アテローム性動脈硬化症
- アテローム性動脈硬化症は動脈の壁に脂肪がたまってプラークができ、血管が狭くなる病気で、心筋梗塞・脳卒中の主な原因です。
- DNA領域rs17477177のCを持つ人は病気になるリスクが高い傾向にあることが研究で分かっています。
- 適切なコレステロールの管理・血圧の管理・禁煙・運動の習慣で、病気になるリスクを下げ、進行を防ぐことができます。
概要
【疾患の概要】 首の動脈(頸動脈)の壁が厚くなることや、頸動脈にできるプラーク(血管の内側にできるかたまり)は、動脈硬化症のサインです。
【症状と特徴】 頸動脈の壁の厚さ(内膜中膜複合体厚の最大値)は、頸動脈の内側の膜(内膜)と真ん中の膜(中膜)の厚さを超音波で測った数値で、動脈硬化症の早い段階の変化を表します。 動脈の壁は内膜、中膜、外膜の3つの層でできていて、ふだんは内膜と中膜は薄い状態です。 しかし、動脈硬化症が進むと、脂肪がたまったり、炎症が起きたり、血管の筋肉の細胞(平滑筋細胞)が増えたりして血管の壁が厚くなり、この厚さの数値が大きくなります。 頸動脈プラークは、頸動脈にできる動脈硬化のかたまりです。 プラークには、脂肪のかたまり、線維でできた膜、炎症を起こした細胞、石灰化(カルシウムがたまって硬くなること)などが含まれます。 プラークが血管を狭くし、血液の流れを変えることで、脳卒中などの病気を引き起こすことがあります。
【治療と注意点】 頸動脈の壁が厚くなることやプラークができることは、動脈硬化症の大切なサインです。 超音波検査で壁の厚さやプラークを調べると、動脈硬化症を早く見つけることができます。そのため、心臓や脳の血管の病気のリスクを減らし、予防や治療の方針を立てることができます。
【遺伝的リスク】 フローニンゲン大学のYeungらの研究により、アテローム性動脈硬化症のかかりやすさがrs17477177というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはTT、CT、CCの3つの遺伝子型があり、Cを持つ遺伝子型の人は、アテローム性動脈硬化症のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
アテローム性動脈硬化症とは何か
アテローム性動脈硬化症は、動脈の内側の壁にコレステロールなどの脂肪がたまってプラーク(粥腫:おかゆのようにやわらかいかたまり)ができ、血管の中が狭く硬くなる病気です。長い時間をかけて少しずつ進みます。世界保健機関によると、心臓や血管の病気は世界の死因第1位で、そのもとになっているのがアテローム性動脈硬化症です。
アテローム性動脈硬化症の原因とメカニズム
アテローム性動脈硬化症は、次のような流れで進みます。
- 血管の内側の傷:高血圧・喫煙・高い血糖値が血管の内側の細胞(血管内皮細胞)を傷つけます。
- 悪玉コレステロールの侵入:傷ついた部分から悪玉コレステロールが血管の壁の中に入り、酸化されます。
- 泡沫細胞ができる:白血球の一種(マクロファージ)が酸化した悪玉コレステロールを取りこみ、脂肪でふくらんだ細胞(泡沫細胞)に変わります。
- プラークが大きくなる:血管の筋肉の細胞(平滑筋細胞)が増え、脂肪がたまってプラークが大きくなります。
主なリスク要因は次のとおりです。
- 悪玉コレステロールが多い状態(悪玉コレステロール値が140mg/dL以上)
- 高血圧(上の血圧が140mmHg以上、または下の血圧が90mmHg以上)
- 喫煙(たばこを吸わない人と比べてリスクが約2〜3倍に上がる)
- 糖尿病(血管の内側が傷つくのを進める)
- 遺伝子の影響(家族に同じ病気の人がいる・DNA領域rs17477177でCを持つ)
頸動脈の壁の厚さ(内膜中膜複合体厚)とは
頸動脈の壁の厚さ(内膜中膜複合体厚の最大値)は、首の動脈の内膜と中膜の厚さを超音波で測る数値で、動脈硬化を早く見つける目安として使われます。
- 正常値:1.0mm未満
- 境界値:1.0〜1.1mm
- 異常値:1.1mm以上(動脈硬化のサイン)
動脈の壁は内膜・中膜・外膜の3つの層でできています。動脈硬化が進むと、脂肪がたまる・炎症が起きる・血管の筋肉の細胞(平滑筋細胞)が増えることで内膜と中膜が厚くなり、頸動脈の壁の厚さの数値が大きくなります。
頸動脈プラークとは何か
頸動脈プラークは、首の動脈(頸動脈)にできる動脈硬化のかたまりです。
- 脂肪のかたまり(コレステロールの結晶を含む)
- 線維でできた膜
- 炎症を起こした細胞が集まります。
- 石灰化
プラークが血管を狭くし、血液の流れを変えることで、脳卒中の原因となります。プラークが破れると急に血のかたまり(血栓)ができ、心筋梗塞や脳梗塞を直接引き起こします。
アテローム性動脈硬化症の主な症状
初めのうちは無症状の場合がほとんどです。進むと次のような症状が出ます。
- 心臓の血管(冠動脈)の病変:胸痛(狭心症)、息切れ
- 脳の血管の病変:一過性脳虚血発作(一時的に脳の血の流れが悪くなる発作)、めまい
- 手足の動脈の病変:間欠性跛行(歩くと足が痛くなり、休むとおさまる)
- 腎臓の動脈の病変:高血圧の悪化
アテローム性動脈硬化症と他の動脈硬化の違い
| 比較項目 | アテローム性動脈硬化 | メンケベルグ型動脈硬化 | 細動脈硬化 |
|---|---|---|---|
| 病変部位 | 大きい・中くらいの動脈の内膜 | 中くらいの動脈の中膜 | 細い動脈全体 |
| 主な原因 | 脂肪がたまる・炎症 | 石灰化 | 高血圧・糖尿病 |
| 体への影響 | 心筋梗塞・脳卒中 | 血管の石灰化 | 臓器の障害(腎臓・脳) |
| 頻度 | 最も頻度が高いです。 | 比較的まれ | 高齢者に多いです。 |
合併症リスク
アテローム性動脈硬化症をそのままにしておくと、次のような病気(合併症)を引き起こします。
- 心筋梗塞:心臓の血管(冠動脈)のプラークが破れて、急に血のかたまりができます。
- 脳卒中:脳血管の閉塞または出血です。
- 末梢動脈疾患(手足の動脈の病気):足の血の流れが悪くなります。
- 大動脈瘤(大動脈のこぶ):動脈の壁が弱くなり、こぶ(瘤)ができます。
- 腎動脈の狭窄(腎臓の動脈が狭くなる):腎臓の働きの低下・薬が効きにくい高血圧
予防法
次のような生活習慣の見直しで、病気になるリスクを下げられます。
- 悪玉コレステロール値を120mg/dL未満に維持
- 血圧を130/80mmHg未満に管理
- 禁煙(たばこをやめて5年でリスクが約50%下がる)
- 1日30分以上の有酸素運動
- 食物繊維やオメガ3脂肪酸を含む食事をとります。
- 適正な体重を保ちます(体格指数 18.5〜24.9)。
遺伝子とアテローム性動脈硬化症の関連
DNA領域rs17477177と病気のかかりやすさの関係
フローニンゲン大学のYeungらの研究(1)により、DNA領域rs17477177がアテローム性動脈硬化症のかかりやすさと関係していることが分かりました。
- rs17477177にはTT・TC・CCの3つの遺伝子型があります。
- C型変異を持つ遺伝子型(TC型・CC型)の人はリスクが高い傾向があります。
日本人における遺伝子型分布(rs17477177)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| TT型 | 83.4% | 64.4% |
| TC型 | 15.8% | 31.6% |
| CC型 | 0.7% | 3.8% |
日本人はTT型(リスクが低いタイプ)の割合が83.4%と世界平均(64.4%)より高く、Cを持つ人の割合は世界平均より低い傾向にあります。
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:アテローム性動脈硬化症
アテローム性動脈硬化症 に最も強く影響するDNA領域は、rs17477177です。 日本における各遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- TT
83.4 % - TC
15.8 % - CC
0.7 %
検査の根拠
フローニンゲン大学のYeungらの研究により、アテローム性動脈硬化症のかかりやすさが遺伝子と関係していることが分かりました。rs17477177というDNA領域にはTとCの2種類のタイプがあり、Cを持つ人はアテローム性動脈硬化症のリスクが高い傾向にあります(1)。
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | CCDC71L |
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よくある質問
Q1. アテローム性動脈硬化症とは何ですか?
アテローム性動脈硬化症は、動脈の内側の壁にコレステロールなどの脂肪がたまってプラーク(粥腫:おかゆのようにやわらかいかたまり)ができ、血管の中が狭く硬くなる病気です。長い時間をかけて少しずつ進みます。心筋梗塞・脳卒中の主な原因であり、世界の死因第1位である心臓や血管の病気のもとになっています(1)。
Q2. アテローム性動脈硬化症の原因は何ですか?
主な原因は悪玉コレステロールが多いこと・高血圧・喫煙・糖尿病・肥満です。これらが血管の内側の壁(血管内皮)を傷つけ、悪玉コレステロールが血管の壁の中に入りこんで酸化されることで、プラークができます。DNA領域rs17477177でCを持つ人はリスクが高い傾向にあります(1)。
Q3. 頸動脈の壁の厚さ(内膜中膜複合体厚の最大値)とは何ですか?
頸動脈の壁の厚さ(内膜中膜複合体厚の最大値)は、首の動脈の内膜と中膜の厚さを超音波で測る、動脈硬化を早く見つけるための目安です。正常値は1.0mm未満で、1.1mm以上は動脈硬化のサインとされます。体を傷つけずに、動脈硬化がどのくらい進んでいるかを調べられます。
Q4. 遺伝子検査でアテローム性動脈硬化症のリスクは分かりますか?
DNA領域rs17477177の遺伝子型を調べることで、アテローム性動脈硬化症のかかりやすさの傾向を知ることができます。Cを持つ遺伝子型(TC型・CC型)の人はリスクが高い傾向にあることが、フローニンゲン大学の研究で分かっています(1)。
Q5. アテローム性動脈硬化症の予防法は?
悪玉コレステロール値を120mg/dL未満に維持、禁煙、1日30分以上の有酸素運動、食物繊維やオメガ3脂肪酸を含む食事、血圧を130/80mmHg未満に管理することが効果的です。遺伝子の影響でリスクが高い場合は、早いうちから生活習慣を見直すことがすすめられます。