勃起障害/不全
概要
1. 概要
勃起障害/不全(ED:Erectile dysfunction)とは、「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られない、または維持できない状態が持続または再発すること」とされています。
有病率は年齢とともに上昇し、40歳未満で110%、40歳代で215%、50歳代ではばらつきが非常に多く、60歳代で2040%、70歳代で50100%と推定されています。(参考リンク 1)
勃起障害/不全(ED)は、特定の遺伝子多型において発症率が高いことが分かっていますが、主に器質性(動脈硬化・神経の障害)、心因性(精神的なストレス)、混合性(動脈硬化・神経障害・ストレス)、薬剤性(薬剤の服用)の後天的な要因により発症します。
勃起障害/不全(ED)によるリスクには、加齢、糖尿病、肥満・運動不足、循環器疾患、喫煙、テストステロン低下、慢性腎臓病と下部尿路症状、神経疾患、心理的・精神疾患的要素、睡眠時無呼吸症候群があります。
また、前立腺がんの放射線治療後に、「勃起障害/不全(ED)のなりやすい」遺伝子多型が存在することが報告されています。(参考リンク 2)
遺伝子検査により、「勃起障害/不全(ED)」のリスクについて確認することで、早期発見・早期対策に役立つことが期待されます。
2. 理論的根拠
放射線治療を受けたアフリカ系アメリカ人138人を対象に、前立腺がん治療後3年間の観察を行い、勃起障害/不全(ED)を評価しました。
治療前に性機能に問題のなかった人を対象に、治療から1年以上経過後に性機能が落ちた人を「患者群」、落ちていない人を「健常群」としたところ、「患者群:29人」「健常群:53人」が研究対象となりました。
そのうち「患者群:27人」「健常群:52人」からDNAを採取し、解析を行い、合計512497個の遺伝子多型が解析されました。解析結果から、勃起障害/不全(ED)と関係のあるDNA領域のひとつとして「rs7064929」が挙げられました。
このDNA領域には「GG型」「AG型」「AA型」の3つの遺伝子型があり、Risk Alleleである「A」を持つ「AA型」の人は勃起障害/不全(ED)を発症しやすい傾向があり、「GA型」の人はやや発症しやすい傾向があります。
日本人の遺伝子タイプは「GG型」が68.9%、「GA型」が28.2%、「AA型」は2.9%であることが分かりました。(参考リンク3,4)。
3. 作用機序
放射線治療後の勃起障害/不全(ED)と、特定のDNA領域である「rs7064929」の関連について、正確なメカニズムは不明ですが、X番染色体上に位置するDNA領域「rs7064929」は、近隣の遺伝子「KIAA1166」の発現に関与する可能性があります。
「KIAA1166」は、タンパク質の一種であり、遺伝子調節において重要な役割を果たしています。この遺伝子は、全身の臓器で発現しており、認知機能や呼吸、心臓などの機能にも関わっています。(参考リンク 5)
また、「KIAA1166」は「TRPV4」という遺伝子の発現にも関与しており、この遺伝子は細胞に水を引き込む力を制御するため、下部尿路障害と関連した報告もあります。(参考リンク 6)
遺伝子「TRPV4」の変異において、運動神経障害(遺伝性運動感覚性ニューロパチー)の原因となることが報告されており、そのため「勃起障害/不全(ED)」にも関与している可能性があります。(参考リンク7、8)
以上から、DNA領域「rs7064929」は放射線治療後の勃起障害/不全(ED)のリスクと関係する一塩基多型の一つとして注目されています。
遺伝子領域rs7064929において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- GG100.00%
- GA0.00%
- AA0.00%
遺伝子領域rs7064929において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- GG92.22%
- GA7.63%
- AA0.16%
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:勃起障害/不全
体表的なDNA領域:勃起障害/不全
勃起障害/不全 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs7064929です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
-
GG
100.0% -
GA
0.0% -
AA
0.0%
検査の根拠
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
関連遺伝子
| 関連遺伝子 | ZC3H12B |
|---|
参考文献
-
関連遺伝子 ZC3H12B
- 参考リンクなし : 、と研究グループが に発表したという研究によると勃起障害/不全 に関連するrs7064929の関連性が認められました。