seeDNAロゴアイコン 慢性腎不全

概要

概要

慢性的に腎機能が低下する「慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)」という病気があります。
「CKD」は、比較的新しい病気の概念で、実は日本に1,300万人以上の患者がいるとも指摘されています。
「CKD」の初期段階では自覚症状がほとんどないため、病気に気づきにくい一方、「CKD」が進行し病状が悪化すると、腎機能の回復が見込めなくなるおそれがあります。「CKD」は、早期に治療すれば回復可能な病気で、疾患の有無の指標となるバイオマーカーとして利用されているのがアルブミン尿です。
アルブミンはタンパク質の一種で、腎機能が正常であれば本来は尿として排出されません。
一方、尿中アルブミン濃度は運動や血圧などが影響して変動しやすいことも知られており、尿中のクレアチニンという物質の濃度を使って補正するのが一般的です。
この補正した数値を、「尿アルブミン/クレアチニン比(AlbuminCreatinine Ratio: ACR)」といいます。近年の研究から、「ACR」は遺伝子の働きとも関係があることが判明しています。(参考リンク1)
遺伝子検査でご自身の遺伝子タイプを調べれば、より正確な腎機能の状態の把握につながる可能性があり、「CKD」の早期発見にも役立ちます。

理論的根拠

イギリスのエクセター大学の研究者らが行った調査は、「ACR」と遺伝子の関連を示しています。
その報告によると、DNA領域「rs3116613」という遺伝子の特定領域がリスク型のとき、 「ACR」が上昇する傾向にあります。
ヒトの遺伝情報は、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という塩基成分の配列によって決まり、DNA領域「rs3116613」内にも「A」、「T」、「G」、「C」が並んでいます。
その中の一塩基「T」が「G」に置き換えられるとき、「ACR」上昇の傾向がみられるということです(参考リンク2)。この場合の「G」をリスクアレルと呼びます。
DNA領域「rs3116613」の遺伝子タイプは、「TT型」、「TG型」、「GG型」の3つに分類できます。
日本人の遺伝子タイプは、「TT型」が97.3%、「TG型」が2.7%、「GG型」が0.02%です。そして「GG型」ほど「ACR」が上昇しやすく、「TG型」はやや上昇しやすいこともわかっています。

作用機序

DNA領域「rs3116613」は、遺伝子「DLEU1」に存在し、DLEU1はヒトに46本ある染色体の中で、13番目の染色体にあります。
遺伝子「DLEU1」は、lncRNA(長鎖ノンコーディングRNA)という物質の生成に作用し(参考リンク1)、RNAは細胞がタンパク質をつくる土台になります。
その中で、lncRNAは遺伝子発現制御などを担っていると考えられていますが、いまだ解明されていない点も多い物質です。
「ACR」の上昇と関連がある他の遺伝子は、心血管疾患の発症にも関係しているとの報告もあり、今後「DLEU1」のさらなる解明が期待されています。

遺伝子領域rs3116613において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

94.31% 5.60% 0.08%
  • TT94.31%
  • TG5.60%
  • GG0.08%

遺伝子領域rs3116613において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

69.11% 28.05% 2.85%
  • TT69.11%
  • TG28.05%
  • GG2.85%

遺伝子領域rs2837554において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

13.35% 46.38% 40.27%
  • AA13.35%
  • AG46.38%
  • GG40.27%

遺伝子領域rs2837554において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

1.29% 20.14% 78.57%
  • AA1.29%
  • AG20.14%
  • GG78.57%

seeDNAロゴアイコン検査の理論的根拠

体表的なDNA領域:慢性腎不全

体表的なDNA領域:慢性腎不全

慢性腎不全 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs3116613です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。

  • TT

    94.3
    %
  • TG

    5.6
    %
  • GG

    0.1
    %

他に、慢性腎不全に関わる遺伝子領域はrs2837554があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです

  • AA

    13.4
    %
  • AG

    46.4
    %
  • GG

    40.3
    %

検査の根拠

seeDNAロゴアイコン今回調査したDNA領域

細胞中に存在するDNAマップの模式図

seeDNAロゴアイコン関連遺伝子

関連遺伝子 DLEU1
関連遺伝子 DSCAM

seeDNAロゴアイコン参考文献

  • 参考リンク1 : https://academic.oup.com/hmg/article/28/24/4197/5599707
  • 関連遺伝子 DLEU1
  • 参考リンク : 2019 Dec、Francesco Casanovaと研究グループがHum Mol Genet に発表したA genome-wide association study implicates multiple mechanisms influencing raised urinary albumin-creatinine ratioという研究によると慢性腎不全 に関連するrs3116613の関連性が認められました。
  • 関連遺伝子 DSCAM
  • 参考リンク : 2019 May、Bridget M Linと研究グループがFront Genet に発表したGenetics of Chronic Kidney Disease Stages Across Ancestries: The PAGE Studyという研究によると慢性腎不全 に関連するrs2837554の関連性が認められました。