食道がん
- 食道がんとは、食道の内側の壁の細胞からできる悪性腫瘍(がん)で、日本では1年間に約2万6千人が新たに診断され、男性がかかる割合は女性の約5倍です。
- DNA領域rs1229984のTタイプを持つ人は食道がんにかかりやすい傾向があることが東京大学の研究で分かりました。
- 日本人でTを持つ人(TT+TC)の割合は92.7%で、世界平均の9.4%と比べてとても高い割合です。
概要
【病気の概要】 食道がんは、食べ物を喉から胃へ運ぶ「食道」の内側をおおっている細胞からできる悪性腫瘍(がん)です。 食道がんには、扁平上皮がんと腺がんという大きく2つのタイプがあります。
【症状と特徴】 扁平上皮がんは、食道の上部と中間部をおおっている扁平上皮細胞(平たい形の細胞)からできます。 腺がんは食道の下部にある腺細胞(粘液などを出す細胞)からでき、バレット食道(胃酸の逆流が続くことで、胃と食道のつなぎ目付近の食道の粘膜が、胃の粘膜のように変わってしまった状態)から起こることもあります。 食道がんのよくある初期症状は、食べ物や飲み物が飲み込みにくい(嚥下困難)、体重が減る、胸の痛みや不快感、長く続く咳、声のかすれ、血が混じることもある嘔吐などです。 がんが進むと症状は重くなり、さらに飲み込みにくくなったり、体重や体力が大きく落ちたりして、生活の質が下がっていきます。
【治療と注意点】 食道がんがこの先どうなるかは、見つかったときの病気の進み具合と、その人の全体的な健康状態によって大きく変わります。 症状が出るのが遅いため早く見つけるのが難しく、治療には手術、抗がん剤による治療(化学療法)、放射線治療などが使われます。 喫煙、お酒の飲みすぎ、肥満、長く続く逆流性食道炎(胃酸が食道に逆流して炎症が起きる病気)などが、かかりやすさを高める原因とされています。 がん全体に言えることですが、予防と早期発見が大切で、定期的な健康診断と生活習慣の見直しが必要です。
【遺伝子の影響】 東京大学のCuiらの研究で、食道がんのかかりやすさがrs1229984というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはTT、TG、GGの3つの遺伝子型があり、Tを持つ遺伝子型の人は、食道がんにかかりやすい傾向があることが分かりました。
食道がんとはどんな病気か
食道がんとは、食べ物を喉から胃へ運ぶ食道の内側をおおう細胞からできる悪性腫瘍(がん)です。日本では1年間に約2万6千人が新たに診断され、男性がかかる割合は女性の約5倍です。5年後に生存している人の割合(5年生存率)は全体で約45%ですが、早く見つかった場合は約80%まで上がります。
食道がんの種類と比較
食道がんは主に2種類に分けられます。できる場所と原因が違います。
| 比較項目 | 扁平上皮がん | 腺がん |
|---|---|---|
| 発生部位 | 食道の上部・中間部 | 食道の下部 |
| 発生細胞 | 扁平上皮細胞 | 腺細胞 |
| 主な原因 | 喫煙・飲酒 | バレット食道・肥満 |
| 日本での割合 | 約90% | 約5〜10% |
食道がんの主な症状とは
食道がんの症状は、病気の進み具合によって変わります。段階ごとの症状を下にまとめます。
初期症状
- 飲み込みにくさ:食べ物や飲み物が飲み込みにくくなります。
- 体重減少:食べる量が減ることで体重が落ちます。
- 胸の不快感:胸の痛みや押されるような感じが続きます。
進んだときの症状
- 持続する咳:がんが気管に広がることで、咳が長く続きます。
- 声のかすれ:声を出す神経(反回神経)がまひして、声がかすれます。
- 吐血:がんが広がることで、血が混じった嘔吐が見られます。
- 体力が大きく落ちる:栄養不足と全身の衰えにより生活の質が下がります。
食道がんにかかりやすくなる原因
食道がんにかかりやすくなる原因は次のとおりです。
- 喫煙:たばこを吸わない人と比べてリスクが約3〜5倍上がります。
- お酒の飲みすぎ:特にアルデヒド分解酵素(ALDH2)がうまく働かないタイプの人(お酒で顔が赤くなりやすい人)はリスクが大きく上がります。
- 肥満:体格指数(体重と身長から計算する肥満度の目安)が30以上だと、腺がんのリスクが約2倍に上がります。
- 長く続く逆流性食道炎:バレット食道を通じて腺がんのリスクが上がります。
- 熱い飲み物や食べ物をよくとる:食道の粘膜が熱によるダメージを長く受け続け、リスクが高まります。
食道がんを予防する方法
食道がんを防ぐには、次のような生活習慣の見直しが効果的です。
- 禁煙:喫煙は扁平上皮がんのリスクを約3〜5倍高めます。
- 飲酒量の制限:純アルコール1日20g以下(日本酒1合くらい)を目安にします。
- 適正体重の維持:体格指数(体重と身長から計算する肥満度の目安)18.5〜24.9を目標にします。
- 野菜・果物をとる:抗酸化物質(体のサビつきを防ぐ成分)が食道の粘膜を守るのに役立ちます。
- 逆流性食道炎の治療:バレット食道に進むのを防ぎます。
- 定期的な内視鏡検査:早く見つかれば5年生存率が約80%まで上がります。
遺伝子と食道がんのかかりやすさの関係
DNA領域rs1229984と食道がんの関係とは
東京大学のCuiらの研究(2009年、Gastroenterology掲載)で、食道がんのかかりやすさがDNA領域rs1229984と関係していることが分かりました。
- rs1229984にはTT・TC・CCの3つの遺伝子型があります。
- Tを持つ遺伝子型(TT型・TC型)の人は食道がんにかかりやすい傾向があります。
- このDNA領域はADH1B遺伝子(アルコール脱水素酵素1B)に関係しています。
- ADH1B遺伝子はアルコールの分解に関わり、食道がんができるしくみと深く関係しています。
日本人と世界における遺伝子型分布の比較(rs1229984)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| TT型 | 53.4% | 0.2% |
| TC型 | 39.3% | 9.2% |
| CC型 | 7.2% | 90.4% |
日本人でTを持つ人の割合(TT+TC)は92.7%で、世界平均の9.4%と比べてとても高い割合です。TT型の割合は日本人が53.4%と世界平均の0.2%より約267倍高く、日本人のADH1B遺伝子の特徴をよく表しています。
検査の科学的な根拠
代表的なDNA領域:食道がん
食道がんに最も強く影響するDNA領域は、rs1229984です。 日本でそれぞれの遺伝子型を持つ人の割合は下のとおりです。
- TT
53.4 % - TC
39.3 % - CC
7.2 %
検査の根拠
東京大学のCuiらの研究で、食道がんのかかりやすさが遺伝子と関係していることが分かりました。人のDNAにはrs1229984という場所があり、そこにはTとGの2種類のタイプがあります。Tタイプを持つ人は、食道がんにかかりやすい傾向があることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | ADH1B |
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よくある質問
Q1. 食道がんとは何ですか?
食道がんとは、食べ物を喉から胃へ運ぶ食道の内側をおおう細胞からできる悪性腫瘍(がん)です。主に扁平上皮がんと腺がんの2種類に分けられます。日本では1年間に約2万6千人が新たに診断され、男性がかかる割合は女性の約5倍です。初期症状には、飲み込みにくさ(嚥下困難)、体重が減る、胸の不快感があります。
Q2. 食道がんのリスクは遺伝子と関連していますか?
はい。東京大学のCuiらの研究(2009年、Gastroenterology)で、DNA領域rs1229984が食道がんのかかりやすさと関係していることが分かっています。rs1229984にはTT・TC・CCの3つの遺伝子型があり、Tを持つ遺伝子型(TT型・TC型)の人は食道がんにかかりやすい傾向があります。この遺伝子はADH1B(アルコール脱水素酵素1B:お酒の成分アルコールを分解する酵素)に関係し、アルコールを分解する力と食道がんのかかりやすさに関わっています。
Q3. 食道がんに関連する遺伝子型(rs1229984)の日本人の分布は?
日本人におけるrs1229984の遺伝子型分布はTT型53.4%、TC型39.3%、CC型7.2%です。Tを持つ人の割合(TT+TC)は92.7%で、世界平均の9.4%と比べてとても高い割合です。この遺伝子の特徴はアジアの人たちに特有のもので、東アジアで食道がんにかかる人が多いことと関係しています。
Q4. 食道がんの主な症状は何ですか?
食道がんの初期症状は、飲み込みにくさ(嚥下困難)(食べ物や飲み物の飲み込みにくさ)、体重減少、胸の不快感です。進むと、長く続く咳、声のかすれ、吐血(血を吐くこと)が出てきます。症状がはっきり出るのは病気が進んでからのことが多いため、定期的な内視鏡検査(胃カメラ)で早く見つけることが大切です。
Q5. 食道がんを予防する方法は?
食道がんを防ぐには、禁煙(リスクを約3〜5分の1に減らす)、飲酒量の制限(純アルコール1日20g以下)、適正体重の維持(体格指数 18.5〜24.9)、野菜・果物を積極的に食べる、逆流性食道炎の治療が効果的です。定期的な内視鏡検査や遺伝子検査で、自分のかかりやすさを早めに知っておくことも大切です。
参考文献
- 参考リンク1 : 2009 Nov., Ri Cui, Gastroenterology