seeDNAロゴアイコン 気分の落ち込みやすさ

概要

1. 概要

気分の落ち込みやすいひとは、喜びや自尊心、共感、人生への関心などを失うことが多く、その結果、ストレスが溜まりやすくうつ病になるリスクが高い傾向があります。
日本では、うつ病の罹患率が非常に高く、100人に6人が生涯にわたって経験するという調査結果があります(厚生労働省「過労死等防止対策白書」、2021年)。
うつ病の原因は複雑で、遺伝的な要因と後天的な感受性の両方が関係していると考えられています。後天的な感受性は、社会的または心理的ストレスなどの環境要因によって引き起こされる可能性があります。
一方、うつ病は家族内でもよく見られ、うつ病の家族歴がある人でよりリスクが高くなることがわかっています。
うつ病を発症するリスクを低減する方法としては、ストレスをコントロールするための対処法を考えること、家族や友人に助けを求めること、早期に治療を受けることが挙げられます。
また、自身の遺伝タイプに対するうつ病の発症率傾向を遺伝子検査で調べることも有用です。

2. 理論的根拠

2019年に行われたオランダ・アムステルダムの大学とPublic Health Research Instituteの共同研究が行われました。この研究では、8万人分のSNPが調べられました。SNPとは個人間の遺伝情報のわずかな違いのことで、一塩基多型(single nucleotide polymorphism)のことを指します。
この結果から、生活満足度、神経症傾向、および抑うつ症状に関連する、複数のDNA領域が発見されました。
同様に脳組織および細胞における遺伝子発現について分析した結果、海馬体(大脳辺縁系の一部)およびGABA作動性介在ニューロンで異なって発現される遺伝子が幸福スペクトルに影響していることが示されました(参考リンク1)。
この研究で発見されたSNPのひとつが「rs7242036」です。この「rs7242036」は染色体18番目に存在しています。DNAの塩基成分であるアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4つの塩基のうち、シトシン(C)がグアニン(G)に置き換わっています。また遺伝子型は、「CC型」「CG型」「GG型」の3つに分類できます。
東アジア系の人種では「CC型」、「CG型」、「GG型」がそれぞれ6.76%, 38.48%, 60.84%存在しており、中でも「GG型」をもった人が非常に多く存在しています(参考リンク2)。

3. 作用機序

DNA領域「rs7242036」は、ニューロンのRNA結合タンパク質をコードする遺伝子「CELF4」に近接しています。この遺伝子は神経障害やうつ病に関連する重要な遺伝子のひとつです。
2022年に中国で行われた研究では、うつ病モデルマウスにおいて、前頭前野 (PFC)のCELF4タンパク質とmRNAの発現レベルが減少したことが報告されました。さらに、PFCで「CELF4」の発現を妨害すると、マウスがうつ病様の行動を示しました。
このことから遺伝子「CELF4」が、マウスの“うつ病様行動”に影響を及ぼしていることが示唆されています(参考リンク3)。

遺伝子領域rs7242036において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

6.01% 37.01% 56.97%
  • CC6.01%
  • CG37.01%
  • GG56.97%

遺伝子領域rs7242036において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

14.22% 46.98% 38.80%
  • CC14.22%
  • CG46.98%
  • GG38.80%

遺伝子領域rs2279681において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

35.77% 48.08% 16.15%
  • CC35.77%
  • CG48.08%
  • GG16.15%

遺伝子領域rs2279681において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

44.27% 44.53% 11.20%
  • CC44.27%
  • CG44.53%
  • GG11.20%

seeDNAロゴアイコン検査の理論的根拠

体表的なDNA領域:気分の落ち込みやすさ

体表的なDNA領域:気分の落ち込みやすさ

気分の落ち込みやすさ に最も強く影響する遺伝子領域は、rs7242036です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。

  • CC

    6.0
    %
  • CG

    37.0
    %
  • GG

    57.0
    %

他に、気分の落ち込みやすさに関わる遺伝子領域はrs2279681があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです

  • CC

    35.8
    %
  • CG

    48.1
    %
  • GG

    16.2
    %

検査の根拠

アムステルダム自由大学のBaselmansらの研究により、うつ病のリスクが遺伝子と関連していることが明らかになりました。人間のゲノムには、rs7242036という領域が存在し、その領域の遺伝子にはCとGの2種類の変異があります。Cタイプの変異を持つ人は、うつ病のリスクが高い傾向にあることが分かりました。

seeDNAロゴアイコン今回調査したDNA領域

細胞中に存在するDNAマップの模式図

seeDNAロゴアイコン関連遺伝子

関連遺伝子 MIR4318
関連遺伝子 SHISA4

seeDNAロゴアイコン参考文献

  • 関連遺伝子 MIR4318
  • 参考リンク : 2019 Mar、Bart M L Baselmansと研究グループがNat Genet に発表したMultivariate genome-wide analyses of the well-being spectrumという研究によると気分の落ち込みやすさ に関連するrs7242036の関連性が認められました。
  • 関連遺伝子 SHISA4
  • 参考リンク : 2020 Oct、Jackson G Thorpと研究グループがPsychol Med に発表したGenetic heterogeneity in self-reported depressive symptoms identified through genetic analyses of the PHQ-9という研究によると気分の落ち込みやすさ に関連するrs2279681の関連性が認められました。