ダウン症候群(染色体異常症)
概要
1. 概要
ダウン症候群(ダウン症)とは、21番目の染色体が通常の2本ではなく、3本存在する21トリソミーと呼ばれる染色体異常症のひとつです。出生時から特徴的な顔貌、筋力や知能の発達の遅れ、そして心臓病などの合併症が生じることがあります。
また、後に難聴や内分泌疾患、白血病になりやすいことが特徴です。出生頻度は、小児慢性特定疾病情報センターの調査によると、600〜800人に一人とされています。(参考リンク1)
ダウン症候群の発症メカニズムは明らかになっていませんが、卵子や精子が作られる際に染色体がうまく分離されないことが原因であると考えられています。
それには年齢や環境要因が関係しているとされています。また、家族内にダウン症の方がいなくてもダウン症児が生まれることから、通常は遺伝しないと考えられていますが、近年では複数の関連遺伝子が報告されています。
最近の研究報告によると、「MTRR」という遺伝子付近のある部位がダウン症の発症リスクに影響を与えている可能性が高いことが明らかになっています。v
また、ダウン症候群のお子さんを妊娠する確率は、女性の年齢が高齢になるほど高くなることがわかっています。
女性の社会進出による婚化が進み、高齢での妊娠や出産が増えているため、注意が必要です。
以上のことから、遺伝子検査によりご自身の遺伝子タイプを調べることで、これから生まれてくるお子さんのダウン症の発症傾向を知ることができます。
これにより、発症の予防や早期対策に役立つ可能性が期待されます。/p>
2. 理論的根拠
インドのマノビカス生物医学研究診断センターの研究により、「MTRR」遺伝子付近の特定タイプによって、ダウン症候群を発症しやすい人がいることが明らかになりました。その部位の一つが「rs1801394」というDNA領域です。(参考リンク2)
DNA領域「rs1801394」には、「AA」、「AG」、「GG」という3つの遺伝子型があります。
日本人の遺伝子タイプは、「AA」タイプが最も多い48.4%、「AG」タイプは42.3%、「GG」タイプは最も少ない9.3%を示します。(参考リンク3)
Risk AlleleであるGを持つ「GG」の遺伝子型をもつ人の子どもは、ダウン症候群を発症しやすい傾向にあり、「AG」を持つ人の子どもはやや発症しやすい傾向にあることがわかっています。
ただし、GG・AGタイプの人の子どもが必ずしもダウン症候群を発症するわけではありません。
AAタイプの人も含め、環境要因に留意する必要があります。いくつかの研究により、ご両親のホモシステインというアミノ酸の血中濃度が高いと、ダウン症の子どもを出産しやすいことが明らかになっています。(参考リンク4)
血中のホモシステイン濃度が増加する要因には、加齢、葉酸などのビタミンB群の不足、喫煙やアルコール摂取などがあります。
そのため、妊活をされる前より喫煙やアルコールを避け、葉酸やビタミンB群などの栄養素が不足しないように心がけることが望ましいと考えられます。
また、厚生労働省によるとダウン症児が生まれる確率は母親の妊娠年齢が35歳で0.3%、40歳では0.9%、45歳では3.3%と加齢にともなって確実に高くなることがわかっており、妊活を始める時期を早めに設定できるようご夫婦で話し合うことが大切です。
早い時期の遺伝子検査で、これから生まれてくるお子さんのダウン症の発症傾向を把握しておくことにより、生活・環境面でのリスク管理が可能となります。
3. 作用機序
「MTRR遺伝子」は、世界的に最も一般的な健康問題の一つであるダウン症の発症に関与していることが知られており、この遺伝子はヒトが持つ24の染色体のうち、5番目の染色体に位置しています。
この遺伝子は、メチオニンというアミノ酸を合成する酵素であるメチオニン合成酵素の調節を担っている「MTRR」酵素に関する遺伝情報を持ちます。
「MTRR」付近に存在する「rs1801394」というDNA領域の遺伝子型が特にGを持つ人々では「MTRR」酵素が適切に機能しない場合が生じることがあります。
そうなると、メチオニン合成酵素が機能しなくなり、ホモシステインの増加とDNAの低メチル化を引き起こし、染色体が1本多い21トリソミーとしてダウン症を発症する可能性があることを示しています。
つまり、DNA領域「rs1801394」はダウン症の発症に深く関係し、注目を浴びている一塩基多型の1つとなっています。
遺伝子領域rs1801394において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA48.60%
- AG42.23%
- GG9.17%
遺伝子領域rs1801394において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA23.51%
- AG49.95%
- GG26.54%
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:ダウン症候群(染色体異常症)
体表的なDNA領域:ダウン症候群(染色体異常症)
ダウン症候群(染色体異常症) に最も強く影響する遺伝子領域は、rs1801394です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
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AA
48.6% -
AG
42.2% -
GG
9.2%
検査の根拠
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | MTRR |
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参考文献
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関連遺伝子 MTRR
- 参考リンクなし : 、と研究グループが に発表したという研究によるとダウン症候群(染色体異常症) に関連するrs1801394の関連性が認められました。