セリアック病
- セリアック病は、グルテンを食べると免疫が小腸の絨毛を攻撃してしまう自己免疫疾患で、世界の人口の約1%がかかっています。
- DNA領域rs13397のGタイプを持つ人は発症リスクが高い傾向にあることが研究で分かっています。
- 厳格なグルテンフリー食が唯一の効果的な治療法で、一生にわたる食事の管理が欠かせません。
概要
【疾患の概要】 セリアック病は、おなか(消化器)に影響が出る自己免疫疾患(免疫が自分の体を攻撃してしまう病気)です。 主な特徴は、小麦、大麦、ライ麦に含まれるグルテンというたんぱく質を体がうまく受けつけられないことです。
【治療と注意点】 グルテンを食べると、免疫が小腸を攻撃し、栄養の吸収に大切な絨毛(じゅうもう:小腸の内側にある細かい突起)を傷つけます。 その結果、栄養がうまく吸収できなくなり、下痢、腹痛、体重減少、疲れやすさ、貧血、骨粗鬆症(骨がもろくなる病気)、皮膚の発疹など、さまざまな症状が出ます。 年齢に関係なく発症し、グルテンをまったく食べない食事(グルテンフリー食)を厳しく守ることが、唯一の効果的な治療法です。 この食事を守ることで症状が軽くなり、合併症のリスクも下がります。 制限はやや厳しいですが、健康を保つためには欠かせません。
【遺伝的リスク】 フローニンゲン大学のTrynkaらの研究により、セリアック病になるリスクがrs13397というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはGG、AG、AAの3つの遺伝子型があり、Aを持つ遺伝子型の人は、セリアック病のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
セリアック病とは
セリアック病は、小麦・大麦・ライ麦に含まれるグルテンを食べることで、免疫が小腸の絨毛(栄養を吸収する細かい突起)を攻撃して傷つける自己免疫疾患です。世界の人口の約1%がかかっており、まだ診断されていない人を含めると、さらに多いと考えられています。
セリアック病の原因とメカニズム
セリアック病は、生まれつきの遺伝子の影響と、環境の要因(グルテンを食べること)が組み合わさって発症します。
- 免疫の異常な反応:グルテンに含まれるグリアジンという成分が小腸の粘膜を通り抜けると、免疫がそれを異物とみなして攻撃を始めます。
- 絨毛の損傷:免疫の反応によって小腸の絨毛が縮み、栄養を吸収できる面積が減ります。
- 生まれつきの遺伝子の影響:免疫に関わる遺伝子のタイプ「HLA-DQ2」または「HLA-DQ8」を持つ人に発症が集中しています(患者の約95%がHLA-DQ2を持っています)。
主なリスク要因は次のとおりです。
- 家族歴(親・きょうだい・子どもがかかる割合は約10%)
- 1型糖尿病など、ほかの自己免疫疾患を持っていること
- ダウン症候群・ターナー症候群などの染色体の異常
- DNA領域rs13397でGタイプを持っていること
セリアック病の主な症状
症状は、おなかの症状と全身の症状の2つに大きく分けられます。
- 長く続く下痢・おなかの張り
- 体重が減り、子どもでは成長が遅れます。
- 鉄が足りないことによる貧血・疲れやすさ
- 骨粗鬆症(カルシウムがうまく吸収できず、骨がもろくなる)
- 疱疹状皮膚炎(皮膚に水ぶくれや発疹ができる)
セリアック病と小麦アレルギーの違い
| 比較項目 | セリアック病 | 小麦アレルギー |
|---|---|---|
| 原因 | グルテンに対して免疫が自分の体を攻撃する反応 | 小麦のたんぱく質に対するアレルギー反応(アレルギーに関わる抗体による反応) |
| 起こるしくみ | 小腸の絨毛が傷つきます。 | ヒスタミンという物質が出て、すぐに起こる反応 |
| 症状が出るまで | 数時間〜数日後 | 食べてから数分〜数時間 |
| 原因になる食品 | 小麦・大麦・ライ麦すべて | 小麦のみ |
| 治療法 | 一生グルテンフリー食を続けます。 | 小麦をとりません(成長とともに食べられるようになることもあります)。 |
セリアック病の合併症リスク
きちんと治療をしないと、次のような合併症が起こる可能性があります。
- 栄養吸収不良症候群(ビタミンやミネラルが長いあいだ不足する状態)
- 骨粗鬆症(カルシウムやビタミンDがうまく吸収できないため)
- 不妊や流産のリスクが上がります。
- 腸のリンパ腫(血液のがんの一種)(長いあいだ治療しないとリスクが上がる)
診断方法
次の検査で診断されます。
- 血液検査:組織トランスグルタミナーゼ(小腸にある酵素)に対する抗体を調べる検査
- 血液検査:筋内膜(筋肉を包む膜)に対する抗体を調べる検査
- 内視鏡で小腸の組織を少し取って調べる検査(絨毛が縮んでいないかを確認)
- 免疫に関わる遺伝子のタイプ(HLA-DQ2/HLA-DQ8)を調べる遺伝子検査
遺伝子とセリアック病の関連
DNA領域rs13397と発症リスクの関係
フローニンゲン大学のTrynkaらの研究により、DNA領域rs13397がセリアック病になるリスクと関係していることが分かりました。
- rs13397にはGG・GA・AAの3つの遺伝子型が存在します。
- Gタイプを持つ遺伝子型の人は、セリアック病のリスクが高い傾向があります。
日本人での遺伝子型の分布(rs13397)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| GG型 | 10.8% | 69.2% |
| GA型 | 44.1% | 27.8% |
| AA型 | 45.0% | 2.8% |
検査の根拠
代表的なDNA領域:セリアック病
セリアック病に最も強く影響するDNA領域は、rs13397です。 日本での遺伝子型の分布は下のとおりです。
- GG
10.8 % - GA
44.1 % - AA
45.0 %
ほかに、セリアック病に関わるDNA領域としてrs4819388があります。 日本での遺伝子型の分布は下のとおりです。
- TT
10.3 % - TC
43.6 % - CC
45.9 %
ほかに、セリアック病に関わるDNA領域としてrs58911644があります。 日本での遺伝子型の分布は下のとおりです。
- AA
73.2 % - AT
24.6 % - TT
2.0 %
ほかに、セリアック病に関わるDNA領域としてrs13015714があります。 日本での遺伝子型の分布は下のとおりです。
- GG
13.7 % - GT
46.6 % - TT
39.6 %
検査の根拠
フローニンゲン大学のTrynkaらの研究により、セリアック病になるリスクが遺伝子と関係していることが分かりました。人のDNAにはrs13397という領域があり、この領域にはGとAの2種類のタイプがあります。Gタイプを持つ人は、セリアック病のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図(模式図)
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | TMEM187 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | ICOSLG |
| 関連遺伝子 | GATD3 |
| 関連遺伝子 | IL18R1 |
よくある質問
Q1. セリアック病とは何ですか?
セリアック病は、小麦・大麦・ライ麦に含まれるグルテンを食べることで、免疫が小腸の絨毛(栄養を吸収する細かい突起)を攻撃して傷つける自己免疫疾患です。世界の人口の約1%がかかり、栄養がうまく吸収できなくなることや、全身のさまざまな症状を引き起こします。
Q2. セリアック病の原因は何ですか?
主な原因はグルテンに対するふつうではない免疫の反応です。生まれつき特定の免疫の遺伝子のタイプ(HLA-DQ2やHLA-DQ8)を持つ人がグルテンを食べると、免疫が小腸の内側の粘膜を攻撃します。DNA領域rs13397でGタイプを持つ人はリスクが高い傾向にあります。
Q3. セリアック病はどのように診断されますか?
血液検査(小腸の酵素や筋肉の膜に対する抗体を調べる検査)と小腸の組織検査が主な診断方法です。まず血液検査で疑わしいかどうかを調べ、陽性の場合は内視鏡(体の中を見るカメラ)で小腸の組織を少し取り、絨毛が縮んでいないかを確認します。
Q4. 遺伝子検査でセリアック病のリスクは分かりますか?
DNA領域rs13397の遺伝子型を調べることで、セリアック病のなりやすさの傾向を知ることができます。Gタイプを持つ遺伝子型の人はリスクが高い傾向にあることが、フローニンゲン大学のTrynkaらの研究で分かっています。
Q5. セリアック病の治療法は何ですか?
グルテンをまったく食べない食事(グルテンフリー食)を厳しく守ることが、唯一の効果的な治療法です。小麦・大麦・ライ麦をまったく含まない食事を一生続けることで、小腸が回復し、症状がよくなることが期待できます。
参考文献
- 参考リンク1 : 2011 Nov., Gosia Trynka, Nat Genet
- 参考リンク2 : 2010 Apr., Patrick C A Dubois, Nat Genet
- 参考リンク3 : 2008 Apr., Karen A Hunt, Nat Genet