慢性骨髄性白血病
- 慢性骨髄性白血病は、フィラデルフィア染色体の異常によって顆粒球(白血球の一種)が作られすぎる血液のがんで、1年間に新しくかかる人は人口10万人あたり約1〜2人です。
- DNA領域rs4869742のC型を持つ人は慢性骨髄性白血病にかかりやすい傾向があることが、成均館大学医学部の研究で分かりました。
- 日本人でC型(CC+CT)を持つ人の割合は33.9%で、世界平均の90.7%とくらべて低い割合です。
概要
【疾患の概要】 慢性骨髄性白血病は、骨髄(骨の中にある、新しい血液の細胞が作られる場所)で起こるがんの一種です。 まだ成長しきっていない白血球の一種「顆粒球(かりゅうきゅう)」が作られすぎることで、ふつうの血液の細胞が作られにくくなり、その働きにも悪い影響が出ます。
【症状と特徴】 この病気の特徴の1つは、フィラデルフィア染色体(異常が起きた染色体)と関係していることです。 フィラデルフィア染色体は、第9染色体と第22染色体の一部が入れ替わることでできます。これにより、白血球を増やしすぎるタンパク質が作られるようになります。 初めのうちは症状が出ないこともありますが、病気が進むと、疲れやすさ、体重の減少、寝ている間の汗、おなかの左側にある脾臓(ひぞう)の腫れや痛みなどの症状が出ます。 また、異常な白血球が増えて体を守る力(免疫)が弱まるため、感染症にかかりやすくなります。 この病気はふつう、慢性期、加速期、急性転化期の3つの段階に分けられます。
【治療と注意点】 慢性期は病状が安定していて、治療がよく効くことが多いですが、加速期と急性転化期は病気の進み方が速く、治療が難しくなります。 治療には、フィラデルフィア染色体からできる異常な遺伝子の働きをおさえる「チロシンキナーゼ阻害薬」という薬が使われます。 この薬のおかげで、患者さんの寿命と生活の質は大きく良くなりました。
【遺伝子の影響】 成均館大学医学部のKimらの研究で、慢性骨髄性白血病のかかりやすさがrs4869742というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはCC、CT、TTの3つの遺伝子型があり、Tを持つ遺伝子型の人は、慢性骨髄性白血病にかかりやすい傾向があることが分かりました。
慢性骨髄性白血病とは
慢性骨髄性白血病とは、骨髄で、まだ成長しきっていない白血球の一種「顆粒球」が作られすぎる血液のがんです。第9染色体と第22染色体の一部がお互いに入れ替わってできるフィラデルフィア染色体が原因です。ここでできるBCR-ABL融合遺伝子(2つの遺伝子がつながってできた異常な遺伝子)が異常なタンパク質(チロシンキナーゼ)を作り、白血球が際限なく増えるのをうながします。
慢性骨髄性白血病の主な原因
この病気が起こるには、次のような要因が関わっています。
- フィラデルフィア染色体:第9染色体と第22染色体の一部がお互いに入れ替わること(転座。専門的な表記ではt(9;22)(q34;q11))でできます。この病気の患者さんの約95%で見つかります。
- BCR-ABL融合遺伝子:フィラデルフィア染色体の上にでき、常にスイッチが入ったままの酵素(チロシンキナーゼ)を作ります。これにより白血球が増えすぎます。
- 環境要因:強い放射線を多く浴びることが原因の1つです。化学物質(ベンゼンなど)に長く触れることとの関係も指摘されています。
慢性骨髄性白血病の病期と症状
この病気は3つの段階に分けられ、段階ごとに症状や治療の効き方が違います。
| 病期 | 主な症状 | 特徴 |
|---|---|---|
| 慢性期 | 症状なし〜軽い疲れ・脾臓の腫れ | 患者さんの約90%がこの段階で診断されます。治療がよく効きます。 |
| 加速期 | 発熱・体重の減少・骨の痛み・脾臓の腫れが大きくなります。 | 未熟な血液細胞(芽球)が血液中に10〜19%出てきます。薬が効きにくくなります。 |
| 急性転化期 | 重い感染症・出血しやすさ・臓器の働きの低下 | 未熟な血液細胞(芽球)が20%以上に増えます。急性白血病に似た経過をたどります。 |
慢性骨髄性白血病の診断方法
この病気の診断には、次の検査が使われます。
- 血液検査:白血球の数が大きく増えている(1マイクロリットルあたり10万個以上のこともある)こと、好塩基球(白血球の一種)や血小板が増えていることを確かめます。
- 骨髄検査:骨に針を刺して骨髄を取り、細胞の種類や未熟な細胞(芽球)の割合を調べます。
- 染色体検査(染色体の形や数を調べる):フィラデルフィア染色体があるかどうかを調べます。診断を確定するのに欠かせません。
- 蛍光検査:光る目印を使って、BCR-ABL融合遺伝子があるかをすばやく調べます。
- 遺伝子の量を測る検査:BCR-ABL融合遺伝子がどれくらい働いているかを数字で測ります。治療の効果を確かめるのに使います。
慢性骨髄性白血病の治療法の比較
| 治療法 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| チロシンキナーゼ阻害薬 | 慢性期で最初に選ばれる治療 | イマチニブ・ダサチニブ・ニロチニブなどです。5年生存率は約90%です。 |
| 同種造血幹細胞移植(他の人からの移植) | チロシンキナーゼ阻害薬が効かない場合・加速期・急性転化期 | 完全に治すことが期待できる唯一の治療法です。型の合う提供者が必要です。移植にともなって命に関わる危険があります。 |
| 抗がん剤による治療 | 急性転化期・チロシンキナーゼ阻害薬が合わない場合 | ヒドロキシウレアなどで白血球の数を減らします。症状をやわらげるための治療です。 |
この病気はチロシンキナーゼ阻害薬の登場で治療成績が大きく良くなり、慢性期で治療を始めた患者さんの5年生存率は約90%に達しています。
遺伝子と慢性骨髄性白血病の関係
DNA領域rs4869742と慢性骨髄性白血病の関係
成均館大学医学部のKimらによる2011年の研究で、慢性骨髄性白血病のかかりやすさがDNA領域rs4869742と関係していることが分かりました。
- rs4869742にはCC・CT・TTの3つの遺伝子型が存在します。
- C型を持つ遺伝子型(CC型・CT型)の人は慢性骨髄性白血病にかかりやすい傾向があります。
- このDNA領域はCCDC170遺伝子と関係し、血液の細胞が増える仕組みの調節に関わっている可能性があります。
日本人と世界における遺伝子型分布の比較(rs4869742)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| CC型 | 3.5% | 48.4% |
| CT型 | 30.4% | 42.3% |
| TT型 | 66.0% | 9.2% |
日本人でC型(CC+CT)を持つ人の割合は33.9%で、世界平均の90.7%とくらべて低い割合です。つまり、日本人ではrs4869742でかかりやすさに関わるC型を持つ人が、世界平均より少ないということです。
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:慢性骨髄性白血病
慢性骨髄性白血病に最も強く影響するDNA領域は、rs4869742です。 日本でのこのDNA領域の遺伝子型の分布は下のとおりです。
- CC
3.5 % - CT
30.4 % - TT
66.0 %
検査の根拠
成均館大学医学部のKimらの研究で、慢性骨髄性白血病のかかりやすさが遺伝子と関係していることが分かりました。人のDNAにはrs4869742という場所があり、そこにはCとAの2種類の違いがあります。Cタイプを持つ人は、慢性骨髄性白血病にかかりやすい傾向があることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | CCDC170 |
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よくある質問
Q1. 慢性骨髄性白血病とは何ですか?
慢性骨髄性白血病とは、骨髄で、まだ成長しきっていない白血球(顆粒球)が作られすぎる血液のがんの一種です。第9染色体と第22染色体の一部が入れ替わってできるフィラデルフィア染色体が原因です。ここでできるBCR-ABL融合遺伝子(2つの遺伝子がつながってできた異常な遺伝子)が、異常な酵素(チロシンキナーゼ)を作り続けるため、白血球が際限なく増えてしまいます。1年間に新しくかかる人は、人口10万人あたり約1〜2人です。
Q2. 慢性骨髄性白血病の主な症状は何ですか?
初めのうち(慢性期)は症状がないことが多いですが、病気が進むと疲れやすさ・体重の減少・寝ている間の汗・おなかの左側の脾臓の腫れによる痛みが出ます。加速期・急性転化期になると、発熱・骨の痛み・出血しやすさ・感染症へのかかりやすさが目立つようになり、治療が難しくなります。
Q3. 慢性骨髄性白血病は遺伝子と関係していますか?
はい。成均館大学医学部のKimらによる2011年の研究で、DNA領域rs4869742が慢性骨髄性白血病のかかりやすさと関係していることが分かっています。rs4869742にはCC・CT・TTの3つの遺伝子型があり、C型を持つ遺伝子型の人はかかりやすい傾向があります。
Q4. 慢性骨髄性白血病に関わる遺伝子型(rs4869742)は、日本人ではどのように分布していますか?
日本人でのrs4869742の遺伝子型の分布はCC型3.5%、CT型30.4%、TT型66.0%です。世界全体ではCC型48.4%、CT型42.3%、TT型9.2%で、日本人はC型を持つ人の割合が世界平均より低いという特徴があります。
Q5. 慢性骨髄性白血病の治療法にはどのようなものがありますか?
最初に選ばれる治療は「チロシンキナーゼ阻害薬」という飲み薬で、イマチニブ・ダサチニブ・ニロチニブなどがあります。この薬が登場したことで、慢性期の5年生存率(5年後に生きている人の割合)は約90%まで上がりました。薬が効きにくい場合や、加速期・急性転化期の場合は、他の人から血液のもとになる細胞をもらう移植(同種造血幹細胞移植)が検討されます。抗がん剤(ヒドロキシウレアなど)は、白血球の数を急いで減らしたいときに使われます。