心房細動
- 心房細動は心房が1分間に300〜600回という異常な速さで不規則に縮む不整脈で、日本では約100万人がかかっています。
- DNA領域rs2540953のGを持つ人はかかりやすい傾向があることが理化学研究所の研究で分かりました。
- 心房細動は脳卒中のリスクを約5倍に上げるため、早く見つけて正しく治療することが大切です。
概要
【疾患の概要】 心房細動は、心臓の上の部分にある心房が、異常に速く不規則に縮む不整脈(脈の乱れ)の一種です。続く期間によって、発作性(パロキシスマル)、持続性(パーシステント)、永久性(ロングスタンディング)などに分けられます。 この病気では、心房が血液をうまく心室に送り出せず、血液の流れが乱れます。
【症状と特徴】 主な原因として、高血圧、冠動脈疾患(心臓に血液を送る血管の病気)、心臓弁膜症、甲状腺機能亢進症、肺の病気、お酒の飲みすぎなどが考えられます。 心房細動の症状には、動悸、息切れ、胸の痛み、疲れやすさ、めまいなどがあります。
【治療と注意点】 心房細動の診断には主に心電図を使い、心房の不規則な動きを確かめます。 治療には、心拍数を整える薬(ベータ遮断薬、カルシウム拮抗薬、ジゴキシン)や、正常なリズムに戻すための抗不整脈薬や電気ショック治療(電気的除細動)が使われます。 また、心房細動は血のかたまり(血栓)ができやすくなるため、脳卒中を防ぐ目的で血液を固まりにくくする薬(ワルファリン、直接経口抗凝固薬)も使われます。
【遺伝的リスク】 理化学研究所 統合医科学センターのSiew-Kee Lowらの研究で、心房細動のかかりやすさがrs2540953というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはGG、GA、AAの3つの遺伝子型があり、Gを持つ遺伝子型の人は、心房細動のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
心房細動とは何か
心房細動は、心臓の上の部分にある心房が、異常に速く不規則に縮む不整脈(脈の乱れ)の一種です。不整脈の中で最も多く、日本では約100万人がかかっています。
心房細動の分類
心房細動は、続く期間によって次の3つのタイプに分けられます。
| 分類 | 続く期間 | 特徴 |
|---|---|---|
| 発作性(パロキシスマル) | 7日以内に自然に止まります。 | 自然に正常なリズムに戻ります。 |
| 持続性(パーシステント) | 7日以上続く | 薬や電気ショックで止めます。 |
| 永久性(ロングスタンディング) | 1年以上続く | 正常なリズムに戻すのが難しいです。 |
心房細動の原因とかかりやすくする要因
心房細動は、心房が血液をうまく心室に送り出せず、血液の流れが乱れることで起こります。主な原因と、かかりやすくする要因は次のとおりです。
- 高血圧(最も多い原因)
- 冠動脈疾患(心臓への血の流れが減る)
- 心臓弁膜症(心臓の弁の形や働きの異常)
- 甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが出すぎる病気)
- 肺の病気(慢性閉塞性肺疾患など)
- お酒の飲みすぎ
- 遺伝子の影響(DNA領域rs2540953のG)
心房細動の主な症状
心房細動の症状は人によって大きく違い、症状がまったくない人もいます。主な症状は次のとおりです。
- 動悸(胸がドキドキする感覚)
- 息切れ(軽い運動でも息が苦しくなる)
- 胸の痛み・胸の不快感
- 疲れやすさ(だるさが続く)
- めまい・ふらつき
心房細動とほかの不整脈の違い
| 比較項目 | 心房細動 | 心房粗動 | 心室細動 |
|---|---|---|---|
| 起こる場所 | 心房 | 心房 | 心室 |
| 縮み方 | バラバラで不規則 | 規則正しいが速いです。 | バラバラで、命にかかわります。 |
| 心拍数 | 300〜600回/分 | 250〜350回/分 | 測れない |
| 脳卒中のリスク | 約5倍に上がります。 | 上がる | 直接のリスクなし |
| 緊急度 | 中くらい | 中くらい | 最も高い(命にかかわる) |
診断方法
心房細動の診断は主に心電図で行い、心房の不規則な電気の動きを確かめます。
- 12誘導心電図(基本の検査)
- ホルター心電図(24時間続けて記録)
- イベントモニター(症状が出たときに記録)
心房細動の治療法
治療は次の3つを柱に行われます。
- 心拍数を整える:ベータ遮断薬・カルシウム拮抗薬・ジゴキシンで心拍数をちょうどよい範囲に保ちます。
- リズムを整える:抗不整脈薬や電気ショック治療(電気的除細動)で正常なリズムに戻します。
- 脳卒中の予防:血液を固まりにくくする薬(ワルファリン・直接経口抗凝固薬)で血のかたまりができるのを防ぎます。
カテーテルアブレーション(細い管を心臓に入れ、異常な電気の通り道を焼いて治す治療)も効果的な方法です。
遺伝子と心房細動の関係
DNA領域rs2540953とかかりやすさの関係
理化学研究所 統合医科学センターのSiew-Kee Lowらの研究で、DNA領域rs2540953が心房細動のかかりやすさと関係していることが分かりました。
- rs2540953にはGG・GA・AAの3つの遺伝子型があります。
- Gを持つ遺伝子型の人は、心房細動のリスクが高い傾向があります。
日本人の遺伝子型の分布(rs2540953)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| GG型 | 40.8% | 21.6% |
| GA型 | 46.1% | 49.7% |
| AA型 | 13.0% | 28.5% |
検査の科学的な根拠
代表的なDNA領域:心房細動
心房細動 に最も強く影響するDNA領域は、rs2540953です。 日本における遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- GG
40.8 % - GA
46.1 % - AA
13.0 %
他に、心房細動に関わるDNA領域にはrs75190942があります。 日本における遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- CC
88.7 % - CA
10.8 % - AA
0.3 %
他に、心房細動に関わるDNA領域にはrs9953366があります。 日本における遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- TT
32.1 % - TC
49.0 % - CC
18.7 %
他に、心房細動に関わるDNA領域にはrs2200733があります。 日本における遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- CC
27.9 % - CT
49.8 % - TT
22.1 %
他に、心房細動に関わるDNA領域にはrs6882776があります。 日本における遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- GG
10.6 % - GA
44.0 % - AA
45.3 %
他に、心房細動に関わるDNA領域にはrs365990があります。 日本における遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- AA
76.5 % - AG
21.8 % - GG
1.5 %
検査の根拠
理化学研究所 統合医科学センターのSiew-Kee Lowらの研究で、心房細動のかかりやすさが遺伝子と関係していることが分かりました。人のDNAには、rs2540953という場所があり、そこにはGとAの2種類の違いがあります。Gを持つ人は、心房細動のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップのイメージ図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | LINC02576 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | KCNJ5 |
| 関連遺伝子 | SMAD7 |
| 関連遺伝子 | PITX2 |
| 関連遺伝子 | NKX2-5 |
| 関連遺伝子 | MYH6 |
よくある質問
Q1. 心房細動とは何ですか?
心房細動は、心臓の上の部分にある心房が、1分間に300〜600回という異常な速さで不規則に縮む不整脈の一種です。不整脈の中で最も多く、日本では約100万人がかかっています。脳卒中のリスクが約5倍に上がる点が重要です。
Q2. 心房細動の原因は何ですか?
主な原因は、高血圧・冠動脈疾患(心臓の血管の病気)・心臓弁膜症・甲状腺機能亢進症です。さらに、DNA領域rs2540953でGを持つ人はかかりやすい傾向があります。
Q3. 心房細動とほかの不整脈の違いは?
心房細動は心房がバラバラに縮む不整脈で、心房粗動(規則正しいが速く縮む)や心室細動(命にかかわる)とは違います。心房細動は最も多い不整脈で、脳卒中のリスクが上がるのが特徴です。
Q4. 遺伝子検査で心房細動のリスクは分かりますか?
DNA領域rs2540953の遺伝子型を調べることで、心房細動へのかかりやすさの傾向を確認できます。Gを持つ遺伝子型の人はリスクが高い傾向にあることが、理化学研究所の研究で分かっています。
Q5. 心房細動の治療にはどんな方法がありますか?
治療は、心拍数を整える治療(ベータ遮断薬など)・リズムを整える治療(抗不整脈薬・電気ショック治療)・脳卒中の予防(血液を固まりにくくする薬)の3つを柱に行われます。カテーテルアブレーション治療も効果的な方法です。
参考文献
- 参考リンク1 : 2017 Jun., Siew-Kee Low, Nat Genet
- 参考リンク2 : 2017 Jun., Ingrid E Christophersen, Nat Genet
- 参考リンク3 : 2018 Jun., Carolina Roselli, Nat Genet
- 参考リンク4 : 2009 Aug., Daniel F Gudbjartsson, Nat Genet
- 参考リンク5 : 2007 Jul., Daniel F Gudbjartsson, Nature
- 参考リンク6 : 2021 Oct., Saori Sakaue, Nat Genet