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がんの増殖・転移率

がんの増殖・転移率のイメージ画像
  • エンドスタチンは新しい血管ができるのをおさえ、がんの成長と転移をおさえる、体内で作られるたんぱく質です。
  • DNA領域rs12482088のAタイプを持つ人はがんの増殖・転移率が高い傾向にあることが研究でわかりました。
  • 日本人の約74.8%がAA型を持ち、世界平均(58.4%)とくらべて高い割合です。

概要

【疾患の概要】 エンドスタチンは、体の中で新しい血管が作られるのをおさえる物質です。18型コラーゲンというたんぱく質の端の部分が切り取られてできたかけらです。 最初はマウスの血管の腫瘍から見つかりましたが、のちに人の体の中にもあることがわかりました。

【症状と特徴】 がんは大きくなるために、自分に栄養を送る新しい血管を作ります。エンドスタチンはこの血管づくりをじゃますることで、がんが大きくなったり、ほかの場所へ広がったり(転移)するのをおさえます。 エンドスタチンががんの転移に関わることを示す研究はたくさんあります。 1. 動物の実験では、外からエンドスタチンを与えると、ルイス肺がんや乳がん、大腸がんなど多くのがんの成長と転移をおさえられることがわかっています。 2. エンドスタチンは、血管の内側をおおう細胞が増えたり、血管の管を作ったりするのをじゃまし、がんに新しい血管ができるのを防ぎます。 そのため、がん細胞は栄養を受け取れず、成長がおさえられます。 3. エンドスタチンは、細胞のまわりの組織を分解する酵素(マトリックスメタロプロテアーゼ)の働きをおさえ、がん細胞がまわりに入り込んだり(浸潤)、転移したりするのを防ぎます。 4. 人を対象にしたいくつかの研究では、血液中のエンドスタチンの量が、がんの進み具合(ステージ)や転移、その後の経過と関係していることがわかっています。 エンドスタチンの量が多い患者さんは、がんの進行がゆっくりで、生きられる期間が長いことが観察されています。

【治療と注意点】 5. 人工的に作ったエンドスタチンの薬(Endostar)は、非小細胞肺がん(肺がんの一種)など多くの固形がん(かたまりを作るがん)の治療に使われ、生きられる期間をのばす効果があります。 6. エンドスタチンは、抗がん剤による治療や放射線治療と組み合わせることで、がんの成長と転移をさらにおさえる効果があります。 このように、多くの研究でエンドスタチンががんの成長と転移をおさえる可能性が示されていますが、くわしいしくみについては、さらに研究が必要です。

【遺伝的リスク】 ケンブリッジ大学のSunらの研究で、がんの増殖・転移率がrs12482088というDNA領域と関係していることがわかりました。 このDNA領域にはAA、AC、CCの3つの遺伝子型があり、Aを持つ遺伝子型の人は、がんの増殖・転移率が高い傾向にあることがわかりました。

がんの増殖・転移率とは何か

がんの増殖・転移率とは、体の中にできたがん(悪性腫瘍)が大きくなり、ほかの臓器へ広がる速さを表す目安です。この速さには、エンドスタチンというたんぱく質と、DNA領域rs12482088の遺伝子型が関わっています。

エンドスタチンとは?がんをおさえる働き

エンドスタチンは、18型コラーゲンというたんぱく質の端の部分からできたかけらで、体の中で新しい血管が作られるのをおさえる、体内で作られるたんぱく質です。最初はマウスの血管の腫瘍から見つかり、その後、人の体の中にもあることが確認されました。

エンドスタチンは次のようなしくみで、がんの増殖・転移をおさえます。

  • 新しい血管づくりをおさえる:血管の内側をおおう細胞が増えたり、血管の管を作ったりするのをじゃまし、がんへの栄養の通り道を断ちます。
  • 組織を分解する酵素をおさえる:細胞のまわりの組織を分解する酵素(マトリックスメタロプロテアーゼ)の働きをおさえ、がん細胞がまわりに入り込んだり転移したりするのを防ぎます。
  • がんの成長をおさえる:ルイス肺がん・乳がん・大腸がんなどのがんの成長と転移をおさえます(動物の実験)。

エンドスタチンの効果を示す研究結果

エンドスタチンががんをおさえる効果は、人を対象にした複数の研究で確認されています。

研究の根拠 内容
血液中の量とその後の経過 エンドスタチンの量が多い患者さんは、がんの進行がゆっくりで、生きられる期間が長いです。
Endostar(人工的に作ったエンドスタチンの薬) 非小細胞肺がん(肺がんの一種)など、かたまりを作るがんの治療に使われ、生きられる期間をのばす効果があります。
ほかの治療との組み合わせ 抗がん剤による治療や放射線治療といっしょに使うと、がんの成長と転移をさらにおさえます。

がんの増殖・転移率に影響する因子

がんの増殖・転移率は、次のようなことに影響されます。

  • 血液中のエンドスタチンの量:量が多いとがんの成長がおさえられます。
  • 生まれつきの遺伝子:DNA領域rs12482088の遺伝子型が関わります。
  • がんの種類:がんの種類によって、新しい血管にどれだけ頼っているかが違います。
  • 血管づくりに関わる物質のバランス:血管づくりを進める物質とおさえる物質のバランスが転移のしやすさに影響します。

遺伝子とがんの増殖・転移率の関連

DNA領域rs12482088と転移リスクの関係

ケンブリッジ大学のSunらの研究(2018年)で、DNA領域rs12482088ががんの増殖・転移率と関係していることがわかりました。

  • rs12482088にはAA・AC・CCの3つの遺伝子型があります。
  • Aタイプを持つ遺伝子型(AA型・AC型)の人は、がんの増殖・転移率が高い傾向があります。
  • このDNA領域はCOL18A1遺伝子(18型コラーゲン=エンドスタチンのもとになるたんぱく質を作る遺伝子)に関係しています。

日本人の遺伝子型の分布(rs12482088)

遺伝子型 日本人の割合 世界の割合
AA型 74.8% 58.4%
AC型 23.2% 36.0%
CC型 1.8% 5.5%

日本人はAA型(74.8%)を持つ人の割合が世界平均(58.4%)より16.4ポイント高く、遺伝子の面でがんの増殖・転移率が高い傾向を持つ人が多いという特徴があります。

DNA領域rs12482088について、日本で各遺伝子型を持つ人の割合

  • AA
    74.8%
  • AC
    23.2%
  • CC
    1.8%

DNA領域rs12482088について、世界で各遺伝子型を持つ人の割合

  • AA
    58.4%
  • AC
    36.0%
  • CC
    5.5%

検査の科学的な根拠

代表的なDNA領域:がんの増殖・転移率

がんの増殖・転移率に最も強く影響するDNA領域は、rs12482088です。 日本でのこの場所の遺伝子型の分布は下のとおりです。

  • AA
    74.8 %
  • AC
    23.2 %
  • CC
    1.8 %

検査の根拠

ケンブリッジ大学のSunらの研究で、がんの増殖・転移率が遺伝子と関係していることがわかりました。人のDNAには、rs12482088という場所があり、そこにはAとCの2種類のタイプがあります。Aタイプを持つ人は、がんの増殖・転移率が高い傾向にあることがわかりました。

今回調べたDNA領域

細胞の中にあるDNAの地図のイメージ図

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関連遺伝子

関連遺伝子 COL18A1

よくある質問

Q1. がんの増殖・転移率とは何ですか?

がんの増殖・転移率とは、体の中にできたがん(悪性腫瘍)が大きくなり、ほかの臓器へ転移する速さを表す目安です。血液中のエンドスタチンの量や、DNA領域rs12482088の遺伝子型によってリスクが変わります。

Q2. エンドスタチンはどのようにしてがんの転移をおさえますか?

エンドスタチンは新しい血管づくりをじゃまし、がんへの栄養の通り道を断つことで、がんが大きくなるのをおさえます。また、細胞のまわりの組織を分解する酵素(マトリックスメタロプロテアーゼ)の働きをおさえ、がん細胞がまわりに入り込んだり転移したりするのを防ぎます。

Q3. 遺伝子検査でがんの転移リスクはわかりますか?

DNA領域rs12482088の遺伝子型を調べることで、がんの増殖・転移率の傾向を知ることができます。Aタイプを持つ遺伝子型(AA型・AC型)の人はリスクが高い傾向にあることが、ケンブリッジ大学の研究で報告されています。

Q4. 血液中のエンドスタチンの量が多いとどうなりますか?

人を対象にした研究によると、血液中のエンドスタチンの量が多い患者さんは、がんの進行がゆっくりで、生きられる期間が長いことが観察されています。エンドスタチンはがんに新しい血管ができるのをおさえ、がんが大きくなるのをおさえる働きを持ちます。

参考文献