動脈の弾力性
- 動脈の弾力性は脈圧(収縮期血圧−拡張期血圧)で評価され、正常範囲は40〜60mmHgである
- rs366178を含む6つのDNA領域が動脈の弾力性に関与し、特にA型変異を持つ人は弾力性が高い傾向にある
- 加齢・高血圧・動脈硬化・糖尿病により弾力性が低下し、心血管疾患リスクが上昇する
概要 脈圧は、収縮期と拡張期の血圧の差を示す数値です。収縮期圧は心臓が収縮し血液を動脈に送り出すときの最高圧であり、拡張期圧は心臓がリラックスしているときの最低圧です。 脈圧の測定は、動脈の弾力性や順応性を評価するのに役立ちます。 健康な血管系では、動脈は柔軟性があり、心臓の拍動に対応して適切に広がったり収縮したりできるため、通常は40〜60 mmHgの適度な脈圧範囲を保ちます。 この柔軟性は、心臓の拍動によって発生する圧力波を和らげ、血液を器官に効果的に送り、動脈壁に過度の負担をかけずに循環をスムーズに保ちます。 加齢、または高血圧、動脈硬化、糖尿病などの状態によって、動脈は柔軟性を失い硬くなり、脈圧が高くなることがあります。高い脈圧は心臓に負担をかけ、心血管のリスクを増加させる傾向があります。 そのため、脈圧のモニタリングは動脈の健康と心血管リスクについて重要な判断材料となります。 ケンブリッジ大学のSurendranらの研究により、動脈の弾力性がrs366178というDNA領域と関連していることが明らかになりました。 このDNA領域にはCC,CA,AAの3つの遺伝子型があり、Aを持つ遺伝子型の人は、動脈の弾力性が高い傾向にあることが分かりました。
動脈の弾力性とは何か
動脈の弾力性とは、心臓の拍動に応じて動脈壁が柔軟に広がったり収縮したりする能力を指し、心血管系の健康を評価する重要な指標です。脈圧(収縮期血圧と拡張期血圧の差)を測定することで動脈の弾力性を定量的に評価できます。
収縮期圧は心臓が収縮して血液を動脈に送り出すときの最高圧であり、拡張期圧は心臓が弛緩しているときの最低圧です。健康な血管系では、動脈は柔軟性を保ち、心臓の拍動による圧力波を緩和しながら血液を全身の臓器に効率的に送り届けます。
脈圧の正常範囲と異常値の意味
健康な動脈では脈圧は40〜60mmHgの範囲に維持されます。この範囲を超える脈圧は動脈の弾力性低下を示し、心血管リスクの上昇を意味します。
| 脈圧の範囲 | 動脈の状態 | リスク評価 |
|---|---|---|
| 40〜60mmHg | 弾力性が正常 | 低リスク |
| 60mmHg以上 | 弾力性が低下 | 心血管リスク上昇 |
| 40mmHg未満 | 心拍出量低下の可能性 | 心不全リスク要確認 |
動脈の弾力性が低下する原因
動脈の弾力性低下は以下の4つの要因により引き起こされます。
- 加齢:動脈壁のエラスチン(弾性繊維)が減少し、コラーゲンが増加することで血管が硬化する
- 高血圧:持続的な高血圧が動脈壁に過度の負担をかけ、構造的な変化を引き起こす
- 動脈硬化:血管壁へのコレステロールや脂質の蓄積により、動脈が肥厚・硬化する
- 糖尿病:高血糖状態が動脈壁のタンパク質を糖化し、弾力性を低下させる
脈圧が高いとどのようなリスクがあるか
脈圧が60mmHgを超えると、心臓に過度の負担がかかり、心血管疾患のリスクが約1.5〜2倍に上昇します。具体的には以下の合併症リスクが増加します。
- 心筋梗塞:冠動脈への圧力負荷が増大し、プラーク破裂リスクが上昇
- 脳卒中:脳血管への過度な圧力により出血性・虚血性脳卒中のリスクが増加
- 動脈瘤:高い脈圧が動脈壁を拡張させ、瘤の形成を促進
- 臓器障害:腎臓や網膜などの微小血管が損傷するリスクが上昇
動脈の弾力性を維持・改善する方法
動脈の弾力性を維持するためには、以下の生活習慣の改善が有効です。
- 有酸素運動:週150分以上のウォーキングやジョギングが動脈の柔軟性を改善
- 減塩食:1日の食塩摂取量を6g未満に抑える
- 禁煙:喫煙は動脈硬化を促進するため、禁煙が必須
- 適正体重の維持:BMI 18.5〜24.9の範囲を維持する
- 定期的な血圧測定:脈圧のモニタリングで早期の変化を検出
遺伝子と動脈の弾力性の関連
DNA領域rs366178と動脈弾力性の関係
ケンブリッジ大学のSurendranらの研究により、動脈の弾力性がrs366178というDNA領域と関連していることが明らかになりました。
- rs366178にはCC・CA・AAの3つの遺伝子型が存在
- A型変異を持つ人(AA型・CA型)は動脈の弾力性が高い傾向にある
- 日本人ではAA型が69.1%を占め、世界平均(10.4%)と比較して圧倒的に高い
日本人と世界の遺伝子型分布の比較(rs366178)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| CC型 | 2.8% | 45.7% |
| CA型 | 27.9% | 43.7% |
| AA型 | 69.1% | 10.4% |
その他の関連DNA領域
動脈の弾力性には、rs366178以外にも5つのDNA領域が関与しています。
| DNA領域 | 遺伝子型 | 日本人の分布 |
|---|---|---|
| rs59884963 | CC / CT / TT | 56.2% / 37.5% / 6.2% |
| rs17477177 | TT / TC / CC | 83.4% / 15.8% / 0.7% |
| rs10784502 | CC / CT / TT | 1.5% / 21.8% / 76.5% |
| rs6015450 | AA / AG / GG | 99.9% / 0.1%以下 / 0.1%以下 |
| rs11105364 | TT / TG / GG | 35.5% / 48.1% / 16.3% |
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:動脈の弾力性
動脈の弾力性 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs366178です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- CC
2.8 % - CA
27.9 % - AA
69.1 %
他に、動脈の弾力性に関わる遺伝子領域はrs59884963があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
- CC
56.2 % - CT
37.5 % - TT
6.2 %
他に、動脈の弾力性に関わる遺伝子領域はrs17477177があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
- TT
83.4 % - TC
15.8 % - CC
0.7 %
他に、動脈の弾力性に関わる遺伝子領域はrs10784502があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
- CC
1.5 % - CT
21.8 % - TT
76.5 %
他に、動脈の弾力性に関わる遺伝子領域はrs6015450があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
- AA
99.9 % - AG
0.1%以下 - GG
0.1%以下
他に、動脈の弾力性に関わる遺伝子領域はrs11105364があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
- TT
35.5 % - TG
48.1 % - GG
16.3 %
検査の根拠
ケンブリッジ大学のSurendranらの研究により、動脈の弾力性が遺伝子と関連していることが明らかになりました。人間のゲノムには、rs366178という領域が存在し、その領域の遺伝子にはCとAの2種類の変異があります。A型変異を持つ人(AA型・CA型)は、動脈の弾力性が高い傾向にあります。日本人ではAA型が69.1%を占め、世界平均の10.4%と比較して高いA型保有率を示しています。
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | RNU6-682P |
|---|---|
| 関連遺伝子 | U6 |
| 関連遺伝子 | CCDC71L |
| 関連遺伝子 | HMGA2 |
| 関連遺伝子 | ZNF831 |
| 関連遺伝子 | ATP2B1 |
よくある質問(FAQ)
Q1. 動脈の弾力性とは何ですか?
動脈の弾力性とは、心臓の拍動に応じて動脈壁が柔軟に広がったり収縮したりする能力を指します。健康な血管では脈圧(収縮期血圧と拡張期血圧の差)が40〜60mmHgの範囲に保たれ、血液を効率的に全身へ送り届けます。加齢や動脈硬化によりこの弾力性が低下すると、心血管疾患のリスクが上昇します。
Q2. 動脈の弾力性が低下する原因は何ですか?
主な原因は加齢による動脈壁の構造変化、高血圧、動脈硬化、糖尿病の4つです。これらにより動脈壁のコラーゲンとエラスチンの比率が変化し、血管が硬化して脈圧が上昇します。
Q3. 動脈の弾力性に関わる遺伝子はありますか?
ケンブリッジ大学のSurendranらの研究により、rs366178・rs59884963・rs17477177・rs10784502・rs6015450・rs11105364の6つのDNA領域が動脈の弾力性に関連していることが判明しています。特にrs366178のA型変異を持つ人は弾力性が高い傾向にあります。
Q4. 脈圧が高いとどのようなリスクがありますか?
脈圧が60mmHgを超えると心臓への負担が増加し、心血管疾患(心筋梗塞・脳卒中)のリスクが約1.5〜2倍に上昇します。動脈瘤の形成や臓器への血流障害を引き起こす可能性もあります。
Q5. 動脈の弾力性を維持する方法はありますか?
動脈の弾力性を維持するには、有酸素運動(週150分以上)、減塩食(1日6g未満)、禁煙、適正体重の維持が有効です。定期的な血圧測定で脈圧をモニタリングすることも推奨されます。
参考文献
- 参考リンク1 : 2020 Dec., Praveen Surendran, Nat Genet
- 参考リンク2 : 2019 Jan., Ayush Giri, Nat Genet
- 参考リンク3 : 2015 Nov., Norihiro Kato, Nat Genet
- 参考リンク4 : 2017 Jan., Thomas J Hoffmann, Nat Genet
- 参考リンク5 : 2011 Sep., Louise V Wain, Nat Genet
- 参考リンク6 : 2018 Nov., Fumihiko Takeuchi, Nat Commun