seeDNAロゴアイコン てんかん発作(限局性皮質異形成)

概要

1. 概要

神経細胞は、自ら電気を作り、それを信号として、周りの神経細胞とコミュニケーションをとります。この神経細胞による電気信号のネットワークを使って、脳ではさまざまな情報処理が行われています。
しかし、神経細胞の発電量が多すぎると、脳がショートして突然意識を失ったり、身体が痙攣を起こしたりします。この症状を「てんかん発作」といいます。
また、大脳皮質を形作る神経細胞の異常によって、「てんかん発作」を引き起こす病気を「限局性皮質異形成(FCD)」と言います。
大脳皮質は、日常生活や社会活動に欠かせない機能を司っています。近年、「限局性皮質異形成(FCD)」にがん抑制遺伝子が関わっている可能性が指摘されており、そのひとつが「TSC1」です。
「TSC1」は、細胞の分裂・増殖を抑制するタンパク質であり、ある遺伝子型ではこのタンパク質の働きが弱くなることが分かっています。(参考リンク1)
そうなることで、細胞分裂・増殖が過剰となり、てんかん発作の要因となる「限局性皮質異形成(FCD)」の一因となっている可能性が研究で示されております。

2. 理論的根拠

「限局性皮質異形成(FCD)」と関連する遺伝子は複数あり、その中に「TSC1」遺伝子が含まれます。また、「rs4962081」というDNA領域は「TSC1」遺伝子内にあり、この領域の遺伝子タイプが「FCD」の発症と関係している可能性が指摘されています。(参考リンク2,3)
遺伝子タイプには、「G型」と「A型」の2つがあり、「GG型」、「GA型」、「AA型」という3つのタイプが存在します。
日本人の遺伝子タイプは、「GG型」が約93.7%で最も多く、「GA型」が約6.2%、「AA型」が約0.1%となっています。一方、世界的には「GG型」が最も多く、約84.5%を占め、「GA型」が約14.9%、「AA型」が約0.7%となっています。(参考リンク4)この傾向は、日本とほぼ同じですが、「GA型」と「AA型」の数がやや多い傾向にあります。
DNA領域「rs4962081」の「A型」は、てんかんの発症と関連している可能性が指摘されています。健常者と比較すると、てんかん患者は「AA型」や「GA型」が多い傾向があることが分かっています。

3. 作用機序

DNAは、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類の塩基を繋げた鎖で構成され、塩基配列はタンパク質の設計図を表しています。
塩基配列の変化によって、タンパク質の構造や働きが変化することがありますが、一方で、「rs4962081」というDNA領域においては、塩基がGでもAでも、「TSC1」タンパク質の設計図は変化しません。
このような変異を「サイレント変異」と呼びます。サイレント変異は、タンパク質の設計図自体の変化ではなく、タンパク質を作る過程に影響を与えることで、タンパク質の量や構造が変化することが知られています。(参考リンク5)
「FCD」では、大脳皮質の神経細胞の形成や配置に異常が生じ、それがてんかん発作の原因になると考えられています。
DNA領域「rs4962081」が「FCD」と関連している具体的なメカニズムは不明ですが、DNA領域「rs4962081」の「A型」は「TSC1」の働きを抑制し、細胞の分裂や増殖が過剰になることで、神経細胞の形成や配置、大脳皮質の構築がうまくいかなくなる可能性があります。 以上のことから遺伝子検査により、DNA領域「rs4962081」の遺伝的傾向を事前に知っておくことで、てんかん発作の早期発見・治療に役立つことが期待されます。

遺伝子領域rs4962081において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

93.38% 6.50% 0.11%
  • GG93.38%
  • GA6.50%
  • AA0.11%

遺伝子領域rs4962081において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

84.20% 15.12% 0.68%
  • GG84.20%
  • GA15.12%
  • AA0.68%

seeDNAロゴアイコン検査の理論的根拠

体表的なDNA領域:てんかん発作(限局性皮質異形成)

体表的なDNA領域:てんかん発作(限局性皮質異形成)

てんかん発作(限局性皮質異形成) に最も強く影響する遺伝子領域は、rs4962081です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。

  • GG

    93.4
    %
  • GA

    6.5
    %
  • AA

    0.1
    %

検査の根拠

seeDNAロゴアイコン今回調査したDNA領域

細胞中に存在するDNAマップの模式図

seeDNAロゴアイコン関連遺伝子

関連遺伝子 TSC1

seeDNAロゴアイコン参考文献

  • 関連遺伝子 TSC1
  • 参考リンク : 2027 Dec、Volker Schickと研究グループがEpilepsia に発表したAlterations of Phosphatidylinositol 3-Kinase Pathway Components in Epilepsy-associated Glioneuronal Lesionsという研究によるとてんかん発作(限局性皮質異形成) に関連するrs4962081の関連性が認められました。