発達性読み書き障害
概要
概要
言語能力は、相手が話す内容を理解したり、文章を読み取とったり、コミュニケーションをとる上で大切な力です。
言語能力は、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4つに分けられます。
その中でも「読む」能力、すなわち読字力は、教科学習の成績に特に影響することが指摘されており、文系科目だけでなく、その他の教科を学習する上でも重要なスキルです。
また、将来的に発表会や会議などの場面で内容をスラスラと音読できたり、資格の勉強をしたりする際に役立ちます。
言語能力は遺伝と環境によって決まると考えられており、大阪大学大学院医学系研究科附属ツインリサーチセンターの調べによると遺伝的要因が約50%、環境的要因が約50%関与しているとされています。(参考リンク1)
近年では、言語能力に関わる遺伝子が複数発見されています。
今回はその中でも、読字力と関連していたBTG3AS1という遺伝子付近のある部位に関して説明します。
理論的根拠
BTG3AS1遺伝子に関するドイツのマックス・プランク精神医学研究所の共同研究により、特定のDNA領域が単語の読字が苦手な人が多い傾向にあることが明らかになりました。(参考リンク2)
このDNA領域は「rs2101523」と呼ばれ、3つの遺伝子型があります。TTタイプの遺伝子型を持つ人は、読字が苦手な傾向があり、CTタイプの人はやや苦手な傾向があることがわかっています。
しかし、日本人の遺伝子型の95.8%はCCタイプであり、読字力に影響しにくいとされる遺伝子を持っています。(参考リンク3)
ただし、遺伝子タイプに限らず、読字力は教育や環境によっても大きく影響を受けることがわかっています。読字力を伸ばすためには、自分で工夫することが必要です。
例えば、文の区切りに印をつけて視覚的に見やすくすることや、声に出して読むことが挙げられます。また、電子教科書を使い、音読の練習をすることも有効です。
遺伝子タイプに関わらず、工夫や努力によって読字力を伸ばすことができます。遺伝子検査で遺伝子タイプを調べることは、才能の開花や早期対策に役立つかもしれません。
作用機序
BTG3AS1遺伝子は、人間の24番染色体の中で21番染色体に位置しています。BTG3AS1は、精巣や大腸などのあらゆる臓器に発現しており、特に出生前の脳に多く発現することが知られています。(参考リンク4)
BTG3AS1の機能や読み方のメカニズムはまだ解明されていませんが、BTG3AS1が細胞周期を妨げる抗増殖遺伝子であることが分かっています。
また、出生前の脳に多く発現していることから、BTG3AS1付近に存在するrs2101523の遺伝子タイプによって、脳の発達(特に言語中枢の存在する前頭葉や側頭葉)の程度に影響している可能性があります。
このことから、「rs2101523」は読字力と深く関係するDNA領域の一つとして注目を集めています。
遺伝子領域rs2101523において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC91.53%
- CT8.28%
- TT0.19%
遺伝子領域rs2101523において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC48.23%
- CT42.43%
- TT9.33%
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:発達性読み書き障害
体表的なDNA領域:発達性読み書き障害
発達性読み書き障害 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs2101523です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
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CC
91.5% -
CT
8.3% -
TT
0.2%
検査の根拠
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | BTG3-AS1 |
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参考文献
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関連遺伝子 BTG3-AS1
- 参考リンク : 2019 Feb、Alessandro Gialluisiと研究グループがTransl Psychiatry に発表したGenome-wide association scan identifies new variants associated with a cognitive predictor of dyslexiaという研究によると発達性読み書き障害 に関連するrs2101523の関連性が認められました。