乳がん
概要
1. 概要
乳がんは、乳房に発生するがんの一種です。
主に「しこり」を発見することで発症に気づくことが多いですが、「しこり」があっても必ずしも悪性腫瘍であるわけではなく、約8割から9割は良性の乳腺症です。
乳がんの発症には、女性ホルモンである「エストロゲン」が深く関与しており、長期間「エストロゲン」にさらされるとがんになる可能性が高くなります。
そのため、初経・閉経年齢・出産・授乳歴などが危険因子とされています。
一般的ながんの危険因子である喫煙、飲酒、肥満なども乳がんの発症に関連する可能性があります。また、家族歴も乳がんの5%から10%が遺伝によるものとされています。
最近の研究では、遺伝子「SETBP1」の多型が、乳がんの発症リスクにある程度影響を与えていることが報告されました。
2. 理論的根拠
イギリス医療研究評議会(MRC)による研究により、「SETBP1」遺伝子の「rs6507583」という特定のDNA領域が、乳癌の発症率と関連していることが明らかになりました。(参考リンク1)
DNA領域「rs6507583」には、「AA」、「AG」、「GG」という3つの遺伝型があり、
乳癌患者は「AG型」の人も一定数存在しますが、多くは「AA型」であるということが分かりました。
そして日本の遺伝型は「AA型」が78.5%、「AG型」が20.2%、「GG型」が1.3%という比率になっています。(参考リンク2)
国立がん研究センターによると、乳癌は日本の女性の中で最も一般的ながんであり、約9人に1人がこの病気を発症する可能性があります。
2020年には約14,650人が乳癌で亡くなり、年々死亡者数が増加しています。(参考リンク3)
一方、乳癌は早期に発見・治療されれば治癒が容易な病気であり、特にがんの初期ステージである「第I期」においては5年生存率が「90%」となっています。
遺伝子検査により、乳癌の遺伝的傾向を知ることは、定期的な乳癌検診の受診や運動の習慣化、
喫煙や飲酒の回避などの生活習慣の改善など、早期発見や早期治療、予防に役立つことが期待されます。
3. 作用機序
乳がんのリスク因子の一つである遺伝子「SETBP1」は、ヒトの24の染色体のうち、18番染色体に位置しています。
この遺伝子は、乳がんを含む多くのがんで高い発現が確認されており、腫瘍の増殖を促進することが知られています。(参考リンク4)
実際、「SchinzelGiedion症候群」と呼ばれる疾患では、遺伝子「SETBP1」の突然変異により複数の臓器の奇形が報告されており、正常より高い腫瘍の発症率が報告されています。(参考リンク5)
一般的に、悪性腫瘍は良性腫瘍と比べて、増殖スピードが速く、周囲に広がったり浸潤したり、体の別の箇所に転移したりすることが特徴です。
研究により、遺伝子「SETBP1」は乳がん細胞の「増殖・遊走・浸潤・転移」を促進することが明らかになっています。(参考リンク6)
DNA領域「rs6507583」は、遺伝子「SETBP1」の制御部位に位置しており、
実際に乳がん患者では「AA型の割合が高い」ため、乳がんに関与する可能性がある一塩基多型の1つとして注目されています。
遺伝子領域rs6507583において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA71.5%
- AG26.0%
- GG2.3%
遺伝子領域rs6507583において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA83.5%
- AG15.6%
- GG0.7%
遺伝子領域rs2048672において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC32.7%
- CA48.9%
- AA18.3%
遺伝子領域rs2048672において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC46.2%
- CA43.4%
- AA10.2%
遺伝子領域rs2822999において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- TT62.1%
- TG33.3%
- GG4.4%
遺伝子領域rs2822999において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- TT69.6%
- TG27.6%
- GG2.7%
遺伝子領域rs117618124において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- TT99.9%
- TC0.0%
- CC0.0%
遺伝子領域rs117618124において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- TT91.2%
- TC8.5%
- CC0.2%
遺伝子領域rs9959491において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC28.9%
- CT49.7%
- TT21.3%
遺伝子領域rs9959491において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC9.5%
- CT42.6%
- TT47.7%
遺伝子領域rs2853667において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA77.4%
- AG21.1%
- GG1.4%
遺伝子領域rs2853667において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA31.6%
- AG49.2%
- GG19.1%
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:乳がん
体表的なDNA領域:乳がん
乳がん に最も強く影響する遺伝子領域は、rs6507583です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
-
AA
71.5% -
AG
26.0% -
GG
2.3%
他に、乳がんに関わる遺伝子領域はrs2048672があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
CC
32.7% -
CA
48.9% -
AA
18.3%
他に、乳がんに関わる遺伝子領域はrs2822999があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
TT
62.1% -
TG
33.3% -
GG
4.4%
他に、乳がんに関わる遺伝子領域はrs117618124があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
TT
99.9% -
TC
0.0% -
CC
0.0%
他に、乳がんに関わる遺伝子領域はrs9959491があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
CC
28.9% -
CT
49.7% -
TT
21.3%
他に、乳がんに関わる遺伝子領域はrs2853667があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
AA
77.4% -
AG
21.1% -
GG
1.4%
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | SETBP1 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | LINC-PINT |
| 関連遺伝子 | NRIP1 |
| 関連遺伝子 | GAREM1 |
| 関連遺伝子 | PA2G4P3 |
| 関連遺伝子 | TERT |
参考文献
- 参考リンク2 : DNA領域「rs6507583」の情報 TogoVar
- 参考リンク3 : 最新がん統計のまとめ がん情報サービス
- 参考リンク4 : 遺伝子「SETBP1」の情報 My Cancer Genome
- 参考リンク6 : 2017 Jun., Liang-liang Chen, BJC.
- 参考リンク7 : 2020 Mar., Xiang Shu, Nat Commun
- 参考リンク8 : 2011 Dec., Qiuyin Cai, Hum Mol Genet
- 参考リンク10 : 2022 Jul., Xueyao Wu, Am J Hum Genet
- 参考リンク11 : 2017 Dec., Roger L Milne, Nat Genet