クローン病
- クローン病は消化管全体に長く炎症が続く、治りにくい病気で、日本では約7万人以上がかかり、10〜20代に多く発症します。
- DNA領域rs1260326でTを持つ人を持つ人は発症しやすい傾向があることがLiuらの研究で分かりました。
- 適切な薬による治療・栄養管理・生活習慣の見直しによって、症状が落ち着いた状態(寛解)を保ち、生活の質を高めることができます。
概要
【疾患の概要】 クローン病は、消化管(口から肛門までの食べ物の通り道)に長く炎症が続く病気です。主に小腸や大腸に起こることが多いですが、消化管のどの部分にも起こる可能性があります。 はっきりした原因はまだ分かっていませんが、遺伝子の影響、環境の影響、免疫(体を守るしくみ)の異常などが組み合わさって起こると考えられています。
【症状と特徴】 この病気では、炎症が消化管全体に広がりやすい傾向があります。 症状はさまざまで、腹痛、下痢、体重減少、発熱、疲れやすさなどが起こります。 特に腹痛と下痢は、患者さんの毎日の生活を大きく妨げます。 また、炎症が長く続くと、消化管が狭くなったり(狭窄)、瘻孔(ろうこう)と呼ばれる異常な通り道ができたりすることもあります。 さらに、クローン病は消化管以外の臓器にも影響することがあり、関節の痛み、皮膚の病気、目の病気、肝臓の病気などの合併症が見られることもあります。
【治療と注意点】 治療では、炎症を抑える薬、免疫の働きを抑える薬、生物学的製剤(生き物の細胞から作られる薬)などを使い、炎症を抑えることを目指します。 症状が重い場合や薬が効かない場合には、手術が必要になることもあります。 クローン病は患者さんの生活に大きな影響を与える長く続く病気ですが、適切な治療と生活習慣の見直しによって、症状をやわらげ、生活の質を高めることができます。
【遺伝子の影響】 サンガー研究所のLiuらの研究により、クローン病のかかりやすさがrs1260326というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはTT、TC、CCの3つの遺伝子型があり、Tを持つ遺伝子型の人は、クローン病にかかりやすい傾向があることが分かりました。
クローン病とは何か
クローン病は、消化管(口から肛門まで)のどの部分にも起こりうる、炎症が長く続く病気です。特に小腸の終わりの部分(回腸)と大腸に起こりやすく、炎症が腸の壁の表面から奥まで全体に及ぶ「全層性炎症」が特徴です。日本では国の指定難病になっており、約7万人以上の患者さんが確認されています。
クローン病の原因としくみ
クローン病のはっきりした原因はまだ分かっていませんが、次のような要因が組み合わさって関係していると考えられています。
- 遺伝子の影響:DNA領域rs1260326でTを持つ人は発症しやすいです(Liuら, 2015)。
- 免疫の異常:腸の粘膜の免疫が働きすぎて、自分の消化管を攻撃してしまいます。
- 腸内細菌のバランスの変化:腸内細菌のバランスがくずれて炎症が起こります。
- 環境の影響:喫煙(発症しやすさが約2倍)、食生活の欧米化、ストレス
クローン病の主な症状
症状は、症状が悪くなったり落ち着いたりをくり返すのが特徴です。
- 続く腹痛(特に右下のおなか)
- 長く続く下痢(1日6回以上のこともある)
- 体重減少・栄養不足
- 発熱・体のだるさ
- 肛門の病気(痔ろう・切れ痔):患者さんの約30〜50%に起こります。
クローン病と潰瘍性大腸炎の違い
| 比較項目 | クローン病 | 潰瘍性大腸炎 |
|---|---|---|
| 炎症が起こる場所 | 消化管全体(口〜肛門) | 大腸のみ |
| 炎症の深さ | 腸の壁全体(全層性) | 粘膜(表面の層)だけ |
| 炎症の起こり方 | とびとび(飛び石状) | 切れ目なく続きます(直腸から口の方向へ)。 |
| 合併症 | 異常な通り道・腸が狭くなる・膿がたまる | 大量の出血・大腸が急に大きくふくらむ重い合併症(中毒性巨大結腸症) |
| 発症しやすい年齢 | 10〜20代 | 20〜30代 |
| 喫煙の影響 | 悪くする要因 | 発症を防ぐ方向に働く可能性 |
クローン病の合併症
炎症が長く続くと、次のような合併症が起こる可能性があります。
- 腸が狭くなる(狭窄):炎症をくり返すうちに腸が狭くなり、腸がつまる(腸閉塞)ことがあります。
- 瘻孔(ろうこう):腸とほかの臓器の間に異常な通り道ができます。
- 腸以外の合併症:関節の痛み・皮膚の病気(結節性紅斑)・目の病気(ぶどう膜炎)・肝臓や胆道の病気
- 栄養不足:栄養がうまく吸収できず、鉄不足による貧血・ビタミンB12不足・骨がもろくなる病気(骨粗しょう症)が起こります。
治療法
次のような治療で、症状を落ち着かせ(寛解)、その状態を保つことを目指します。
- 薬による治療:5-アミノサリチル酸製剤(腸の炎症を抑える薬)、副腎皮質ステロイド、免疫の働きを調整する薬(アザチオプリン)
- 生物学的製剤(生き物の細胞から作られる薬):炎症を起こす物質(腫瘍壊死因子)の働きを止める抗体の薬(インフリキシマブ、アダリムマブ)
- 栄養療法:経腸栄養療法(消化しやすい栄養剤を飲んで腸を休ませる)
- 外科手術:腸が狭くなる・異常な通り道ができる・膿がたまるなどの合併症に対する手術(患者さんの約70%が一生のうちに1回以上手術を受けます)
遺伝子とクローン病の関連
DNA領域rs1260326と発症しやすさの関係
サンガー研究所のLiuらの研究(1)により、DNA領域rs1260326がクローン病のかかりやすさと関係していることが分かりました。
- rs1260326にはTT・TC・CCの3つの遺伝子型があります。
- Tを持つ遺伝子型の人は、クローン病にかかりやすい傾向があります。
日本人における遺伝子型の分布(rs1260326)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| TT型 | 33.8% | 16.7% |
| TC型 | 48.6% | 48.3% |
| CC型 | 17.4% | 34.8% |
検査の科学的な根拠
代表的なDNA領域:クローン病
クローン病に最も強く影響するDNA領域は、rs1260326です。 日本における遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- TT
33.8 % - TC
48.6 % - CC
17.4 %
ほかに、クローン病に関わるDNA領域としてrs2823286があります。 日本における遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- GG
74.8 % - GA
23.2 % - AA
1.8 %
検査の根拠
ケンブリッジ大学のLeeらの研究により、クローン病のかかりやすさが遺伝子と関係していることが分かりました。人間のDNAには、rs5929166という領域があり、その領域にはGとAの2種類の違いがあります。Gタイプを持つ人は、クローン病にかかりやすい傾向があることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図のイメージ図
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関係する遺伝子
| 関係する遺伝子 | GCKR |
|---|---|
| 関係する遺伝子 | LINC02920 |
よくある質問
Q1. クローン病とは何ですか?
クローン病は、消化管(口から肛門まで)のどの部分にも起こりうる、炎症が長く続く病気です。特に小腸の終わりの部分(回腸)と大腸に起こりやすく、日本では約7万人以上がかかっています。10〜20代に最も多く発症します。
Q2. クローン病の原因は何ですか?
はっきりした原因はまだ分かっていませんが、遺伝子の影響・免疫の異常・腸内細菌のバランスの変化・環境の影響(喫煙・食生活の欧米化)が組み合わさって関係しています。DNA領域rs1260326でTを持つ人は、発症しやすい傾向があります(1)。
Q3. クローン病と潰瘍性大腸炎の違いは?
クローン病は消化管全体に、とびとびに、腸の壁の奥まで達する炎症を起こし、異常な通り道(瘻孔)や腸が狭くなる(狭窄)などの合併症が起こります。潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜(表面の層)だけに、切れ目なく続く炎症が特徴で、直腸から口の方向へ広がります。
Q4. 遺伝子検査でクローン病のかかりやすさは分かりますか?
DNA領域rs1260326およびrs2823286の遺伝子型を調べることで、クローン病へのかかりやすさの傾向を知ることができます。Tを持つ遺伝子型の人はかかりやすい傾向があることが研究で分かっています(1)。
Q5. クローン病は完治しますか?
現時点で根本から治す治療法はありません。炎症を抑える薬、免疫の働きを抑える薬、生物学的製剤(生き物の細胞から作られる薬)を使って、症状が落ち着いた状態(寛解)を保ち、生活の質を高めることが治療の目標です。症状が重い場合は手術が必要になることがあります。
参考文献
- 参考リンク1 : 2015 Sep., Jimmy Z Liu, Nat Genet