緑内障
- 緑内障は視神経が傷つき見える範囲が狭くなる目の病気で、40歳以上の約5%(20人に1人)がかかり、日本で目が見えなくなる原因の第1位です。
- HERC2遺伝子のDNA領域rs12913832のAG型・GG型を持つ人は緑内障になりやすい傾向があることが2020年の研究でわかりました。
- 早めの眼科検診・眼圧の管理・遺伝子検査によって、なりやすい人に合わせた予防と治療ができます。
概要
【概要・特徴】 緑内障は、目の奥にある視神経(目で見た情報を脳に送る神経)が傷つき、見える範囲(視野)が少しずつ欠けていく病気です。40歳以上の約20人に1人が緑内障になると考えられており、珍しい病気ではありません。眼圧(目の中の圧力)が高い状態が続くと、視神経が傷つき、緑内障になります。 緑内障にはいくつかの種類があり、原因もそれぞれ違います。大きく分けると、原発緑内障、続発緑内障、発達緑内障があります。原発緑内障と続発緑内障は、さらに開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障に分けられます(隅角とは、目の中の水が流れ出る出口のことです)。 原因がわからない原発タイプが最も多く、その一つに色素性緑内障があります。このタイプは、虹彩(黒目の茶色い部分)の一部が後ろにずれることで、色素の粒が目の中に散らばって起こります。 また、ゆっくり進む慢性型と、急に起こる急性型の2種類があり、急性型では目の痛み、頭痛、吐き気などの症状が出ます。色素性緑内障は、白人や近視の20~50歳の若い人、特に男性に多く見られます。 緑内障の進行を防ぐには、眼圧を下げることが大切で、早く見つけることが必要です。 緑内障の人の多くは自分では気づかないため、健康診断などで見つかることがほとんどです。遺伝子検査で自分のなりやすさを知ることで、自分に合った対策をとることができます。
【2. 理論的根拠】 2020年にオーストラリアの大学と研究機関が行った共同研究で、イギリス人67,040人の視神経の写真から、緑内障に関わる遺伝子が見つかりました。 この研究で15番目の染色体から新しく見つかったDNA領域「rs12913832」には、「AA型」、「AG型」、「GG型」の3つのタイプがあります。 東アジアでは、「AA型」が99.863%、「AG型」が0.27961%、「GG型」が0.0002%の割合で見られます。数は少ないものの、緑内障になりやすい「AG型」、「GG型」の人もいます。 研究グループは、この遺伝子の情報を使って一人ひとりに合った対策を進めれば、緑内障になりやすい人には早めの治療を、なりにくい人には適切な経過観察と治療を行えると述べています(参考リンク1,2)。
【3. 作用機序】 「rs12913832」というDNA領域は、体の色(色素)と強く関係していることが知られています。この領域は、色素を作らない遺伝子「HERC2」のDNA領域の中にあり、色素を作る遺伝子「OCA2」の手前に位置しています。 また、この領域のまわりは、さまざまな動物の間でほとんど変わらずに受け継がれてきました。この「rs12913832」は、遺伝子「HERC2」のDNA領域にあり、遺伝子「OCA2」がどれだけ働くかを調整するスイッチのような役割をしていることがわかっています(参考リンク3)。 この部分の個人差によって、DNAの折りたたまれ方(クロマチンループ)が変わるため、遺伝子の働き方にも違いが出て、体の特徴にも影響すると考えられています。
緑内障とは何か
緑内障は、眼圧(目の中の圧力)が上がることなどで視神経が傷つき、見える範囲が少しずつ狭くなる目の病気です。日本眼科学会によると、40歳以上の約20人に1人(約5%)がかかっています。緑内障は日本で目が見えなくなる原因の第1位で、早く見つけて適切に治療することが視力を守るカギになります。
緑内障の種類と原因
緑内障は、原因と目の中の形によって次のように分けられます。
- 原発開放隅角緑内障:最も多い型です。目の中の水(房水)の出口(線維柱帯)が少しずつ詰まり、眼圧が上がります。ゆっくり進みます。
- 原発閉塞隅角緑内障:虹彩が前に押し出され、目の中の水の出口(隅角)がふさがります。急性型では急な目の痛み・頭痛・吐き気が起こります。
- 正常眼圧緑内障:眼圧がふつうの範囲でも視神経が傷つく型です。日本人の緑内障の約70%がこの型です。
- 続発緑内障:けが・炎症・薬(ステロイドなど)・ほかの目の病気が原因で起こります。
- 色素性緑内障:虹彩(黒目の茶色い部分)の一部が後ろにずれ、色素の粒が目の中に散らばることが原因です。白人や近視の20〜50歳の男性に多いです。
- 発達緑内障:生まれつき目の中の水の出口(隅角)がうまく育たないことが原因で、赤ちゃんや幼い子どもに起こります。
緑内障の主な症状
緑内障の症状は型と進み具合によって異なります。
- 慢性型(開放隅角):初めはほとんど気づきません。見える範囲の端から少しずつ欠けていき、進むと中心の視力も落ちます。
- 急性型(閉塞隅角):急に強い目の痛み・頭痛・吐き気・嘔吐・視力の低下・目の充血が起こります。24〜48時間以内にすぐ治療が必要です。
- 進行したときの共通の症状:見える範囲が狭くなり、見えない点が現れ、濃淡の見分けが難しくなります。
緑内障における遺伝子の影響と環境の影響の違い
| 比較項目 | 遺伝子の影響 | 環境の影響 |
|---|---|---|
| 原因 | HERC2遺伝子などの個人差 | 眼圧の上昇・年齢・近視・ステロイドの使用 |
| 影響の大きさ | 家族に緑内障の人がいると、なりやすさが約3〜9倍に上がります。 | 年齢(40歳以上)とともにかかる人が急に増えます。 |
| かかりやすい時期 | 生まれつき持っています。 | 40歳以降にかかりやすくなります。 |
| 対応方法 | 遺伝子検査でなりやすさの傾向を知ることができます。 | 定期検診・眼圧の管理・生活習慣の見直し |
| 予防できるか | 早めに知ることで予防のための経過観察ができます。 | 目薬・手術・レーザー治療で進行をおさえます。 |
HERC2遺伝子のしくみ
DNA領域rs12913832は、色素を作らない遺伝子HERC2の中にあり、色素を作る遺伝子OCA2の手前に位置しています。
- 体の色との関係:rs12913832は体の色(目の虹彩の色など)と強く関係していることが知られています。
- OCA2の働きの調整:この領域はOCA2遺伝子の働きを調整するスイッチのような役割をします。個人差によりDNAの折りたたまれ方(クロマチンループ)が変わります。
- 動物の間での共通性:この領域のまわりはさまざまな動物でほとんど変わらずに受け継がれており、大切な働きを持ちます。
- 体の特徴への影響:DNAの折りたたまれ方の違いで遺伝子の働き方に差が出て、目の組織の特徴に影響します。
緑内障の効果的な予防法と治療法
緑内障の進行を防ぐには、眼圧を下げることが最も重要です。
- 定期検診:40歳以上は年1回の眼科検診(眼圧の測定・目の奥の検査・見える範囲の検査)がすすめられます。
- 目薬による治療:プロスタグランジン関連薬・β遮断薬などの目薬で眼圧を20〜30%下げます。
- レーザー治療(選択的レーザー線維柱帯形成術):目の中の水の出口(線維柱帯)にレーザーを当て、水が流れ出やすくします。
- 手術療法:線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)やチューブシャント手術(水の通り道を作る手術)で眼圧を調整します。
- 遺伝子検査の活用:なりやすい人には早めの治療、なりにくい人には適切な検査の間隔を決めます。
- 生活習慣の改善:適度な有酸素運動、カフェインのとりすぎを控える、禁煙、十分な睡眠が大切です。
遺伝子と緑内障の関係
DNA領域rs12913832と緑内障のなりやすさの関係
2020年にオーストラリアの大学と研究機関の共同研究(Craig ら)で、イギリス人67,040人の視神経の写真から、緑内障に関わる遺伝子が見つかりました。
- 15番染色体上のDNA領域rs12913832にはAA・AG・GGの3つの遺伝子タイプがあります。
- AG型・GG型の人は色素性緑内障になりやすい傾向があります。
- AA型の人はなりにくい傾向
日本人と世界の遺伝子タイプの割合(rs12913832)
| 遺伝子タイプ | 日本人の割合 | 世界の割合 | なりやすさ |
|---|---|---|---|
| AA型 | 99.9% | 13.4% | なりにくい |
| AG型 | 約0.3% | 46.4% | ややなりやすい |
| GG型 | 約0.1%以下 | 40.0% | なりやすい |
日本人(東アジア)ではAA型が99.9%と大半を占める一方、世界全体ではAG型が46.4%、GG型が40.0%と多く見られます。研究グループは、遺伝子の情報を使って一人ひとりに合った対策をとることで、なりやすい人には早めの治療を、なりにくい人には適切な経過観察を行えると述べています(1)(2)。
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:緑内障
緑内障 に最も強く影響するDNA領域は、rs12913832です。 日本でのこの部分の遺伝子タイプの割合は下記のとおりです。
- AA
99.9 % - AG
0.1%以下 - GG
0.1%以下
検査の根拠
2020年にオーストラリアのCraig(クレイグ)らの共同研究で、イギリス人67,040人の視神経の写真を分析し、15番染色体上のDNA領域rs12913832が緑内障のなりやすさと関係していることがわかりました。この領域はHERC2遺伝子の中にあり、色素を作る遺伝子OCA2の働きを調整するスイッチのような役割をしています(1)。この部分の個人差によってDNAの折りたたまれ方(クロマチンループ)が変わり、遺伝子の働き方が変わることで、目の組織の特徴にも影響すると考えられています(3)。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | HERC2 |
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よくある質問
Q1. 緑内障とは何ですか?
緑内障は、眼圧が上がることなどで視神経が傷つき、見える範囲が狭くなる目の病気です。日本眼科学会によると、40歳以上の約5%(20人に1人)がかかっており、日本で目が見えなくなる原因の第1位です。緑内障の人の約90%は自分では気づかず、健康診断や眼科の検査で初めて見つかることがほとんどです。
Q2. 緑内障と遺伝子の関係は?
2020年のオーストラリアの共同研究により、HERC2遺伝子のDNA領域rs12913832が緑内障のなりやすさと関係していることがわかりました。AG型・GG型の遺伝子タイプを持つ人はなりやすい傾向があります(1)(2)。
Q3. 緑内障の主な症状は何ですか?
慢性型では初めはほとんど症状がなく、見える範囲の端から少しずつ見えない部分が広がります。急性型では急な目の痛み・頭痛・吐き気・視力の低下が起こり、24〜48時間以内にすぐ治療を受ける必要があります。
Q4. 遺伝子検査で緑内障のなりやすさは分かりますか?
DNA領域rs12913832の遺伝子型を調べることで、緑内障へのなりやすさの傾向を知ることできます。日本人ではAA型が99.9%を占め、なりにくい傾向ですが、世界ではなりやすいAG型が46.4%・GG型が40.0%と多く見られます(1)(2)。
Q5. 緑内障の効果的な予防法は?
40歳以上は年1回の眼科検診(眼圧の測定・目の奥の検査・見える範囲の検査)がすすめられます。早く見つければ、目薬・レーザー治療・手術で進行をおさえることができます。遺伝子の影響でなりやすい人は、定期的に眼科へ行き、眼圧を管理することが予防につながります。
参考文献
- 参考リンク1 : 2020 Feb., Jamie E Craig, Nature genetics
- 参考リンク2 : DNA領域 「rs 12913832」の情報 アメリカ国立衛生研究所
- 参考リンク3 : 2012 Mar., Mijke Visser, Genome Research