虫歯
- 虫歯(う蝕)はミュータンス菌が作る酸で歯が溶ける病気で、20歳以上の日本人の約90%がかかったことがあります。
- DNA領域rs17145638のCを持つタイプを持つ人は、歯をつくる働きに関わるBCOR遺伝子の働きが変わることで、虫歯になりやすくなる傾向があります。
- 適切な歯磨き・糖分のコントロール・定期的な歯科検診によって、遺伝子の影響で虫歯になりやすい人でも虫歯を防ぐことができます。
概要
【概要・特徴】 虫歯になったことはありませんか? 20歳以上の日本人の約9割が虫歯になったことがあると言われています。その原因は、甘いものの食べ過ぎだけではありません。歯磨きや歯のケアが足りないことも原因とされています。 さらに、生まれ持った遺伝子の影響(体質)も、虫歯のなりやすさに関わっていると言われています(参考リンク1)。 自分が虫歯になりやすい体質かどうか、遺伝子検査で調べてみませんか?
【2. 理論的根拠】 虫歯は「う蝕(うしょく)」とも呼ばれ、ミュータンス菌などの細菌が作る酸によって歯が溶ける病気です。 酸で歯が溶けることを「脱灰(だっかい)」と呼び、進むと歯が痛くなります。 虫歯に関わる遺伝子の一つとして見つかったのが、11番染色体にある遺伝子「BCOR」です。この遺伝子の中にあるDNA領域の一つが「rs17145638」です。 このDNA領域は、約2,000人の白人を対象に遺伝子の個人差を調べた研究で、歯の表面の虫歯(う蝕)に関係するDNA領域として見つかりました(参考リンク2)。 「rs17145638」には、「TT型」、「TC型」、「CC型」の3つの遺伝子タイプがあります。 日本人の遺伝子タイプは、「TT型」98.2%、「TC型」1.8%、「CC型」0.1%となっています。(参考リンク3) また、「BCOR」は歯をつくる働きに関わる遺伝子でもあります。DNA領域「rs17145638」が、Cを含む「TC型」や「CC型」の場合、歯が十分につくられにくくなります。そのため、ふつうの場合に比べて歯がもろく、虫歯になりやすい可能性があるとされています。 特に「CC型」では虫歯が早く進むため、歯に穴が空きやすく、痛みを感じやすくなるとされています(参考リンク4)。
【3. メカニズム】 歯のいちばん外側にはエナメル質があり、その内側に象牙質(ぞうげしつ)があります。さらに内側には、神経などがある歯根(しこん)の部分があります。 虫歯菌(ミュータンス菌など)は、糖分をエサにして酸を作ります。この酸が歯を溶かし、虫歯菌は歯の表面から内側へ入り込んでいきます。 虫歯菌が象牙質まで届くと、多くの場合、歯に痛みを感じるようになります。 遺伝子「BCOR」は、歯をつくるうえで大切な役割を持っています。歯がつくられ始める早い時期に、象牙質をつくることや歯根が育つことに関わるとされています(参考リンク4、5)。 DNA領域「rs17145638」が「TC型」や「CC型」の場合、歯根を守る象牙質が十分につくられにくくなります。そのため「TT型」に比べて歯がもろく、虫歯になりやすい傾向があります。 また、歯根も十分に育ちにくいため、歯が折れやすく、抜けやすくなる可能性もあります。 歯は一度失うと元に戻らないため、今ある歯を大切にすることが必要です。甘いものの取り過ぎに気をつけ、歯磨きなどのケアをきちんと行うことが大切です。
虫歯(う蝕)とは何か
虫歯(う蝕)は、ミュータンス菌などの口の中の細菌が糖分を分解して作る酸によって、歯のエナメル質が溶ける(脱灰)病気です。20歳以上の日本人の約90%が、虫歯になったことがあります。
虫歯の原因とリスク因子
虫歯は、甘い食べ物の食べ過ぎだけでなく、いくつもの原因が重なって起こります。
- 細菌因子:ミュータンス菌が糖分をエサにして酸を作り、歯を溶かします。
- 食生活:糖分を何度も食べると、口の中が酸性の状態に長く保たれます。
- 歯のケア不足:歯磨きが足りないと、歯垢(プラーク:細菌のかたまり)がたまります。
- 遺伝子による体質:BCOR遺伝子のタイプの違いが、歯のつくられ方に影響します。
虫歯の進行メカニズム
歯のいちばん外側にはエナメル質があり、その内側に象牙質があります。さらに内側には、歯髄(しずい:神経や血管)を含む歯根があります。
- 第1段階:エナメル質が酸で溶け始めます(症状はありません)。
- 第2段階:象牙質まで届き、冷たいものや甘いもので痛みを感じます。
- 第3段階:歯髄(神経)まで届き、強い痛みが出ます。
- 第4段階:歯の見えている部分がくずれ、根っこだけが残ります。
虫歯の遺伝的リスクと歯の形成の関係
虫歯のなりやすさには遺伝子の影響も関係しています。11番染色体にある遺伝子BCOR(BCL6 interacting corepressor)は、歯がつくられる過程で、象牙質をつくることと歯根が育つことに大切な役割を持っています。
| 遺伝子型(rs17145638) | 歯の形成への影響 | 虫歯のなりやすさ |
|---|---|---|
| TT型 | 歯がふつうにつくられます。 | 標準 |
| TC型 | 象牙質のつくられ方がやや不十分 | やや高い |
| CC型 | 象牙質が十分につくられにくく、歯根の育ち方にも影響 | 高い |
Cを持つTC型やCC型の人は、象牙質が十分につくられにくく、TT型に比べて歯がもろく、虫歯になりやすい傾向があります。CC型の場合は虫歯の進み方がより早く、歯に穴が空きやすくなります。
虫歯の予防法
歯は一度失うと元に戻らないため、予防が大切です。
- 毎食後のブラッシング:フッ素入り歯磨き剤でていねいに磨きます。
- デンタルフロスの使用:歯と歯の間の歯垢(プラーク)を取り除きます。
- 糖分の取り方に気をつける:間食の回数を減らし、だらだら食いを避けます。
- 定期的な歯科検診:3〜6か月ごとに歯医者に通い、早く見つけて早く治療します。
- シーラント(奥歯の溝をふさぐ処置):奥歯の溝をコーティングして、虫歯菌が入り込むのを防ぎます。
遺伝子と虫歯のなりやすさの関係
DNA領域rs17145638と虫歯のなりやすさの関係
Zengらの研究では、約2,000人の白人を対象に遺伝子の個人差を調べ、DNA領域rs17145638が歯の表面の虫歯(う蝕)に関係するDNA領域として見つかりました。
- rs17145638にはTT・TC・CCの3つの遺伝子タイプがあります。
- Cを持つ遺伝子タイプ(TC型・CC型)の人は、虫歯になりやすい傾向があります。
- BCOR遺伝子は、歯がつくられ始める時期に、象牙質をつくることと歯根が育つことに関わります。
日本人の遺伝子タイプの割合(rs17145638)
| 遺伝子タイプ | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| TT型 | 99.9% | 77.5% |
| TC型 | 0.1%以下 | 20.9% |
| CC型 | 0.1%以下 | 1.4% |
日本人ではTT型が99.9%とほとんどを占めています。一方、世界ではTC型が20.9%、CC型が1.4%と、割合に違いがあります。
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:虫歯
虫歯に最も強く関わるDNA領域は、rs17145638です。 日本でのこのDNA領域の遺伝子タイプの割合は下のとおりです。
- TT
99.9 % - TC
0.1%以下 - CC
0.1%以下
ほかに、虫歯に関わるDNA領域としてrs5922945があります。 日本でのこのDNA領域の遺伝子タイプの割合は下のとおりです。
- CC
65.4 % - CT
30.8 % - TT
3.6 %
ほかに、虫歯に関わるDNA領域としてrs10048146があります。 日本でのこのDNA領域の遺伝子タイプの割合は下のとおりです。
- AA
49.9 % - AG
41.4 % - GG
8.6 %
検査の根拠
Zengらの研究では、約2,000人の白人を対象に遺伝子の個人差(一塩基多型)を調べ、DNA領域rs17145638が歯の表面の虫歯(う蝕)に関係するDNA領域として見つかりました。rs17145638にはTとCの2種類のタイプがあり、Cを持つ人(TC型・CC型)は、歯をつくる働きに関わるBCOR遺伝子の働きが変わり、虫歯になりやすい傾向があります。特にCC型では、虫歯がより早く進むことが報告されています。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図のイメージ図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | LINC03053 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | MIR548I4 |
| 関連遺伝子 | FOXL1 |
よくある質問
Q1. 虫歯(う蝕)とは何ですか?
虫歯(う蝕)は、ミュータンス菌などの口の中の細菌が糖分を分解して作る酸によって、歯のエナメル質が溶ける病気です。20歳以上の日本人の約90%が、虫歯になったことがあります。遺伝子の影響と生活習慣の両方が関わっています。
Q2. 虫歯になりやすい遺伝子タイプはありますか?
DNA領域rs17145638の遺伝子タイプが、虫歯のなりやすさに関係しています。Cを含むTC型やCC型の人は、歯をつくる働きに関わるBCOR遺伝子の働きが変わり、象牙質が十分につくられにくくなるため、虫歯になりやすい傾向があります。
Q3. 虫歯の原因は何ですか?
虫歯の直接的な原因は、ミュータンス菌が糖分をエサにして酸を作り出し、歯のエナメル質を溶かすこと(脱灰)です。甘い食べ物の食べ過ぎ、歯磨き不足、遺伝子による体質が、虫歯になりやすくなる主な原因として挙げられます。
Q4. 虫歯を予防するにはどうすればよいですか?
毎食後の歯磨き、デンタルフロスの使用、糖分の取り過ぎを避けること、3〜6か月ごとの定期的な歯科検診が効果的です。遺伝子の影響で虫歯になりやすい人は、フッ素入り歯磨き剤を使ったり、シーラント(奥歯の溝をふさぐ処置)を受けたりするなど、さらに予防策を考えてみてください。
参考文献
- 参考リンク1 : 2010 Jul., X Wang, Caries research.
- 参考リンク2 : 2013 Mar., Z Zeng, Journal of dental research.
- 参考リンク3 : DNA 領域「rs17145638」の情報(アメリカ国立衛生研究所)
- 参考リンク4 : 2010 Jun., Jinglei Cai, Cell and tissue research.
- 参考リンク5 : 2014 May., Piranit Nik Kantaputra, Journal of Human Genetics.
- 参考リンク6 : 2013 May., Z Zeng, J Dent Res
- 参考リンク7 : 2019 Jun., Dmitry Shungin, Nat Commun