
Q2. T波後半の時間とは何ですか?不整脈とどう関係しますか?
T波後半の時間とは、心電図のT波の頂点から終わりまでの時間のことで、診断の目安になる値です。この時間が長くなると、心室が元の状態に戻るタイミングのばらつきが大きくなり、トルサード・ド・ポワントなどの心室性不整脈が起こりやすくなります。
Q3. 遺伝子検査で不整脈のリスクは分かりますか?
DNA領域rs6882776の遺伝子型を調べることで、不整脈の起こりやすさの傾向を知ることができます。Aタイプを持つ遺伝子型の人はリスクが高い傾向にあることが、ロンドン大学クイーン・メアリーの研究で分かっています(1)。
Q4. 不整脈の主な症状は何ですか?
主な症状は動悸・めまい・息切れ・失神・胸部不快感です。症状がない場合もあり、健康診断の心電図検査で見つかることもあります。重い場合は、突然心臓が止まる危険があります。