好塩基球減少症
- 好塩基球減少症(バソペニア)は血液の中の好塩基球がとても少なくなる状態で、ストレス・甲状腺機能亢進症・急な感染症などが原因になります。
- DNA領域rs113116706のC型を持つ人はなりやすい傾向があることがケンブリッジ大学の研究でわかりました。
- 好塩基球減少症そのものではっきりした症状が出ることは少ないですが、隠れた病気の目印として大切です。
概要
【疾患の概要】 バソペニア(好塩基球減少症)は、血液の中の好塩基球がとても少なくなっている状態です。 好塩基球は白血球の一種で、白血球全体の1%未満しかありません。
【治療と注意点】 好塩基球は、ヒスタミンなどの物質を出して、アレルギー反応や炎症、寄生虫に対する体の守り(免疫)で大切な働きをしています。 バソペニアそのものでは、はっきりした症状が出ないことが多いですが、隠れた病気や体の問題のサインである可能性があります。 その原因には、ストレス、コルチゾール(ストレスに反応して出るホルモン)の出すぎ、甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが出すぎる病気)、急な感染症、長い期間のステロイド治療、強いアレルギー反応などがあります。 バソペニアは、ふつう血液検査(全血球計算)で見つかります。 原因はいろいろあるため、治療ではおおもとの原因を調べて対処します。 バソペニアそのものが体に直接悪い影響を与えることは少なく、ほかの健康問題に気づく目印として大切です。 そのため、検査と治療で、バソペニアの原因になっている状態に対応することが大切です。
【遺伝的リスク】 ケンブリッジ大学のVuckovicらの研究で、好塩基球減少症になりやすさがrs113116706というDNA領域と関係していることがわかりました。 このDNA領域にはTT、TC、CCの3つの遺伝子型があり、Cを持つ遺伝子型の人は、好塩基球減少症のリスクが高い傾向があることがわかりました。
好塩基球減少症(バソペニア)とは何か
好塩基球減少症(バソペニア)は、血液の中の好塩基球がとても少なくなっている状態で、免疫に関係する血液の異常です。好塩基球は白血球の一種で、白血球全体の1%未満しかありません。
好塩基球の役割とは
好塩基球は、体の守り(免疫)の中で次のような大切な働きをしています。
- ヒスタミンを出す:アレルギー反応のうち、すぐに起こるタイプの反応(即時型過敏反応)の橋渡しをします。
- 炎症反応の調整:炎症が起きている場所に免疫の細胞を呼び集めます。
- 寄生虫から体を守る:寄生虫から体を守る反応に関わります。
好塩基球減少症の原因
好塩基球減少症の原因は、次の6つに分けられます。
- ストレス:体や心への急なストレスでコルチゾールが増えることです。
- コルチゾールの出すぎ:クッシング症候群(コルチゾールが出すぎる病気)などのホルモンの病気です。
- 甲状腺機能亢進症:甲状腺ホルモンが出すぎることです。
- 急な感染症:細菌やウイルスに感染したときの体の守りの反応
- 長い期間のステロイド治療:副腎皮質ステロイド薬を長く使うこと
- 強いアレルギー反応:アナフィラキシー(全身に出る強いアレルギー反応)などの急なアレルギー
好塩基球減少症の症状と診断
好塩基球減少症そのものでははっきりした症状が出ないことがほとんどです。見つかるのは血液検査(全血球計算)によってです。
- 自分で気づく症状はほとんどありません。
- ほかの健康問題の検査中に、たまたま見つかることが多いです。
- 隠れた病気に気づく目印になります。
好塩基球減少症と関係する病気の比較
| 比較項目 | 好塩基球減少症 | 好塩基球増加症 |
|---|---|---|
| 定義 | 好塩基球がとても少なくなります。 | 好塩基球がとても多くなります。 |
| おもな原因 | ストレス・甲状腺機能亢進症・ステロイド治療 | アレルギーの病気・長引く炎症・骨髄増殖性疾患(血液の細胞が増えすぎる病気) |
| 症状 | ふつうは症状なし | アレルギー症状・かゆみ |
| 診断方法 | 血液検査(全血球計算) | 血液検査(全血球計算) |
| 治療方針 | おおもとの原因の治療 | おおもとの原因の治療 |
治療と管理
好塩基球減少症の治療はおおもとの原因を調べて対処することに焦点を当てます。
- ストレスへの対処:生活習慣を見直し、ストレスを減らします。
- 甲状腺疾患の治療:甲状腺機能亢進症をきちんと治療します。
- ステロイド治療の見直し:薬の量を調整したり、ほかの薬を考えたりします。
- 感染症の治療:細菌やウイルスに合った薬を正しく使います。
遺伝子と好塩基球減少症の関係
DNA領域rs113116706となりやすさの関係
ケンブリッジ大学のVuckovicらの研究で、DNA領域rs113116706が好塩基球減少症のなりやすさと関係していることがわかりました。
- rs113116706にはTT・TC・CCの3つの遺伝子型があります。
- C型を持つ遺伝子型の人は、好塩基球減少症のリスクが高い傾向があります。
日本人の遺伝子型の分布(rs113116706)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| TT型 | 99.9% | 86.8% |
| TC型 | 0.1%以下 | 12.7% |
| CC型 | 0.1%以下 | 0.4% |
検査のもとになった研究
代表的なDNA領域:好塩基球減少症
好塩基球減少症に最も強く影響するDNA領域は、rs113116706です。 日本でのこの領域の遺伝子型の分布は下のとおりです。
- TT
99.9 % - TC
0.1%以下 - CC
0.1%以下
ほかに、好塩基球減少症に関わるDNA領域としてrs12752037があります。 日本でのこの領域の遺伝子型の分布は下のとおりです。
- AA
20.4 % - AC
49.5 % - CC
30.0 %
ほかに、好塩基球減少症に関わるDNA領域としてrs2734950があります。 日本でのこの領域の遺伝子型の分布は下のとおりです。
- CC
84.3 % - CT
15.0 % - TT
0.6 %
ほかに、好塩基球減少症に関わるDNA領域としてrs4475963があります。 日本でのこの領域の遺伝子型の分布は下のとおりです。
- TT
37.8 % - TG
47.3 % - GG
14.7 %
検査のもと
ケンブリッジ大学のVuckovicらの研究で、好塩基球減少症になりやすさが遺伝子と関係していることがわかりました。rs113116706領域にはTとCの2種類のタイプがあり、C型を持つ人は好塩基球減少症のリスクが高い傾向があります。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | RPL7L1P11 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | Metazoa_SRP |
| 関連遺伝子 | HCP5B |
| 関連遺伝子 | SLC15A4 |
よくある質問
Q1. 好塩基球減少症(バソペニア)とは何ですか?
好塩基球減少症(バソペニア)は、血液の中の好塩基球がとても少なくなっている状態です。好塩基球は白血球の一種で、白血球全体の1%未満しかありませんが、アレルギー反応や炎症、寄生虫に対する体の守り(免疫)で大切な働きをしています。
Q2. 好塩基球減少症の原因は何ですか?
おもな原因はストレス、コルチゾールの出すぎ、甲状腺機能亢進症、急な感染症、長い期間のステロイド治療です。DNA領域rs113116706でC型を持つ人はリスクが高い傾向があります。
Q3. 好塩基球減少症と遺伝子の関係は?
ケンブリッジ大学のVuckovicらの研究で、DNA領域rs113116706が好塩基球減少症のなりやすさと関係していることがわかりました。C型を持つ遺伝子型の人はリスクが高い傾向があります。
Q4. 好塩基球減少症はどうやって診断されますか?
血液検査(全血球計算)で見つかります。好塩基球は白血球全体の1%未満しかないため、減っていることを調べるにはくわしい血液検査が必要です。
Q5. 好塩基球減少症はどうやって治療しますか?
好塩基球減少症そのものが体に直接悪い影響を与えることは少なく、治療はおおもとの原因に焦点を当てます。ストレスへの対処、甲状腺の病気の治療、ステロイド治療の見直しなど、原因になっている状態に対応することが大切です。
参考文献
- 参考リンク1 : 2020 Sep., Dragana Vuckovic, Cell
- 参考リンク2 : 2023 Aug., Parsa Akbari, Nat Commun
- 参考リンク3 : 2020 Sep., Ming-Huei Chen, Cell