骨密度
- 骨密度はRANKL遺伝子(rs1021188)の遺伝子型によって個人差があり、TT型の人は骨密度が下がりやすいです。
- 日本人の約47.4%がTT型であり、遺伝子の面で骨粗鬆症になりやすい人の割合が高いです。
- カルシウム・ビタミンD・ビタミンKをとることと適度な運動が骨密度を保つのに役立ちます。
概要
【概要】 周りに、骨折などのけがをしやすい人はいませんか?体が丈夫で一度も骨折したことがない人もいますが、その違いはどこから来るのでしょうか。 けがのしやすさには、事故が起こりやすい環境や生活習慣なども関わります。しかし実は、遺伝子も骨の強さ(骨密度)に関わっていることが分かっています。 骨密度が下がると、骨折しやすくなります。骨密度が下がって骨がもろくなった状態を骨粗鬆症(こつそしょうしょう)といいます。骨密度は年をとると下がるため、高齢者の骨折は寝たきりの主な原因になっています。 驚くことに、骨の丈夫さ(骨密度の高さ)には、遺伝子の影響(体質)が関わっているとされています(参考リンク1)。自分の骨が丈夫な体質かどうか、遺伝子検査で調べてみませんか?
【特徴】 骨の質と量を保つためには、「破骨(古くなった骨を壊す)」と「造骨(新しい骨を造る)」という2つの働きが大切です。このバランスがくずれて「破骨」が「造骨」を上回ると、骨密度が下がります。 その原因の一つとして、13番染色体にある遺伝子「RANKL(骨を壊す細胞を育てる合図となるタンパク質をつくる遺伝子)」が見つかりました。 この遺伝子に含まれるDNA領域の一つが「rs1021188」です。このDNA領域は、約6,000人のスウェーデン人を対象に遺伝子の個人差を調べた研究で、骨密度の低さに関わる場所として見つかりました。 「rs1021188」には、「CC型」、「CT型」、「TT型」の3つの遺伝子型があります。日本人の遺伝子型の割合は、「CC型」9.7%、「CT型」42.9%、「TT型」47.4%です(参考リンク4)。 このうち「CT型」や「TT型」のようにTを含む遺伝子型では、「RANKL」の量が増えて骨を壊す働き(骨吸収)が強まるため、骨密度が下がりやすくなります。 特に「TT型」の場合は、「RANKL」の量がより多くなり、将来「骨粗鬆症」になるリスクが高くなる傾向があります。
【科学的根拠】 骨の質と量を保つためには、「破骨」と「造骨」のサイクルをくり返すことが大切です。 骨を壊す細胞(破骨細胞)は、コラーゲンを分解する酵素(コラゲナーゼ)や、細胞が育ったり増えたりするのを助けるタンパク質(サイトカイン)などを出して、傷んだ骨や古くなった骨を分解して取りのぞきます。その後、骨をつくる細胞(骨芽細胞)が新しい骨をつくることで、骨の質と量が保たれます。 このサイクルが何かの理由でうまく働かなくなり、破骨が造骨を上回ると骨密度が下がります。(参考リンク2) 「RANKL」は破骨細胞分化因子(破骨細胞を育てる物質)とも呼ばれ、破骨細胞を一人前に育てて、骨を壊す働き(骨吸収)を強めます。 DNA領域「rs1021188」が「CT型」や「TT型」だと、「RANKL」の量が増えて破骨細胞が活発になります。その結果、骨を壊す働きが強まり、骨密度が下がりやすくなる傾向があります(参考リンク3, 5)。 骨密度が低いと骨粗鬆症になりやすく、この状態での骨折は寝たきりの原因にもなります。 そのため、ふだんからカルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど骨づくりに役立つ栄養をしっかりとり、散歩などの軽い運動を続けることが大切です。
骨密度とは ― 骨の強さを表す数値
骨密度とは、骨に含まれるカルシウムなどのミネラルの量を表す数値で、骨の強さをそのまま表します。骨密度が下がると骨折しやすくなり、骨粗鬆症と診断されます。研究によって、骨密度の高さには遺伝子の影響(体質)が深く関わっていることが分かっています(参考リンク1)。
骨密度が下がる理由 ― 破骨と造骨のバランス
骨の質と量は「破骨(古い骨を壊す)」と「造骨(新しい骨を造る)」のバランスによって保たれています。このバランスがくずれ、破骨が造骨を上回ると骨密度が下がります(参考リンク2)。
| プロセス | 役割 | 関わる細胞 |
|---|---|---|
| 破骨 | 古くなった骨を分解して取りのぞきます。 | 破骨細胞 |
| 造骨 | 新しい骨をつくります。 | 骨芽細胞 |
RANKL遺伝子とは ― 骨密度を左右する遺伝子
RANKLは、13番染色体にある遺伝子で、骨を壊す細胞(破骨細胞)を一人前に育て、骨を壊す働き(骨吸収)を強めます。
- 約6,000人のスウェーデン人を対象に遺伝子の個人差を調べた研究で、DNA領域rs1021188が骨密度の低さに関わると分かりました。
- rs1021188にはCC型・CT型・TT型の3つの遺伝子型があります。
- CT型・TT型(Tを含む型)ではRANKLの量が増え、骨を壊す働き(骨吸収)が強まります。
- 特にTT型はRANKLの量がさらに増え、将来、骨粗鬆症になるリスクが高い傾向があります。
日本人の遺伝子型の割合(rs1021188)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 骨密度への影響 |
|---|---|---|
| CC型 | 9.7% | 骨密度が下がるリスクが低いです。 |
| CT型 | 42.9% | 骨密度が下がるリスクがやや高いです。 |
| TT型 | 47.4% | 骨密度が下がるリスクが高いです。 |
骨密度が下がるしくみ ― RANKL遺伝子が骨密度を下げるメカニズム
骨を壊す細胞(破骨細胞)は、コラーゲンを分解する酵素(コラゲナーゼ)や、細胞の成長を助けるタンパク質(サイトカイン)を出して、傷んだ骨や古くなった骨を分解して取りのぞきます。その後、骨をつくる細胞(骨芽細胞)が新しい骨をつくることで、骨の質と量が保たれます(参考リンク2)。
- RANKL遺伝子は破骨細胞分化因子(破骨細胞を育てる物質)として、骨を壊す細胞(破骨細胞)を一人前に育てます。
- rs1021188がCT型・TT型の場合、RANKLの量が増えて破骨細胞が活発になります。
- 骨を壊す働きが強まるため、骨密度が下がりやすい傾向があります(参考リンク3, 5)。
- 骨密度が下がると骨粗鬆症になり、骨折は寝たきりの原因にもなります。
骨密度の低下を防ぐための対策
遺伝子の影響に加えて、次のような生活習慣が骨密度を保つのに役立ちます。
- カルシウムをとる:1日700〜800mgを目標に、牛乳・小魚・大豆製品からとります。
- ビタミンDをとる:カルシウムの吸収を助けます。1日15〜20分の日光浴や魚介類からとります。
- ビタミンKをとる:骨にカルシウムがつくのを助けます。納豆・緑黄色野菜がおすすめです。
- 適度な運動:散歩・ジョギングなど骨に負担をかける運動を週3回以上続けます。
- 定期的な骨密度検査:40歳を過ぎたら年1回の骨密度測定がすすめられています。
検査の科学的な根拠
代表的なDNA領域:骨密度
骨密度 に最も強く影響するDNA領域は、rs1021188です。 日本でのこの場所の遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- CC
9.1 % - CT
42.2 % - TT
48.5 %
他に、骨密度に関わるDNA領域にはrs10048146があります。 日本でのこの場所の遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- AA
49.9 % - AG
41.4 % - GG
8.6 %
他に、骨密度に関わるDNA領域にはrs10045962があります。 日本でのこの場所の遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- CC
39.0 % - CT
46.8 % - TT
14.0 %
他に、骨密度に関わるDNA領域にはrs12482821があります。 日本でのこの場所の遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- TT
99.9 % - TG
0.1%以下 - GG
0.1%以下
他に、骨密度に関わるDNA領域にはrs12967019があります。 日本でのこの場所の遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- TT
39.0 % - TC
46.8 % - CC
14.0 %
他に、骨密度に関わるDNA領域にはrs2153672があります。 日本でのこの場所の遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- CC
79.1 % - CT
19.6 % - TT
1.2 %
他に、骨密度に関わるDNA領域にはrs2234693があります。 日本でのこの場所の遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- TT
33.2 % - TC
48.8 % - CC
17.8 %
他に、骨密度に関わるDNA領域にはrs2710057があります。 日本でのこの場所の遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- GG
1.4 % - GT
20.8 % - TT
77.7 %
他に、骨密度に関わるDNA領域にはrs2836613があります。 日本でのこの場所の遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- GG
5.7 % - GA
36.5 % - AA
57.7 %
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図(イメージ図)
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
関連する遺伝子
| 関連する遺伝子 | LINC02341 |
|---|---|
| 関連する遺伝子 | FOXL1 |
| 関連する遺伝子 | ARSB |
| 関連する遺伝子 | LINC00310 |
| 関連する遺伝子 | SMAD7 |
| 関連する遺伝子 | CLYBL |
| 関連する遺伝子 | ESR1 |
| 関連する遺伝子 | DACH2 |
| 関連する遺伝子 | ERG |
よくある質問
Q1. 骨密度とは何ですか?
骨密度とは、骨に含まれるカルシウムなどのミネラルの量を表す数値で、骨の強さをそのまま表します。骨密度が下がると骨粗鬆症と診断され、骨折しやすさが大きく上がります。骨密度の高さにはRANKL遺伝子(rs1021188)の遺伝子型が深く関わっています(参考リンク1)。
Q2. 骨密度に関わる遺伝子RANKLとは?
RANKLは、13番染色体にある遺伝子で、骨を壊す細胞(破骨細胞)を一人前に育てて、骨を壊す働き(骨吸収)を強めます。DNA領域rs1021188がTT型やCT型の人ではRANKLの量が増え、骨密度が下がりやすくなります。日本人の約47.4%がTT型です(参考リンク4)。
Q3. 骨密度の低下を防ぐ方法は?
カルシウム(1日700〜800mg)、ビタミンD(1日15〜20分の日光浴)、ビタミンKをしっかりとることがすすめられています。また、散歩やジョギングなど骨に適度な負担をかける運動を週3回以上続けると、骨密度を保つのに役立ちます。40歳を過ぎたら年1回の骨密度検査がすすめられています。
Q4. 骨密度と骨粗鬆症の関係は?
骨密度が低下した状態が骨粗鬆症です。骨粗鬆症になると骨折しやすさが大きく上がり、特に高齢者では太ももの付け根の骨(大腿骨)の骨折が寝たきりの主な原因になります。遺伝子検査で骨密度が下がりやすいかどうかを早めに知り、予防に取り組むことが大切です。
Q5. 日本人での骨密度に関わる遺伝子型の割合は?
DNA領域rs1021188での日本人の遺伝子型の割合は、CC型9.7%・CT型42.9%・TT型47.4%です。骨密度が下がりやすいTT型の人が約半数を占めており、日本人が遺伝子の面で骨粗鬆症になりやすい傾向をもつことを示しています(参考リンク4)。
参考文献
- 参考リンク1 : 2011 Apr., Emma L Duncan, PLoS Genet.
- 参考リンク2 : 2007 Jul., Mone Zaidi, Nat Med.
- 参考リンク3 : 2013 Feb., Lavinia Paternoster, PLoS Genet.
- 参考リンク4 : DNA領域「rs1021188」の情報(アメリカ国立衛生研究所)
- 参考リンク5 : 2010 Nov., Lavinia Paternoster, PLoS Genet.
- 参考リンク6 : 2010 Nov., Lavinia Paternoster, PLoS Genet
- 参考リンク7 : 2009 Nov., Fernando Rivadeneira, Nat Genet
- 参考リンク8 : 2019 Feb., John A Morris, Nat Genet
- 参考リンク9 : 2018 Jul., Stuart K Kim, PLoS One
- 参考リンク10 : 2009 Jan., Unnur Styrkarsdottir, Nat Genet